高級車が高いのは、なぜか?

新車にせよ、中古車にせよ、車を購入するポイントとして、この話をしておこうと思います。

まず、同じようなタイプの車でも、ブランドごとに価格が違います。わかりやすい例として高級車に多い「スポーツカー」を例に話をします。実用性があまり意識されていない車のタイプなので、高級車のプライシングのカラクリを理解するにはちょうどよい対象だと思います。

例えば、こちらのフェラーリ 488GTB、新車で3,500万ほどします。

 

そして、こちらは、フェラーリ 488GTBとほぼ同レベルのスペックのポルシェ911です。新車で、1400万円ほどです。

 

 

つまり、ポルシェの方がフェラーリより50%以下の値段です。何故なのか?

 

車の販売価格は、各メーカーの「製造コスト X 販売力」で決まる

これは、実は、車に限らず、工業製品全てに当てはまることです。まず、ポイントの一つ、製造コストについて掘り下げます。

端的にいうと、「鋳型のコスト」です。車はいろんな部品からできていますね。見えているのは、ボディやタイヤ、そして、内装などですが、エンジンや、様々なパーツ、車体、そしてそれらを組み上げるためのネジなど、全て、工業製品です。工業製品は、鉄やアルミなどを加工して作っていくのですが、その際に、もっとも重要な役割を果たすのが「鋳型」です。鉄やアルミなどを特定のサイズに作り変えるための「型」です。以下は、実際に鋳型をつくているところです。


フェラーリとポルシェのそれぞれの車は、それぞれ別の鋳型から作られています。細い部品になれば共通する部分も一部はあると思いますが、やはり、メーカーとしてそれぞれ差別化したいがため、多くの部分はそれぞれ別の鋳型から作っていきます。

つまり、製品ごとにかかる鋳型、これが販売価格に大きく影響を与えます。何故か?車が何台売れようが、鋳型そのものの製造コストは変わらないからです。当然ですね。鋳型なのだから。ここがポイントです。

鋳型は部分を作るための「型」なので、絶対的な費用になります。例えば、フェラーリ488GTBの全パーツの鋳型コストが10億円だとした場合、フェラーリ社は、この鋳型コストを販売価格に反映させます。と、ここまでくると勘の良い人ならわかると思いますが、販売力があるメーカーほど、その鋳型コストを1台当たりの単価に安く転嫁できるため、当然、車の単価は下がるわけです。

そして、ここが重要。鋳型が車の製造でもっともお金がかかる部分と言われています。

つまり、販売力の低いメーカーは、台数が売れないので、1台あたりに転嫁する鋳型コストが上がってしまうため、当然、その分、販売価格が上がってしまうという現象が起きるのですね。

これが、フェラーリ488GTBとポルシェ911の生み出す価格差です。ドイツのポルシェ社の方が、イタリアのフェラーリ社より販売力があります。それは、各社の売上高を見れば明らかです。さらにポルシェ社の方がフェラーリ社より製造力も高いです。なので、フェラーリ社より多くの製品ラインナップを持っています。スポーツカーだけでなく、セダンタイプや、オープンカー、そして、今人気のSUVなどです。EV化への取り組みなども積極的です。これらは、総合すると「経営力の高さ」と言えます。ドイツは、日本と同じ工業国家なので、メーカー経営のノウハウが高いのですね。フェラーリはSUV人気が原因でスポーツカーが売れなくなってきていることに焦り、ようやく2022年にSUVを出す予定です。実に動きが遅いです。

ですから、経営力の低いフェラーリ社は、ドイツの最大手の自動車メーカーであるベンツやBMWの主戦場であるセダンやコンパクトカーなどの市場には絶対に入ってこれません。販売力が重要になってくるため、販売力の低いフェラーリ社では、ベンツやBMWと互角レベルの価格で製品を出すことができないからです。フェラーリのブランド力が下がるからではないです。それを言っているやつは、経営の世界を一ミリも理解していないエセ評論家です。フェラーリ社は参入したくても参入できない、むしろ彼らは自動車市場の主戦場からは追い出されてしまい、スポーツカーというニッチ市場でしか生きてけなくなったメーカーなのです。だから、僕は、フェラーリにはあまり魅力は感じません。別に技術力が高いわけでも経営能力が高いメーカーでもないからです。一方、大衆車には手を出さずとも、ベンツやBMWと人気のSUVなど特定カテゴリで互角以上に戦っているポルシェには魅力を感じます。また、創業者のフェルディナンド・ポルシェという天才エンジニアへのリスペクトもあります。

販売力の低いメーカーほど「ヴェブレンの衒示的消費」を利用して単価を釣り上げる傾向がある

では、経営力がポルシェより劣るフェラーリは、より少ない製品ラインナップで売り上げと利益をあげることを目指すため、どうするか?というと、経済学の理論ではよく知られた「ヴェブレンの衒示的消費」という手法を使います。

From Wikipedia – ヴェブレン効果は、アメリカの理論経済学者ハーヴェイ・ライベンシュタインが1950年の論文「消費者需要理論におけるバンドワゴン効果、スノッブ効果、及びヴェブレン効果」で提唱したものである。アメリカの経済学者ヴェブレンが著書『有閑階級の理論』(1899年)の中で、金利生活者などの有閑階級が「目立つため」「見せびらかすため」に高額な商品を購入する現象に注目し、衒示的消費(conspicuous consumption)と呼んだことにちなんで命名された。

