ヤフーによるLINE経営統合によって加速する対楽天モバイルの垂直統合戦略、アマゾンの今後の動向に注目

以前から、このブログで「必ず動く」と伝えてきたことがとうとう実現しましたね。今回の情報リークの狙いは、別に記者がすっぱ抜いた訳でもなく、互いの経営陣の合意の元、その下の社員に対して、本決定時に起きる動揺を緩和するためのマネジメント対策の一環だと見ています。ですから、「月内合意を目指す」と言っている時点で、あとはドキュメントワークが残っているだけで、条件面はほぼ合意済みと見ています。

 

僕が、数ヶ月ほど前に、ソフトバンクグループがLINE経営統合に動くと予測した記事は、「こちら」になります。これ、書いたときは、あんまりPV稼いでいなかったですし、他のメディアやインフルエンサーがネタとして取り上げることもなかったので、見えていたのが僕ぐらいなのでしょう。

そこでまとめたように、ソフトバンクグループが、LINEを欲しがっていた最大の理由は、5G時代の競争における楽天モバイルに対抗するためです。楽天が1,000億円で手に入れたViperは日本国内でも確実に成長しており、そこに、楽天ポイント、Viperそして、楽天モバイルを組み合わせることで、楽天経済圏のネットワーク効果は、日本国内のどこのEコマースプラットフォームよりも強力なレベルに到達します。

孫さんは、これに対抗するためビジョンファンドをはじめとする圧倒的な資金調達力を武器にした「郡戦略」を展開し、楽天モバイルに対抗する戦略を展開していました。その一つ目が、上のブログでも話をした、ソフトバンクモバイルのIPOであり、その資金を使ったヤフーの連結子会社化だったわけです。しかし、それでも事業ポートフォリオ的に欠けていたパーツが、SNSでした。楽天にはViperがあります。だから、LINEが欲しかったのですね。LINEを日々使っているユーザーであれば実感できると思いますが、今や、LINEのオンラインコマース、オフラインコマースにおけるコミュニケーションハブとしての役割は不可欠のものになってきています。そこをリプレイスしたい楽天は、Viperを着実に国内市場でも育てて来ている。LINEとしてもここは脅威であり、彼ら自身もなんとか自力でコマース事業を立ち上げようと頑張って来ましたが、なかなか立ち上がっていない。その辺りは、「こちらの記事」にまとめています。だから、LINEにとってみても、今回の話は悪くない。

これは、孫さんだからこそ成せるディールと断言できます。孫さんは朝鮮系の起業家であり、LINEの親会社のNaverは韓国企業だからです。日韓の政治関係がこれだけ冷え込んでいる渦中で、この商談をまとめ切った孫さんの交渉力は凄まじいレベルのものを感じます。

これと同時に、NTTドコモとAUは、5Gモバイル競争では、完全に置き去りが確定しましたね。はっきり言って、5G競争が本格化する2020年から2022年の間に間に合わせる形で、この垂直統合の事業リソースを完璧に揃えてきているソフトバンクモバイルと楽天モバイルの前には、全く勝負にならないでしょう。

また、以前あったZOZOの買収について、ここで僕の所感を述べておくと、楽天モバイルへの対抗戦略としては、ヤフーショッピングへのEコマースの事業ポートフォリオ拡充という目的ではそれなりの効果を得られると思いますが、今のEコマースの主流は、シェアリングエコノミーなので、むしろ、メルカリにとっての最大の競合であるヤフーオークションの事業リソースの方が、楽天市場に対抗していく上で事業価値が高いと思います。ですから、孫さんとしては、前澤さんが、ソフトバンクモバイルIPO後の資金が豊富にあるタイミングで相談をしてくれたので、「郡戦略」に加える経営判断をしたと見ており、圧倒的に欲しかったのは、間違いなくLINEの方です。ですから、ZOZOのディールは、どちらかというと前澤さんが受けた恩恵の方が大きいです。

さて、今後、日本のEコマース業界が、この5G競争とシェアリングエコノミーの隆盛で、どこまで再編していくか?もちろん、気になるのは、アメリカ企業でありながら、日本最大のEコマース企業であるアマゾンのこのニュースに対する呼応ですね。そして、何より、孫さんが賢いのは、このことを既に見越して動いている点です。

