香港人権法案にトランプ大統領が著名するかどうか?ビットコイン市場に与える影響について

アメリカの政治が、非常に面白い展開になってきたので、解説しておきます。関連ツイートは、これです。

 

香港人権法案とは?

まずは、ここから簡単に解説します。

From Wikipedia – 香港人権・民主主義法案(ほんこんじんけん・みんしゅしゅぎほうあん、英語: Hong Kong Human Rights and Democracy Act)は、アメリカ合衆国が香港の逃亡犯条例改正案によるデモ騒動に対し、中国大陸への容疑者引渡しに関する香港政府の主要官員を牽制するため、2019年6月13日に共和党のマルコ・ルビオ議員とクリス・スミス議員によって提出された法案。

簡単には、米国の政府側が、中国政府に対して、人権尊重の行動を実施するよう外交的圧力をかける責務を、米議会が米政府に負わせるという法案です。なぜ、こんな法案が出てくるのか?

世界の民主主義を発展・維持することを外交的使命におくアメリカ政治

ここがわからないと見えて来ないと思います。日本の国会からは、内閣に対してまずこんな法案は出てきません。アメリカは、建国以来、自由と人権、またそれを実現するための民主主義が社会の隅々に行き渡ることを大変重要視しています。これは、アメリカの二大政党である民主党、共和党、いずれの場合も変わりはありません。ですから、この点に関する外交政策では、お互いの意見が対立することはまずありません。大半、超党派で合意形成されます。

例えば、アメリカが起こした2000年代前半のイラク戦争を、アメリカの軍産複合体のビジネス目的だと批判するジャーナリストも多いですが、僕は、必ずしもそうは見ていません。根本的には、アメリカのこの自主独立の精神が常にあり、世界に民主主義を普及させていく政治的使命感というのがあります。だから、当時、イラクの独裁者になっていたフセイン政権を妥当するためのイラク派遣が、民主党と共和党の超党派による意見一致が起きるのです。たとえば、アメリカの一部の政治家が、中東に対して強い敵対心をもつ根底の一つには、中東社会で、人権がないがしろにされ、為政者側の王族や特権階級が一般人を自分たちの利権や地位を扱うために、不当に投獄したり、ときには暗殺したりするような、いまだに中世時代のような行為が横行していることに対して、憤りを覚えているからです。

そして、この香港人権法案は、アメリカの上院で可決された法案です。アメリカの政治は、上院と下院に別れており、上院は、アメリカの50ある各州から2名ずつ計100名を、下院は、日本の衆議院と同じ一般選挙で選ばれます。435議席あります。アメリカ政治のもう一つの特徴として、上院が共和党が多い場合は、下院は逆に民主党が多くなることが一般的です。こうすることで、政治の均衡を取る工夫があるのですね。アメリカの大統領には、日本の首相に比べて、かなり強力な政治執行権が与えられているので、いざというときにその暴走が働かないように、議会側でバランスをとる運営がされています。これも暗黙の了解がアメリカ政治の中にあります。

そして、現在のトランプ政権では、上院は共和党が強く、下院は民主党が強い状態です。そして、その共和党が強い上院で、全会一致、つまり全く反対なく、今回の法案が可決されたわけです。見た目には、トランプ大統領の母体である共和党が強い上院が、トランプ政権の足を引っ張っているように見えますね。おかしな話です。

なぜ、足を引っ張る形になるかと言えば、当然で、今、トランプ政権は、中国と貿易交渉の真っ最中だからです。

香港人権法案と大統領著名の関係

ここで、もう一つ理解しておくべきは、この法案と大統領著名の関係です。大統領が通したい法案を政権側が議会に審議をかけて通すのは当たり前のことですが、逆に議員から法案が提出され、議会で承認され、政府側が遂行することもあります。この場合、アメリカの大統領にはかなり強力が与えられているので、この議員側からボトムアップで上がってきた法案を支持しないという選択肢も与えられています。これが、法案に対して大統領が、著名するかしないかという話につながってきます。著名すれば、その内容に従い具体的に政治行動を取る、著名しなければ、行動しないということです。著名した上で行動しなければ、議会を無視した政治行為になるため、アメリカ合衆国憲法に違反しますから、弾劾裁判にかけられることも当然あります。

