SDGsを達成するための新たなイノベーションKPI、「SSR」とは何か?

SDGsと現在の経済システムの経済指標であるGDPは恐ろしく相性が悪い。なぜか?

この二つは、完全に矛盾している存在だからなのですね。水と油の関係というやつです。絶対に相入れることはない。でも、ほとんどの人がこのことを疑問視していないことに僕は非常に違和感を覚えます。

国連のSDGs(持続可能な開発目標)が設定している17のゴールについて、きちんと確認したことがない人も多いと思うので、おさらいもかねてウィキペディアからの抜粋です。

From Wikipedia –

    • 1.貧困をなくす…「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」
    • 2.飢餓をゼロに…「飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する」
    • 3.人々に保健と福祉を…「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」
    • 4.質の高い教育をみんなに…「すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」
    • 5.ジェンダーの平等…「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う」
    • 6.安全な水とトイレを世界中に…「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」
    • 7.エネルギーをみんなに、そしてクリーンに…「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」
    • 8.働きがいも経済成長も… 「包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する」
    • 9.産業と技術革新の基盤をつくろう…「強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」
    • 10.人や国の不平等をなくそう…「各国内及び各国間の不平等を是正する」
    • 11.住み続けられるまちづくりを…「包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」
    • 12.つくる責任つかう責任…「持続可能な生産消費形態を確保する」
    • 13.気候変動に具体的な対策を…「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」
    • 14.海の豊かさを守ろう…「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」
    • 15.陸の豊かさも守ろう…「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復16及び生物多様性の損失を阻止する」
    • 16.平和と公正をすべての人に…「持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する」
    • 17.パートナーシップで目標を達成しよう…「持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」

 

このブログをよく読んでくれている人であれば、すぐに上の17のうちのどれと矛盾しているか、すぐにわかると思います。そう、冒頭のNo.1「貧困をなくす」ですね。他にも細かい視点でいえば、2,6,7,8,10,11,13,14,15,16などもGDPと完全に矛盾しているのですが、話が長くなるので、SDGsがNo.1に持ってきている貧困問題をベースに説明します。

貧困の原因は、GDPそのものにある

なぜか?GDPが資本主義システムにおける成長指標だからです。GDP(国内総生産)は、日本のGDPが500兆円とかよくいいますが、「お金の量」で計測しています。つまり、お金が増えた方がよい。お金を増やすためにはそうすればいいか。文字通りです。「お金を増やし続ければよい」=お金をすり続ければ良いというわけです。しかし、急激にお金の量を増やすと経済が混乱するため、政府もそんなアホなことはしません。日本円の発行量は、日本銀行が管理しているのですが、彼らは年率2%という目標を掲げています。これをインフレ率と言います。インフレーション=増やすこと。2%ぐらいのインフレ率であれば、経済は混乱しないことが過去経験から分かっているからです。

しかし、インフレ型の経済は、必ず、バブル・恐慌経済を繰り返しします。循環性がないからですね。不況の度に、貧乏人は財産を失います。一方、お金持ちは、大量のお金を持っているため、不況のときにも耐えられます。世界恐慌のときにも、株価が暴落したことでロックフェラーが大損したことは皆知っていますが、同時に、彼がその暴落した株式を購入したことで、値段が回復した時点で、損失分をほとんど解消するほど利益をあげたいたこともよく知られています。つまり、お金持ちは不況に耐えられる。

結果、経済格差が広がります。トマス・ピケティの「21世紀の資本」などを読んだ人であれば知っていることですね。僕は、彼が本を出す10年以上も前にこの事実を理解していたので、彼の本は買っていないです。僕は、彼の本が出る前から、Orbのホワイトペーパーにまとめているように、現在、僕が人類が抱える4大問題と名付けている「人口爆発、環境破壊、経済格差、戦争」の原因に、現在の資本主義システムがあることを指摘しています。詳しくは「こちらの記事」を参考にしてください。自分で言うのもなのですが、ピケティよりも圧倒的に理論的裏付けと実際的解決策の提示として優れた論理的展開を行なっていると思います。

そうして、貧困はますます拡大していく。ピケティの本でも言われているように現在では、世界のお金の99%を富裕層1%が握り、残りのたったの1%のお金を99%もの貧困層が持っているという以上なほどの貧困問題が発生しています。

つまり、GDPという経済指標を捨てない限り、SDGsは未来永劫実現しないただの「机上の空論」に終わる運命にあるということです。

SSRとは何か?

