日本のVCがシリコンバレーVCから「銀行の融資」と変わらないとバカにされる「買取請求権」とは何か?

日本からは、決してGoogleやFacebookが育ってこない重要なカラクリの一つについて今日はお話しようと思います。このブログは、VCに対して声をあげることができない立場の弱い若い起業家の代弁も兼ねています。

買取請求権とは何か?

僕は、シリコンバレーと日本の両方で起業経験があるので、この実態をよく理解しています。通常、日本のスタートアップが、VCから資金調達する際、創業時は、転換権付き社債(コンバーチブル・ボンド)や転換権付き株式(コンバーチブル・エクイティ)という手法で出資をえることが一般的です。正確にいうと、一般的になりました、ですね。ちょうど2013年の3.11の頃、僕ら、日本の一部の起業家が、日本のVCの、投資契約内容のあまりの理不尽さに怒りを覚え、全員シリコンバレーで起業する動きをとったからです。日本のVC側も出資するベンチャーが日本からいなくなってしまったら商売干上がってしまいますからね。笑

ほとんどの日本人は、このような事実があったことを知らないと思います。

この二つの資金調達の条件が盛り込まれており、いずれも転換権ですが、将来的には、株式に転換することを条件にVCは出資します。その際の転換する株式の種類が、創業者などがもつ「普通株」ではなく、「優先株」という、普通株にはない特別な条件が色々と付与されている株式を彼らに付与します。

これ以外にも、優先株ラウンドをやるときの時価総額条件をあらかじめ決めておくキャップ条件や、その際に、よりリスクの高い先行投資していることへの見返りとして付与する株価のディスカウント率(10-30%が一般的)などがあるのですが、これらの点は、今日の本題とは直接は関係ないので、割愛しておきます。

詳しく学びたい人は、僕が起業家人生でもっとも信頼をおいている弁護士であり、同じ76世代として親しい友人でもあり、日本の仮想通貨市場とブロックチェーン産業を共にゼロから立ち上げた増島さんのブログを読むと良いでしょう。全て網羅的にまとめられています。

この優先株を発行する際に付与する条件で、シリコンバレーのVCでは絶対に話題に上がることはなく、一方で、日本VC側との交渉では、絶対に抜き取ることを許されない条項があります。それが、「買取請求権」と呼ばれるものです。

簡単に言えば、ベンチャーの創業者や経営陣が、VC側と経営面で対立が発生した場合、彼らが保有している全株式を買い取るという条項です。重要な点は、もめる条件定義にあります。僕がOrbを経営していた際は、僕のみ、買取請求権の対象になる「経営株主」という定義を行い、それ以外の社内の取締役は、買取請求権の対象にはならず、僕が全責任を追うことにしていました。そして、VC側のこの権利の発動条件は、「会社の経営存続に著しいリスクを与えたとき」としていました。そして、株価は、出資したときの価格です。つまり、出資額そのものということですね。5億円、VCから出資してもらっていたのであれば、その全額です。この内容は、交渉対象なので、起業家にとっては自分次第です。また、当然、優先株はどのVCも求めてくることなので、5億を5社から優先株で出資してもらっていたのであれば、全て対象ということです。

が、ポイントは、そこではなく、この条件の意味です。簡単に言えば、「全て買い取る義務を追う=実質、借金をしているということ」です。勘の良い人であれば、わかりますね?株式とは、投資する側が、0円になるかもしれない世界の投資です。元本返済が原則の融資とは違います。要するにハイリスク・ハイリターンということ。株式市場に上場されている銘柄をみなさんが購入する際、ソフトバンクの株を買うのに、「もし、ソフトバンクの経営がおかしくなったら、孫さん、僕の株式を、ソフトバンクの株価がそのときよりいくら下がっていても、買ったときの値段で買い取ってね。僕はそれでリスクゼロだから」という優遇条件ということです。かなり違和感のある話です。

なので、これが、シリコンバレーのVCが、日本市場に投資しない理由の一つと言われています。なぜなら、彼らは、「全然、それではVC本来のハイリスク・ハイリターン投資の世界ではない。担保が必要で、元本返済が必須の銀行融資と同じではないか。そのような投資家しかいない市場は、起業家を支える仕組みが充実しているとは考えられない。とてもGoogleやFacebookのようなベンチャーは育ってこないだろう」と評価されているからです。ちなみに、お隣の中国のベンチャー投資や今、中国の次に注目されているインドでも、買取請求権はありません。ですから、以前にも話をしましたが、シリコンバレーのVCは、中国には支店を構えていますが、日本には構えていません。彼らは、今、人口も増えており、インターネットインフラが急速に普及しているアジアへの投資をものすごい加速させているのですが、投資先市場として、明確に「ただし、日本を除く」と明確に宣言しています。

