Squareが必ず仕掛けてくるDeFi – BTCを担保にしたトランザクション・レンディングとは何か?

また、未来予想の記事を書こうと思います。これ自体は、僕が経営していたOrbで構想していたことですが、おそらく、Squareがまず一番にやってくるとみています。

Squareのビットコイン販売が順調に成長

まず、ここから。ビットコインの熱烈者支持者であるシリコンバレーの著名起業家ジャック・ドージーが率いるSqaureが提供しているCashという個人向けマネー送金アプリがあります。PayPalが買収したVenmoとほぼ同じアプリですね。自分のデビットカード・クレジットカードを登録して、個人間の送金などができ、レストランでの割り勘払いなどで人気が出ました。現時点で、北米市場のみで展開しており、2018年時点で、1500万の月間アクティブユーザーをもつなかなかの人気アプリです。今、Sqaureは、ここで、ビットコインの販売サービスを提供しています。

昨年比で244%の売り上げを伸ばしています。特に今年の2Qと3Qで一気に伸ばしており、彼らのマーケティングキャンペーンもあると思いますが、同時に新規ユーザー買いが大半を締めるということで、2017年以来のBTCの一般個人におけるモメンタム回復が起きていることが実感できます。

トランザクション・レンディングとは何か?

そして、もう一つ、今回のDeFiの話と関わってくるSquareの重要なプロダクトが、トランザクション・レンディングです。このブログの記事をほとんど読んでいる人であれば、もう何のことかすぐわかると思います。

まだ知らない人のために、おさらいすると、トランザクション・レンディングは、もともとは、中国のインターネット産業のリーダー的企業であるアリババの金融事業部門であるアリペイが作り出した新しいビックデータを活用したAI型の低金利融資モデルです。中国では爆発的な人気を持ちます。データ分析に活用する対象は、中国最大の楽天市場と同じ企業であるオンラインマーケットプレイスのアリババの店舗別の購買データです。小売業界ではPOSデータとも言います。そのデータを深く分析すると、売り上げ予測もできます。ここに融資事業の機会があることを見抜いたのが非常に優れており、特定の商戦期などに短期融資をして、プロモーションをかければもっと売り上げが伸びるであろう店舗があることに気づいた。しかし、彼らには、銀行はお金を貸してくれない。理由の一つは、オンラインショップは事業規模が小さすぎるため、銀行側が、リスクが高いと判断し、そもそもお金を貸してくれない。また、貸してくれても金利商売だから、長期間のローンを組まされる。すると、不要なぐらいの資金を与えられ、高い金利を払わせられる。これは、オンラインショップ側からしたら完全にペインポイントです。

そこに、アリババは、店舗別の売り上げ予測に基づく低い金利で短期返済可能なローンプログラムを提供し、これが爆発的にヒットします。特にアリババは、銀行のように金融業だけで収益をあげているわけではないので、このような商品を出すことがビジネスモデル的になんの痛みもないのですね。特に、大半の店舗はプロモーション費用を借りることが多く、すでにどの程度、アリババのサイト内でプロモーションすれば、どれぐらい売り上げが上がるか予測ツールをアリババが提供しているため、返済の目処も立てやすいわけですね。すると、アリババ側もデフォルトリスクが下がるため、低い金利で貸してもリターンが得られる。そして、金利設定や融資条件設定は、AIにやってもらっているため、人件費を低く抑えて運用することができます。これらを強みに、アリババが発明したトランザクションレンディングは大成功を納め、今や楽天やアマゾンもコピーしています。

そして、次の課題は、この融資のための資金集めです。そこでAliPayを始めたのですね。AliPayに自分のカードを登録して、アリババで買い物できる電子マネーをチャージして利用するので、チャージした現金分は、AliPay側が管理します。つまり、AliPayは銀行のようにこの電子マネー化された現金を上のトランザクションレンディングの融資資金として活用できるわけです。ここがポイントです。今回の記事の革新点をついています。もちろん、過剰な貸し出しは危険ですから、デフォルト率などを見ながら、金利は微調整されていきます。つまり、ほぼ銀行に近いのですが、決定的な違いは、このEコマースプラットフォームを持っているが故、既存の銀行の融資モデルよりはるかに精度の高い優れた融資モデルを実現できたわけです。

