ウォーレン・バフェット氏のビットコインとブロックチェーンの評価に対して想ふこと

投資家として、世界で圧倒的な存在感をもつウォーレン・バフェット氏が、毎年、開催しているチャリティランチのオークションを勝ち取ったTRONの創業者のジャスティン・サン氏が、ライトコイン(LTC)の創設者チャーリー・リー氏、大手仮想通貨取引所Huobiの最高財務責任者Chris Lee氏、バイナンス慈善基金のトップHelen Hai氏、トレードプラットフォーム「eToro」の創業者兼CEOのYoni Assia氏らと共に、ディナーをし、そこでのバフェット氏のビットコインとブロックチェーンの評価について、想ふところをまとめておきます。

ジャスティンがまとめた会話メモは削除されているのですが、僕は、その前に全て読んだので内容は記憶しています。

「ビットコインには価値がない。ブロックチェーンは決済を変革する可能性がある」

というのが、バフェット氏の総評です。実のところ、この評価は、僕のビットコインとブロックチェーンに対する評価の2017年夏頃、つまり、僕がビットコイン=デジタルゴールドと言い出す前の評価と全く同じです。

だからこそ、バフェット氏がこう捉える背景もよく理解できます。彼のように投資経験が長い人であれば、ビットコインのホワイトペーパーを読んで上でも、かつ実際の想定用途を考えても、「通貨」に近い存在と捉えるのが当然だと思います。

通貨という目線でビットコインを評価すると、そこに価値を見いだすのはかなり厳しいですね。まず、交換媒体としての通用性は、単純にどれだけの人がビットコインを日常的に使えるかにかかっています。つまり、ドルと比べるとわかりやすいです。ドルはまずはアメリカ国内での経済取引については、当然、ドルの通用力を与えるための仕組みが整えられています。連邦準備銀行が発行責任を追い、それが地元の金融機関に流通し、企業はそのお金を借りて、事業を行い、従業員に給与を払い、その給与は、銀行口座に預けられて、また他の誰かに貸し出したり、何かの購入に当てられる。これは、ゴールドが通貨として使われた時代でも同じです。純粋に金が通貨として使われているケースはほとんどなく、ローマ通貨をはじめ、国家が製造管理して運用されています。一方、ビットコインは、そこをすべて自然発生的なものに委ねているため、これは、バフェット氏からすると、通用力のある通貨に近い存在とは認めがたいわけですね。また、そこから二次的に生まれてくる資産の保存機能としての価値も見出しくくなる。通用力が低いということは、どこでも使えるわけではないから、彼が保有する株を利確して、ドルに変えれば、生活資金になるが、ビットコインに変えても、生活資金にはならない。というところですね。

しかも、ビットコインはボラティリティが高すぎて、日常利用に向いていません。つまり、チキン・エッグ問題を抱えているのです。通用力を高めるには投機性を下げる必要がある。しかし、その投機性がビットコイン人気を支えてもいる。投機性を下げるための最も的確な対応策は、日常での利用を増やすこと。ドルや円もそうやって、自分たちの通貨価値を安定させ、投機家の市場への影響を極小化している。ビットコインにはまだこの仕組みが整備されていないですね。

これに対して、チャーリー・リー氏が、僕が今、ビットコインに対して持っている「デジタル・ゴールド」としての評価の話を切り返します。かつて中央銀行が金を保有したように、ビットコインを準備金として保有する可能性があると。これに対しては、バフェット氏は回答していないですね。まだ、納得が行っていないのでしょう。

僕が、ビットコインをなぜ、デジタルゴールドと呼び始めたのかについては、「こちらの記事」を参考にしてください。

僕は、上記の点から、ビットコインを決済利用することは難しいと考え、決済利用に最適化されたブロックチェーンのプラットフォームソフトウェアを独自に開発する道を選びました。また、PoWの電気代も問題視していたので、2015年秋に当時、まだ業界ではほとんど実用化されていなかったPoSを採用したBaaSである、Orb1を斉藤賢爾らと共に開発しました。

ただし、ここからが、今回のバフェット氏のブロックチェーンに対する評価とも関わってくるところです。

パブリックブロックチェーンを決済市場に適用するのは時期尚早である。

ということですね。Orb1は、PoSで運用されるパブリックブロックチェーンです。かつ、チェックポイントという、ブロックを最終確定させる処理を定期的に入れることで、決済市場で要求される「ファイナリティ」を与える仕組みを導入していました。このアーキテクチャの着想は、イーサリウムのCasperなどにも影響を与えています。

他にも色々と工夫し、処理能力は、ビットコインの秒間7件に対して、100件程度までは処理できる性能まで持って行っていたので、パブリックブロックチェーンとしての性能は、世界の他のプロジェクトと比べてもかなりハイレベルです。しかし、バフェット氏が指摘するよう、決済市場には、VISAやMasterという非常に優れた強敵がいます。

VISAが誇る、世界4,000万の加盟店ネットワークと、20億人の会員ネットワークの決済処理を日々行なっているVISA.netという決済ネットワークは秒間4,000件を平均で処理する性能をもち、最大50,000件を処理した実績があります。

