アルトコイン投資戦略のポイントについてのまとめ #2

1.ペインポイント分析

ペインポイントとは、「問題点」です。世の中の困っている誰かの問題をきちんと解決する。そして、それによって世の中がよくなる。これがスタートアップの基本のミッションです。日本のスタートアップ業界は、儲け主義重視なので、この辺り厳密さがかなりゆるいのですが、シリコンバレーはかなり厳格です。僕は、シリコンバレーでもスタートアップを経営していたので、このとき彼らのその厳密な価値観を肌で体感しました。

その点を踏まえて言うと、2014年から2017年に立ち上がったアルトコインプロジェクトの大半は、ここがとてもいい加減です。かなり適当です。2017年に至っては、正直、バブルだったので、それでもお金が集まった。2000年のインターネットバブルのときと同じですね。だから、当然のごとく、詐欺案件も横行した。しかし、バブル崩壊後のインターネット産業がそうであったように、今後のアルトコイン投資ではそのような銘柄は一切生き残ることができません。現時点でもCoinMarketCapには2,000以上のプロジェクトが登録されていますが、ペインポイントが明確に定義できていないベンチャーは市場から間違いなく消えていくでしょう。これは鉄則です。日本のスタートアップ業界では、これをやりきれなかったスタートアップでも、受託開発業をやらせて延命策を測るVCが多いのですが、シリコンバレーでは潰します。生き残っている価値がないからです。

昔、サイボウズを創業した高須賀宣さんと親しくさせていただいた色々と起業哲学を教えていただきましたが、これに関わる一番印象に残った言葉の一つは、「創業して三年以内にまともなプロダクトを出せない場合、アイデアが悪いかチームが悪いか、その二つしか原因はないが、どのみちそこからは大したプロダクトは出せないほどチームが疲弊しているのでそのベンチャー解体した方がいい」と言われて、とても納得が行きました。僕はこの原則を貫いています。Orbは、創業して三年でOrb DLTを完成させました。

一方、きちんと社会的意義の高いペインポイントを自ら特定できれば、必ず事業化の目処をつけていくことができます。シリコンバレーではここが厳格に貫かれています。だから、利益度外視で、大赤字を垂れ流し続けても、グローバル市場でNo.1をとるテックスタートアップを育てることに彼らはこだわるのですね。GoogleもFacebookもビジネスモデルは後付けでしたが、莫大な収益を生み出しています。赤字を続けているAmazonも同じです。ペインポイントを解決することに集中し続ければ、必ず収益がついてくると彼らは過去の経験で学んでいるのです。

今の日本のスタートアップや財界では、この考え方は恐ろしいほど衰退していますが、実は、明治時代にはきちんとあったのですよ。なぜなら、僕はこの哲学は、本来、シリコンバレーから学んだのではなく、日本の近代資本主義の父と呼ばれる「渋沢栄一」氏から学びました。こちらに本のリンクを貼っておきます。

そして、より大きなペインポイントを解決しよつとしているプロダクトほど不確実性が高く大化けする可能性が高いです。しかし同時に、その分、非常に優秀なチームをコアメンバーに必要とします。このあたりも見ています。

そして、ペインポイント分析をする際に、必ず問う質問が3つあります。

  • Q1: そのペインポイントで苦しむ人は確実に増えてきているか。
  • Q2: そのペインポイントを解決するための周辺テクノロジーは普及しつつあるか。
  • Q3: 市場参入戦略はニッチだが、ポテンシャルが高いペインポイントであるか。

この実際の参考例として、投資先のDENTを取り上げて、説明します。

DENTは、一言で言えば、自分の余っているモバイルデータパッケージを世界中の人に売れるエクスチェンジ・サービスです。この売買に使われるDENTトークンは、イーサリウムの上で発行・運用されています。


彼らがまずフォーカスしているのは、海外旅行者です。今、海外旅行をする人は、ヨーロッパを中心にものすごい勢いで増加しています。

2010年には、6億人だった海外旅行者は、2018年には14億人にまで到達しており、グラフの通り、この成長カーブは急激になってきています。そして、この海外旅行者にとっての最大のペインポイントの一つが、高い海外ローミングなのですね。海外旅行好きな人であれば、実感があるはずです。DENTのホワイトペーパーでよれば、海外ローミングとローカルローミングの価格差は、平均10倍開いているわけです。LLCやAirbnbが普及して安く旅行できるようになってきたのに、スマホだけは、いつも10倍近い値段を払わないと使えない。これは、個人にとっては、かなり痛い話です。

しかし、ローカルにいる人が、海外からきた旅行者に自分の余っているモバイル通信パックを1GBなどの単位で売ってあげることができれば、かなり助かりますよね。いいペインポイントにフォーカスしています。

ただ、この実現には、ある周辺技術の普及が不可欠です。それは、eSIMです。

今、あなたのスマホは、ソフトバンク、ドコモ、ないしは楽天モバイルなど、好きなモバイルキャリアを選んで契約していると思いますが、ここに縛りがあります。2年間は、他のどこのモバイルキャリアも使えないという縛りですね。しかし、今、この撤廃の動きが政府の働きかけもあり、活発になってきており、それを実現する技術が、eSIMです。2017年から採用が開始しています。実は、DENTが立ち上がったのも2017年です。タイミングをきちんと計っているわけです。eSIMを搭載したスマホが普及すると、旅行先でローカルキャリアに自由に接続できるようになります。つまり、DENTを使って、他のローカルユーザーから余っているモバイルデータ通信パックを購入し、使うことができるようになるのです。DENTでは、この取引の仲介をイーサリウムのスマートコントラクトが支えています。

