なぜ、ブロックチェーン市場には1st Mover Advantageが効力を持つのか?

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なんども、僕のブログによく出てくる「1st Mover Advantage」について、今日は掘り下げて話をしたいと思います。

1st Mover Advantageとは?

一言でいえば、「先行者益」のことをいいます。新しいテクノロジーを使って、一番初めに事業を立ち上げた起業家が受け取る正当な恩恵です。巨大な潜在力を持った市場が立ち上がるとき、一番初めにその可能性を理解し、もしくは自らのその可能性をゼロの状態から、実際にプロダクトを世に出すことで1以上の存在にすることで、巨大な新市場の可能性を目に見える形で世に示す。それが、先行者の役割でもあります。

同時に、その分だけ、周囲からありとあらゆる攻撃を受けます。批判、中傷などなど。そのようなものをものともせず、そこにこそ、真実がある、人類の未来がかかっていると信じて、パイオニアとして市場開拓をするものが先行者です。テック業界では、イノベーターとも呼びます。現に、僕がOrbを2014年に創業した段階は、Mt.Gox事件の影響が大きく、ビットコイン関連企業というだけで、銀行口座も開けないし、世の中からは、危険視、腫れ物扱いされましたら大変ひどいものでした。それを複数の戦略的な取り組みを並行で展開することで、2017年には、みな手を平に返したように、「ビットコイン、仮想通貨、ブロックチェーンはスゴイ」という評価にな理、日本は世界のメディアから「Cypto Heaven=仮想通貨の天国」と評価されるまでになった。そのあたりのエピソードは、全て「こちらの記事」にまとめています。

これだけの苦労をしているのだから、先行者が、開拓者としての報酬を受け取るのはしごく当然と言えます。しかし、ブロックチェーンの前に登場した革新的なテクノロジーである、パーソナル・コンピュータやインターネットの市場では、この法則はほとんど働くことがありませんでした。

多くの場合、1st Mover、先行者達は、その周囲の強烈な抵抗や批判をひっくり返すために、相当な時間と労力を取られるため、会社自体の成長を十分に実現することができず、後発組に、市場のリーダー的ポジションを明け渡すことが多かったのです。

例えば、パーソナルコンピュータの市場であれば、先駆者はアップルでしたが、実際に市場を制したのは後発のマイクロソフトでした。別の例でインターネットの業界。検索エンジンは、ヤフーに買収されたAltaVista社などが先駆者でしたが、勝者は後発組のGoogleでした。別の例、SNSであれば、先行者はMySpaceでしたが、最終的な勝者は後発組のFacebookでした。

という具合に、1st Moverが苦い想いをさせられるのが、今までのIT産業におけるスタートアップの歴史であったということです。しかしながら、仮想通貨・ブロックチェーン市場は、全くそうはなっていません。

たとえば、ビットコイン。世界初の暗号通貨であり、次の100兆円産業(インターネットもパーソナルコンピュータも100兆円の市場規模を超えている)であるブロックチェーンの生みの親であるビットコイン。これは、たった一人の天才プログラマが生み出したテクノロジーです。

そして、この後、ビットコインよりテクノロジーで優れた代替する仮想通貨がたくさん立ち上がりました。コンセンサスアルゴリズムの改良や、ソフトウェアガバナンスの点も含めて、DASHBItcoin Cashなどもそうですね。しかし、いずれも、ビットコインに圧倒的な差をつけられています。ビットコインは、仮想通貨の市場におけるほぼ不動の地位を固めています。なぜなのか?

別の例でいえば、世界初のBaaSを生み出したイーサリウム。後発のEOSの方が、現時点のBaaSソフトウェアレベルでは上ですが、BaaSとしてのモメンタムは、イーサリウムが圧倒的に上です。Dappsをやろうとする起業家の間では、トークンはまずはイーサリウムで発行しようというのが、ほぼ定着しています。つまり、ネットワーク効果によるブランド力がイーサリウムに存在しているということです。初期リリースから3年ほどでこの地位を確立しましたが、オープンソースプロジェクトとしては異例と言えるほどの優位性と驚異的な成長力です。競合は、EOSだけでなく、StellarTRON、NEO、NEMなど、他のBaaSと圧倒的な差をつけています。

