マスター・オブ・スケール – Netflixの創業者兼CEOリード・ヘイスティングスのインタビュー#4

ホフマン:ここで、リードのいう「原理原則から物事を考える」という点について、きちんと触れておこう。この言葉は、シリコンバレーでよく聞く言葉の一つだ。「原理原則から物事を考える」とは、全ての考えを、創業理念を基点に考えるということだ。それを「第1の原則」ともいう。上司の支持に盲目的に従ったり、プロセスに固執したりするのではなく、「第1の原則」思考では、常に自分に”会社にとって何が最善か?他には方法はないのか?”を問う。そのような探究心を、リードは、Netflixの全ての意思決定において反映させたいと考えた。

ヘイスティングス:そう、だから、僕らがNetflixで取り組んでいることは、全員が、「第1の原則」思考を実践できるようになること。頭の中には、常に、”何が会社にとってベストか?”があるという状態。これを元に、会社の色々なことを考える。たとえば、どんなコンテンツを作るべきか。もっとミクロの世界でも同じで、”どうやって旅行すべきか?ビジネスクラス、それとも、バスなど?

僕らは常に、メンバーに尋ねる。何が、会社にとってベストなのかを。むしろ、ガイドラインはそれ以外存在しない。何人かの人は、それに苛立ちを感じたりするが、その人たちは多分Netflixのカルチャーには合わないのだろう。一方で、他の人々はこの思考スタイルをすごく好む。

ホフマン:これは、まさにテック起業家が自然と耳を傾けるべきアドバイスだと思う。「第1の原則」思考ができる人を雇いたくない経営者などどこにいるだろうか? 言葉いうのは簡単だけど、君が、急成長するスタートアップを経営しているとき、君自身が自分に問うことになるだろう:”今、まさに、僕らには営業のプロや、プログラマや、デザイナー、そして会計士が必要だ”。そして、応募者の中から、当然、そのスキルを持った人は出てくる。

“僕らは、次の採用では、きちんと「第1の原則」思考ができる人を雇おう”とは、まさに言うは易し、行うは難しの世界。リードが、Pure Softwareで経験したことをみてみろ。彼自身は、当然、「第1の原則」思考ができる人だ。だから、君は、彼が、同じ「第1の原則」思考ができる人を雇えると思うか? 実際、彼は、6年もの間、採用方針について手をつけなかった。だから、君は会社をスケールさせる前に、会社のカルチャーを定義しなくてはならない。君は、深く考えなくてならないんだ。どのようなカルチャーが、会社をスケールさせる上で貢献してくれるかについて。

リードは、Netflixの創業期に、このことをたくさん考えた。彼は、単にPure Softwareからの学びを振り返っただけではない。Netflixの将来をこと、ときには、会社にとって何が脅威になるかを見据えて、思考を巡らせた。例えば、目の前の競合であるBlockBusterのことは忘れて、Netflixが将来ビデオストリーミングーサービスでどうやって生き残るか?内熱機関のエンジンが馬と移動手段を駆逐したように、ブロードバンドインターネットの普及はやがてDVDのビジネスを侵食してくるだろう。

そして、ここにこそ、リードを素晴らしい戦略思考の人足らしめる点がある。彼は、90年代後半、まだインターネットがアメリカの10家庭のうち1つにしか入っていなかった時代に、すでにことを見据えて考えたいたんだ。

なぜ、リードが、Netflixにおいて、「第1の原則」思考ができる人を雇うことにこだわるのかについて理解するために、君は彼がどのようにテクノロジーが進化して行くかについて洞察しているかについて理解しなければならない。イノベーションは、一般的には暫時的に起きる。しかし、その流れの中で、特に劇的に変化をもたらす瞬間がある。そして、その後、また暫時的なゆっくりとしたペースに戻るのだ。

ヘイスティングス:もし、我々が、DVDのメール便をさらに20年続けていたならば、完全に戦略ミスになっただろう、なぜなら、インターネットによるコンテンツデリバリーが確実に可能になりつつあったからね。しかし、現に、このインターネットTVは実現し、このテクノロジーモデルは向こう50-100年は続くものになるだろう。となってくると、次の質問は、ではそのパラダイムの中で、僕らのコアをどうよりよいものにしていくか?と言う議論になる。