以前のブログでも伝えていることですが、アメリカで既に買収したスプリントにTモバイルを経営統合する案件を進めている中で、Tモバイルの格安SIM事業をアマゾンに事業譲渡する商談を進めているからです。仮に、アマゾンが、このソフトバンクと楽天モバイルの5G競争の影響で、日本のEコマース市場におけるシェアを落としたとしても、アメリカでヤフーや楽天が展開するモバイルキャリア契約とEコマースサービスを融合させた垂直事業統合モデルを展開することで、競合のEbay含めた他のEコマース企業のシェアを奪うことができるので、日本市場のシェア低下の穴埋めができるからです。つまり、いたずらにAmazonを刺激し過ぎて、スプリントとTモバイルの合併案件に支障が出ないように配慮して動いている。

場合によっては、このヤフーとの垂直統合戦略で得た成果をノウハウにし、Amazonとスプリント・Tモバイルの企業連合を作り出し、アメリカ最大のモバイルキャリアグループであるAT&Tの牙城を崩しにかかる対抗戦略を打ち出してくる可能性すらある。孫さんの考える「郡戦略」の本質を踏まえれば、自ずと想像できるシナリオの一つです。まあ、まだアマゾンの世界の最大競合であるアリババ株の26%をソフトバンクが持っているので、ジェフ・ペゾスが容易に話に乗ってこないと思いますが。笑

多分、孫さんが今のソフトバンクの時価総額に不満なのもそこだと思うのですね。「郡戦略」をベースにしたこういうダイナミックな施策がもっと柔軟に打てるようになるからです。日本で最大の時価総額を誇る今のトヨタの経営陣に同じ資本力を与えたところで、まともに使いこなせないでしょう。また、LINEが手に入ったので、次の打ち手としては、メルカリも「郡戦略」に巻き込むシナリオを考えると思いますが、これは、LINEのときよりはるかにスムーズな案件になるでしょう。なぜか?メルカリにとって、これは、彼らの助け舟になる話だからです。なぜなら、Yahoo!JapanのペイペイとLINEPayが連合を組むわけですから、メルペイはとてもではないが互角に戦えない。この連合に対抗できるのは、資金力と事業リソースの豊富さからみて、楽天スマートペイのみです。

ですから、楽天包囲網を作る目的で、孫さんの「郡戦略」に合流したいと考えるのは、素直な反応です。更に、ビジョンファンドのポートフォリオ企業を含めた、ソフトバンクグループの事業リソースを使って北米市場攻略の目処をつけたいとも考えるでしょう。なぜなら、メルカリは、以前から僕がメルカリにとって北米市場の攻略のカギである「コンマリ」を三木谷さん率いる楽天に持って行かれてしまいましたからね。その点は「こちらの記事」にまとめています。北米に出張した際に、メルカリのマーケティングを体感しましたが、超普通の物量作戦型マーケティングです。資金力で北米企業に劣る日本のベンチャーがあのようなマーケティングでは、まず持ってEbay含めた北米競合に勝てる見込みはない。テスラの秀逸なソーシャル・マーケティングを見ればわかるように、資金がなくても圧倒的に効果の高いマーケティングを実践しなければ、資本主義のメッカであるアメリカの企業には勝てない。とまあ、これは、「北風」的なビジネスの発想で、孫さんの「郡戦略」は、「太陽」戦略なのです。

だから、今回の経営統合が完了した後に、孫さんから話が行くよりも、メルカリの経営陣側から、孫さんに相談が行く可能性の方が高いと見ています。現時点で、メルカリの時価総額は3300億円とピークの6,000億円前後から半分近くまでに落ちていますから。主な原因は、北米市場攻略に手こずっている点とメルペイの普及が他の競合に比べて遅れていること。アリババ株の売却で手に入れた1兆2,000億円とソフトバンクモバイルのIPOで手に入れた2.4兆円を踏まえれば、拒否権を発動できる33.3%以上を手にする資金力は、LINEを手に入れた後も、まだ十分手元にあります。しかし、ソフトバンクグループの株価がもっと高ければ、もっと資金的余裕をもって「郡戦略」を推進していくことができるのは言うまでもありません。日本でもっとも経済力のある団塊の世代は、いまだにトヨタを応援しているわけですが、ソフトバンクを応援した方が、どれだけ今の日本経済は恩恵を受けることができることか。。。その点は「こちらの記事」にまとめています。

