僕のSYNTHETIXのトークンSNXについての投資評価まとめ

問題定義

DEXにおける技術的な問題点を解決しようとしているプロジェクトです。まず、DEXは、そのコンセプトとして、中央集権型取引所では、当たり前のように使われている「オーダーブック」を不要にする必要があると考えられています。オーダーブックは、売買の指し値注文などを集めた板ですね。板を使った取引の場合は、注文を中央集権的に管理した方が、売買処理を効率的に行うことができる=市場の流動制をあげることができます。だから、世界の証券取引所などに採用されているトランザクションシステムのデータベースソフトウェアは、インメモリ型の秒間数百万件処理できるデータベースソフトウェアを使っているのですね。このDBソフトウェアのアーキテクチャは、ブロックチェーンのそれとは真逆の思想で、中央集権的に高速に処理することがだけにフォーカスしたソフトウェアです。しかし、DEXはこれを否定しないと成立しないわけですね。

もう1つは、現物の権利移転を毎回行うという手間で、売買が行われる度に、権利が、買手から売手やその逆に変わっていきます。イーサリウムなど単一のブロックチェーン上でこの権利移転が行われている場合は、そこまで手間ではないですが、実際には、ビットコインをはじめ、様々なブロックチェーンが、それぞれトークンを交換し合います。全てのブロックチェーンが、COSMOSなどのBlockchain Interoperablityのソフトウェアに接続されていない現状で、このトランザクションを実行し続けるのは、技術的にはかなり大変です。いわゆるAtomic Swapと言われる手法です。

なので、仮想通貨の中央集権型の取引所の多くは、自社で上場している仮想通貨の在庫を抱えて、実際には、売手と買手間の2者間取引ではなく、買手 – 取引所のトレーディングチーム  – 売手の3者間取引で、絶えず、間を取引所側の自己玉で運営することで、実際には、異なるブロックチェーン上のトークンの保有者同士が直接取引しない状態で運営されているケースが多いです。目的の1つは流動性を人工的に作り出すためですね。当然ですが、DEXは、これも否定します。なぜなら、中央の取引所がこの運営モデルを何かしらの理由でやり続けることができなくなった場合、その取引所の流動制は崩壊するリスクがあるからです。カウンターパーティリスクの1つです。

テクノロジー

Synthetixとは、「合成」と意味からきている英語です。その点から、アイデアは、既存のBinanceなどの取引所のビジネスモデルをベースに、ステーブルコインの概念、COSMOSのDPoSの概念、そして、MakerDAOのモデルを組み合わせたような内容です。現在、トークンは、イーサリウム上で稼働しています。まず、DEXであるSynthetix・Exchangeに参加するバリデーターネットワークの人々は、SNXをデポジットする。取引所の売買手数料は0.3%で、このリベニューシェアを受け取ることができる。他のPoSのモデル同様に、当然ですが、コンセンサスを得る上で、悪意的な行為が発見された場合、このデポジットからペナルティが差し引かれる。

同時に、Maker DAOの仕組みに近い点として、SNXをデポジットしたステイカーは、担保評価率(初期値750%)に応じて、Synthsというトークンを発行することができる。担保評価率は、先ほどのバリデーターコミュニティのガバナンスにとって投票で上下する。担保の補充や、Synthsの焼却ルールもMakerと同じ。MakerDAOについては、「こちらの記事」に詳しくまとめています。

そして、この使い道が、Makerの用途とは異なり、Synthetix.Exchangeに上場されている銘柄と価格連動する形で売買されるということ。その銘柄とは、USDにペッグされたsUSDや、ビットコインにペッグされたsBTC、Appleの株式にペッグされたsAAPLなどである。

つまり、APPL株をもつユーザーは、sAAPLを使って、実際のアップルの株式を動かすことなく売買できる。だから、先に述べたブロックチェーン間のトランザクションを直接行う必要がないというアイデア。

そして、そのSNXをデポジットして、Synthsを発行しているユーザーが、同時に、売買のカウンターパーティ役を担うことになる。なぜなら、全ての取引が、Synthsによって行われるから。バイナンスのBinance Chain上のBNBを使って、全ての仮想通貨を売買する発想に近いです。つまり、複数のカウンターパーティが立つことで、中央集権取引所のように、単一のカウンターパーティしか立っていない状況のリスクをより分散化しているということです。彼らは、売買手数料の報酬をもらえるだけでなく、現物価格とのアービトラージをする権利も与えられているので、それによって価格乖離も防ぐことができる。

しかし、ここには、思考の落とし穴があって、Synthsのシステムスケーラビリティは、イーサリウムのスケーラビリティに完全に依存している。また、仮に、イーサリウムを出て、自前のブロックチェーンを持った場合もその点は変わらない点です。結局は、今のブロックチェーンが抱えているブロックチェーン自体のスケーラビリティの問題を克服して行かないと、この問題点の解消にはならない。その点は、COSMOSのアプローチの方が、現実的で有益であると考えている。COSMOSについては、「こちらの記事」に詳しくまとめています。

