Dappsゲームが「キャズム」を超えるために必要なプロダクトデザインの要点3つ

以前、日本から、グローバルDappsが生まれる可能性が残されたカテゴリはゲームぐらいだろうと、別の記事をまとめていますが、その点について、もう少しプロダクト目線で僕の考えを伝えておこうと思います。Dappsゲームに取り組んでいる起業家は参考にしてください。

まずは、キャズムのおさらい

まずは、知らない人向けに簡単におさらいです。キャズムをきちんと理解している人は、次に進んでください。

キャズムとは、1つのヒット商品が生まれてから、廃れるまでのライフサイクルを表した図で、ユーザー層が変化すること的確にまとめたものです。左のイノベーターから始まり、アーリーアダプターへと主力ユーザー層が移っていき、アーリーマジョリティに到達したときにメガヒットになります。しかし、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間には、ギャップがある。このギャップ=キャズムであり、これを乗り越えられるプロダクトが必要。キャズムは、名著なので一読を勧めます。

僕は、まだ仮想通貨市場全体が、キャズムの中にいると判断している。だから、アルト投資が普及していない。特に、B2C向けのトークンが稼げるアプリが出てくることが、アルト投資普及のカギと考えているが、そのためのトークンエコノミーのデザインや運用はなかなかに難易度が高いため、アルトコインを100社近く分析したが、やはり、B2C系アプリが少ない。そのような中で、ゲームは、比較的トークンエコノミーのデザイン難易度が低く、NFTなどでもビジネスモデルが構築できるため、比較的早くビジネスモデルを確立できるB2CのDappsベンチャーが育ちやすい市場であるとも考えています。

F1層かキッズでバズらせるゲームが必須

結論から入るとこれです。絶対条件と言えます。マイクリは僕も遊んだことがありますが、この条件を満たしているゲームレベルにはまだ育ってきていないです。F1層は、20-34才の女性層のことです。

まず、RPGは、今、この2つのユーザー層にはほとんど流行らなくなっていますね。1つは、RPGは忍耐力がいるゲームだからですね。CryptoKittiesのようなキャラクターゲームの方が可能性があります。更に、突っ込んでいうと、F1層で流行りやすいのは、農場経営やパズルゲームです。日本でパズドラがヒットした理由の1つは、パズルゲームだからです。しかも、サクサクできるパズルというところがポイントですね。そのあたりは、僕が別にまとめているカジュアルゲーム革命の記事を参考にしてください。農場経営では、フィンランドのゲーム会社であるスーパーセルがヒットさせたヘイデイが有名ですが、日本でもかなりF1層に流行っていました。

農場経営のゲームは、トークンエコノミー と相性が良いと考えています。なぜなら、「育てる」要素が入っているからです。よくある育てたゲームアカウントを他人に売るなどの話ですね。つまり、トークンエコノミー を持ち込みやすい領域です。

キッズは、僕は詳しくないのでよくわかりませんが、別のジャンルの話をすると、日本の芸人は非常に賢いので、皆だいたい、F1層やキッズに流行る芸をみな考えています。ここでバズると確実にヒットするからですね。日本の笑いを研究するのもヒントを得る上で1つの手がかりになるでしょう。なんでもそうですが、究極的に突き詰めた世界には、分野を問わず、共通項が必ずあるからです。

日本はARPUが高いのが強みだが、グローバルに出て行くことを想定した場合は、確実に成長の足かせになる

そう、この点の注意が要ります。別の記事でもまとめていますが、日本のゲームのARPUは、世界で最も高いです。日本のゲームユーザーは、北米のゲームユーザーに比べて約1.5倍、西ヨーロッパと比較すると2.5倍、中国と比較すると3倍。

こいつのメリットは、「すぐ収益化できること」です。当然ですね。一人当たりの課金量が相対的に大きいのだから。しかし、世界に出たときにヤラレテしまう。世界は、ARPUがもっと低いから。なぜか?ゲーミフィケーションの設計に影響が出ます。日本のユーザー層向けであれば、APRUが高いので、ゲームの内容を複雑化させて難易度をあげないと、高レベルユーザーが飽きてしまう。なので、日本のゲームをやっていて思うのは、難易度が海外のゲームに比べて複雑に設計されておりハイレベルなんですね。フィードバックを受けるデータが日本人のみなのだから当然と言えば当然です。