現在、香港人権法案に対してトランプ政権は、沈黙したままです。理由は、先に述べた通り、中国と貿易交渉の真っ最中だからです。僕のツイート内容に関わってくるポイントですが、この法案に著名すれば、中国政府側は、トランプ政権の貿易交渉の条件を飲まない可能性が高くなります。当然ですね。「アメリカにとって有利な条件で着地したいなら、こちらの政治には干渉してこないで欲しい」というわけです。逆に、著名しなければ、貿易交渉は、トランプ政権にとって有利な条件で着地できる可能性があります。

トランプ大統領を率いる共和党は、2020年大統領選で、トランプを再選すること一致しています。これも、アメリカ政治の特徴で、就任した大統領は基本的に、最大任期である8年(連続二期が上限、一期は4年)をやりきることで支えようという党側の暗黙の了解があります。政権交代が頻繁に起きると、民衆からの不信感が増すだけでなく、政治経済が不安定になることで、アメリカという国家全体が弱体化することを防ぐためです。平成の失われた30年の間、一時期、短期間の政権交代が連続で起きて、海外のメディアからはよく「HARAKIRI Politics」(切腹政治)と批判された日本の政治とはかなり異なります。

じゃあ、なぜ、今回、共和党側からこの法案が出され、かつ、このタイミングで可決されたのか?トランプ政権を苦しめる可能性が大きいですよね。トランプ政権としては、中国のアメリカとの貿易に対して様々な関税措置や保護貿易措置を行うことで、アメリカ経済の景気をよくしようとしてきた。そして、その貿易協議がようやくまとまりかけてきている。そこに、この法案が可決された。邪魔するような動きに見えます。

しかし、僕はそうはみていません。1週間前のFRB議長の発言を踏まえると、そこが見えてきます。

パウエル議長の発言後の法案可決から見えてくるもの

法案の最終審議が行われる前の11月15日に、FRBのパウエル議長がこういう発言をしているのですね。

簡単に言えば、トランプ政権の保護貿易政策をストップさせる動きが、アメリカの議会側にあるということです。効果があるなら協議を継続すべきだけど、ほとんど効果がないのであれば、アメリカ政治の外交使命を犠牲にしてまで、保護貿易に邁進すべきではないという考えです。こういう政治観が生まれるのも、民主主義を大切にするアメリカ社会の特徴です。

トランプ大統領の香港人権案への対応が仮想通貨市場に与える影響について

最後の焦点はやはりここです。

①大統領が、香港人権法案に著名する – 中国政府側の香港対応を問題視することを宣言することになるため、対立色が濃くなってしまい、 中国政府側と協議を続けてきた貿易交渉が希望通りの合意できない可能性が大。場合によっては交渉決裂にもなるため、中国との外交関係が悪化する。つまり、仮想通貨市場にとってはプラス評価となる可能性大です。

②大統領が、香港人権案に著名しない – 中国政府側の香港対応を支持することになりますから、貿易交渉は順調に着地することが予想されます。中国との関係は良好になり、貿易戦争は鈍化する。つまり、仮想通貨市場にとってはマイナス評価となる可能性が大です。

しかし、ここで注意すべきは、②を選択すると、2020年米大統領選で再選できない確率が上がる点です。先ほど述べたアメリカの政治的使命を果たす意思がないことをアメリカの上院・下院の全議員と国民に知らせることになるからです。国内の支持が得られないということですね。すると、再選が危なくなります。

なので、僕は、①のシナリオを選択する可能性が高いと見ています。なぜなら、パウエル議長が、トランプ政権の保護貿易政策がアメリカ経済にもたらす効果があまりないことを指摘済みだからです。よくトランプ大統領が、パウエル議長を批判するコメントを出していますが、この法案が可決された状態のトランプ大統領にとって見れば、彼の今回の発言は、むしろ「助け舟」です。

ただし、中国との外交関係の悪化は避けられなくなりますから、仮想通貨市場へのプラス効果は見込めると見ています。現に、以前のブログでも触れたように、今年6月の仮想通貨市場の上昇相場は、同じタイミングで起きていた米中の貿易摩擦の悪化が後押ししているからですね。その点は、「こちらの記事」にまとめています。

以上、みなさんの参考になれば幸いです。

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