マスター・オブ・スケール – Crisis Text Lineの創業者兼CEOナンシー・ルービンのインタビュー#6

 

ホフマン:だから、ナンシーは、そのわずか予算の中で、再びスケールさせる動きにでた。彼女は、Crisis Text Lineのサービスをアメリカ全体の緊急問い合わせ網に載せることに成功したのだ。彼女の団体は、引き続き、問合せ先としてのテキストメッセージのサービスを提供しつつ、その緊急問合せ網から24時間のカウンセリングサポート体制を提供してもらった。

ナンシーは、自身が、10代の子供の中でも誤った対象に自分が取り組んでいることを知るまで、彼女の無駄な動きのない柔術のようなスタイルで乗り切っていた。多くの場合、緊急問合せ先のカウンセラーは特定領域の分野のみを専門としており、-たとえば、自殺や、性的暴行、食事障害など – 結果、奇妙な返答を返すことが多かった。

ルービン:私たちは、このサービスをあくまでパイプ役としての役回りで動く考えだった。つまり、課題に応じて、的確な緊急問合せ・サポート先に繋ぐという考え。それで、物凄い勢いで成長した。提携先も、6ヶ月で1つの緊急サポートセンターから3つに増やすことができた。

しかし、急成長と共に見えて来たことは、10代の子達のそのような課題が、とんでもなく多岐に渡っていたということ。たとえば、ある一つの緊急サポートセンターが、問合せが来た子供に対して”今日、自殺したい気分なの?”と返答すると、”ううん、今日の午後に算数のテストがあるんだけど。自殺したいと考えるべきかな?” 要するに、サポートの質は、正直、ダメダメだった。

だから、発想を切り替えた。”もし、自分達がこの問合せ内容を判別して対応できるようになれば?”と。だから、12人のメンバーをトレーニングし対応できるようにした。そしたら、このピボットで全てのKPIが一気に伸びたわ。だから、結果的に、その提携していた緊急サポートセンターとの提携を全て解消することにした。だって、彼らに対応してもらう度に、手数料を払っていたのだから。その分、支出を抑えて、代わりに、この浮いた資金で、ボランティアで対応してもらえるスタッフを整える仕組みに着手した。一言で言えば、マーケットプレイスを作るということ。

ホフマン:ナンシーは、ここで非常にリスクの高い意思決定をした。彼女は、まだ資金調達に苦労していた。その中で、彼女は、本来、彼女のこの事業をスケールさせるはずだった経験値のあるカウンセラーとのパートナーシップを捨てる判断に出たわけだ。そして、上手く行くか分からない、この初心者の人たちを、行き詰まった10代とのコミュニケーションのプロフェッショナルに育てるというピボットを踏んだ。

ナンシーは、彼女の英雄譚の世界に、周囲の人を巻き込む天賦の才能を持っている。彼女は、自分のもつその生来の粘り強さを、他人を勇気づけ、そしてインスパイアし、彼女のプロジェクトに巻き込んでいく能力がある。たとえ、それが無償であってもだ。事実、ナンシーがすでに発見している人間のもつほぼ底無しの素晴らしい感性は、人間は助けることが好きだということだ。だから、本当に必要なことはただ君は頼むことをすればよいということ。

ナンシーは、そのボランティアベースのCrysis Text Lineのマーケットプレイス構想に非常に自信を持っていた。正に、Uberが運転手を、Airbnbが家の空きスペースのマーケットプレイスを生み出したことと同じことが、この難題を抱える10代の子達を救う世界でも十分実現できると考えたわけだ。しかし、では、どうやって彼女は、その供給と需要のマッチングを作り出したか?当然、彼女は、10代の子達のニーズに答えるために、ボランティアの人々に今までより高い手数料を提供できるわけでもない。彼女にとって必要だったのは、彼らの善意が上昇することだ。

これは、本当に大胆なビジョンだ。そして、数は少ないが、これが機能することをきちんと語ることができるリーダーは世の中にいる。

グレッグ・ボールドウィン:僕は、一つの法則として捉えて欲しいのだけど、僕らは、人々が、助けることを望み、実はそれに飢えていることを過小評価する傾向がある。

ホフマン:彼は、グレッグ・ボールドウィン、ボランティアマッチの代表だ。彼のウェブサイトでは、10万近い団体と、数百万人を超えるボランティア人材とのマッチングサービスを提供している。彼の考えでは、最もスケールするNPOとは、不合理性の淵で、助けを懇願するということからスタートすること、である。

つづく。

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