そして、メルカリが加わることで、既に郡戦略に加わったZOZOとのサプライチェーン強化が可能になります。どういうことか?ZOZOが、基本、新品のアパレル製品を扱うEコマースだからです。つまり、「川上」商売ということですね。一方、メルカリは、中古アパレルに強い「川下」です。だから、ZOZOで買った商品のメルカリへの出品手数料は、それ以外の10%に対して、5%などの永遠ディスカウントを提供すれば、お互いのLTV(顧客生涯価値、簡単に言えば購買力)が引き上がることになる。このサービスは、メルカリがソフトバンクの「郡戦略」に加わった段階で確実に実現してくると見ています。技術的には大した話ではないからですね。ZOZOで買った商品をメルカリに出品するときだけ、特別な商品IDを付与すればいいだけです。それでトラッキングできます。もちろん、ヤフーオークションでもできます。このサービスを実現するために、ZOZOで購入した商品をヤフーオークションやメルカリに出品する際に、出品手数料0%キャンペーンもやってくるでしょう。常套手段です。こうすることで、「川上」としての楽天市場と「川下」としてのフリルをもつ楽天グループに、ソフトバンクグループは対抗していくことができるのです。

率直に思ったのですが、ソフトバンクホールディングスが、Alibabaの株式も保有している点を踏まえると、アジア太平洋地域の政治経済の秩序安定に、孫さんが相当貢献しているということですね。多くの日本人はこのことが全く見えていないと思います。スプリントとTモバイルの統合を実現するために、トランプ政権と直接掛け合い、トランプ政権の保護経済政策を具体的に支援したり、今回のLINEの親会社であるNaverとの商談まとめにも、韓国の文大統領に事前きちんと断りを入れることで、冷え込んでいる日韓の政治経済関係が更に悪化しないよう配慮しながら動いているからです。そして、「郡戦略」をとることで、Naver側にも不必要に敵対心を持たせないようにしている。

以前に、別のブログでも指摘していますが、孫さんの行動は、本来は、日本政府がやるべき役割なのです。大国である中国とアメリカの間に位置しながら、絶妙なシーソーゲームを展開することで、アジア太平洋の平和均衡が崩れないように動くこと。東洋のスイスとしての役目ですね。明治天皇亡き後の戦前の日本の官僚と軍部は、大バカ者で、日露戦争で見事にやりきっていた大国間のシーソーゲームの外交ノウハウを全て捨てて、自分達が大国である勘違いして(本当は超貧乏なのに)、ただひたすらアホみたいにストレートな帝国主義をアジア太平洋地域に展開して、中国とも対立し、アメリカとも対立し、挙句の果てに、太平洋一帯を血の海と化した。そして、戦後は、日本の帝国主義が原因で起きた朝鮮半島の南北分断、中国の共産主義化、それに伴う東南アジアへの共産主義化の波及に対して、日本は、国際外交的にはほとんど貢献できず、その間、ただひたすら金儲けをして、それらの問題は、日米同盟をベースにほとんどアメリカに頼りきりだった。そして、今度は、経済復興で金が手に入ると、その三菱地所のロックフェラーセンターの買収に始まり、アメリカに対して牙を向くようになった。そして、「昭和」が終わり、バブル経済は崩壊し、「平成」になっても変わらず、結果的に「失われた30年」を生み出した。一体、いつになったら、自分達の行いの愚かさから本質的に学ぶのか。その点は、「こちらの記事」にまとめています。

このようなシーソーゲームを展開する外交力が、今の日本政府の外交力より、孫さん一人の外交力の方が勝っているというのが、今の日本の現状ということです。

ということで、僕が、次に孫さんの動きで注目しているのは、アマゾンのジェフ・ペゾスとどう渡り合うかですね。ソフトバンクモバイルVS楽天モバイルの垂直統合戦略によるEコマース事業の競合関係の中で、完全にニッチプレイヤーに追い込まれるリスクが出てきたメルカリは、もはや、余裕の射程圏内に入っているので、中国のアリババ株の26%を保有する大株主として、また、北米市場の攻略を進めている中で、現時点で、世界最高の時価総額水準のアマゾンを率いるジェフ・ペゾスと、今後、どう向き合っていくのかに注目しています。

あと、細かい話ですが、ソフトバンクと楽天が資本関係をもつことは、絶対にないです。孫さんと三木谷さんのライバル関係が、日本のインターネット産業を活性化させるからです。大量の競合は無益な争いを生むだけですが、2社という競合の数は、市場の発展を促すには必要最低限の数なのですよ。これも歴史から学べることです。くだらない妄想ブログや動画に惑わされないように。

以上、みなさんの参考になれば幸いです。

 

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