SSRとは、僕自身が、GDPにかわる新しい経済成長指標として提唱しているものです。Self-Sustaining Ratio = 自給自足率を表しています。GDPは、経済が大きく規模を拡大するほど成長していくことが正しいと主張している経済指標です。一方、SSRは、その逆です。自給自足率が高いほど、経済が成長していると捉えます。

どちらの方が持続性が高いと思いますか?勘の良い人であればわかると思います。当然、後者です。規模の経済を追わない、つまり、お金の量で成長を計測しないからです。よりコンパクトな経済ほど優れていると評価する成長指標が、自給自足率だからです。

SSRを追い続けることで、人類は、地球の再生能力を超えた資源消費を続けるGDP型の経済システムから解放されていくというのが僕の考えです。このブログでは度々登場しているグラフですが、同じく国連WWFが毎年発表している「生きている地球レポート」において、環境破壊の最大の原因は、人類が地球の資源をその再生能力以上に消費していることを指摘しています。


現時点で、地球1.5個分、SDGsが進展しないと2030年には2個に達すると言われており、ここが大きなターニングポイントになると言われています。こ2個に達すると一部の都市などでは環境汚染の激化が原因で人が住めなくなると言われています。

一方、GDPはそんなことは御構い無しの経済指標です。人口も増えた方がいいし、一人一人たくさん地球の資源を消費した方がいい、これがGDPという経済指標です。これでは、SDGsがまともに進んでいくわけはないですね。環境活動家のグレタ・ポルテさんが大人に対して怒るのも無理もありません。今のSDGsは机上の空論のままなのですから。

なぜ、SSRは、SDGsの達成に貢献できるのか?

SDGsを実現していくには、様々なイノベーションが必要です。地球環境を傷つけず、地球がもつ再生能力以下の資源消費活動を今の人類ができるようにしていくための様々なイノベーションが必要になります。

しかし、それをGDPで計測していて、果たしてそれらのイノベーションが進むでしょうか?答えは絶対にNoなのですね。僕は、イノベーションの世界で15年近く活動し、自らイノベーションを起こしてきたので、その点を深く理解しています。

なぜなら、今の世界のイノベーションをリードしているシリコンバレーがGDPと同じ「規模の経済」で自分たちの成功を計測しているからなのですね。これは、中国もインドも同じですね。彼らのように巨大人口市場がまず重要なので、日本や北欧などなど、人口が減っている、もしくは大した数のいない市場はイノベーションのターゲットにはなりません。Facebookの25億人のアクティブユーザーが素晴らしいなど、全ては、巨大人口の市場で使われることが素晴らしいというイノベーションの世界です。それこそが、成功の計測手法なのです。

しかし、SDGsをみてください。どこにも「規模の経済」を追えとは書いていないですよね?規模の経済のイノベーションは、ローカル市場がもつ様々なその地理的環境ならでの問題を無視します。なぜか?無視しないと、何十億人が使うような事業を生み出せないからです。一番わかりやすいのは、イオンのショッピングモールが地元の商店街を破壊した結果、地域の循環経済が破壊され、結果的に、地方格差を深刻化させる、つまり、地方の人々がどんどん貧しくなることに手を貸しているなどは良い例ですね。

なぜか?GDPを元に、営利企業として資本効率が追うからですね。イオンが、地元のスーパーより、安く肉や野菜を仕入れることができるのは、グローバル経済による労働賃金の安い世界の農場、つまり南米やアジアなどで膨大な購入量を武器に、安い値段で大量に野菜や肉を買い付け、それを巨大な物流網を使って、日本の各イオンスーパーに運んでくるからです。つまり、賃金の高い日本人労働者が生産・運営する地元の農家やスーパーは全くこれには太刀打ちできません。巨大な資本を持っている方が有利に勝負ができてしまう。それが、GDPによるイノベーションの世界です。

Uberもそうですね。確かに、Uberはとても便利です。自動車を使った移動手段にイノベーションをもたらした。MaaSという世界的ムーブメントを生み出した。これは素晴らしいこと。しかし、日本での地元タクシー会社との対立は、先に述べたイオンが地元の商店街と対立しているのと同じです。つまり、規模の経済、資本効率を追う、GDP型のイノベーションは、ローカル市場を無視するか破壊すると言うことです。これでは、僕らの社会は、全然、持続性の高い幸福度の高いものになって行かない。

わかりますよね?今のままで、全く、SDGsが本格的に進んでいかないのが。

ディープテックによるイノベーションは、SSRで計測することが絶対条件である

SDGsに関する課題のことを我々は「Deep Issue(ディープ・イシュー)」と呼びます。そして、ディープ・イシューを解決するためのイノベーションの領域をDeep Tech(ディープ・テック)と呼びます。

シリコンバレーのITによるイノベーションに慣れてしまっている人は、このディープテックのイノベーションとの違いをあまり理解できていないと思います。シリコンバレーでも起業した経験の僕からすると「かなり違い」ます

理解を促すため、事例一つ話をします。DeepTechのイノベーション分野で、僕が注目する一つに「Food Plant Factory」=植物工場のテクノロジーがあります。

https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/201308/201308_06_en.html

