バイナンスのステーブルコインプロジェクトVenusは、彼らのローカライズ戦略を支援する。なぜか?

バイナンスのステーブルコインプロジェクトであるVenusが、フェイスブックのLibraとの競合関係を明確に打ち出してきたので、見解をまとめておきます。原文(英文)は、こちらです。

Libraを主要国が警戒する理由

まず、おさらいもかねてこの点から話をすると、ヨーロッパでも、フランスもドイツも「Libraはブロックする」と明確に宣言しており、彼らはこの動きをユーロ圏全体にあてはめようと動いています。- ロイターよりの関連ニュース

仮想通貨自体が、市民権をえてきている中で、なぜ、Libraは、ここまで、政府から嫌われるのか?答えは、単純で、Libraが普及すれば、自国通貨が衰退する=自国経済の衰退に繋がるリスクがあまりにも明確だからですね。それは、Libraは、単一のステーブルコインをみんなで運用しようというコンセプトのステーブルコインでありつつも、Libraの財団には、発起人のフェイスブックをはじめ、北米企業がズラリと名前をそろえている。これでは、GAFAで起きたことが、またブロックチェーンの世界でも繰りかえされることが、すぐにイメージできてしまいますから、政府側が拒絶反応を示すのは無理もありません。政府は、規制する権限を持っていますから、Libraをブロックする法案を通すことは当然できます。

Orbの藩札2.0と同様にその裏を書いたVenusのマルチ・ステーブルコインのプロダクト戦略

一方、Venusのスーテブルコイン戦略は、僕がOrbで進めていた「藩札2.0」と全く同じで、Binanceのブロックチェーンであり、COSMOS Networkに接続されているBinance Chain上に、フランスならフランス政府の主権で、ステーブルコインを発行する。それによって、フランスは全くシニョリッジを失わないまま、ステーブルコインを採用する事になる。理想的なのは、ペッグのやり方は、通貨バスケット制でしょう。そして、同じように、世界各国で、このモデルが採用された場合、ここが重要ですが、全く、通貨バスケット制でペッグされたステーブルコインが、フランスだけでなく、様々な国で発行されることになると、同じBinanceChainという非中央集権化されたネットワーク上で稼働することになるので、システム的には、実質、Libraと同じような振る舞いをすることになります。

すると、今度は、このいわばマルチ・ステーブルコイン・ネットワーク上で展開する様々なDappsは、Libra自体が考えていた、僕が以前からこのブログでよく伝えている、戦後のブレトン・ウッズ体制における日本経済が受けた経済的恩恵を受けることができるようになるのですね。詳しくは、別にまとめているLibraの「こちらの記事」を参考にしてください。

その点を踏まえると、Venusは、Libra同様、通貨バスケット制によるペッグ方式を採用した方が、事業としてのスケーラビリティが上がると見ています。なぜなら、正確に言うと、Binance DEXに上場されている全トークンがこの恩恵を受けることができるからです。その全世界的に共通の振る舞いをするステーブルコインを通じて、安定的に資金が、Binanceに入ってくるからです。

わかりやすい話でいえば、BTCを購入する前に、中国人が、USDTを大量購入するのと同じです。

Venusは、間違いなくバイナンスのグローバル戦略をサポートするだろう

そして、これは、今度は、バイナンスのグローバル戦略をサポートすると考えています。Venusを採用する国は、新興国中心になると見ていますが、その背景は、新興国通貨が不安定だからです。ジンバブエで起きたハイパーインフレや、今もまた債務不履行リスクで、通貨が暴落しているアルゼンチンなど、この点は、事例には事欠きません。シニョリッジを失わない形で、ドルやユーロなど安定通貨にソフトペッグされているVenusのステーブルコインは、彼らの経済にとって救世主になるでしょう。

と同時に、それらのステーブルコインは、Binance DEXで売買される事になる。つまり、自動的に、各国政府に歓迎される形で、Binanceはグローバル展開を進めることができる土台が整うわけですね。別のブログでも触れていますが、僕は、この業界の中長期の発展を考えると、ユーザーにとって、そして、自社トークンを上場するスタートアップにとっても仮想通貨取引所は、2つか3つに集約された方が絶対的に産業育成になると考えています。その点は、「こちらの記事」にまとめています。

そのブログで触れている通り、カギとなるのは、バイナンスが、各国政府の規制を直接対立しない関係が構築されることです。今年起きた、US政府によるバイナンスのアクセス禁止と、バイナンスがそれを回避するために、現地のローカルパートナーと組んでUS事業展開をしたのは、その典型例の1つです。無事、USサービスも開始し、BNBも上場されましたが、各国規制に対応するために、毎度、タフな交渉をするのもバイナンスにとっては、楽ではありません。だからローカルパートナーと組んだ方がよい。その点については、「こちらの記事」にまとめています。下記の図のように、裏からに回ることで、この問題は回避できるわけですね。

この記事でも説明しているように、その際に、バイナンスが、裏方に回るように振る舞うのが最適であると考えていますが、Binance DEXの裏方であるBinance Chainとその上で動くVenusのステーブルコインは、正にその立ち位置に相当するものであり、かつさらにポジティブな要素として、自国通貨を安定させたいと考えている新興国政府にとっては、Venusは、助け舟になるわけですね。

これで、バイナンスとしては、各国政府とかなり会話しやすい素地が整うわけです。

今後のバイナンスには、更に期待がもてそうです。

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