ブロックチェーンを活用したトラストスコアは、人類に本質的な「信用格差の解消」をもたらすのか? #2

非中央集権的なトラストスコアネットワーク「MoAI」とは?

その答えが、以下の図です。これは、そのプロダクトのネットワーク効果をデザインしたものです。2018年の夏頃のものですね。これはSNS型のプロダクトです。

 

僕は、このプロダクトをデザインするにあたり、研究対象にしたのは、沖縄に残る「模合」と呼ばれるP2P型クレディットユニオン(発祥の地は、沖縄で、それが日本本土に伝わり、本土では、無尽や頼母子講と言われ、明治維新の近代国家建設の流れの中で廃れていき、昭和の高度成長で完全に消滅した)と、シリコンバレーのインナーサークルがもつレファレンスメカニズムの二つです。僕はこのプロダクトには仮名で「MoAI」と名付けていました。もちろん、模合にちなんだネーミングであり、AIから類推できるように、「シンギュラリティの罠」を意識してのネーミングです。シンギュラリティの罠は、AI時代の本格到来とともに全ての人が意識すべきことなので、別途まとめている「こちらの記事」を参考にしてください。

簡単に「模合」について説明すると、例えば、「20人で車を買う」模合がある場合、毎月一人5万ずつ出して、20人の内、一人が100万をその月にもらうことができます。これを20回繰り返せば、20人全員に100万が行き渡ります。はじめに受け取る人が一番リスクが低いため、この人がその模合のリーダーとしてメンバーが20回きちんと5万払うというこの模合コミュニティの舵取りをします。そして、最後に受け取る人は一番リスクが高いため、後半に受け取る人ほど、他の19人から数%の手数料をもらうことで、損得のバランスをとります。あくまで手数料という考え方で金利ではないです。イスラム金融の考え方と同じですね。経営者同士の模合になると、月100万で10人などのサイズもあり、この場合、月1000万ですから事業資金レベルです。かつレストランなどであれば、友人を誘ってそのお店に行って飲み食いすることでお互いに商売が維持できるよう努めます。勘の良い人であればわかると思いますが、ポスト資本主義社会の信用システムを考える上で、非常に革新的なメカニズムが組み込まれているのです。インターネットとブロックチェーンを使いこなすことで、この革新性は何倍にも増幅させることができます。

話を元に戻し、VALUやタイムバンクなど、多くの日本人の起業家が考え出した、いわゆる「株価型」のトラストスコアモデルは、Orbやリブラのように決済データのように加盟店開拓をする必要がないので事業開発のスピードは上がりますが、全く「信用格差」の解消には貢献しません。理由は二つです。株価とは、かつて投資家でもあった著名経済学者のジョン・メイナード・ケインズが指摘したように「美人投票」の世界、つまり、人気投票のメカニズムが大きく作用するので、一番恩恵を受けるのは、パブリシティの高い人のみなのですね。簡単にいえば、TVで売れている役者、芸人、もしくはトップクラスのスポーツ選手、ないしは、YoutuberやTwitterでフォロワー数が多いなど知名度が高い人です。単純な統計論で、知名度が高い人ほど、潜在的な購入者数は増えるわけですから、そのようなタイプの人がもっとも恩恵を被るサービスになってしまうのは、容易に想像がつくわけですね。しかし、ブロックチェーンが救うべきは「新興国の貧困層」です。

では、簡単に、なぜ「株価型」のスコアモデルが、知名度の高い人しか恩恵を受けないのか?について話をします。それは、株価には「上限」が存在しないからです。無限に高い事を志向する性質を持ちます。時価総額が高いほどいいからですね。これは別の角度から見れば、今のお金の仕組みと全く同じです。つまり、知名度の高い人の株価はどんどん上がるが、そうでない人の株価は全く上がらない。もちろん、TwitterやYourtubeを使うことで、今まで銀行など古い体質の信用システムを管理している企業に頼らず資金調達していける可能性をある程度は提供できているのですが、知名度の高さ=信用度の高さ、ということしか、トラストスコアの評価メカニズムに入らないため、したがって、経済格差の問題は根本的に解決できていません。全ての人が、Twitterのフォロワーで10万人になることは絶対に起きないし、Youtubeで100万のサブスクライバーを獲得することも起きない。