ヴェブレン財は、所得が高い層になるほど需要が増すという上級財の一区分であり、販売されている価格が高いほど需要が増すということが特徴。経済学の主要な概念となっている価格弾力性によれば、需要とは財の価格が下がればそれだけ増すという原理はあるものの、これは価格が高いほど需要が増す側面もあり価格弾力性の定義に反していることになる。

 

どういうことか?というと、あえて供給量を減らし、かつ、ブランド力を徹底的に広告などで引き上げることで、1台あたりの単価を極限まで引き上げて、売り上げと利益率を高めるという手法です。「人よりいいものを持ちたい」という人間の欲求を逆手にとったメーカー戦略です。実は、この方法は、フェラーリの本社のあるイタリアの高級ブランドの大半が取る経営手法です。グッチ、シャネル、プラダなどイタリアを代表する高級ブランドは皆この手法をとります。彼らは、アパレルの世界で、BANANA RepublicやGAPなどに勝てないので、大衆向け製品には絶対に手を出さないのですね。車の場合も同じで、メーカー経営力の高さでは、ドイツメーカーに勝てないイタリアの車メーカーは、彼らと直接競争を避けるため、このような製品戦略をとってきているわけす。

なので、車のことが詳しくなればなるほど、正直、僕はこの手の高級車は買う気が失せて行くのですね。。。何故なら、ポルシェもそうですが、ベンツやBMW、その傘下にあるMINIなどとデザインレベルは変わらず、また最新モデルにおける最新技術の採用では、ドイツメーカーの方がイタリアメーカーよりも最先端を行っていることが多い中で、単価だけ飛び抜けて高いイタリアメーカーの車を買うという考えは、どう考えてもお金の無駄遣いにしかならないからです。この発想は、イタリアメーカーだけでなく、他の販売力の低いロールスロイスなどのニッチな車メーカーについては同じことが言えます。

しかし、全く新しいテクノロジーの車を成功させるために、この「ヴェブレンの衒示的消費」を逆手にとって成功した新たな自動車メーカーがあります。どこかわかりますか?それが世界初の完全電気自動車(EV)を世に送り出したイーロン・マスク率いる「テスラ」です。

テスラ

ヴェブレンの経済理論を巧みに利用したテスラのEV市場への参入戦略

イーロンは、完全なるEV(トヨタのプリウスのようにハイブリッドではない)の市場参入戦略を考える上で、スポーツカー市場が最適であると考えました。なぜか?ユーザーにとって、「セカンドカー」になる車だからです。メインカーは、ファミリカーとしてのSUVやセダンを使いつつ、セカンドカーとして、テスラを購入してもらう。当然、富裕層がターゲットです。

なぜ、セカンドカーであれば勝てると考えたか。「給油所」の問題がクリティカルにならない車だからです。メインカーは、仕事や家族の送り迎えなど頻繁に使うことが多いので、EV向けの充電所などがほとんど整備されていない状態でEVとして売り出しても、顧客から全く相手にされません。しかし、スポーツカーは違います。セカンドカーとしてもつ富裕層にとっては、休日に趣味でドライブに出かける目的で買うことが多いので、充電所が整備されてなくても、ユースケースとして耐えられるのです。そして、フェラーリの例であげたようにスポーツカーは高い単価でも売れるので、製造コストを回収しやすい。つまり、EVベンチャーであるテスラが、トヨタやBMWのような大手メーカーと競争する上で理にかなっている戦略なのです。

こうして、スポーツカーから参入しつつ、徐々に、充電所や、自社で巨大な太陽光発電所を作り充電された電池の顧客へのデリバリーサービスなどを整えていき、これらが一定レベルの普及度に達した段階で、ファミリカーやSUVなどメインカーとしての製品ラインナップの拡大に着手して、テスラは大きく成長して行っています。見事なプロダクト戦略と市場参入戦略ですね。

一方、トヨタが、なぜ、プリウスをハイブリッドで売り出したかといえば、EVにおける充電所問題があるので妥協したがため。しかし、なぜ妥協したからと言えば、プリウスはセダンやコンパクトカーとしてデザインされている車、なので、知恵の浅い市場参入戦略を立てたことで、結果的に、価値の低い製品を世に送り出してしまい、今では、トヨタはテスラにEV市場を完全に持って行かれています。本来、トヨタは、プリウスから段階的にEVに切り替えることで、EV市場で世界の覇者になる戦略を立てていましたが、完全にテスラにやられています。これが、天才と凡人の実力差というものです。

テスラの凄さはこれ以外にもあるのですが、その点については「こちらの記事」と「こちらの記事」にそれぞれまとめているので参考にしてください。

またプリウスしかり、デザイン力で評価すると、ドイツメーカーは、イタリアメーカーとほぼ互角レベルですが、日本メーカーは地味なものが多いので「大切に使いたい」と想いが全く湧いてきません。すると、扱いも乱暴になるので、持ちも悪くなり、すぐに痛むので、地球環境にも悪いですよね。なので、最近は、僕は、総合評価で、ドイツメーカーの車を好んで乗ることが多いです。まあ、日本政府の関税政策によって割高に買われてしまうことにはなるのですが、それでも、長く丁寧に使いたくなる納得の行く製品をもつことの方が、エシカルライフにとっては重要なので、僕は、車はドイツメーカーを好んでいます。

その上で、自分のライフスタイルに合わせた車の選び方については、「こちらの記事」にまとめているので、参考にしてください。

以上、みなさんの参考になれば幸いです。

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