また、このトランザクション・レンディングが生み出す「ネットワーク効果」は強力です。店舗が、お金を借りてくれ、その資金を使ってプロモーションをかけてくれれば、当然、アリババ側のプラットフォーム収入が増えます。なぜ、増えるか?と言えば、ユーザーがアリババでたくさん買い物をしてくれるからです。そして、この買い物にAliPayを使います。AliPayにお金をチャージして使うわけです。すると、ユーザーのAliPayの利用頻度が上がるため、ユーザーは、AliPayに積極的にお金をチャージしておいておこうとします。ここへのインセンティブも当然あり、それは、AliPayが加盟店に提供するトランザクション・レンディングが稼ぎ出す金利収入です。この金利収入は、当然、アリババ側の収益にもなります。つまり、このレンディング・メカニズムによって、アリババは、Eコマース事業自体が育っていくネットワーク効果を手に入れたのです。これは強力なネットワーク効果です。

そして、このトランザクション・レンディングをオフラインコマースの市場に持ち込んだのがSquareなのですね。今までオフラインのトランザクションレンディングを事業化することは難易度が高いと考えられていました。最大の問題は、POSシステムで、旧態依然としていることから、なかなか新しい仕組みについて来れない。ビックデータの共有化が進んでいない市場です。僕もOrb時代に、POSメーカーの東芝や富士通、NECなどとこの話をしましたが、彼らは、全然ついてこれない。しかし、Squareは、自らPOSのハードウェアと決済デバイスを提供することで、このデータをオンラインEコマースの場合と変わらないレベルのデータを取得できるようになったのですね。

SquareのPOSと決済システム – リースでの導入も可能。店舗側の導入コストを極力下げている。

以下は、僕がOrb時代に考えていた事業構想のまとめたものです。中央にあるのが、Squareが始めたオフライン向けのトランザクションレンディングです。Squareは、今は、北米市場だけでこの事業を展開していますが、大成功しています。何より、銀行が決して手に入れることができない与信データを元に融資していますから、差別化がバッチリ効いておりほぼ無敵に近いです。


参考までに、僕は、地銀には、Orb DLTを使ったステーブルコイン型地域通貨の加盟店と利用ユーザーを獲得することで、Squareと同じトランザクション・レンディングのモデルを提案していましたが、その先に見えている「サプライチェーン・レンディング」についても彼らに提案していました。これは、2017年からビットコインをデジタルゴールドと僕が言い出したのと同じで、僕が作った造語です。中身は、経済圏内の企業同士のネットワーク関係を土台に、弱いカテゴリの企業領域に融資して上げることで、経済圏内のサプライチェーン構造が強化され、逆に強いカテゴリが更に伸びるという副次的な効果が得られるレンディングモデルです。経済圏全体して栄えていくという発想です。相場の言葉に「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉がありますね。あれをビックデータを使って意図的に作り上げるのが、僕が考えていたサプライチェーン・レンディングの骨子です。加盟店同士のデータ共有が活発化することで、更に精度が上がります。当時の地銀で理解できている人はいませんでしたが。。。間違いなくいずれやってくるプレイヤーが現れるでしょう。それは、Squareかもしれません。

Squareがビットコイン販売の先に見据えているブロックチェーン産業で最も実用性の高いDeFi

少し話はそれましたが、僕は、Squareは、今、販売しているビットコインを利用したDeFiは絶対に仕掛けてくると見ています。当然で、個人の長期保有するようなユーザーがターゲットだからですね。そして、そのユーザーに、先ほど上で話をしたSquareが既に加盟店に提供しているトランザクションレンディングの原資として活用するわけです。