僕のプロダクトは、まず、スコアに上限を設けています。0.00点から5.00点まです。こうする事で、高いスコアを獲得できる人の確率分布が、自然と増えます。ある程度の数学ができる人であれば、単純にわかると思います。そこにシンプルなスコアルールを追加し、さらに、過剰なスコア格差が生まれないようにデザインしています。しかし、ここまではAliPayやWeChatPayのトラストスコアも同じです。

どうやってスコア格差が生まれないようにするか?決定的に革新的なUXポイントは、AliPayやWeChatPayのように、「本人」にトラストスコアは与えず、本人につく「リファレンス」にスコアを与えます。詳しく話をしていきます。

スコアアップにはゲームミフィケーションの要素を与えており、Level1からLevel3まで、そして、最終レベルとして「Level X」を用意しています。Levelが上がるほど、MoAIの中で実現できることが増えていきます。同時に、このLevel分けが、実はネットワーク効果を高めるための段階的な成長戦略としてのデザインも組み込んでいます。

全体のトークンエコノミー はビットコインと同様に供給制限型でデザインしており、供給元はユーザーの新規開拓です。

Level1のグロースメカニズム:

-新しいユーザーを連れてくる人にトークンインセンティブを付与する。1000万IDを付与するまでは、100トークン、1億IDまでは50トークン、10億IDまでは、20トークンを付与します。アフィリエイトの既存ユーザーだけでなく、新規ユーザーも同じ量のトークンがもらえます。

-このアフィリエイトのインセンティブ評価として、「新規ユーザーのリファレンスを紹介したユーザーが書き、かつ第3者の認証を得る」という条件を与えています。これがLevel1の肝ですね。更に詳しく話をしていきます。

-シリコンバレーで数百人程度の規模で形成されているインナーサークル内には厳しいリファレンスシステムと評価経済が働いています。別にスコア化されているわけではなく、共通の暗黙知でルール化されています。例えば、著名投資家のピーター・ティールから資金を調達したい起業家は、彼が「信頼している」友人ネットワークの誰かに認めてもらう事で、プレゼンする権利を獲得します。つまり、リファレンスが必要なのですね。しかし、紹介者である友人も責任が重いです。なぜなら、実力の低い起業家をピーター・ティールに複数回紹介していると、ピーターティールの彼に対する評価は下がり、ピーター・ティールは、以後、この人からの紹介の優先度を落とし、他の信頼できる紹介筋の話を優先するようになります。P2Pで監視する相互評価のルールが組み込まれているわけですね。非常に効果の高いリファレンスシステムです。

-参考までに、一方、今の世の中のリファレンスシステムは、これとは真逆で、正直、ほとんど無価値です。なぜなら、採用面接時のリファレンスなどもそうですが、転職希望者が就職希望先に対して、自分にとって都合のいい評価をしてくれるリファラーを紹介でき、かつ、リファラーもその評価責任を追っていないので、ほとんど機能していません。

-これらを踏まえて、MoAIのリファレンスシステムを設計しています。まず、ユーザーA、B、Cがいるとします。AがBのリファレンスを書こうとしており、Cがそのバリデーターという役割分担です。Bのリファレンスの精度を引き上げるため、三人ともMoAIのソーシャルネットワーク上で繋がっていることが必須になります。これは、Bのリファレンス品質に問題があることがわかった場合、AやCのトラストスコアが下がるゲームルールを組み込んでいるからです。この点を踏まえて、Facebookの「Connect」や、Twitterの「Follow」に比べても、三人のソーシャルリレーションは、より濃いものになるため、つながることを「Bond = 絆(キズナ)」と名付けています。

