バイナンスリサーチのDeFi市場動向に関するまとめ #2

2.イーサリウムDeFiを解剖する

以下のグラフが、2019年のイーサリウムのDeFiプロジェクトとそのアクティブユーザー数をまとめたものである。

2019年はKyberがトップになった。

Compoundが2番手であり、サブカテゴリであるファイナンスのNo.1になっている。

しかしながら、この数字が、上記プロトコルにおける取引されているアセットの全てを表しているわけではない。たとえば、DAIは、MakerDAOのスマートコントラクトを利用してトレーディングや決済に使われるわけではない。同様に、CompoundのcTokensや、FulcrumのiTokensやpTokensも、彼らのプロトコルの外で使えるように設計されている。彼らのトークンのトランザクションを計算することで、それぐらいの数のアクティブアドレスが取引を行なっているかがわかる。

2.1. USDC: DAIの宿敵

MarkerDAOがそのプロトコルを通じて発行するDAIこそが、DeFiの中核とも言える存在ではあるが、2019年、Centoreコンソーシウムが発行するUSDCが、その宿敵として成長してきている。

Sources: Binance Research, Etherscan.

上記グラフが、USDCとDAIの発行量を比較したものである。DAIは、そもそも100 Millionの発行制限をかけており、かつ、2019年11月に120Millionの発行上限に引き上げた。一方、発行制限を持たないUSDCは、261.3 Millionから518.5 millionと、1年で、+98.4%増えている。また、SAI+DAIの合計値で見てみると、69.6 Millionから111.6 Millionと1年で+60.4%の増加になっている。

Sources: Binance Research, Etherscan.

USDCの発行総量が増えると同時に、USDCの担保としての利用もまた2019年に成長を見せている。

30MillionのUSDCがCompoundに2019年に供給されており、この金額は、2019年12月31日時点でDAI/SAIの発行済時価総額の25%に相当する。

Sources: Binance Research, Compound.

Compoundは、2019年5月23日よりUSDCのサポートを開始している。そこから9月にかけてUSDCの供給量一気に増えており、12月末には30Millionに到達した。

しかし、この供給量の豊富さだけが、USDCの人気の主な背景にあるだけではない。DAIに比べてUSDCはその価格安定性が、高いことが2019年の分析からわかっている。

Sources: Binance Research, CoinMarketCap.

3つ目として、DAIの発行には、MKR保有者に支払う安定化手数料という金利支払いが求められる一方で、USDCの利用にはほとんど手数料がかからない。安定化手数料については、2.3で議論する。

2.2 Maker DAOは、CompoundとSynthetixの急成長による挑戦を受けている。

DAIの供給量が増加する一方で、MakerDAO自身も預けられている担保の全体価値は成長している。

Sources: Binance Research, MKR.Tools.

2019年の前半期に、MakerDAOの担保価値合計は、大きく成長し、この背景はETHの価格上昇がある。つまり、下半期は減少している。しかし、担保化されるETHが増えるほど、DAIの供給量は増える。結果、2019年に担保かされた合計値は、249億ドルから342億ドルと、+37%増加した。一方で、ETHの価格は、-2%になった。

しかしながら、担保増加をえられつつも、2019年初期時点のMakerDAOのDeFi市場におけるドミナンスレートは1月の90%から、12月には50%に低下した。

Sources: DApp Review, Binance Research.

このドミナンスレートの低下に最も影響を与えているのが、CompoundとSynthetixである。

Sources: DApp Review, Binance Research.

Compoundに担保化された資産の合計値は、年初の13.4億ドルから86.3億と、+541増加した。

Sources: DApp Review, Binance Research.

また、Synthetixは更に目覚ましい成長を遂げており、3月1日時点で、$1.6億円だった数値は、年末で160億円となり、この背景の一つには、SunthetixのSNXトークンの急激な値上がりもある。

Synthetic エコシステムの中核は、sUSD(Synthetic USD)にあり、これはSNXトークンによって裏付けられている。12月末時点での供給量は、11億である。

しかしながら、SNXは、MakerDAOで担保化が可能になっているBATやETHのように、流動性が高いわけではないので、SNXの高いボラティリティと共にどのように振舞って行くのか様子を見ていく必要がある。

また、それ以外の小型のDeFiプロジェクトも2019年に大きく成長しており、中でもFulcrumとNuo Networkの成長が目立つ。

Sources: DApp Review, Binance Research.