日本の起業家の多くは、このような事実を知らないまま、起業することが多いです。僕はこの事実を知っていたので1回目の起業は、シリコンバレーを選択しました。2回目のOrbは、日本を選択した理由の一つは、この買取請求権の条件が、先ほど話したをした3.11後の日本の起業家側の内乱をキッカケに日本のVC側が譲歩してきたからです。それでも、いまだに存在していること自体が、許されないことだと考えています。

自分たちの努力不足を起業家に責任転嫁する日本のVC達

なぜ、この「買取請求権」がいまだに日本のVC市場から消えることがないのか? 答えは、「VC達が全く努力しないから」です。

日本のVC達が買取請求権を要求する理由は、何かと言えば、まずは「ファンドの有効期限」があるからです。インターネット産業に投資するファンドで、有効期限は10年です。エクステンションと言って、もうプラス10年延長できる条件をつけているファンドもあります。

ファンドの募集が開始してから10年です。お金が集まってくると目標額(例:100億円)に到達するまでに出資活動を開始するのが一般的です。そして、ファンドの満期が近づいてきたらどうするか?出資者にお金を返す義務があります。それがVCに出資する投資家との契約だからです。

ここが「買取請求権」と関わっているポイントですね。つまり、満期がきたからVCは起業家に株を買い取れと言ってくる。例えば、そのときにリーマン・ショックなコロナショックのような大不況が来ていてもです。容赦なしですね。僕は、この買取請求権が原因で自己破産した起業家も知っています。

ここまでの話を聞いていると「仕方ないのではないか」と考えている読者も多いでしょう。実に無知です。なぜ、僕が「努力不足」というのか。

アメリカでは、これと全く同じ環境ですが、VC達は「買取請求権」は契約に絶対に入れて来ません。なぜか?責任転嫁があることがわかっているからですね。起業家側が民事訴訟を起こした場合、陪審員制度で裁判の判決が出るアメリカですから、このVC側の理不尽な行為に対して敗訴する確率は高いです。

ただ、ポイントはそこではなく、アメリカのVCは、この問題を自らロビー活動を展開して解決したのです。2011年に施行された「Jobs.act」はその成果でした。IPO条件が厳しいアメリカでは、IPO以外のベンチャーのエグジット方法としてM&Aが豊富にあります。しかし、それでも十分ではない。そこで解決案として出てきたのは、IPOより手前で、一定の資格(正確に言えば、2500万円以上の投資資産を持っていること)を持つ投資家(=Acreddit Investor)であれば、未上場のベンチャーの株式を売買できるという仕組みです。

これによって、アメリカでは、これらの銘柄を扱う様々なセカンダリーマーケットが登場したことで、この問題は解消されつつあります。さらに、仮想通貨のトークンを利用した法規制の検討も進められています。

一方、日本VCはというと、、、「何もしていない」に等しいですね。僕は、その点を金融庁「フィンテックベンチャーの有識者会議」に委員として参加した際に、如実に実感しました。日本ベンチャーキャピタル協会という日本のVCの団体の幹部が同じ委員メンバーに入っているのですが、全く資料も用意しこない。なので、僕が自らこれらのペインポイントを指摘しました。そうしたらようやくVC陣から発言ができてきた。なんと情けない。

結果が出ていないというのは、何もしていないのと同じです。当たり前ですが、結果が出るから世の中はよくなる。

日本のVC達の大半は、IPO基準が日本は緩いから特に問題がないと言ってくるアホがいるのですね。それが原因で、日本のスタートアップエコシステムが育たないのですよ。なぜか?

起業家がIPOばかりしてしまったら、「アクティブ」なエンジェル投資家が増えないのですよ。この「アクティブ」がポイントです。シリコンバレーには、3万人を超えるエンジェル投資家がいます。彼らの大半は元起業家です。M&Aが多いから、元起業家のエンジェルが増えるのです。これが次世代の起業家を確実に育てます。前から言っていることですが、日本のVCやコンサルや金融業界上がりばかりなので、0から1の世界を一ミリも理解していません。なので、ベンチャーに対する支援能力がゼロです。一方、シリコンバレーでは、イグジット実績を持つ元起業家のエンジェルが豊富におり、これが創業間もないベンチャーに出資+サポートすることで、ベンチャーの生存確率が高まります。

