沖縄が次に目指すべき、21世紀型の”シリコンバレー、”Deep Tech Island” とは何か? #1

僕が、なぜ、OISTに賭けるのか?その理由をまとめました。

「2022年」は、沖縄本土復帰50年の節目

今から約2年後の2022年は、沖縄の本土復帰(1972年5月15日)から50年目の大きな節目となる。同時に、この年に10年に1回、内容の見直しがおこなわれる「沖縄振興特別措置法」も更新年にも相当する。この大きな節目の年に、我々は、日本政府側と新たに何を合意すべきか。戦後の昭和、平成と計50年に渡り、日本の本土経済は、平和憲法と日米安保により、世界の一切の政治経済の混乱に直接的に巻き込まれることなく世界でも稀にみる経済発展を遂げ、「平和と豊かさ」を謳歌してきた。しかし、世界の過去50年の現実は、平和とはかけ離れたものであった。1972年の沖縄本土復帰を挟む形で1975年まで続いたベトナム戦争、1990年のソビエト崩壊、2000年代のイラク戦争など、数え上げればキリがないほと世界は混乱を続けていたのであり、この度に、沖縄の米軍基地が、その混乱を最小限に止めるために重要な役割を果たしてきたことは言うまでもない。そう、沖縄は、日米安保の合意に基づき、日本全土の75%の米軍基地を背負っている。つまり、本土経済は、戦後の昭和・平成と経済発展と平和を謳歌している中、沖縄の人々は、世界の「戦争」という現実と常に直接向き合い、背負い続けてきたわけである。

「失われた30年」の中で、沖縄のOISTが日本人に証明したもの

平成の30年は日本全体にとって、全く反論の余地のないほど「失われた30年」となった。しかも、少子高齢化が進む中、「昭和」と変わらぬやり方で日本再生を目指す政財界の古く臭いリーダーシップによって、産業構造の改革は全く進まず、世代交代は全く起きず、いつの間にやら、産業界の至るところで「Made in Japan」が消えていった。

実際、小生の所持品を見回してみると、Made in Japanは、一眼レフカメラぐらいで、それ以外はみな海外製品だ。パソコンとスマホはアップル、家具はイケア、服の多くは海外ブランド、車はドイツ車など。デザインと質、どれをとっても日本製品より優れた海外製品が豊富にあるからだ。
世界の企業時価総額ランキングのTop10を平成元年と平成30年で見比べれば、ひをみるより明らかで、今やGoogleやアップルなど米IT企業が5社、アリババ、テンセントなど中国IT企業が2社を占める。産業構造改革と世代交代に成功している米中経済の成果がここにある。一方、日本企業はTop10から完全に消えた。孫さんが、ソフトバンクグループの時価総額が低すぎると不満を言うのも無理もない。政財界はいまだに「昭和銘柄」を必死に支えることしか考えないのだから。

また、実際、私の周りの海外の友人の多くの日本に対する見方も変わった。昔は「テクノロジー、品質、長期的経営」という3つの日本のイメージ像に「全くその通り」と答えてくれていたが、今では、その言葉には全く反応がなく、彼らがもつ日本に対するイメージは、全く異なる -「高度なストーリーのアニメ、美味しいご飯、そして、世界一の安全」の3つになっている。つまるところ、彼らにとって、日本のイメージは、ビジネスをする場よりかは、観光旅行で長期滞在した方がマシな場所に変わってしまっているということだ。

私も、一人の日本人として、この朽ちゆく現実を憂い、パーソナル・コンピュータ、インターネットにつぐ、第三のIT革命と呼ばれる「ブロックチェーン」で日本が世界をリードできるよう2013年末より、Mt.Gox事件の逆風が吹き荒れる中、業界初の自主規制団体の立ち上げ、その団体を起点にした2016年当時、世界で最も建設的な規制と呼ばれた「仮想通貨法」(改正資金決済法)の起草、その後は、仮想通貨・ブロックチェーン業界より唯一委員メンバーとして金融庁主催の元MIT Media Lab所長の伊藤穰一氏が委員長を務めた「フィンテックベンチャーに関する有識者会議」に参加し、中央省庁が業界発展の障害となる過度な規制をかけないよう進言し、そしてまた、自身の経営する株式会社Orbで開発したOrb DLTをプライベートブロックチェーンで世界最速のパフォーマンスを日本オラクル社との共同実証実験で証明するなど、2018年2月にSBIホールディングスにOrb社を売却するまで業界発展をリードし、その結果、海外メディアは、2017年に「Japan is Crypto Heaven」とまで書いた。

しかしながら、これの流れもまた、平和ボケした日本の仮想通貨交換所2社が、2018年に立て続けに引き起こしたハッキング事件によって、日本が、インターネット産業の二倍のスピードで成長していると言われるブロックチェーン産業で世界をリードするチャンスは完全に絶たれた。2019年には、日本は、海外メディアがブロックチェーン後進国と表現するまでになってしまった。全く、世界の成長スピードに追いつけなくなっている。

私は、今のこのような日本の現状を「茹でガエル」と名付けている。「井戸の中の蛙」にかけたもので、平和ボケした中、英語も技術も学ばず、世界の変化にどんどんついて行けなくなっていく日本人、少子高齢化によって、社会を変革させていく若いエネルギーはますます失われている。ところが、社会には全くその危機感がない。なぜなら、彼らは、日本が、なぜ、こうも世界から没落していっているのか、根本的な問題点を自覚していないのである。その証拠の一つが、若者の就職希望先No.1は「公務員」である。リスクから逃げることしか考えていない。