-Bond関係になるには、お互いに同じ量のトークンを送金します。この量は自由に決めることができます。これが、リファレンスのトラストスコアが高いユーザーに資金が流れてくる仕掛けの一つにしています。なぜなら、自分のリファレンスの精度をあげるには、リファレンスのトラストスコアの高いユーザーとBond関係になることが重要になって来ますから、スコアの高いユーザーには、Bond リクエストが多く飛んで来ます。しかし、Bondリクエストは全て受ける必要はありません。その人の自由です。つまり、リファレンスのトラストスコアが高い人ほど、より多くのトークンを手に入れる傾向が生まれます。わかると思いますが、能力が高いことが重要ではなく、その人の能力が正しく評価されているほど、リファレンスのトラストスコアは上がります。だから、株価と違い人気投票の要素は排除しているのです。

-しかし、同時にBondは1年で有効期限が切れるようにしています。目的は、現実の社会をよく見ればわかりますが、特定の人とのBond関係が未来永劫続くことは稀であり、そのリファレンスもまた本人の能力成長によって時間と共に陳腐化する可能性が高いからです。ただし、有効期限が切れてから1ヶ月以内など一定期間内に、もう一度Bond関係なるための相互送金を行えば、Bond関係は維持されます。1年の期限も1ヶ月も、DAOのガバナンス投票で変更していくことが当然可能です。

-AのBに対してのリファレンスは、その人の能力評価です。そして、このリファレンスの内容に対して、トラストスコアがつきます。リファレンスXに対してのトラストスコアが、4.5だったり、3.8だったりする、ということですね。このスコアは、バリーデーターがもつリファレンスのトラストスコアが高いほど上がります。そして、バリーデーターが複数付いているリファレンスほど精度が高いと評価されます。これらの発想は、食べログの評価経済と同じです。コモディティ化したアルゴリズムのモデルですので、実装は難しくはありません。

-そして、このユーザーBにトラストスコアがつかず、BのリファレンスXにトラストスコアが付いている点、ここも重要なポイントです。AliPayやWeChatPayのトラストスコアのように、その人自体にスコアはつけず、リファレンスにつけているということは、Bは、Aと同意できれば、そのリファレンスを削除することもできます。つまり、「ゲーム・リセット」できるようにしているわけですね。これは超重要です。「敗者復活」を可能にしているからです。AliPayなどのトラストスコアは、完全なゲームリセットができません。なので、一度、ルールに反して行為をし足を踏み外すと「シンギュラリティの罠」にハマり、全く信用されない人間扱いを受けてしまう。ゲームリセットするには、IDを破棄して、ゼロから別のIDを作る必要がある。つまり、それまで築き上げてきた全てを破棄する必要があるわけです。これはかなり酷ですね。一方、MoAIは、AIに過度に頼らず、ヒューマニティの要素をUXに組み込むことで、MoAIのユーザーがシンギュラリティの罠にハマることを防いでいます。

-そして、アフィリエイト以外に、AとBとCがトークンを稼ぐ方法も用意しており、バリデーターCは、Aのリファレンスに対する証明手数料をAとBの二人からもらいます。二人にしている目的は、Cが誰だと望ましいかを二人で考えてもらうためです。こうすることで、新規トークンの供給がなくなってもトランザクションは発生し続けます。また、Cは自分のリファレンスのトラストスコアが高いほど、この証明手数料を稼ぐ機会が増えるわけです。

-また、リファレンスを書くこと自体に動機付けが必要な場合は、書くことに対して多少のトークンをインセンティブとして付与することも考えています。しかし、未来永劫はこのインセンティブプログラムは続けません。供給制限モデルではなくなるからですね。あくまで、リファレンスを書くことに慣れるため、ないしは普及させるための仕掛けです。リファレンスシステム自体が世界的に普及しているわけではないので、このインセンティブは初期段階では必要になるとは見ています。

-トークンは、アセット価値の上昇を狙うため、当然、ビットコインと同じ供給制限型です。新規供給は、ユーザーが増えることで実現し、この水準は徐々に低下して行きます。つまり、時間軸における供給モデルもビットコインと同じです。

#3につづく。

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