マスター・オブ・スケール – Netflixの創業者兼CEOリード・ヘイスティングスのインタビュー#7

ホフマン:このリードの表現はとてもいいよね、”生きているドキュメント”。現実と大志の間にある適度な緊張によって、それは、君が求めているカルチャーと努力して得たいカルチャーとのはざまにある緊張によって、命が吹き込まれる。本当に強いカルチャーとは、常に「建設中」の状態なのだ。

ホフマン:新しいバージョンのカルチャーデックはリリースした?

ヘイスティングス:ああ、2、3回はアップデートしているね。何かネガティブなものがあるわけではないけど、僕らは常に、現在の課題の一つとして、いくつかのケースにおいて、このカルチャーデックが、冷酷で競争的なものだと考えられてしまうことがあるのだが、実際には社員はこれはとても暖かく協調的なものだと捉えてくれている。その側面は、あまりカルチャーデックの中では強調されているとはいえない。僕らは、常に、このカルチャーデックを更新し、自分たちが実際どうであるか?について反芻できるようにしている。

ホフマン:リードは、常にこのドキュメントを修正し、そして社員はそれを読む。君の会社のサイズがどのレベルであれ、僕は君に同じことを実践することを提案したい。早い方がいい。まだカルチャーが明確に形成されていない段階から取り組み始める。その作業は、まさに創造的な実践であり、ボトムアップ的なものであることを理解して欲しい。つまり、君とが社員と共に作り上げていくものだ。

中には、これは過大評価されたエクササイズだという人が出てくるだろう。カルチャーとは、実に捉えがたい存在だ。そして別の人たちは、カルチャーとは、それが正しいにしろ間違っているにしろ、強いにしろ弱いにしろ、僕らの想像の虚構にすぎないというだろう。これは、まさにリードに長かけたい質問の一つだ。

ホフマン:ある友人の一人と話をした。その人の名前は、彼から公にする許可をもらっていないので伏せていくが、僕に対して常に、カルチャーとは、成功した会社が過去に振り返って再確認する存在だと言ってくる。

これは要するに、君が成功した場合、君が話す君を成功へと導いた経験談そのものがカルチャーだということ。そして、よく言われているのは、「カルチャーは戦略に勝る」、というもの。しかし、この反論視点はバカげていると思わないか? それとも、逆に、成功している企業ほど自分たちのカルチャーを賞賛していると考えるか?

ヘイスティングス:そうだね、とても成功している会社は、テントではなく、きちんとした建築物のようにカルチャーを見ている。要するに、一般的に受け入れられている事実として、ビルの方がテントよりしっかりとできている。だから、反芻した場合に、その違いを君はきちんと理解できなければならない。

しかし、バランスよく見るため、Netflixのカルチャーは、Neflixを様々な時代の流れの中で反映することを手助けするだろう。そして、それは、僕の初めての会社であるPure Softwareが実現できなかったことだ。だから、Pure Softwareは、1990年代に様々な挑戦を受けることになり、そしてそれに対応することができなかった。だから、僕は個人的見解として、カルチャーはそこにとても重要な役割を果たしていることで納得している。

けど、改めていうが、”カルチューは、戦略に勝る”ということは、信じるなと言いたい。実際、僕らは、多くの時間を戦略構築に費やす。なぜ、両方が上手く機能しないと考えるのか?なぜ、両者を比較しようとするのか?僕らは常に、カルチャーも上手くやるし、戦略も上手くやる。

ホフマン:Netflixが実践してきた変化について考えてみて欲しい。DVDのメール便サービスを提供していたチームが、今は、オリジナルコンテンツを作り、それがフィルムフェスティバルで表彰され、そして世界中にストリーミング配信されている。

Netflixは、まるで、マドンナのような会社と言えるかもしれない。常に自分たちを再発明している。そして、わかってほしい。リードという素晴らしい戦略家ですら、前の会社ではその変換を起こすことができなかった。つまり、同じ戦略家と、異なる二つのカルチャーの存在。たった一つのみ世界を制することができる。カルチャーは、製品戦略のようなものかもしれない。それを無視して、戦略だけにフォーカスすることもできてしまう。

しかし、リードが、直面した脅威について考えると、本当に君はそのリスクを取りたいと考えるか?僕なら取らないだろう。少なくとも、カルチャーについて君がとても思慮深い人物ならば、リードのような白人の人材をたくさん雇うことを避けるだろう。竿もなくば。

ヘイスティングス:ありがとう、レイド。今度、リードとレイドでなんか新しいコンテンツ作ろうか?