つまるところ、今の日本で、スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクが起業しても、決して、アップルやテスラを育てることはできない。もっと彼らの事業が小さい段階で、単一民族である日本人がもつ同調圧によって「出る杭」と見なされ、同じリスクをとってくれる優秀な人材もチームに集まらず、投資家も、彼らのプロジェクト構想の壮大さにビビって資金を出さず、間違いなく潰されているだろう。私は、Orbの経営を通じてその点を如実に痛感した。

よく日本人はいう -「なぜ、iPhoneが日本から生まれてこなかったのか?」と。なぜ、シャープのザウルスは、iPhoneになれなかったのかと。まともな回答を持っている日本人に私は出会ったことがない。なぜなら、「当の本人がその原因」なのだから。本人が原因なのだから、気付くわけがない。一方、私は、明確な答えを持っている。それは日本は、「多様性」が完全に欠落した社会だからだと。科学やテクノロジーの世界では、「20世紀は専門化の時代、21世紀は統合化の時代」と当たり前のように言われている。しかし、このことは、実は、日本からiPhoneが生まれてこない理由と密接に結びついているのだ。しかし、ほとんどの日本人は、この関係性を理解できていない。

最近のMade in Japan製品が、日本国内でしか売れない、つまり、ガラパゴス化する理由は、日本社会に多様性がないからだ。1億全て単一民族の日本人であることが原因ということ。一方、iPhoneを生み出したアップル社が本社をもつアメリカ、特に私が起業した経験もあるシリコンバレーは、全く異なる。世界中から優秀な人材が集い、テクノロジー・イノベーションを競う多様性あふれる社会。アメリカ人のみならず、インド人、中国人、ロシア人、ヨーロッパ各国、中には中東など、大国出身、小国出身問わず、世界中の様々な文化体系、ライフスタイル、性別、価値観などが混ざり合った中で、iPhoneというプロダクトのデザインや戦略が決まっていく。多様性の中で製品やサービスが揉まれる。アメリカの市場の中に、世界市場と同じ要素がふんだんに入っているということ。だからこそ、世界市場で売れる製品やサービスが育つ。アメリカ市場がガラパゴス化しないのは当然である。多様性の中にこそ、優れた「集合知」が形成されることを日本人の多くは全く理解していない。

そして、2006年に出たiPhone第1号は、テクノロジーの真新しさは全くなかったことでもよく知られている製品だ。個々のテクノロジーは、既存の枯れた技術を使っていた。つまり、テクノロジーの革新性ではなく、「統合力」で売れている製品なのだ。先の「21世紀は統合化の時代」に繋がっているポイントはここである。個々のテクノロジーの新規性ばかりを好む日本人の職人的価値観は、全く重要ではない時代になっている。だから、日本人男性しかいない日本企業の中で、iPhoneが生まれるわけがなく、日本人ばかりの日本社会で、iPhoneが育つわけがないということである。

しかし、その平成の「失われた30年」の中で、唯一、世界にその成果を認められた存在が日本にはある。それが、2011年に立ち上がった沖縄の恩納村にあるOISTである。OISTは、昨年、著名科学誌ネイチャーの「質の高い論文を出す研究機関ランキング」、通称”ネイチャー・インデックス”で、東京大学の40位を大きく引き離し、9位にランクインした。

OISTが、日本の旧態依然とした大学機関と全く異なっている点は、2つある。「学際性」と「多様性」である。前者は文字通り、「21世紀は統合化の時代」を体現するためのコンセプトだ。複数の学術分野をまたいで研究を促す建物のデザインやオペレーション体制を通じて、新しい科学的発見を目指す研究スタイル。そして、多様性とは、日本人がマイノリティであることだ。OISTは、非日本人が70%を占め、世界60ヶ国以上の国と地域から研究者と生徒を集めている。交わす言葉も当然英語が「共通語」である。文字通り、21世紀型イノベーションの最重要要素を満たす経営が行われている日本で唯一の大学院である。だからこそ、「失われた30年」の中で唯一結果が出ている。

なぜ、私がこのOISTのあり方に共感を覚えるのか? それは、私自身が、その理論の実践者であるからだ。私自身、シリコンバレーで、その多様性の威力に触れ、私が経営していたOrbも、世界最速のプライベートブロックチェーンのプラットフォーム型ソフトウェアOrb DLTの開発をやり遂げたが、この成功裏もカギは「多様性」にあった。30人いる社員のうち、非日本人は50%を占め、開発チームは、80%が非日本人であった。元アップルのプロダクトマネージャーやシリコンバレーのテックベンチャー出身のアメリカ人のチーフアーキテクト、スタンフォード大学コンピューターサイエンスを出たロシア系移民、IITボンベイ校のコンピューターサイエンス修士号をもつインド人、スイスの原子力研究機関出身のスウェーデン人、宇宙工学の修士号をもつポルトガル人、フランスの名門工科大学卒のアフリカ系フランス人など、世界中からリクルーティングし、シリコンバレーのトップクラスのテックベンチャーにも人材レベルで劣らぬ多様性溢れるチームを作り上げた。
その成果が、Orb DLTとして結晶化した。

だからこそ、私は、OISTに、日本の「最後の希望」とも言える可能性を見出し、2019年9月より沖縄に移住した。その「最後の希望」が、今回の話の中心にある「Deep Tech Island」構想である。

つづく。

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