植物工場とは、土地が狭い地域でも地産地消による農業の自給自足率を高めるために研究されているディープテック分野で、建物の中に培養液を敷き詰めて野菜や果物を育てる技術です。GDPベースのイノベーションから考えると、この事業は全く投資の対象になりません。なぜなら、アグリテックの事業をやるなら、土地が安く人口が大量にいるインドや中国でやった方が圧倒的に巨大なリターンが得られるからです。この市場機会と投資家が天秤にかけてしまったら、植物工場のディープテックイノベーションは、全く進化して行かない。現に、未だに実用化の目処が立っていません。単価が高すぎるのですね。高級花なや高級果物などの栽培でもまだ高すぎて作れないと言われています。一般家庭にも出回るレベルの製造単価まで落とすには、もっと頭脳と資本を投下していく必要があります。しかし、GDPベースでイノベーションを計測していたのでは、一向に、植物工場のテクノロジーの研究開発に資本と人材が流れて行かない。一方、SSRに成長指標を切り替えれば、間違いなく頭脳と資本が流れていく。

別の例で言えば、脱プラスティックソリューションや再生可能エネルギーもそうですね。プラスティックは加工が簡単なので、スーパーのレジ袋だけでなく、食べ物のパッケージなど様々なものに利用されています。が、100年経っても分解されないと言われているため、途轍もないレベルの環境破壊を引き起こしている。

http://earthporm.com/heartbreaking-photos-of-pollution/

それで、今も尚「脱プラスティック」の技術に多くの人材と資本が流れて行かないのは、プラスティックがあまりも安価に製造できるため、代替手段レベルのテクノロジーを作り上げるのに、非常に時間がかかるのですね。

再生可能エネルギーもそうですね。いまだに石油依存や原子力依存からの脱却が進まないのは、そのほうがキロワットあたりの「発電単価」がまだまだ安いからです。資本主義のルールとしてメイクセンスしないのですよ。風力発電や波力発電も含め自然エネルギーを活用した無限型の再生利用可能エネルギーを安く実現するための発電技術の研究開発には、もっと頭脳と資本が必要です。しかし、多くは、そこは時間とコストがかかるため投資の対象にならない。僕がいるOISTでも、政府の税金を使って、再生可能エネルギーとして非常にポテンシャルの高い波力発電の研究が行われ、ようやく民間からの資金が入ってくるようになってきた。つまり、事業化までにとても時間をお金がかかる。

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/gallery/393184?ph=1

一方、SSRに切り替えれば、全て必須のテクノロジーになります。「必要は発明の母」であるということ。火力発電の石油や石炭が手に入る国は、世界の一部をのぞいてほとんどないのだから当然であり、今の日本のプラスティックゴミは、全て政府が新興国に安く買い取ってもらうことで、日本の海に溢れていない一方で、新興国の海は、日本から持って来られたプラスチックゴミでどんどん環境が破壊されています。しかし、GDPからSSRに切り替えれば、全て自前で処理しなければならなくなりますから、当然、自分たちの住んでいる目の前の海岸が汚れることを嫌い、皆、プラスチックに頼らない技術の開発に真剣になる。つまり、人も資本もそれらの新技術開発に流れていく。

例えば、日本のディープ・テックベンチャーの先駆者であるユーグレナ社が、ミドリムシで飛行機を飛ばすためのジェット燃料を研究開発していることも全く同じですね。有害物質を生み出す化石燃料である石油から、再生可能なエネルギーであるミドリムシにジェット燃料を切り替えることができれば、これはで、日本は、自分達が持っていない石油資源に頼らず様々な移動手段が利用可能になりますから、土地を選ばず、SSRの上昇に非常に大きく貢献してくれます。

http://midorimushiwiki.com/

これが、僕が言っているGDPからSSRへの成長ベクトルの切り替えがもたらす劇的な世界経済システムの変化と言うことです。

ブロックチェーンによるDAOは、SSRをベースにしたディープテック・スタートアップの組織運営のスタンダードになる

その上で、今後、イノベーションを進めていく組織運営の形態は、ブロックチェーンがもたらしたDAO型が主流になっていくでしょう。その方が組織としての永続性が上がるからであり、運営体自体が優れた意思決定を行い続けるためには、優れた「集合知」の形成が必須であり、そのためには、ヒエラルキー型の組織よりも、DAO型の組織の方が優れているからです。その点は、DAOについてまとめた「こちらの記事」を参考にしてください。

現時点では、世の中では、ブロックチェーン産業とディープテック産業は、全くリンクしていないのですが、SDGsを達成するための持続的な経済システムの開発においては、この二つは完全にリンクしています。正確にいえば、ディープテックが、ブロックチェーンを包含しています。ブロックチェーンの一つの重要なテーマは、ポスト資本主義の核となる非中央集権的かつ持続的な金融システムの構築ですね。

以上、世の中の多くの認識の人が僕がここで書いている内容を合わせていくことになるでしょう。

最近、周囲の後輩の起業家などから、「ディープ・テックについて理解を深めたい」と推薦図書の依頼を受けることが多いのですが、僕の中で一番よくまとまっているなと感じるのは、先に話にあげたユーグレナ社の創業メンバーでもあるリバネスの丸さんが書いた「Deep Tech」ですね。「こちらの記事」に書評を簡単にまとめていますので、参考にしてください。

以上、みなさんの参考になれば幸いです。

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