マスター・オブ・スケール –元Google VP, Yahoo! CEO マリッサ・メイヤーのインタビュー#9

ホフマン:ここで以下に、メリッサが、社員をこの改革プロセスの一員に組み込んでいったかについて注目して欲しい。彼女は、トップダウンのやり型、つまり布告と発表を持って官僚制度を撤廃していくと同時に、そのプロセスの中に社員を巻き込んでいった。つまり、彼らを官僚制を排除するための彼女のパートナーにしていったわけだ。社員たちは、この解決策の一部に自分たちがなっていくことを通じて、会社へのエンゲージメントを再び取り戻すようになっていた。

その薮を組織の中から取り除きつつも、メリッサは、新しいアイデアを社内で育てていくことをやりたかった。Yahoo!は、Googleのように、新しいアイデアがすぐに社内へ広まるようなカルチャーはなかった。つまり、メリッサにとっては、全く新しい会社のカルチャーを作り上げるための種を得る機会をなかったのだ。

しかし、彼女が取り組んだことは、その長期で会社を作り変えていくような可能性を持ったアイデアを社内に持ち込むため、それができる人材を社内で育てたことだ。そのために、彼女は、”CEO Challenge”という、全く新しいアイデアを事業化するための取り組みを誰でもスタートできるプロジェクトを開始した。

メイヤー:もし、誰かが年間に5億円以上を稼ぎ出せるアイデアを思いついたら、私たちはその人に特別報酬を与えた。チームごとに、2500万円、そして、個人に500万円のボーナスを提供した。確か、12個ぐらいのアイデアが出てきて、そのうち6個に事業化のチャンスを提供し、結果的に、年間20億から30億円の収益を生んだわ。

その後、会社全体で840のアイデアが提案された。その中には、素晴らしいアイデアがたくさんあったわ。そして、そのうち200のアイデアに事業化のGoサインを出した。結果的に、何十億円以上の収益がそこからもたらされた。

ホフマン:その溢れ出すアイデアの中から、素晴らしい規模の事業がYahoo!の中で生まれていった。メリッサは、こうやって、自分にとって必要な人材を社内から育てていったわけだ。またそこから新たなリーダーも生まれていった。しかし、最終的に、時間切れとなったしまった。

ここに、僕の理論のある種の限界があることが見えてくる。つまり、自分にとって必要な人材を育てることは、優れたスケールするスタートアップの世界では、はるかに容易であるということ。スタートアップのカルチャーは、醸成途上であるからこそ、君は長い視点で人材を育てることができる。Yahoo!のような大きな会社でもこれは不可能ではない。十分、追求する価値のあることだ。しかし、常に、君は「時間」を意識しなくてはならない。その限られた時間の中で、自分にとって必要な人材を作り出すということ。最後に改めて、メリッサにYahoo!での時間について振り返ってもらおう。

このエピソードのはじめに約束したように、Yahoo!で起きたこと、どこが上手く行かなかったかについても、メリッサに語ってもらいたいと思う。しかし、念の為、ハッキリさせておくが、Yahoo!は本当に厄介な問題を抱えた会社であったのであり、そこにメリッサはCEOとして関わったということ。

かつては、検索エンジンとメールサービスのパイオニアだった会社が、徐々にユーザーを失っていっていた。多くの投資家にとって、Yahoo!という会社の企業価値は、Yahoo!の事業そのものにはなく、Yahoo!がもつ二つの大きな素晴らしい会社の株式シェアだった。その二つとは、アリババとYahoo!Japanだ。

メリッサのCEOとしての在職期間の間、アリババへの投資は、Yahoo!という組織が重力に逆らって飛ぶためのロケットパックのような存在だった。つまり、アリババの株式を売却することで、先ほど話をした新しいアイデアを事業化するための資金を得ることができたわけだ。

しかし、このロケットパックは、短期的な電気ショートも引き起こした。そのショートとは、投資家がアリババから資金を引き上げることに熱心になったとき一気に火がついた。つまり、メリッサとそのチームにとっては時間切れとなってしまったわけだ。

メイヤー:一部には知られていた事実として、売却されるまでの最後の18ヶ月間のYahoo!の成長は本当に素晴らしいものだった。私達は5年間で、2000億円もの新しい収益源を作り出したのよ。そして、投資銀行家たちにこう言わせたわ:”この成長の数字を見てくれよ。信じられないほど素晴らしい。この部分だけでも別会社として切り離してIPOさせることも考えていいんじゃないか”と。

ホフマン:メリッサが生み出した新しい成長は本当に素晴らしいものだった。しかし、それだけでは当時のYahoo!にとっては十分ではなかったんだ。Yahoo!の取締役は、アリババの株式のことばかり気にかけていた。最善の選択肢は、Yahoo!をアリババ保有株から完全に切り離すことだった。しかし、政府の新しいルールは、この実行を難しくした。結果的に、メリッサも含めた取締役会は、Yahooにフィナーレを与えることを選んだ。彼らは、Yahoo!のコアアセットをベライゾンに売却し、アリババの保有株式を新会社のAltababaに保持させることを決めた。

つづく

関連記事