しかし、日本は、IPO基準が緩いがため、ほとんどのベンチャーがIPOに行ってしまう。すると、起業家は会社を離れることができません。大株主でもあるから経営陣として留まることを他の株主からも求められる。すると、「アクティブ」なエンジェル投資家として実質的に活動できない。わかりやすくいうと、会社経営に忙し過ぎてベンチャー支援に十分時間が取れないのです。だから、次世代の起業家が育たない。つまり、IPO条件を緩くしていることは、完全にスタートアップエコシステムの成長を妨げる悪循環を引き起こしているのですね。

僕は、日本で、ベンチャーのM&Aを活発させる化させるために、赤字企業(=ベンチャー)の買収に対して特別税控除をするべきだと考えています。しかし、日本のVC達には、こんな発想すらありません。経産省出身の元官僚のVCもいながらです。官僚なのにと、ビックリしました。本当に「茹でガエル」になりたいのだなと。

しかし、彼らの究極の本心は「既得権益者」になりたいのですね。なぜか? アメリカのようにM&Aやセカンダリーマーケットが隆盛してくると、日本のVC業界では幅をきかせている彼らのようなコンサル・金融出資のVC達は、ますます肩身が狭くなるからです。シリコンバレーでは、現に、コンサル・金融あがりのVCは基本、起業家から相手にされません。支援能力がないからです。0から1の世界を経験もしていないし、経験する根性もないのだから当然ですね。

結果、シリコンバレーのVCからは、「あれは、VCではない。銀行だ」と批判されているわけです。

最後の望みであるICOも二件のハッキング事件と日本VC達の金融庁へロビー活動で潰された

ということで、僕は、日本のVC業界など期待するだけ無駄だと考えていたので、壁を突破できる唯一の手段は、究極のクラウドファンディングであるICOないしはIEOしかないと考え、ロビー活動を展開していました。なぜなら、仮想通貨を利用したトークンエコノミーにおいては、優先株の概念が一切なく、世界中から資金を集められるからです。イーサリウムが考えだしたICOが、なぜ、これだけ多くの市場の支持を集めたか?と言えば、既存のシリコンバレー以外で活動する起業家たちの苦悩を解決できる非常に優れたソリューションだったからですね。僕は世界中の起業家に友人ネットワークがあるのでよく知っているのですが、シリコンバレー、中国、インド以外は、皆、中身に多少の違いはあれ、上で述べたと同じような問題を抱えています。なので、僕は、Orbを経営中も金融庁にICO規制に対して、柔軟に対応するよう何度も働きかけをしていました。その点は、「こちらの記事」にまとめています。

しかし、その可能性も、2018年に起きた二件のハッキング事件によって、完全に潰されました。これが、僕がCoincheckやZaifに激怒している理由の一つです。詳しくは「こちらの記事」にまとめています。僕がリーダーシップを取って作り上げたきたものを全てご破算にされたのですから当然です。さらに、酷いことは、日本のVC達ですね。実際に起きたことでいうと、僕も2017年、Orbを経営中に実際にICOを計画していました。イーサリウムなどを研究しながら、Orb DLTもプライベートブロックチェーンのBaaSですから、トークンエコノミーをデザインし具体的な仕組みを考案していました。そして、その開発資金をえるため、9億円のSeries Aラウンドを進めていましたが、積極的に出資希望の売り込みをかけてきたグローバルブレイン社とそのうち、4億円の出資協議をほぼまとめてかけていましたが、突然、彼らが、優先株条件として「ICOの拒否権をよこせ」という要求が出てきました。当然、そんなことをしたらICO計画が実行に移せないリスクを自ら作ることなるだけでなく、他に出資してもらっている投資家の優先株条件の公平性を考慮すると、当然、グローバルブレイン社のみに拒否権を与えることは他の投資家ともめる種になり、場合によっては、既存の投資家から買取請求権を発動されるリスクもあります。ですから、経営判断として、僕は断りました。すると、彼らは僕らから突然去っていった。

そして、極めつけは、その後、驚いたことに、グローバルブレイン社が、OmiseGo社と組んで、ICO投資を始めたことですね。なんとまあ、無責任な連中なことか。

さらに、大半の日本VCが酷いのは、このCoincheckやZaif事件を材料に皆ICO・IEOに反対していることです。本音を隠して、色々と客観的なコジツケの理由を与えながら。なぜか?今まで優先件を株式をもつことで獲得していた自分たちの有利な立場が全て失われるからですね。ICOやIEOが普及した世界では、資本主義社会における「中間搾取者」としてのVCは不要です。。アンドリーセン・ホロウィッツなどは、このICOのトレンドに機敏に反応して、すでにVCの立場を捨ててきていますが、相変わらず、根性のない日本のVC達は、政治力を使って、世界全体で起きているイノベーションの流れに逆らう行動を取り、自ら変わる努力をせず、既得権益を守る方に動いている。