そして、最後にポテンシャル。このDENT Exchangeが大規模なユーザーベースを構築すると、実は、非中央集権型インターネットを実現する上で、非常に重要なCDNシステムを作り上げることができるのです。

現在の中央集権的なインターネットの世界に置いて、この覇者は、アカマイ社であり、世界のインターネットトラフィックの30%をさばく「影の巨人」と呼ばれいる会社です。ブロックチェーンの最大のミッションになるであろうインターネットの非中央集権化において、このP2Pテクノロジーを駆使した非中央集権型のCDNは、不可欠の存在であり、DENTは、世界中のモバイルデータ通信をもつユーザーベースを抑えることで、このCDNを構築する重要パーツになるのですね。

ですから、参入している市場は、海外旅行者にローカルの人が、余っているモバイルデータを売るというニッチな市場から参入しているわけですが、その延長線上に見えるのは、とてもつもなく大きな市場ということです。こういうスタートアップが将来大きく化ける可能性を秘めています。

DENTについての全ての分析は、「こちらの記事」を参考にしてください。

2.プロダクト分析

次に、ホワイトペーパーと彼らがリリースしているプロダクトの間のギャップ分析です。僕がICOに投資しない理由の一つはこれです。ホワイトペーパーには、素晴らしい内容が書かれているのに、いざ出てきたプロダクトが全く魅力的ではない、というのはよくあることです。典型的なのは、Steemitですね。ホワイトペーパーの内容は、かなり質の高い内容でしたが、いざ出てきたプロダクトをみて、あまりに使い勝手が悪く、これではユーザーベースの拡張は難しいと判断し、投資しませんでした。一時期は、ものすごい注目されていましたが、今は、要のCTOもEOSに移ってしまったので、かなり苦境に立っています。これらの分析を可能にしているのは、僕自身が、ブロダクトデザインが得意だからという点もありますが、その僕でも、ホワイトペーパーしかないブロックチェーンベンチャーに投資しないのは、このようなリスクがICOにはあるからです。

Steemitについては、詳しくは、「こちらの記事」にまとめています。

よい例で言えば、BraveBrowserはすばらしいです。ホワイトペーパーの内容も、ペインポイントの定義も含めて、極めて論理的であり、しっかりとデータを抑えています。僕が自身がアドテクに詳しいこともあるのですが、アドテクの専門家からみても、非常に納得のいく内容で、大きな可能性を感じました。その上で、実際に出てきた彼らのブラウザを使うことで、このレベルなら投資しようと判断し、僕のポートフォリオ銘柄の主力の一つになっています。

その上で、僕は、バリューカーブプロポジショニング分析というのをやります。以下のスライドを見てください。

Brave Browserのバリューカーブプロポジショニング

特に、僕は、Braveのプロダクト戦略は、お気に入りなのですが、アドテク業界の巨人であるGoogleを完全否定できる戦略を作り上げているのですね。どういうことかというと、Googleは、個人情報を大量に利用して広告事業を運営しています。それが原因で、ユーロなどでも訴えられていますね。

その点を踏まえると、Google Chromeは、容易にBrave Browserのようなプライバシーコントロールを聞かせてブラウザを作り出すわけには行きません。毎年、何千億という利益を生み出すGoogleの現在の広告事業を全て否定してしまうイノベーションのジレンマがそこにあるからです。

その上で、Braveは、更に、プライバシーコントロールを持った新たな広告プロダクトを作り上げ、最大の特徴は、ユーザーが閲覧した広告によって、BATのトークンをインセンティブとしてもらい、それを自分の好きなパブリッシャーに配分できるという奉仕経済モデルをビルトインすることで、Googleの既存のバナー・動画広告が容易に手が届かないプロダクト戦略を構築しました。しかも、CTRは、通常の個人情報を大量に利用したターゲティングバナー広告の7倍です。Googleに対して圧倒的なほどの競争力を持っています。

これだけのバリュカーブデザインは、なかなかできることではないので、とてもよ事例だと思います。

BraveBrowserについては、詳しくは「こちらの記事」を参考にしてください。

しかし、このバリューカーブは、このCTR7倍のレポートが出る前に作ったものなのですが、「○」であって「◎」ではない理由がありました。そこが、チーム分析と関わってくる点です。次の項目です。

3.チーム分析

ただ、BraveBrowserの場合は、チームをみて、「これは、確実にいいウェブブラウザソフトが出せるチームである」というのはホワイトペーパーからも読み取れる内容でした。なぜなら、世界第3位のウェブブラウザソフトであるFireFoxの元CTOとシニアソフトウェアエンジニアが創業したベンチャーだからですね。ブラウザソフトを知り尽くしているからです。これで作れないというのは、常識的に考えてまずありません。

Braveのキーメンバーは、「こちらの記事」を参考にしてください。アドテクチームに関しては、ちょっと実力が弱いかなと思っていましたが、彼らの広告プロダクト自体の実績が圧倒的なので、結果的に問題になっていないというのが実際です。CEOのブレンダンさんの創造力の高さは、世界でもトップクラスだと思います。

また、細かい点として、「仕事仲間」だったかどうかも見ています。その場合、チーム練度が高いことを意味します。お互いのことをよく知っているからですね。

ただ、このようなチームを持って立ち上がるベンチャーは稀です。その点は理解しておいてください。

つづく。

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