バイナンスリサーチのDeFi市場動向に関するまとめ #4

4.DeFiのパラドックスと2020年の展望

4.1.DeFiは、小さいがダイナミックなエコシステムである

DeFiは、仮想通貨産業において、小さいセグメントの一つではあるが、最も活発な領域である。

イーサリウム上のDeFiのデイリーアクティブユーザー数は、2091年の平均で3456である。


また、デイリーアクティブユーザー数が50を超えるDeFi関連のアクティブプロジェクト数は、2019年は2倍近くに増加している。しかし、この数はまだ小さく、実際のプロジェクト数は20程度である。

また、DeFiの市場自体も小さくステイキング市場全体の合計は6000億円であり、これはDeFi市場の5倍に相当する。

また参考までにDeFiがターゲットしている既存の金融資産の市場は、2019年時点で、250兆ドルそして、US市場単体では、消費者ローン市場だけで、1.6兆ドルある。

4.2.ステーキング市場の成長

ステイキング市場は大きく成長しており、オンチェーンのガバナンスにステイキングをすることで参加する傾向がますます増加している。

現時点のステイキング合計額は、6000億円を超えている。この数値は2020年に更に伸びると見ている。その背景の一つは、最大BaaSのイーサリウムが、PoWからPoSに切り変えるからである。

DeFiの視点で考えるとレンディングはステイキングの競合となる。しかし、それはステイキングよりも魅力的な金利を提供できるかにかかっている。

現状のステイキング市場の成長を担っているのは、バイナンス、Coinbase、そしてKuCoinなど、中央集権型の取引所である。

しかしながら、機関投資家のレポートでまとめているように、大型トレーダーや機関投資家の視点としてはステイキングサービスはまだ仮想通貨産業の中核の成長ドライバーにはなっていない。

4.3. EthereumのDeFi

2020年のイーサリウムベースのDeFiに関しては以下の通りに予測している。

-MakerDAOのドミナンスの終焉:我々は、CompoundがMakerの立ち位置を、売買高とロックされた資産の規模でも脅かすと見ている。更に、Synthetixは、Makerに比べて、ペッグモデルにより柔軟なアセットロックができるためである。しかし、コラテラルの対象であるSNXの流動生が低いため、この点が課題である。一方で、Makerのコラテラル対象であるETHやBATは流動生がとても高い。

-MakerのDSRのインテグレーション:BATの追加もあるが、DSRも重要な役割を果たすと見ている。他のDeFiプラットフォームがDSRのインテグレーションを進めているためである。例えば、Fulcrumなど。また、DAIを上場させている取引所もDSR機能のインテグレーションを進めている。

-担保を要求しないDeFiソリューションの開発:DeFiのNo1レポートで述べたように、過剰なコラテラルモデルは、アンバンクユーザー(新興国の貧困層)は救わない。新しいソリューションが必要であり、ソーシャルファンドリカバリーや、信用スコア、ゼロ知識証明、クレディットマーケットDAOである。その注目株としては、Sablierや、Aave(LEND)などがある。Aaveは、メインネットのローンチを2020年初頭に予定しており、コラテラルを利用したフラッシュローンを提供する予定である。

-イーサリウムのメインネットにおけるDeFiのデリバティブ開発: Convexity Protocolや、 UMA Protocolなどが立ち上がっており、新しいトレーディング機会を提供しているが、まだリスク管理の面で課題が残されている。また、DAIのプライスリスクに対応するためのSwanDAIなどもメインネットへの展開が予定されている

-USDT: イーサリウム上で運営されているUSDTは、2020年には、USDCのようにCompoundが組み入れる可能性がある。

-One-stop ソリューションの成長:ZerionやInstaDAppがなどは、DeFIをユーザーがより簡単に使えるようにするため、シンプルなUIでのプロダクト提供を行なっている。また、DeFiZapやDex.agのようにGasの手数料を最小化し、プラットフォームリスクのヘッジ機能を提供するサービスも出てきている。