ホフマン:リードの歴史に対する知識、そして、テクノロジーの進化の変遷、さらに、彼が経験した歴史的な変化のとき、これらが、彼に、このような時代の変化に適応していける人材を必要と知らしめる糧になったわけだ。

人材として、規定のプロセスを否定し、時代の変化と共に必要なってくる手段を通じて、エンターテイメントを家庭に届けること、つまり、それが、馬だろうか、メール便だろうか、光ファイバーを経由してだろうが、イーロン・マスクがやっている脳神経に直接届ける形になろうが、その原理原則の視点に立ち返って考えることができる。これができると言うことは、時代の変化とともにビジネスモデルを変化させていくことができる人材ということだ。

では、どうやって、リードはこれができり人材を特定して行ったのだろうか?それは、Netflixで語り継がれているあるドキュメントから始まる。それは、なんと、100枚のスライドからなる。通称”カルチャー・デック”と呼ばれている。このスライドの中で、Netflixのカルチャーが明確に定義されている。その中で、誰を雇うべきか、その人に何を期待すべきか。

ヘイスティングス:カルチャーデックは、10年前に始まった。初めの2年ぐらいは、特に市場で生き残ることに集中して、そして2002年にIPOした。キャッシュフローもポジティブだったから生き残れることは確実だった。だから、カルチャーについて真剣に考えるようになったんだ。僕らはどうなりたいのか?どのように経営して行きたいのか?

そして、数年かけて、新入社員に実際に適用しながら、このデックを改良していった。そして、ときには、新入社員の一部はとても気に入ってくれて、中には、”なんで、仕事を始める前にこの話をしてくれなかったの?”と行ってくれる人もいた。それで、全員にこれをきちんと展開する必要があると考えた。

そして、2007年ぐらいだったかな、SlideShareで投稿したんだ。しかし、あくまでリンク共有ベースで、公開はしなかった。しっかりと成形されたものでもなかったから、外部のマーケティングに使うにはちょっと厳しいなと。しかし、やがて、このものすごい注目を集めるようになって、1000万ビューを稼いだよ。そして、色々な人がこのデックから学んでくれている。

ホフマン:それで、この公開による予期せぬ恩恵は何だったの?

ヘイスティングス:最大のベネフィットは、これは、僕ら自身が期待したことだけど、応募者が、Netflixのカルチャーを理解して応募してくることだ。予想外だったのは、このデックのことをとても気に入ってくれて、応募者が逆にものすごく増えたことだね。

ホフマン:ここに、Netflixのカルチャーデックの、魅力的なポイントがある。実際、仕事を探している全ての人へのアピールになっただけでなく、事実、一部の仕事を探している人が、このデックの内容を嫌って、事前に自動的に除外する役割も果たしたことだ。

ホフマン:この一つの例は、例えば、”普通レベルの実績は、解雇手当に相当する(=クビになると言うこと)”。つまり、高いパフォーマンスを出すことが当たり前だと。ちょっとリスクに感じる人がいると思わないか?

ヘイスティングス:僕らは常に「誠実さ」を重要視する。だから、君は自分の上司に常にこう尋ねることができる。”もし僕が辞めるなら、どれぐらい真剣に引き止めてくれますか?”と。テストみたいなものだよ。僕は、”引き留めテスト”と呼んでいる。だから、僕らは、社員に自分の上司にそれをやるように勧めている。だから、僕らは、とても思慮深くあるよう努めていて、常にそこに何のサプライズもおこならないよう配慮している。

僕らは、常に素晴らしいパフォーマンスを出すことを奨励し、そこに短期的なジャッジメントは加えない。つまり、”君は先週ミスを犯したから、クビだ”って話にはならないと言うこと。常に将来の貢献に対する期待をもち、それは、色々な要因を配慮して判断するようにしている。

つづく。

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