マスター・オブ・スケール – PayPal共同創業者兼元CEO ピーターティールのインタビュー#10

ホフマン:大規模に成功するビジネスの多くは、利益から数年は遠ざかるものだ。アマゾンなんかは、かれこれ20年近く利益が出ていない。ウォール街の連中から時折出てくる不満の言葉を無視してね。彼らは、お金のことしか眼中にないから。事実、彼らは、リテールセクターの次から次へと競争からの自由を獲得して言っている。

君は、PayPalは、この勝負を乗り越え、安息の日を迎えられたと思うかもしれない。しかし、実際、”落ち着いて、ピーター。僕らは、もうスピードの世界から逃れることができたよ。この10億円の小切手にサインすればそれでしまいさ。”と言ったことは一度もなかった。終わりがない中で、不安を抱えていた。

僕らの不安は、ある真実によるところが大きかった。スピードの世界から逃れる、ということは、固定のスピードの世界ではないということだ。それは、常に、そして、未来永劫、君の競合によることが大きい。君にとっての最速の競合が、君が、どれだけのガスを消耗するかを決めるのだ。

ピーターは、シリコンバレーのスタートアップの多くが、これを派手にやりすぎていると考えている。

ティール:ポスト2000年は、主に事後議論の話だが、急速にスケールさせるべきではないというものだった。また、早くやるべきだが、早すぎてはいけないというものだった。もし、君が、急速にスケールさせた結果、ビジネスが失敗に終わったと考えるのなら、ポスト2000年のベンチャーで生き残っているのはごくわずかだ。だから、おそらく、2015から2016年の時点で、人々はようやく1999年から2,000年の後遺症から回復したってことかな。しかし、君がスケールすることについて考えると、明らかなことは、たくさんのビジネスがゆっくりとスケールするということだ。君は、早く成長しすぎているビジネスの多いと考えるかもしれないが、過去17年で、急激に成長しすぎている事例は、驚くほど少ない。

ホフマン:競合が、いかに迅速に君に忍びよっているか? Airbnbの共同創業者でありCEOのブライアン・チェスキーは、これ関する逸話を持っている。今や、ブライアンは、全く新しい一風変わったゲームを生み出した。彼は、本当に一社の競合もいなかったのだ。

もし、君が、このマスターオブスケールを定期的に聞いてくれてているなら、僕の初期のAirbnbに対する反応を思い出すはずだ。見知らぬ人が、見知らぬ人の家に滞在するというアイデア。

ホフマン:誰が、他人のための自分の部屋を貸すだって?そんなことをする狂った連中は一体どこにいるんだ?

ホフマン:心に止めておいて欲しいのは、このセリフが、Airbnbに投資した人物から出ているということだ。幸運にも、この貸す側も借りる側も全く気違いなんかじゃなかった。今や、君は、彼らを世界中に見つけることができるだろう。ブライアンと共同創業者は、余分な部屋と空いている家のeBayを発明したんだ。そして、新手の競合がこの市場に現れてくると、Airbnbは、素晴らしいスピードでスケールした。ブライアンは、2011年の中間に、スピードの世界から逃れる状態に入ったと考えたようだ。彼らにはユーザーもいて、投資家もいた。彼らには競合はいなかった。だから、当然、それは起きたわけだ。

ブライアン・チェスキー:そして、突然、コピープレイヤーが現れ出したんだ。だから、僕らは、グローバルに急速に拡大しなければならなかった。

ホフマン:ブライアンが、”クローン”と言っているのは、ヨーロッパやアジアで、Airbnbと同じようなことをやる競合がどんどん出てきたということ。彼らは、ドイツにある巨大企業のロケットインターネットに支援されていた。ブライアンは、同じくAirbnbに出資していたマイク・モリッツの聖人的な助言により、競合の脅威を察知した。そして、ブライアンと彼の共同創業者たちは、マイケルをAirbnbの本社に招待し、Airbnbの事業拡張戦略を説明した。当時のAirbnbの本社は、アパートの一室だったけどね。

チェスキー:僕らは、彼の靴を脱がせようとしたんだ。これが最高に面白いエピソードだった。彼は、”なに?”という感じでね。笑 彼は、僕らのようなアパートのオフィスに行くことは慣れていたんだよ。だから、何をしやがやるんだ、こいつはという感じ。そして、僕らは、彼からアドバイスをもらった。僕らの海外展開には二つの選択肢があった。僕らは、アメリカンフットボールの街に行くか、普通の海外展開をするか。フットボールの街は、基本的に、アメリカの街のどれぐらいのサイズに相当するのだろう。

そして、僕らは、セント・ルイス、ボルチモア、ボストン、そして、シカゴに事業を拡大した。もちろん、他の選択肢もあった。マイク・モリッツは、こう言った”旗を立てろ”と。”どういう意味ですか?”と聞いた。すると、”世界の中でもっとも重要な市場をピックしなさい。そして、それを失った時のことを想像してごらん。君にとって失いたくないのはどちらかな?” そして、僕らは思った。”ロンドン、パリ、バルセロナだ”と。まず、ヨーロッパだなと思った。アジアはその後だ。ブラジルの”Rio”もだ。そして、僕らは、旗を立てることを始めたんだ。

ホフマン:僕は、ブライアンが、高速にヨーロッパに旗を立てていくのを見た。彼は、文字通り、けんけん遊びをするように、ヨーロッパの主要都市を一つつ一つ飛び跳ねていき、ユーザーを獲得するために悪戦苦闘した。究極的には、かなり狂ったアイデアというのは、君は、競合から称賛のときを買っているだけなんだ。それが機能するとわかった途端、君の背中には、もう競合がついてきている。

そして、2000年の初頭には、eBayが、ますますPayPalの競合になっていった。彼らは、僕らをイライラさせることは全てやってきた。例えば、売り手が、支払いをVISAのクレジットカードで受け付けた場合は、売り手側の手数料をゼロ円にするなどだ。誰がわかろうか?ただ、将来的に、彼らは僕らをeBayから追い出すかもしれない。そして、その日は決して訪れることがなかった。なぜなら、僕らは、すでに究極の、スピードから逃れる世界の計画に辿りついていたからだ。

僕らは、PayPalをeBayに1500億円で売ったんだ。そして、このオンライン決済の競争の世界から抜け出したということ。なぜって?

もし、君が、新しいゲームを発明し、それを手探りの中進めて、そのゲームのマスターになり、そして、幾何級数的な成長を起こし、スピードの世界から逃れる状態まで辿りついたとき、それらの全てのあとでさえ、まだ、君は、地上に叩きつけられるかもしれない。君は、この古い格言を常に頭の片隅においておいた方がよい。”彼らを打ち負かすことができないのなら、組めばよい”

そして、それらの強烈な辛い仕事の全てのあと、その苦い薬を飲まないといけない。ただ、会社を売るだけだろって?僕らは、その決定には、まだ疑問符がついていた。

 

つづく。

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