マスター・オブ・スケール – Crisis Text Lineの創業者兼CEOナンシー・ルービンのインタビュー#3

 

ホフマン:では、ナンシーはどうやって、この三人のシスターたちを起点に、ネットワークを世界中に広げて行ったか?ナンシーが、祖父から受け取った50万円の小切手以外には、彼女達はお金を持っていなかった。当然、まだ、お金持ちのフィランソロピストともコネクションがなかったし、スタッフも雇えていなかった。

彼女達に取っての唯一の資産は、生活保護プログラムの知識だった。このシステムは、とても大きくて、当然、政府だけでなく、女性支援を行う様々な団体が関わっていた。だから、ナンシーは、シンプルにこの人材ネットワークにタダで入り込むための組織を作ることにした。

ルービン:このプロジェクトの最大の難題は、生活保護プログラムを受けている人をどうやって「仕事」へと向かわせるか。それは、どうやって彼女達を、個人としての人間判断をなしに、その労働社会の中に連れて行ってあげるかというということにあるの。

だから、まずはじめに取り組んだことは、人材紹介会社のスクリーニングから。まず、家庭内暴力から女性を守るためのシェルターサービスを提供する団体と組んだ。次に、職業訓練プログラムを提供する団体と組んだ。また、ホームレスにシェルターサービスを提供する団体とも組んだ。それで、仕事をしたい人を面接に送った。そして、Dress For Successの店舗には、それぞれの団体から毎月1日、スタッフを現場に派遣して状況を見てもらうようにした。

だから、私たちは、お金がなくても、無料の労働力と質の高いリファレンスシステムを手に入れ、それによって、個人のみで評価されるという面接プロセスを避けることができた。ところで、その結果、この店舗網は今や世界で100を超えている。

ホフマン:ここで、ナンシーがやらなかったことについて注目して欲しい。彼女は、全ての仕組みは、自分だけですみすみまで作ろうとはしなかったということ。これは、よく起業家が陥りがちなトラップの一つだ。彼女は、他のリソースのエネルギーを上手く自分の周りに配置することを行っていた。まるで、柔術家のような動きだ。彼女は、自分より強く重量のある相手の力をテコのように活用して。この方法は、つまり、既存の生活保護プログラムに紐づくリソースを集約して、自分おアイデアの実現をしたということ。

君は、この彼女の取った方法論がもつ、とてつもないショートカットのテクニックをわかった方がいい。そして、ナンシーは、このようなショートカット方法を何度も何度も生み出してきた。巨大な問題を解決するために、上手くシステムを作り上げていく。これは、彼女の様々な粘り強さを示すエピソードの中で共通して言えることだ。

そして、同じアプローチで、ニューヨークに住む富裕層への寄付活動に取り組んだ。

ルービン:Dress For Successを立ち上げたころ、私たちに服を寄付してくれる富裕層に当たった。最も大きな女性用スーツのサイズは8で、アメリカ人女性の平均サイズは14で、そして、Dress For Successの顧客の平均サイズは22だった。という点はあったのだけど、富裕層にスーツをもらう活動は続けた。なぜなら、もし、あなたがアルマーニのスーツをくれたら、それは、私たちにとってみれば、それはお金をもらったことと同じだから。

だから、それらのスーツをもらったら、倉庫に2年間ほど保管するのだけど、大抵、彼女達は一緒に小切手も描いてくれることが多いのよ。なぜなら、自分が愛用していた服を私たちに託すことで、そこに親近感が生まれて、実際に、そのスーツをきて、誰か面接に行って合格して、仕事を得ていくという世界に共感を覚える。

 

だから、これはある種の寄付する人のメカニズムと言えると思うわ。これが、Dress for Successのビジネスの循環サイクルと言える。裕福な女性が、彼女の愛用するスーツを別の女性に託すことで、その女性が初めての仕事を得ていく。

ホフマン:ここで、もう一つ、ナンシーが、問題を ーこの場合は、全く着られていない服ー を解決策に使うという発想であり、実は、これが同時に、資金調達源にもなるという発想。だから、僕は、最も有能な起業家とは、”無限に学び続けることができる人”であると呼んでいる。これらの起業家は、厄介な問題にぶち当たるほど、より効果的な彼ららしい方法論を生み出していく。ただ、強いて問題があるとすると、ナンシーのようなCEOは、問題解決をし続けることに中毒症状になっているということ。つまり、解決すべき問題がなくなってしまうと、新たな問題を生み出そうとする。

ルービン:私は、正に、戦時のCEOタイプだと思うわ。一つ問題が出てきて解決して、平穏状態になってしまうと、退屈してしまうのよ。だから、また別の何かに取り組むか、それを完全放棄して、前に進もうとする。

ホフマン:これが、「度胸」のもつ副産物の一つと言える。彼女のもつこの無限のエネルギーが、いったん、Dress of Successがスケールしてしまうと、彼女自身、興味を失い結果的にDress for Successから去る決断をさせた。

ルービン:Scooby-Dooシンドロームについて話したことはあったかしら?

ホフマン:いや、ないね。

ルービン:Scooby-Dooは観たことある?

ホフマン:うーん、まあね。

ルービン:Scooby-Dooのエピソードは全部同じ。教会か映画館があって、それが、ストリップ小屋になってしまうのよ。そして、その小屋の中に、ゾンビやゆーれいが徘徊するようになる。それで、Shaggy とScoobyは、いつもゾンビかゆーれいを探している。Velmaはそのことを知っているんだけど。ちょっと変な感じの設定。

そして、彼らは、そのゾンビーやゆーれいの正体を暴いていく。実際は、彼らは、ゾンビやゆーれいなんかじゃないのよ。その映画館の創業者の孫娘だったり、教会の管理人だったりするの。つまり、その創業者達は、なくなった後も、その場を離れたくなくて徘徊し続けるということ。つまり、何がいいたいかというと、私は、ここに登場するゾンビーやゆーれいにはなりたくないということ。だから、出来上がったら去るのよ。別に悔いはない。

ホフマン:つまり、君は、Scooby Dooは相当観たってことかい?

ルービン:そうね、かなり観たわ。でも、考えてみてよ、私のような80年代の子供の大半は、その手の番組を観てたわよ。

つづく。

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