Fulcrumは、bZxは、2019年6月から担保化が可能になり、6ヶ月で、$2.7億円に成長した。

Sources: DApp Review, Binance Research.

Nuo Networkは、マージントレーディングのDEXプラットフォームであるが、初期の6ヶ月で急激に成長し、7月から8月にかけては17億円台まで成長。その後、担保化されている価格の下落などが原因で総額は減少している。

2.3. 高いボラティリティとスプレッドをもつDeFiの金利市場の現状

上記のCompoundにおける貸し手側の金利と借り手側の金利の数値をまとめた図を見ればわかるように、アセット別にかなりバラツキがある。

たとえば、 ZRX、REP、ETHの貸し手金利はかなり低い。また、REPとETHは、借り手側金利も最も低い。一方で、ZRXの借り手金利は高い。ステーブルコインのDAIやUSDCはいずれも高い。

この点を踏まえると、ステーブルコイン以外のETHや他の暗号資産は過小評価されていると言えるだろう。

一方で、ETHやBTCによる特定のトレーディングについては、中央集権型の取引所を利用するより安くできるケースもある。

しかしながら、DEXの流動性は中央集権取引所に比べるとまだまだ低い。

Sources: Binance Research, LoanScan.

USDCの貸し出し金利は、2019年6月より徐々に低下してきている。CompoundとdYdXの間のスプレッドは、縮小しつつあるが、見ての通り、dYdXの貸し出し金利のボラティリティは、Compoundに比べて高い。

Sources: Binance Research, LoanScan.

一方で、MakerDAOのステービリティフィーは、CompundやdYdXに比べて、しばらく高い状態が続いていたが、9月中旬以降は、下回っている。

dYdXの貸出金利が比較的に高い水準にあるのは、Sensitive Rate Fomulaによるものである。

ステイビリティフィーのプレミアムについては、いく通りもの説明ができる。まずは、MakerDAOのステイビリティフィーは、毎週、ガバナンス投票で修正されるが、CompoundやdYdXは、マーケットメカニズムによって自動的に最適化される。結果的に、この差がスプレッドを生んでいる。加えて、Nexus Mutualをはじめとするより多くのスマートコントラクト保険プラットフォームや、UMA Protocolのようなデリバティブプロトコルが開発されることで、このボラティリティに対してユーザーはより複数の対応策を手に入れていくことになる。

しかしながら、マルチコラテラルDAIが立ち上がったことで、ステイビリティフィーのプレミアムは、CompoundやdYdXをすぐに下回る結果になった。

更に、このスプレッドを利用したアービトラージ取引の機会がある。特に、ETH保有者は、DAIをdYdXから借りて、Oasisなどを使ってDSRに預けておくことで、利益をあげることができる。(いわゆるキャリートレード)


DeFiが、そのスコープを拡大する一方で、その市場規模はまだ小さいままであり、そして、その結果、DeFiの金利は、プラットフォーム特有の要因によって左右されることが多い。つまり、金利手数料のボラティリティが高かったり、手数料の構造なども。

2.4. DEX2.0の成長

2019年は、多くのDEXが日別売買高で成長した。


Kyberは、2019に大きく成長し、6月、7月、11月は、7億円の売買高を記録した日もある。


0XプロトコルのDEXに入るリレイヤーの Raday Relay, DDEX, imToken (ex-TokenIon), Paradex, そしてDeversiFi3の合計の売買高は上記の通りで、平均の日別売買高は、$702,000である。


Uniswapも2019年は大きく成長した。2019年の終わりには、ロックアップされているアセットの合計は28億円を超えた。

UniswapとKyberの成長は著しいものがあるが、DEX市場全体で見ると、最古参のDEXであるOasis(MakerDAOが運営)や、IDEX(KYCが必要)の年間売買高に比べると劣る。

ここからは、イーサリウム以外のブロックチェーンプラットフォームのDeFiに関する取り組みを見ていく。

つづく。

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