マスター・オブ・スケール –起業家・著者ティム・フェリスのインタビュー#7

フェリス:レイドのいう通りだと思う。君は、不測の事態における支出に対応するために、自分が必要と思う以上の資金を調達すべきだ。と同時に、予測しなかったようなチャンスが来ることもあり、君はそこにリソースを割くための余分な資金を持っておく必要がある。

僕らは、ここから話を早送りして、マリアムの新しい会社であるMintedに話を進める。Mintedは、様々な有名ブランドのステーショナリーグッズを扱うオンラインストアなのだけど、そこに実験的な要素を加えている。それは、新手にデザイナーが新しいデザインのステーショナリーグッズをコンペで売ることができるというもの。この点について、彼女はレイドにこう話をしている。

ナフィシー:サイトを開いてから1ヶ月、それらのブランドのステーショナリーグッズは全く売れなかった。

代わりに、そのデザイナーのクラウドソーシングのコーナーは、1週間に1つぐらいのトランザクションがあった。その次の週には2つに増えた。一つのコンペから、60近い優れたデザインが生まれた。

Mintedの立ち上げのために調達した2.5億円の資本金のうち、1,000万円ぐらいを本当にMintedでやりたいことに投資した。オレゴンにいるプログラマを毎晩議論しながら、第1号のコンペサイトを立ち上げた。そして、唯一そこからだけ売り上げが上がった。

ホフマン:マリアムは、クラウドソーシングの力と出会った。普通の人でも力を結集すれば、エクスパートの成果を超えることができる。Estyは正にその例の一つだ。KickStarterもそう。しかし、2008年のこのころの段階では、まだ十分この世界は、シリコンバレーでも理解されていなかった。

ナフィシー:私は、このクラウドソーシングの世界は、全然違うものであることに気づいた。私は、このアメリカや、ひょっとしたら世界で起きている社会や文化的な巨大な変化を発見したのだと。今までは、クリエティブなものは、専門的な教育を受けてきた人からのみ生まれてくると思っていたけど、Mintedに参加したデザイナーの一部は、別にそのような専門的な教育も受けていない。これこそ、本当の実力主義の世界で、これが今まさに世界で花開こうとしている。

ホフマン:ここに、君が自分が必要と思う以上の資金を調達するもう一つの理由がある。それは「予測してなかったチャンス」だ。マリアムは、ライフスタイルビジネスを立ち上げるつもりだったが、それは全くうまくいかなかった。彼女は、そのプランBを実行するめの十分な資金は調達していなかった。チャンスは、君が期待しているよりも遅くやってくるかもしれない。しかし、その新たな方向を作り上げていくには、資金が必要だ。だから、彼女は、そのクラウドソーシングのアイデアを実現するために、仕方なく新たな資金調達を開始した。しかし、ここには、更に不測の事態が重なることとなった。株式市場の暴落だ。

ナフィシー:私は、リーマンショックが走る2週間前に、資金調達をした。なぜなら、投資家の一人が、私に、”何かとても悪いことが起きそうな予感がする。君は今、資金調達すべきだよ”と。タイミングは、8月だった。8月にシリコンバレーにいる投資家っているの?と思ったけど、とりあえず駆け回って、資金を集めた。ラウンドが完了したのが、リーマンが破綻する2週間前。

ホフマン:信じられないかもしれないが、マリアムは、その大胆かつリスキーなビジネスのアイデアを、世界恐慌以来の経済危機となった2008年のときに立ち上げたんだ。もし資金調達が1ヶ月遅れていたら、リーマンショック後の経済で、誰でも彼女の考えるそのワイルドなクラウドソーシングの事業に出資したいなどと考えなかっただろう。いつ資金が枯渇してしまうなど、容易に予想はできない。だから、自分が必要と思う以上に資金を調達しておく理由がここにある。

フェリス:十戒その5:”自分自身が当惑してしまうぐらいのタイミングでプロダクトをリリースせよ” 不完全こそが完全である、という話。レイドは、この点について、もし、自分がリリースしたプロダクトが当惑するぐらいのものでなかったら、それはリリースするタイミングが遅すぎたと考えるべきと言っている。

この点には、補足すべき点がある。それは、レイドが考えている”スピード”に関する話。僕は、レイドが、常に、あらゆる面でスピードを重んじているかについてとても敬意を払っている。この点について、レイドは、Ben Casnochaと共に”レイド・ホフマンとの1万時間”という書籍を出していて、以下はそこからの抜粋だ。

“彼の第一の原則は、スピードだ。彼がよく言っているように、君が、リリースしたプロダクトの出来に当惑しないレベルなら、君がリリースしたタイミングは遅すぎるということ。スタートアップの世界では、よく言われるように、スタートアップを始めるということは、自分を崖に投げ込むようなもので、崖の底に着く前に飛行機を組み立てあげて飛び立てということ。これは、実際的には、どうやって、意思決定のスピードを引き上げていくかによっている。一連の選択肢が目の前にある場合、多くの起業家は、現在の情報を元に暫定的な意思決定を行うことが多い。確かに、的確な意思決定をするための情報を集めていたら、時間がかかってしまい、その間に世界は別のものへと変わってしまっている。”

実際に、ベンのような軍事戦略かは、レイドと同じような考え方を持っている。

“もし、早く動くなら、狭量的は判断によるミスが生まれるだろう。君がマネージャで、スピードについて真剣に考えることができるなら、君は、チームメンバーに、それによるトレードオフについてきちんと話をしておく必要がある。正にレイドは僕にそうした。僕らはお互いに合意したんだ。一定の範囲の課題に関しては、レイドへの確認はせずに、僕自身が自ら解決する”と。

そして、これが、彼が彼のEvernoteのメモにハイライトしたいた箇所だ。

“早く動きためには、当然、その分の過ちが起こると考えていい。実際にスピードを維持するために、与えられた環境でそのように行動して、エラー率が10-20%なら許容範囲だ。

つづく。

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