マスター・オブ・スケール – Crisis Text Lineの創業者兼CEOナンシー・ルービンのインタビュー#8

ホフマン:しかし、その3000万のメッセージは、常に一定のレベルできたわけではなかった。突然、急増したり、落ち込んだりする。その時点で、何人のカウンセラーが動けるかとは無関係に。だから、彼女は、手作業とビックデータ解析の両者を使って、メッセージ内容の緊急度を判別する取り組みを始めた。

10代の子達が、危険状態に入っていると気によく使うキーワードや文章をランク付けして、”懸念すべき状態” から”911に今すぐ電話”という感じでステータス管理を始めた。

ここで、ナンシーの話を聞いていると、デジタル時代における度胸や根性がどういうものか見えてくると思う。この種のリーダーは、目的を達成するために、あらゆる可能性に目を向け、無限に発明する能力を持っている。彼らは、今まで誰も思いつかなかったような手法で、問題を解決することに楽しむ。ナンシーが、10代の子供たちのテキストメッセージを解析して、彼らをより迅速に効果的に、彼らを危機から救う仕組みを作り上げているときのナンシーの声のスリル感を味わっているような声のトーンに気づいてもらいたい。それこそが彼女のそのリーダーとしての感性を物語っている。

真の根性や度胸とは、何があろうとおも前に進み続けることだ。

ルービン:だから、そのアルゴリズムには、そもそも、”死にたい”、”自殺”、”過剰接種”などのキーワードを登録していた。もし、あなたが、この3つを同時にメッセージに入れたら、即No.1ランクに該当するわ。そして、機械学習のレイヤーには、高いリスクケースのワードを学習していくようにシステムを設計したの。

 

そして、見えてきたことは、”自殺”などより遥かにリスクの高い言葉があるということ。それらの言葉は、”自殺”のキーワードより16倍以上の911への緊急連絡の確率の高い言葉。今、クイズにしている感じだから、リスナーの人にも考えて欲しいのだけど、それは、イブプロフェン、アスピリン、タイレノール、アドヴィルという言葉。ほとんどが頭痛剤や鎮痛剤など、家庭によくある薬。

そして、泣いている絵文字は、自殺という言葉より4倍のレベルで、911コールの確率が上がるわ。そして、もう一つは、#KMS というハッシュタグ。この意味知っている?当然、私たちも知らなかった。機械学習のアルゴリズムが発見したのは、”Kill My Self”(自分を殺す=自殺)の略語だったのよ。これこそ、科学とテクノロジーが、組織を高速にそして的確に動かす典型的な成功例と言えると思うわ。

ホフマン:彼女は、このサービスをアメリカ全土に拡大していく中で、このテクノロジーを使うことによって、より的確に自分たちのサービスを提供していく仕組みを整えて行った。

ルービン:おっとそうだった。難しかったのは、マーケットプレイスの立ち上げね。供給側とコントロールしなければ、需要側はコントロールできない。昔、ある不測の事態が起きたわ。Crisi Text Lineでおきた不測の事態とは、ZaynがOne Directionを去ってしまったというニュース。大量の不安な言葉をのせたメールが私たちの元に届いた。

ホフマン:知らないリスナーもいるだろうから、補足すると、Zaynは、昔人気を得たOne Directionというバンドの英国出身のシンガーで、それは、ジャスティン・ティンバーレイクが、NSyncを去る、もしくは、ジョン・レノンがビートルズを去るぐらいインパクトのある出来事だった。

ルービン:Cut for Zaynのハッシュタグは、3日間暗い、Twitterのトレンドキーワードに入っていたわね。そして、たくさんの女の子が手首を切ってしまったのよ。とんでもないことになった。

ホフマン:どうやって、その対応するためのキャパを確保したの?

ルービン:ここでマーケットプレイスが登場するの。

ホフマン:なるほど、それで、稼働できるボランティアメンバーの規模は?

ルービン:ざっと3,000人。彼らは、本当に自分たちの仕事を愛していた。それで信じられないことに、なんと、みんな無料でやってくれたのよ。本当に素晴らしい人たちだと思う。

ホフマン:”自分たちと同じ精神の人を見つけるということ”。この一文が、正に、ナンシーの事業をスケールさせていくセンスを物語っている。ビジョンに向かって突き進むことで、そこに共感してくれる素晴らしい協力者が現れていき、そこを的確に巻き込んでいく。

しかし、僕は、この度胸や根性という言葉を誇張はしない。究極的には、君の計画には、運が必要だ。君はこう考えるかもしれない。”私の度胸と根性は、時や運をも超越している”と。この点については、シリコンバレーで最も成功しているアクセラレーターのY Combinatorの社長であるサム・アルトマンの言葉を引用したい。

サム・アルトマン:僕が常に自分に言い聞かせていることの一つとして、”運”はとても重要であるということ。それは、僕が仕事を続けている中で、偶然に作用してくる変数のような存在で、それがあることで、僕の仕事が加速度的に進むことになる。それが、運というものに対する正しいマインドセットの持ち方だと思う。君が、運というものを全く認識せずにいるのなら、君は、偉大な人というよりかは、むしろ逆の誤った危険な道に入っていると言わざるを得ない。もしくは、運をことをきちんと捉えずに、”たまたま幸運が訪れた”とというように解釈しているなら、それもよろしくない。

しかし、君が、”全ては運次第さ。だから、どうしようもない。世界は僕にとって常に向かい風の存在だから、そこに座って不満を垂れている他ない”と言うなら、それも全く意味のない捉え方だ。だから、まず、基本として運はとても大切であると言うこと。しかし、結果的には、一生懸命、仕事をしている中で、運をえることで、目指していたことが叶っていくような世界だとおもう。

ホフマン:僕は、それは、「楽天主義」の一つの定義だと思うよ。

ホフマン:リードホフマンでした。ご清聴ありがとうございました。

僕の所感

ナンシーは、素晴らしい社会起業家ですね。問題の認識だけでなく、行動力のセンスが抜群にいいと思います。僕も学ぶところが多いです。この話の趣旨は、スタートアップの世界において、毎日起きる、問題の連続を常に柔軟な思考で、様々な解決策を試すことで、乗り切っているというもので、そのためには、当然、諦めずに挑み続ける根性と度胸が必要です。より的確な日本語をいうと、突破力ですね。僕も、自分の突破力には自信がありますが、投資検討をする際に、メンタリングを通じて、その起業家の突破力も見ています。突破力の高い起業家ほど、素晴らしい成長を遂げるからです。

また、寄付文化が未発達の日本では、アメリカよりさらにNPOの経営は難しいです。その一つは、やはり、社会におけるボランティア精神の欠如とつながっていると言えます。この話を通じて、ナンシーのNPO活動を見ていても、アメリカ社会の根底にあるボランティア文化の威力を改めて知ることになりました。この点は、将来的にブロックチェーンにおけるDAOの世界、またそのさきに僕が見据えている奉仕経済とも直結しているので、とても注目しています。

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