なぜ、後発組が有利と言われるテック市場で、仮想通貨とブロックチェーン産業にだけ、1st Mover Advantageが働くのでしょうか? 0から1を作ってきた起業家である僕の目からは、この理由が、鮮明にわかります。

VCや銀行という中間搾取のプレイヤーが資本提供者にならないからこそ、1st Mover Advantageが働く。

というのが僕の結論です。まずは、「中間搾取」の問題点を、すでに市場として十分すぎるほど育ったインターネットを例にとって話しましょう。下記は、旧メディア産業で日常的に起きた中間搾取の問題をインターネットのテクノロジーがどのように取っ払ったかについて簡単に図式化したものです。


インターネットが普及する前のメディアの中心は、TVでした。そして、TVはクリエーターやアーティストが作っているメディアではなく、大手のTV局、芸能事務所、そして広告主(正確にいえば大手の広告代理店)が作っている業界でした。ですから、クリエーターたちは、自分たちがどんなにこのコンテンツはユーザーにウケると考えていても、彼らが認めてくれないとユーザーに届けることはできませんでした。つまり、TV業界の関係者が「中間搾取」者だったわけですね。中には、その業界構造のため、体を売る行為をさせられる芸能人・クリエーターがたくさんいました。僕の友人のアーティストにも現にこのようなことを強要されかけた話を実際に聞いています。彼らは、その意味で、決して許されない中間搾取者たちでした。しかし、当然の因果応報として、今や彼ら「死に体」です。何故か?

インターネットが、彼らの存在を完全に抹殺したからです。インターネットが証明したこの中間搾取の事実として、有名なエピソードは大量にあるのですが、その典型的な例をお話します。以下は、世界的なインスタグラマーとして有名なIskra Laurenceにインスタグラムを始めるキッカケを与えたエピソードです。


彼女は、身長が180cm近くあり、かつ体系も一般的なモデルに比べるととても太いため、メジャーデビューをするために頑張っていたのですが、その体系が原因で、モデル事務所に「使えないからクビ」にされたしまったのですね。しかし、そのあと、彼女は諦めず、自分でインスタグラムのアカウントを立ち上げ、自分の持っている服をコーディーネットをベースにコンテンツを作り続けました。特に、太めの体型に合うファッションセンスの高さが、多くのアメリカ人女性の共感を獲得し、フォロワー数は300万を突破。今では、アメリカのメジャーブランドの一つのアメリカン・イーグルスと年間包括契約を結び、年間数億以上は稼いでいるインスタグラマーと言われています。わかりますね?

ユーザーは彼女のモデルとしての価値を認めていたにも関わらず、芸能業界関係者の偏見である「モデルは、線が細いのが良い」という偏見である古い価値観が、彼女の可能性を潰していたわけです。この結果が、今のTV産業であり、TV業界は今や完全に斜陽産業になってしまいました。老人しか見ないメディアですからね。

そして、ブロックチェーンのテクノロジーが排除しようとしている「中間搾取」の存在は下記の左側の存在です。

銀行の預金、VCに投資される年金基金など、全ては元は、個人の資金です。僕らが頑張って働いた得たお金が元手になっている。しかし、その使い道について、お金の出し手である我々が、なぜか、口を挟むことは全くできないわけです。より正確に言えば、どのプロジェクトにお金を投じるべきかの判断が、全く、我々の意見が取り入れられることはない。中間搾取者である彼らだけが決めている。

彼らがいるため、本来、ニーズあること、もしくは資金を必要しているプロジェクトに資本が流れていかないため、世の中のイノベーションが加速せず、そのお陰で個人がどんどん苦しくなることが多々あった。VCと言っても、シリコンバレーの中核にいるもともと自ら起業家であった人々が経営するVCは、違います。僕もプレゼンさせたもらったことがあるサンマイクロシステムズの元創業者のビノット・コースラが立ち上げたコスーラベンチャーズ。PayPalの元創業者のピーターディールが立ち上げたFoundersFund、Netscapeを作ったマーク・アンドリーセンが立ち上げたアンドリーセン・ホロウィッツなど。しかし、彼らの資金だけでは、テックスタートアップが、十分高い収益性を得る事業に育つまでには不足しています。なので、それ以外、つまり、起業経験の全くない金融やコンサル上がりのVC達から資金を集めなくてはならない。特に、M&Aがほとんどなく、IPO市場も小さい日本市場では、起業家が、シリコンバレーのように莫大なExit資金を手に入れることが難しいため、資金力のある個人投資家が育たず、起業経験のないサラリーマンVCの方が圧倒的に多い市場です。

