バイナンスリサーチのDAOの市場動向に関するまとめ #6

6.結論

DAOは、その信奉者のよりお大きな夢へと成長しつつあるのか?

実際にはそこまでいたっていないかもしれないが、DAOがもつトラウマは克服されつつある。いくつかのDAOのフレームワークは、スマートコントラクトの認証などを含めて、どんどん進歩している。一方で、既存の法規制は、ますますトークナイゼーションを認識し、“Innovative Technology Arrangements”としてまとめあげている。

しかしながら、DAOが、DAOのインセンティブシステムをコーディネートされたメンバーに適用することを言及することなしに完成するというレポートは一切存在していない。インセンティブは、ゲーム理論にもとづき、全てのDAOの共通項と言える。

コモンズの悲劇や、ビザンチン故障問題、プリンシパル=エージェント理論、もしくは囚人のジレンマなどの問題を避けることが可能な理論体系の構築が必要なのである。

そして、インセンティブは、必ずしもポジティブである必要はなく、ペナルティを課すことで、未然に防ぐことも可能である。さらに、段階的に得られる報酬モデルは、様々な派生的モデルを使う能力がユーザー側に発生することによって侵食されるため、簡潔な存在ではない。たとえば、大口のトークン保有者が、意図的にDAOを破壊することで、経済的なリターンを得ることがあるからである。

しかしながら、DAOのインセンティブ・デザインは、引き続き正しい道を歩んでいると言える。様々な実験を伴うことで、DAOのOSモデルは成熟し、自主規制や、”Blockchain Governance Code”などが加えられていくだろう。インセンティブに基づくガバナンスシステムは、既存の分類学の多くのデザイン要素をに関する、異なる変数に依存する。この実践においては、ゲーム理論などを参考にした研究が実施される必要があるだろう。なぜなら、インセンティブモデルは、既存の機能している分類学の中で未だ明確にその存在の方向性を示してはいないからである。

この領域は、既存のDAOにおける投票者の賑わいなどに対して、もっと詳細な分析が必要である。DAOへの参加率を見ると、これは明らかである。よくUIがデザインされた事例として、Aragon Governance Proposals (AGPs)は、その対象事例として容易に評価可能である。AGPsの投票参加率は、全ANTトークン(Aragon governance token)保有者の6%である。数にすると50アドレス以下になる。

この数字は、DAOがまだ高い拡張性というゴールを達成するには、まだまだ様々な壁を超える必要があることを意味しており、どのように全体のDAOメンバーをコーディネートしていくか、という課題を追い続ける必要がある。

以上。

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僕の所感

丁寧にまとめてくれているレポートなので、感謝しているのですが、DAOの定義については、正直、違和感があります。

僕のDAOの定義は、

直接民主主義に基づく意思決定ルールを志向し、ボランティア経済とインセンティブ経済をプログラマティックに最適に組み合わせることにより、中央の意思決定機関や過度に多重な多階層組織を必要とせず、また排他性を持たない開放型の組織モデル

ですね。これは、現代社会における今の国民国家、議会制民主主義、株式会社、NPO、NGOなど、どの組織形態よりももっとも文明的に進んだ組織形態です。DAOによって、我々は、大規模組織に必ず発生する官僚主義を根絶し、また、国民国家に代表されるよう国民以外の他人に対する排他性を極小化することで、愚かな政治や戦争の種を社会から排除していくことを志向しています。

「他人に対する排他性を極小化する」と言っているのが、実は、ポイントで、排他性を根絶するとは言っていないです。これは、僕が、人類の経済システムが、奉仕経済に向かう上で、重要な要素の二つである「情報格差の解消」と「信用格差の解消」の後者の課題につながる点です。

排他性とは、他人をすぐに信用しない暗黙の了解です。どんなコミュニティもこの性質を持っています。自然界のメカニズムも実はそうです。エイズなども、宿主自体はそのウィルスを持っていてもなんともないのに、人間が宿主の生活圏を過度に侵食すると、そのウィルスが侵入者としての人間を殺そうと襲いかかってくる、というのは、実は、この排他性と繋がってくる話です。

一方で、国家経済になると、この排他性は、「パスポート」という形で完全に法律で縛られ、企業では「雇用契約書」という形で縛られるわけです。一方、友達レベルの世界は、「なんとなく」というルールで運用されていますね。

こいつを根絶するための方法の一つは、世界共通の「評価経済」を導入することです。AliPayやWeChatPayのトラストスコアの世界共通版を、パブリックブロックチェーンの上に構築する。Libraなどはまさにこれを考えています。

確かに、世界共通のトラストスコアを導入すれば、パスポートも雇用契約書も要らなくなります。当然で、そのスコアが、その人の全ての信用を表現するからですね。

しかし、そのアルゴリズムに平等性や公平性を与えることは、僕は、不可能であるという結論に達ししました。「シンギュラリティの罠」にハマってしまうリスクがある。詳しくは、「こちらの記事」を参考にしてください。

なので、DAOもWikipediaのような世界をまたぐ大規模なDAOモデルと、コミュニティ経済など、日常の衣食住に密接に関わる小規模なDAOの二種類が出てくると考えています。前者のDAOは、極力、排他性を排除したものが望ましく、誰でも入れた方がいい。しかし、その中での評価経済は独自で、一定の努力と成果を出さないとそのDAOのインセンティブルールの恩恵は預かれないものになるでしょう。なので、トラストスコアのような万能性は持たないということです。

一方、コミュニティ経済のような小規模なDAOは、ある程度、排他性が必要になると考えています。しかし、パスポートや労働契約書のようなものは一切持たず、友達の世界と同じ「なんとなく」というやつです。つまり、一定機関、そのDAO内にボランティアで関わることで、信用が蓄積され認められていき、やがて、そのコミュニティ経済内での全活動が可能になるというインセンティブが得られる。

自律分散型の経済システムでは、今のグローバル経済のようにお互いに資源やリソースの奪い合いをすることはなく、それぞれは経済的な自立を志向しているので、このコミュニティ経済内での信用格差は生まれにくくなります。個人の生産性は、テクノロジーによって最大化されるため、また、中央集権的な管理機構をもたないため、このコミュニティ経済を過度に拡張しようという指向性も生まれてこない。このような世界観がDAOの中核にあるべきものと考えています。

その実現においては、現実的なラインは、まずは、このリサーチレポートにあるようDAOと既存の公的機関のモデルを組み合わせることで「小さな政府」を目指していくことになるでしょう。

以上、みなさんの参考になれば幸いです。

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