ホフマン:ハハッ、そうだね。僕も君と話せて楽しかったよ。常に君から何か新しいことを学ぶことができる。

ヘイスティングス:こちらこそだ。

ホフマン:レイド・ホフマンでした – リード・ヘイスティングスではありません。笑 ご静聴ありがとうございました。

【僕の所感】

僕も起業家として経営者として、リードと同じ戦略家のタイプなのでよくわかっていることとして、カルチャーの定義は人材採用とチームパフォーマンスにおいて非常に重要な役割を果たすと自覚しています。そして、このエピソードで紹介されているように、シリコンバレーは、投資家も含めて常に投資先のベンチャーの「多様性」に注意を払う。まさにエピソードで紹介されているよう「世界に通用するプロダクトは、その会社の中に”全世界”が存在してなければ、そもそも不可能だから」という考え方です。

それを考えれば、なぜ、日本が、ガラパゴス化するのか、自ずとわかるでしょう。多くの日本のベンチャーが創業メンバー含めて日本人だけで、日本語しか話せない時点で、実は、もうスタート時点からプロダクトのガラパゴス化が決定しているということです。多様性のある組織のカルチャーの形成は、日本人のみの単一民族チームのカルチャー形成の数十倍も苦労が伴います。

エピソードではその辺りサラッと言っていますが、実際に、経営していたOrbで、グローバルでリクルーティングし、社員の50%を非日本人で構成し、かつ開発チームは80%を非日本人にし、30名の組織まで育てた経験から言うと、何十倍も違うと言う感覚です。日本人だけの組織を経営する方がはるかに楽ですね。単一民族だから価値観が近いのでコンセンサスが簡単に取れるから。しかし、本当に世界に挑みたいなら、そこまでやらねば無理ですね。僕もこのチームのお陰で、世界初のリニアスケーラビリティを持ったプライベートブロックチェーンを開発仕切ることができました。ただし、この点を踏まえると、明確に言えることは、本気なら、絶対に日本からスタートすべきではないですね。レイド・ホフマンが指摘している通り、日本からスタートしていること自体がリスクです。僕は、日本とシリコンバレーの両方で起業した経験があるので、この点は深く同意です。この国は、多様性に対して強い拒絶反応を持った社会だからです。唯一可能性があるのは、非日本人率が70%以上のOISTであり、ここから生まれるスタートアップには、世界を変えるレベルのものが出てくる可能性を持っています。それが故に、僕は、エンジェル投資家もやっていますが、日本人だらけのベンチャーには一切投資していません。必ず、チームの多様性を見ています。そう言うことです。詳しくは「こちらの記事」にまとめています。

そして、このような多様性のあるチームの組成やマネジメントで重要になってくるのが、リードが強く言っている「家族」ではなく、「プロスポーツのチーム」というカルチャーですね。この点は、僕もOrb時代に徹底してメンバーに伝えていました。日本の昭和企業がアピールしてきた「社員=家族意識」は、排他性が強く、実に馴れ合いが生まれ易いのですね。これでは強いチームは作れず、馴れ合いはパフォーマンスを下げる。リードはその点のリスクを厳しく指摘しています。家族意識は、多様性を排除する意識を生む。これは、僕は金融の信用メカニズムを研究する中で、そのことを深く理解しています。才能は、チームスポーツがそうであるようにプロフェッション(専門性)で構築し、コラボレーションはあくまで、チームプレイによるパフォーマンスを最大化させるためのツールとみなすこと。ここですね。僕もバスケを大学までやってましたし、アメリカ人もメンバーに多かったので、NFLやNBAの例を常に出しながら、常に指摘していました。おもしろいのが、アメリカ人は、これが板についているのですね。子供のころから、この価値観に慣れ親しんでいるのですね。逆に、日本人はその意識が実に低い。このブログの読者の人も、家庭教育も含めて、子供のころを振り返ってみて、プロスポーツのような世界の感覚に触れた記憶はあまりないでしょう。Orb時代でも、そのことを理解していた日本人は、僕とCTOだけでした。CTOも大学生時代にカナダでワーホリの経験がスケボー好きでしたが、それらの点からわかるように、北米の文化に影響を受けていたから僕の哲学を素直に受け入れてくれた点があります。この点からも日本人だらけの創業者チーム、幹部チームのテックベンチャーがシリコンバレーのテックベンチャーに勝てないのは当たり前と言うことです。

そして、この点は、未来社会を考えるキーワードの一つであるブロックチェーン市場におけるDAOの概念にも通じてきます。多様性のない社会におけるDAOは、いわゆる「情報カスケード」を生み出すため、持続性が生まれない。なので、僕は、Orb売却後、日本のブロックチェーン産業に全く期待しておらず、投資先は全て海外のプロジェクトにしているのは、その点の日本の社会構造の分析から判断していることです。詳しくは「こちらの記事」にまとめています。

参考までに、リード・ヘイスティングスのNetflixのカルチャーデックは、「こちらのSlideshare」です。僕も読みましたが、非常に精巧なカルチャー定義だと思います。素晴らしいです。

以上、みなさんの参考になれば幸いです。

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