4.4. Alt DeFiの拡大

イーサリウム以外でのDeFiの成長も2020年は進むと考えられる。

-Bitcoinは特に注目している

-BTCを担保として利用する:MakerDAOにBTCが追加される可能性がある。すでにSODAなどでは、BTCを担保にして、ERC20で発行されたトークンを借りる仕組みを提供している。

-BTCサイドチェーン:Bitcoinのサイドチェーン上にDeFiを提供する仕組みである。Money on Chainなどが動いている。

-Binance Chain: BEP-3を利用していることもあり、市場関係者から注目されている。サードパーティの参加が成長のポイントになるだろう。

-EOS: KyberやBancorなどによるEthereumとの連携が進むと見ている。また自身のDeFiプロダクトも成長するだろう

-NEO: SDUSDをもち、Alchemintのエコシステムの成長やETHとNEOのブロックチェーンを仲介するSiwtcheoなどが牽引するだろう。また新たなDeFIも立ち上がるだろう。

-Cosmos: KAVAは、2020年ライブになることが予定しており、これは、Cosmosの初のステーブルコインプロジェクトになる。Kavaは、XRPやBNBのコラテラル化を検討してい流。

-Tezos: DeFiプロジェクトをリリース予定である。

-Algorand: 2019年のステートメントよりDeFiムーブメントに関心があることを示している

-TomoChain: TomoXのローンチや、クロスチェーンSwapのTomoBridgeに加えて新たなDeFiプロジェクトが立ち上がることが予想される

-TRON: Loomが、MakerDAOとTRONとのコネクトを担うと同時に、PoloniDEXやZethyrなどのDEXプロジェクトが成長していくだろう

-Waves: Gravity Hubというクロスチェーンのプロダクトを提供予定である

-Ontology: PAXの存在に加えて、新たなDeFiプロダクトを準備中である。

4.5.結論

DeFiは、注目すべき成長を遂げていると言えるが、その対象としているユースケースの大半は、既存の仮想通貨ユーザーを対象にしているものが多い。

ボーダーレスDeFiの登場に期待するばかりである。

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僕の所感

まず、MakerDAOの牙城を後発組のCompoundがどこまで崩せるか興味深く見ています。MakerDAOもマルチコラテラルDAIに移行したことで、BTCなどを組み入れる土台は整っていますし、ETHがPoSに移行すれば、担保化が更に進むのは間違いありません。また、DAIもDSRが開始したことで、ボラティリティが下がる土台も構築されつつあります。USDCを用いているCompoundのアプローチはDAOの完成度の観点から考えるとMakerDAOに比べて劣るため、この辺りの中長期の視点で、ユーザーが2020年、この2つのDeFiをどう評価するか気になるところです。

そして、ブロックチェーンインターオペラビリティとDeFiとの関連性において、ようやくBaaS間でのトランザクションが起き初めているのが理解できました。イーサリウム以外の各BaaSは、やはりまだ自分たちの経済圏を構築することにフォーカスしているため、閉じた状態を維持したく、Swapには関心を示さないとみていましたが、二社間DEXが立ち上がることで、効果的なSwapのユースケース開拓に動いているのがわかります。

更に、経済格差解消のためとして、より少ない担保、もしくは担保自体を不要にしたDeFiのプロダクト開発の重要性について言及されています。この点は全く同感です。ただ、まず、理解すべきは、BATトークンのようにユーザーが簡単に稼ぐことができるトークンエコノミーが他のパターンも含めて普及し、かつ、それらを保有しているユーザーが担保化できる権利が付与されることで、MakerDAOのようなコラテラルモデルによるDeFiは一定規模に発展すると考えています。

その上で、更にトラストスコアに代表されるような担保を必要としないDeFiモデルのプロダクトが登場することは価値のあることなのですが、この領域は以前からよくこのブログで触れている「シンギュラリティの罠」にハマるリスクが高い領域なので、また、別途、ブログにまとめたいと思います。

最後にDEXについては、0xのようなより分散的なアプローチよりも、まだ垂直統合型のKyberのアプローチの方が成長を牽引しているのがわかります。

以上です。

 

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