ARPUの低い市場では、みんなサクサク楽しめる世界観と、全体の2-3%しかいない大量の課金ユーザーが強烈にやりこむ世界のギャップがかなり広く設計されています。これは、なかなか口で言って伝わる世界ではないですが、上のキャズムで言えば、イノベーターと最後のラガードの距離感が、日本のユーザベースに比べて相当広いということです。中国などは、低所得者層がたくさんいますから、日本のユーザー向けのようにすぐにユーザーがお金を払ってくると想定したゲームモデルは、全然、受け入れてくれないということです。

なので、日本市場でグローバルに出て行くためのプロダクトを仕上げる前提で改善していると、海外に出て行っても全く相手にされないということになります。この問題は、パズドラが現に抱えている問題です。日本ではメガヒットになりましたが、海外ではほとんど流行っていない。なぜなら、ゲームのクオリティや難易度が日本市場のARPU水準に合わせて完全に最適化されすぎてしまっているからですね。適切なローカライズが必要なのですが、この辺りは、フェイスブックのプロダクト戦略が参考になるでしょう。しかし、日本人だけのエンジニアチームが、フェイスブックのようなプラットフォームを生み出すのは、200%不可能です。その点は、「こちらの記事」を読めばわかります。

射幸心を煽りすぎるとNFT市場も政府から規制される

これは、かつてGreeやDeNAが作ったいわゆるソーシャルゲーム市場が辿った末路ですね。NFTは、稼ぐことができますから、ゲームのデジタルアイテムをNFTを通じて売却すれば、ユーザーはお金を稼ぐことができる。ゲームで稼げるのだから素晴らしいことですが、同時に、これは運営母体側のビジネスモデルにもなっている。結論から言えば、売買が活発に行われた方が、ゲームの運営母体は売買の手数料収入も得られるし、ゲームアイテムを強化するためのデジタルグッズなどもゲーム内で販売することで収益が上がるから、射幸心を煽るゲームを作った方が儲かるのは当然です。しかし、そのようなゲームを作りすぎると当然、金融庁は黙っていない。僕が業界で活動していた2014年から2018年の間であれば、金融庁にも、イノベーションにつなげるための特別方針としてそのような世界をある程度許容する素地はありましたが、2018年に起きた2件のハッキング事件を引き起こしたので、その自由は奪われましたから、一切期待できない。

ですから、収益性を過剰に意識したDappsゲームは、自分たちのクビを締めるだけの行為になることを深く理解することです。

最後に:ゲームが流行る社会はディストピアが進行した社会だとよく知るべし

しかし、最後に最も注意すべきはこの点です。スティーブン・スピルバーグ監督が、映画「レディ・プレイヤー・ワン」で訴えたかったメッセージはまさにこれです。例えば、隣の韓国で、なぜ、Eスポーツが盛り上がるのか?理解していない人が多いです。原因は、韓国経済が非常に不安定であり、経済格差が深刻だからです。つまり、社会のディストピア化が進行している。ゲームとは、若者にとって現実逃避の手段なのです。

その中で、僕は、ニャイアンテックには、ゲーム会社としてとても可能性を感じています。それは、創業者でありCEOのハンケ氏の起業の動機です。「自分の子供が、ゲームばかりして外に出ないことをとても悲しく思った。彼が外で出たくなるようなゲームを作りたい」と。ポケモンGoがヘルスケアの分野にあえて行っていないのは、非常に重要だと考えています。なぜなら、そっちにゲーム路線を傾けてしまうと、大人しかやらないゲームになるからですね。ハンケ氏はよくわかってるなと思います。彼の創業の想いを貫くことは、ひたすら目先の利益にこだわる近視眼的な世界ではないからですね。収益面で行ったら、ヘルスケアの方にシフトした方が儲かるのです。当然です。大人の方が子供より金がありますから。ARPUは高くなる。しかし、それでは世の中は全くよくならない。ゲームで世の中をよくしたいのであれば、ハンケ氏のような思想を持つ必要がある。経済格差を根絶するための技術であるブロックチェーンの思想と反するわけですね。今、僕が知る限りにおいて、この思想を持ったようなDappsゲーム会社はゼロです。

以上、みなさんの参考になれば幸いです!

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