テスラの新型車CyberTruckに隠された秀逸なマーケティング戦略とは?

最近、テスラが発表した「Cyber Truck」、大変、斬新なデザインで話題になっていますが、ここに隠された優れたマーケティング戦略について、僕の考えをお伝えします。

まず、目を引くのは、上の写真にあるよう。この圧倒的なぐらい近未来型のデザインですね。アメリカでは、このCyber Truckと同じカテゴリのピックアップ・トラックは、SUVにつぐ大変人気の車種の一つです。ピックアップトラックの製造メーカーで一番有名なメーカーといえば、アメリカのフォードですね。フォードのピックアップトラックの最新のデザインは、こちらです。

一方テスラのトラックは、以下です。

 

 

キャンプ感、全然ないですねー。笑 僕には、宇宙の別の惑星に降りてきた宇宙船の車輌が、その星で、仕方なく野宿しているような絵に見えます。笑

ただ、マーケティングに自信のある起業家である僕から見ると、これには、テスラ側のとても周到なマーケティング戦略がよみとれます。まず、以前、別の記事でもまとめていますが、テスラは、ほぼ全く広告を打たずにマーケティングをするベンチャーとして、とても有名です。詳しくは、「こちらの記事」を参考にしてください。僕も、Orbでは、SBIに売却するまで、5.5億円、VCから資金調達しましたが、マーケティングに実質的に投じたお金は、たったの30万円です。これもお付き合いでお支払いしたものです。それでも、Orbは、マーケティング視点では、日本と世界ではよく知られたブロックチェーンのテックベンチャーに育てあげました。

なぜ、そんなことが可能なのか?その答えは、僕の経験も踏まえていうと、今回のテスラのCyber Truckは、テスラ全体のマーケティング戦略を踏まえての、戦略的な商品の投入というのが、僕がの考えです。

なぜか?

答えは、この「デザイン」にあります。このCyberTruckのデザインは、正に「議論を呼ぶデザイン」であり、そこにマーケティングのミソがあります。議論=バズる、からです。上の別の記事でも触れていますが、記者が記事にしやすいからです。すると、勝手に各々のメディアで取り上げてくれます。そして、見出し写真には、必ず、この近未来的な写真が採用される。すると、絶対に、読者は読んでしまいますね。「ん?なんだこの車は?」と。すると、その話を元に、今度は周りの人に、「テスラのCyber Truck、知ってる?」・「テスラのCyber Truckのニュース見た?」となり、強力な口コミ効果が生まれます。これをマーケティングの世界では、バイラル・マーケティング(口コミマーケティング)と呼びます。

マーケティング能力の高い起業家ほど、これを使います。なぜなら、お金がかからない上、マーケティング効果が抜群だからです。広告費用が要りません。広告で稼ぐメディア側にとっては、PV・UUを生み出す最高のネタになるので、積極的に書いてくれます。

その上で、テスラ側の次の狙いは、「他のテスラの車を買う二次的な効果」を狙うことです。このCyberTruckのニュースをきっかけに、世の中で車を買おうとしている人の頭の中に「テスラ」が刷り込まれます。Cyber Truckを買うのは、キャズムにおけるイノベーターやアーリー・アダプターのみです。なので、テスラ全体の売り上げへの貢献度は高くありません。そして、それは、テスラも折り込み済みです。彼らの真の狙いは、他の車種が売れることです。下は、キャズムの図です。


テック・マーケッターは読むべき必読書なので、まだの方は、こちらです。

そして、これは、一般的なマーケティングの「ファネル理論」です。

 

今回のCyber Truckと深く関わっているのは、Awareness(認知する)ところですね。この記事を通じて、ものすごい口コミが世界中で起きるため、テスラの認知度が急激に上がります。その証拠として、以下は、Google Trendの検索キーワード「Tesla」のトレンド推移です。まさに、Cyber Truckがニュースになってから、急激に伸びていますね。約4倍です。

 

 

このユーザーの中から、ファネル理論の最終工程である、他のテスラシリーズを購入する人がたくさん出てきます。絶対に。ファネル理論とは、究極的には確率・統計論なので、100人の人が、認知して、そのうち、一人が購入すれば、コンバージョン率は1%。そういう世界です。ですから、仮に、今回のニュースを受けて、世界に1,000万人の自動車をまさに購入検討している人がいて、その全てが、今回のニュースで、テスラに対して改めて認知をし、彼らの車種の検討を行う。そして、コンバージョン率が2%だった場合、1,000万人*2% = 20万台のテスラが売れる可能性がある。そういうマーケティングシナリオが、このCyber Truckの投入に隠されています。すると、テスラの今期の全体収益は、このCyberTruck効果で劇的に改善するわけですね。それが、イーロン・ムスクとテスラ側の真の狙いです。

最後に、多くの人が知らない事実として、一つお伝えすると、「優れたデザイナーは、優れたマーケターでもある」ということです。このことを、僕は、グローバル・イノベーションを過去3つ起こした経験(タトウーTシャツ、ミニクーパー、シルバーデザインカメラ)のある坂井直樹さんという工業デザイナーの方と数年、交流することで、お互いの合意もあり、理解しました。工業デザイナーとして世界でも圧倒的な実績をもつ坂井さん自身が、自分がマーケターでもあることを自覚します。なので、よく、スティーブ・ジョブズは、単なるマーケターだと批判している人がいるのですが、僕からすれば、マーケティングの本質を理解していない人の無責任な発言です。本質的に優れたマーケッターとは、優れたデザイナーであり、作り出すプロダクトそのものに、自然と強力なマーケティング効果(正確には口コミ効果)を宿した製品を市場に投入するからです。なので、シリコンバレーでも、優れた起業家はデザイナーであると言われる所以はそこにあります。僕も、マーケティングには絶対的な自信がありますが、本質的に自信を持っているのは、むしろ、プロダクトデザインの方です。自分で、プロダクトをデザインするプロセスの中で、強烈な口コミ効果を製品の中に埋め込みます。そのときには、自分の中で、このプロダクトがどのように使われるか?のマーケティングストーリーが出来上がっているのですね。僕がOrbで仕掛けた「藩札2.0」というマーケティングキャンペーンはまさにそうでした。しかしながら、日本は、商売上手な起業家ばかりがもてはやされます。儲け至上主義だからですね。これが、日本がシリコンバレーに勝てない理由の一つでもあります。

以上、みなさんの参考になれば幸いです。

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