トークンエコノミー

2019年3月から2024年3月までは、SNXトークンの供給量は 100,000,000から245,312,500に増加する予定で、インフレ率は年次で下がっていく方針。そして、SNXステイカーにプロラタベースで、そのインフレ分の報酬が分配され、その量はインフレ率以下の条件で設定されている。なので、供給無制限ですね。SNXトークンの価値自体を堅調にあげていくことができれば、インフレ率を低下させても、SNXステイカーの報酬価値は下がらないので、トークンエコノミー として一定のネットワーク効果が得られます。また、売買手数料のリベニューシェアのみに、SNXステイカーの報酬を限定すれば、供給制限モデルにできます。このあたり、実験しながら検証していくと見ています。

戦略

戦略的に特徴的なのが、Synthetix.Exchangeをやろうとしているのに、SNXトークンは、他の取引所に上場しているんですね。KuCoinが、市場全体のボリュームの80%近くを持っています。残りの20%は、ほぼKyberNetworkです。僕が、Binanceの長期戦略として提案している「裏方戦略」を意識しているのであれば、このアプローチは正しいと言えます。なぜなら、ローカル市場のレギュレーションコストを全て、組手の取引所に任せることができるからです。詳しくは、「こちらの記事」にまとめています。

チーム

Kain Warwick – Founder – Linkedin

オーストラリアのニューサウスウェールズ大学で遺伝子学を学んだのち、起業家の道を歩んでいます。彼は、2014年ごろからO2Oにフォーカスした決済代行のベンチャーBlueShiftをオーストラリアで立ち上げており、AliPayのオーストラリアの代理店をやったり、ビットコイン決済などにも対応。バイナンスもクライアントですね。QRコード決済がメインソリューションです。その延長線で、DEXの問題点に関心を持ったのだと見ています。BlueShiftは、オーストラリアに1500店舗の加盟店もあるので、ベンチャー事業としてしっかりと立ち上がっています。彼は、引き続き、BlueShiftのCEO業をやりつつ、このプロジェクトを立ち上げています。チームメンバーの多くは、BlueShift出身者からになります。

Justin J. Moses – CTO – Linkedin

彼も同じニューサウスウェールズ大学でコンピューターサイエンスを専攻しており、直前は、MongoDBのエンジニアリングディレクターをやっていたので、分散システムにはかなり精通しているエンジニアです。また、BlueShiftもアドバイザリーもやっているので、それでCTOになったのでしょう。

Clinton Ennis – Technical Lead – Linkedin

彼は、直前はJPモルガンでトレーディングシステムのシステムアーキテクト・リードをやっていたので、Exchangeシステムにはしっかりとしたリテラシーがあると見ています。彼も、同じニューサウスウェールズ大学の出身ですね。

Jordan Momtazi – VP of Partnerships – Linkedin

彼は、元PayPalのエンタープライズ向け戦略パートナシップもやっていた人物であり、BlueShiftにコンサルタントとして関わっていました。

事業の進捗

最近はまだ主だったニュースは出てきていないですね。

競合の動向

DEXをやっているので、最大の競合は、バイナンス(Binance)になるでしょう。バイナンスのBNBは僕も投資していますが、その理由については「こちらの記事」に詳しくまとめています。

長期の課題

2点です。1つ目は、純粋に、彼らのブロックチェーン自身がスケールしないと、大量の取引を扱うことができないこと。当然ながら、ずっとイーサリウム上で運用していたのではその目標は達成できないでしょう。自前で作り込む必要がある。自前でブロックチェーンを構築できる技術力はあるチームだと思いますが、そこからスケールさせるのは別の話です。相当な知恵が必要です。

2点目は、彼ら自身のプロダクトのアークテクそのもの。全ての仮想通貨などをSynthsにペッグさせることで、DEXを問題を解決しようとしていること。ユーザー感覚からすると、現物ではなく、ペッグで売買することは違和感を覚えるはずで、既存の金融商品を見るとわかりますが、多くの場合、それは、現物に対する先物市場になることが多いです。先物市場で、金や石油などの商品が主流をしめる理由は、「現物を動かすのが大変」、「ヘッジ取引が必要」、「価格発見機能」、などがその提供価値の中心をしめるのですが、仮想通貨や株券、為替などは、全てデジタルです。つまり、現物に対する先物としての価値しか生み出さない可能性がある。

実際に、仮想通貨の市場でも、株式などと同様にカスティディアンサービスは確実に発展してきており、セキュリティ技術もレベルアップしてきている。その上で、彼らのこのプロダクト戦略が、どこまで人気を得るのか?

現時点での投資評価

DEXは、この業界にとって非常に重要なパーツの1つなので常に追い続けています。事業を進めるにあたり、必要な人材は揃っているし、技術力はしっかりしていると思いますが、大きくスケールする可能性がまだ見えてこないので、「様子見」です。単なる先物市場に終わるリスクもあり、その場合は、既存の金融市場における先物市場のサイズを見ればわかる通り、そんな大きくはならない上、バイナンスなどもすでに先物取引を開始していますから、Binance.chainに全てのトランザクションを乗せる方向性でバイナンスが動いている以上、流動性で到底太刀打ちできないでしょう。逆にデリバティブ開発に進んだ場合、産業発展に貢献するどころか、既存の金融インフラが抱えている構造上のリスクを、この新産業にコピーするだけなので、持続性リスクを引き上げることになり、ほとんど貢献しないでしょう。もともとビットコインは、既存の金融インフラの根本的な問題を正すために生み出されたテクノロジーだからです。

以上、みなさんの参考になれば幸いです!

注記:最終的な投資判断は自己責任になります。

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