彼らは、0から1を作った経験がないので、その世界が全くわからない。人はわからないものに対しては、不安を覚えます。当たり前ですね。暗闇に恐怖を覚えるのが当たり前なのは、先が「見えない」から。人は見えないもの=分からないものとして扱うので、不安を覚え、勇敢に立ち向かうことはできない。ジャングルに放り込まれても同じですね。全く舗装されてない獣道やその道すらないところを歩きながら、ジャングルを突破しなければならない。普通に考えて、怖いのだから恐る恐る行きたがるのが、一般的な人のサガです。

以上の話を理解すると、先行者の話との関係性が見えてくると思います。先行者は、まさに、暗闇の世界、ジャングルの世界を全く恐れず、果敢に挑んで、「道」を作り上げていくわけです。しかし、道を作るには金がかかる。その金の出し手であるVCには、0から1の世界における「暗闇」と「ジャングル」が不安な存在にしか見えないから、なかなか渋ってお金を出さない。そのような非常に苦しい世界の中で、先行者達が道を作る。しかし、その時点ではヘトヘトである。行かんせん、VCが金を出してくれない。

そこに、道ができてくることで、VCも「ああ、ここには、ないと思っていた新たな市場があるんだ」と安心感を覚えて、資金を出し始めるが、ここからが重要なポイントです。傷ついた先発組には出資せず、真っさらでまだ元気いっぱいな後発組に資金を出す。すると、後発組は、先発組より圧倒的に低いマーケティングコストと資金調達の労力で市場を開拓して行くことができるわけです。これでは、先発組が全く報われないですよね?

現に今まで報われて来なかったのです。これこそ、資本主義社会における最大の問題点の一つです。

しかし、資本主義を終わらせるために登場したブロックチェーン産業のプロジェクトは違います。彼らは初めからVCの存在を無視して、資金を獲得し、成長している。ビットコインなどは典型的であり、ICOで資金を集めたイーサリウムもそうですね。いずれも、ユーザーのモメンタムを直接受け取りながら、成長しています。ここには、VCは全く資金面で貢献していない。ドラゴンボールに出てきた「元気玉」のように、ブロックチェーンの描く未来に可能性を感じた個人が、少しずつお金出すことで、ソフトウェアの開発と維持に必要な、時としてそれを超える額の資金が各プロジェクトに流れて行っています。ビットコインで言えば、2010年時点では、ほぼタダ同然の値段だった1BTCが、今や何十万倍、何百万倍という値段で取引されている。ものすごい資金を集めているソフトウェアがBTCなのです。しかも、BTCやイーサリウムを支持している人々は、皆、そのソフトウェアプロジェクト自体からは報酬はもらわず、ボランティアで動いて世界中に広めてきました。僕のこのLifeForEarthも、BTCやイーサリウムから全く報酬はもらっていません。と同時に、彼らに投資もしています。

BTCやイーサリウムが、VCや銀行の資金を当てにして事業を立ち上げようとしていたら、これだけ短期間で、このレベルに育つことは絶対になかったと考えています中間搾取者である彼ら、資金の出し惜しみや足手まといになることをしてしまうことで、成長の足枷が発生するからですね。完全にクラウドから、資金を集め続けて育てる方針を貫くことで、金融機関という中間搾取者を排除することが可能になる、つまり、資本主義を終わらせることができるということです。

僕のアルトのポートフォリオ戦略でも、基本、僕が定義した各カテゴリでも、常に1st Moverに、もっとも資金を投下するようにしています。その方が、2番手3番手に投資するより圧倒的に高いリターンが得られるからです。2番手・3番手に投資するケースは、1番手のプロジェクトリスクと同じリスクを持たない、別のリスクを負っている競合になりうるプロジェクトに投資することで、リスクヘッジをしています。この投資手法を実践するには、具体的な市場の潜在性そのものを自ら知覚するセンスが求められます。世の中を変えるための「0から1」を真剣に考え、実行し、成果をあげたきたものにのみ見える世界です。

以上、みなさんの参考になれば幸いです!

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