ユーザーは、Square CashにBTCを置いておくだけで、金利収入が得られます。その貸し出し先は、Squareの加盟店です。レストランや居酒屋などですね。つまり、BTCを担保化まさにDeFi融資モデルということです。これによって、Squareは、Cashの競合であるPayPal参加のVenmoや、またビットコイン販売所として先行しているCoinbaseとも完全に差別化できます。両者とも、POSシステムを持っていないからです。なので、Squareは、新しいビジネスを二つも生み出すことができます。ユーザーにビットコインを持っているだけで、金利を提供することで、VenmoやCoinbaseからのリプレイスも含めてCashのアクティブユーザーを更に伸ばすことができる。そして、このBTC保有額が増えるほど、Squareは、このBTCを担保に、銀行から低い金利で現金を得て、加盟店にトランザクションレンディングの融資金を提供することができるようになる。更に、ライトニングネットワークを使って、BTCを決済利用できる形にすれば、加盟店は、その決済利用で得たBTCを融資の返済に回せるようになりますから、BTCを担保に銀行から現金を借りる必要もなくなります。ライトニングネットワークについては「こちらの記事」にまとめています。

このネットワーク効果をえることで、Squareは、Cashと同じアプリを提供するVenmoとも、単なる販売所サービスを提供するCoinbaseともかなり差別化ができるようになります。かつ、このDeFiは仮装通貨市場への貢献度が非常に高いです。まず、CompoundやBinanceのレンディングプロダクトのように、短期トレーダーにビットコインが回らないよう防波堤の役割を果たすので、BTCのボラティリティ低下に確実に貢献できます。そして、クレジットカードをもてない若年層が、これを利用して少額の短期融資などを利用できるようになると見ています。

この仕組みが提供できるDeFiプレイヤーは、現時点ではSquareのみですね。なぜなら、このPOSデータを手に入れるのが大変だからです。以前、ブログで紹介したBlockFiなども同じように中小企業向けに融資モデルを展開しようとしているプレイヤーもいるのですが、POSデータを持っていないので、融資精度でSquareに勝てません。

Squareのビットコイン以外の仮想通貨の担保化、マルチコラテラル化対応の可能性について

そして、このビットコインを担保にしたトランザクションレンディングによるDeFiが普及した後、担保対象のトークンを増やすかどうか?僕は、ジャック・ドージーは、クリエーターなので、必ずそのような先進的な仕組みを仕掛けてくると見ています。そして、実現方法は3つあります。

MakerDAOと組む

一つ目は、そもそもこのDeFiを生み出したMakerDAOと組むことです。MakerDAOには、シリコンバレーのトップVCであるアンドリーセン・ホロウィッツが出資していますから、マーク・アンドリーセンとジャック・ドージーのつながりで組むことは十分可能です。MakerDAOは「こちらの記事」にまとめています。

KAVAと組む

二つは、MakerDAOの競合である後発組のKAVAと組むことです。Squareと同じシリコンバレー拠点のCOSMOSが支援しているプロジェクトですから、彼らも、Squareに近しい関係にあります。KAVAは「こちらの記事」にまとめています。

自前で構築する

最後は、自前で全て作ってしまうことですね。

このいずれかの着地点になるわけですが、僕は、ジャック・ドージーはクリエーターであり、クリエーターに対するリスペクトが強い人物でもあるため(だから、ビットコインの熱烈支持者であり、フェイスブックのLibraへの加盟を強く否定している)、MakerDAOと組むシナリオが一番しっくり来ています。ジャック・ドージーがMakerDAOを支援することで、今、彼らのチームは、正直、UXやUIがあまり得意ではない一方、ジャック・ドージーは、TwitterやSquareの発明からわかるように、その領域に天才的なセンスを発揮する起業家なので、彼がMakerDAOを支えることは、MakerDAOの進化に大きく貢献できると考えています。

以上、みなさんの参考になれば幸いです!

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