これを利用している顧客に、Orb1を売り込むわけです。かなり、ハードルが高いですね。当然、直接対決するなどベンチャーのGo-to-market戦略としてはナンセンスですから、ポイント市場や電子マネー市場をターゲットすることで、戦略をずらし、対抗していました。しかしながら、それでも顧客側の要求水準は、パブリックブロックチェーンで満たすにはハードルが高かった。ですから、最終的に、パブリック型を捨て、プライベート型に切り替えて、当時、他のBaaSのコンセンサスアルゴリズムではどこもまだ採用していなかったランダムリーダーセレクションのアルゴリズムを独自に開発し、分散型台帳技術としてのOrb DLTを完成させ、営業パートナーであったOracle社のOracle Cloudでベンチマークテストを行い、秒間3,000件から30,000件の処理性能を証明しました。そして、SBIホールディングスに売却した。現実的な判断の積み重ねで市場価値の高いソフトウェアを完成させたということです。

例えば、このプロダクト戦略の考えは、同じ決済市場にターゲットを置いているリブラにも言えることで、彼らは、Orb DLTと同じプライベートプロックチェーンです。詳しくは「こちらの記事」を参考にしてください。

まだ、セカンドレイヤーのテクノロジーも黎明期の段階なので、パブリックブロックチェーンのアーキテクチャで決済市場に参入するのは非現実的とリブラも判断しているからですね。

では、パブリックブロックチェーンの現時点での最適なテクノロジーの活用領域はどこが最適か?ここに、DeFi市場の本質的価値があります。僕は、仮想通貨を「通貨」ではなく、暗号資産、「資産」と言っているのはこの点からです。一般個人にとっては、この差はちんぷんカンプンかもしれませんが、テクノロジーを理解して、0から1を作り出す起業家をやっている僕の立場からすると、生み出すプロダクトは全く変わってくるので、エライ違いです。資産という視点から捉えると、決済のような高いパフォーマンスをパブリックブロックチェーンに求める必要は無くなります。僕が、MakerDAOに投資している理由もこれです。暗号資産を担保として長期保有のメリットが与えらえるようなプロダクトが普及することで、現時点のブロックチェーン技術のレベルに沿ったインフラが整って行きます。バイナンスのような取引所だけの市場では、このようなことにはなりません。だから、僕のポートフォリオ戦略では、DEXとCoratelized DeFiのレイヤーを分けて定義しているのです。今は、Coratelized DeFi市場が、取引所の市場規模に対してまだ小さすぎます。ステイキングもCoratelized DeFiと同じような機能性を市場に与えますが、全てのプロダクトが採用できる万能なものではないです。インターネットが、はじめ動画のような重たいファイルの共有ネットワークではなく、ブログ、そして、写真と、軽いファイルから入って行ったのと同じことです。

ブロックチェーンの決済利用は、決済の周辺市場から進む。

ですから、決済の世界も、僕が投資しているBATDENTNKNBTTがよい例ですが、決済用途として使われながらも、ど本命の金融市場の決済に使われていない、つまり、中心市場から外れたところから実用化が進むと考えています。僕がOrbで、電子マネーやポイント市場にターゲットしたのも同じ発想ですね。BATなどは、広告予算へのアロケーションであり、ポイントは受け取り手のパブリッシャーは、そもそもトークンで受け取りOKと宣言していますから、XRPが目指すようなブリッジカレンシーとして、データファイナリティーなどを厳密に求めていないわけですね。モバイルデータの売買であるDENTも余っているモバイルデータパックなので、売手側もそこまで厳密さは求めない。CDNのNKNも同じ。リソースの提供者は、BATのパブリッシャーと同じではじめからトークンOKのノードが集まっている。0xKyberなどのDEXが、ゲームNFT市場にフォーカスしているのも同じ。ゲーム市場内の資産ですから、あくまで日常生活とは離れた趣味・嗜好の世界での経済取引。ブロックチェーンの決済利用はこのような金融市場のど真ん中ではなく、周辺領域から実用化が進んで行くと考えています。

僕のポートフォリオ戦略については「こちらの記事」にまとめています。

ただ、バフェット氏がこのような評価を現時点で持っていることは違和感はないです。理由の一つは、本人も認めていることですが、バフェット氏はハイテク銘柄への投資は得意ではないです。今でこそ、アマゾンやアップルの株を相当保有していますが、それも両者とも、世界の時価総額Top10に入るほどのレベルに会社が育ってから投資を開始しています。バフェット氏のハイテク銘柄に対する評価は「競争が激しく、生き残る銘柄の選定が難しい」と、自叙伝でも指摘しています。これは、パーソナルコンピュター市場やインターネット市場が実際にそうだからですね。市場の黎明期にカンブリア爆発のような状態が発生するため、その中から生き残る銘柄を選び出すのはかなり難しいと判断しているということでしょう。長期投資を軸とするバフェット氏からするとこのタイプの銘柄をポートフォリオに組み入れいるのはなかなかハードルが高いということですね。

逆に、僕の場合、その世界で起業家としてずっとやってきているので、生き残る会社がどういう会社なのかの現場を常にみており、その点から、バフェット氏の長期投資の戦略をきちんと踏襲しながらも、僕が独自に作り上げている「未来からの逆算」と「ハイテク市場で生き残るスタートアップの条件」などの視点を取り入れた上で、ポートフォリオを組んでいます。つまり、ハイテク銘柄のスタートアップ投資とバフェット氏の長期投資を組みわせた投資哲学を作っています。

バフェット氏がビットコインをデジタルゴールドとして評価し始めたら、世界の投資情勢は、劇的に変わるでしょうね。果てしてその日が、彼の存命中にやってくるかどうか、これは神のみぞ知るですね。

以上、みなさんの参考になれば幸いです。

 

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