みえてきますか?だから、日本のVCはシリコンバレーからバカにされ、さらにそれだけでなく、それが原因で、日本のテックスタートアップは、シリコンバレーのVCから出資対象から外されているのですよ。これに怒りを感じない奴は、頭がおかしいと思います。

結局、ツケを払っているのは、回り回って一般の日本人であることをよく理解すること

なぜか?皆さんは、VCをやっている人の給料を知らないと思います。例えば、50億円のVCファンドを運営している場合、1から2%の年間の管理手数料と5-10%の成功報酬を受け取ることが一般的です。50億円の2%は、1億円です。例えば、全体で五人のチームで運営している場合は、一人平均は年間2,000万の報酬ということです。実際には、ゼネラルパートナーというファンドの組成者がもっとも多く報酬をもらい、アナリストや秘書などが低い報酬をもらいます。50億円のファンドであれば、パートナーは二人ぐらいが一般的で、秘書が一人、現場の細かいサポートやベンチャー分析、LPに提出するレポートなどを作成するアナリストが2名、計5名ぐらいが一般的です。成功報酬は、ファンドがあげたリターンが原資になります。大半のVCファンドは、1つのファンドで10年満期が一般的です。インターネット産業とかはベンチャーの成長が早いので、その分、資金回収も早く、10年ものが多く、メディカルやバイオ系などはベンチャーの成長に時間がかかるので20年ぐらいのファンドが一般的です。

そして、成長しているVCは、複数のファンドを同時に運用します。初めは一つから開始しますが、そこからパフォーマンスが出てくると、二号ファンド、三合ファンドとファンド数を増やして行きます。当然、それぞれに管理手数料が発生します。ということは、仮に50億円のファンドを3つ運営しているVCの場合、そのゼネラルパートナーは、一つのファンドから管理手数料3,000万を年間もらっているとした場合、年収が1億近くに達している可能性があるということですね。VC稼業というのは、いわゆる資本主義社会における「中間搾取者」なのです。当然ですね。投資家から預かった資本をどこに流すかを決める権力をもちつつ、高給取りなのですから、中間搾取者以外の何者でもない。

ただし、ここにもシリコンバレーとの差があります。たとえば、元起業家のマーク・アンドリーセン率いるアンドリーセン・ホロウィッツの場合、ゼネラルパートナーのマークの管理手数料における報酬=彼の給料はゼロです。成功報酬のみで10%です。彼は自分が給与を受け取らない分を、スタートアップを支援するための事業開発系人材をVCファンド内に雇うことで、スタートアップの成功確率を高めるようにしています。いかに、彼がリスク投資に対して真剣に望んでいるからがわかるでしょう。

このようなシリコンバレーからは、当然、GoogleやFacebookが育ってくる訳です。みな、目先の小銭稼ぎなど興味は一切なく、真剣に世界を変えるためのテクノロジーベンチャーを育てあげることに取り組み、その結果、そこに大量の優秀な若者が雇われ、その中から、また次のGoogleやFacebookを生み出す起業家が、優れた現場経験をGoogleやFacebookの中で積んでいくことで、大量に生まれていく、強力なポジティブスパイラルが働いている訳です。

そのような企業がほとんど育ってくる地盤のない日本市場は、当然、若者にとってはますます辛い社会になっていく訳です。結局、日本社会は、世界を救う天才を育てる気がないのですね。その点は、「こちらの記事」にまとめています。

シリコンバレーと異なり、日本では、VCのパートナーたちが、リスクも全く取らず高給取りである一方、GoogleもFacebookも育ってこない中で、日本の若者は、団塊の世代の雇用を守ろうとする伝統的な日本企業に、派遣労働者やアルバイトとして、雇用され、心身をボロボロにしていっており、追い詰められた若者の一部は、秋葉原の通り魔事件のような世の中に実際の怒りを持って報復する行動をとってしまう。

全ての原因は、日本人の多くの中にある「事なかれ主義」が原因です。正しさを貫く勇気がない、世の中を正す勇気がないと、そのためにリスクを取る勇気がないと、結果的に、周りがどんどん腐敗していき、やがてその腐敗は、自分の身にも降りかかってきて、最後、家族もろとも沈んでいくことになる。因果応報です。

なので、僕は、もう「東京」を捨てました。希望がないからですね。その本質は、映画「天気の子」で語られている通りです。詳しくは「こちらの記事」にまとめています。

以上、みなさんの参考になれば幸いです。

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