マスター・オブ・スケール –起業家・著者ティム・フェリスのインタビュー#11

フェリス:だから、ピボットをする意志をもち、かつそれを信条に基づいて意思決定しなければならない。しかし、同時に、その際には、ピボットによって起きる試行錯誤の中で、チームワークがしっかりと維持されるように勤めなければならない。5つのテックスタートアップのCEOを務めた経験のあるマーガレット・ヘッファーナンが、この点について、どのように取り組みべきかについて的確な示唆を与えてくれている。

マーガレット・ヘッファーナン:私の経験の中で、最もセンセーショナルな例は、クランベリー会社のOcean Sprayだと思う。彼らは、アメリカでも最大の企業組合で、変わったビジネスをやっているわ。

あるとき、ペプシが、彼らのことをかなり真剣に買収しようとした。当然、Ocean Sprayの企業組合は、クランベリー農家によって、所有されている。だから、本当に熱のこもった議論になった。だってみんな真剣に自分たちの将来のことを考えていたから。そして、投票の結果、49.9%が売却に賛成で、50.1%が反対という結果になった。

このOcean Sprayが、これだけ世界的に成功し、何千億という事業を展開できている背景は、この投票の後、全員が、その結果を支持して動くということ。みな、何の疑問も持たないわ。投票制度で、結果が出たことに対して真摯に受け止める。決まったらそれを元に成功するために一緒にがんばる。

フェリス:十戒その8 – 君の社員に、どのように革新的であるかは言ってはいけない。これについては、賛否両論、別れるのだけど、そもそもどういう意味の話か?これは、Managed Chaosの話をしている。これは矛盾した表現だ。多くの創造的な人々はすでに気づいているが、革新的な企業ほど、経営陣のアイデアよりも、社員から生まれたアイデアが花ひらくことの方が多いということ。そして、これは、予期せぬところから生まれてくる。この点については、Googleの元CEOであるエリック・シュミットが、特に優れた考えを持っている。

シュミット:僕が思うに、スタンフォード大学院がそのイメージに近いのじゃないかと思う。一つのオフィスに、だいたい四人ぐらいの院生がいて、ちょっと混み合っている感じだけど、基本的にとてもみなカジュアル。それで、無料フードがあって、みんなそこにたむろしている。院生の文化は、常に新しい何かを発見することで、そこに自己裁量が与えられているから、新しいアイデアを実際に発明することができる。だから、シリコンバレーのテック起業家たちも、自分たちがそこで得た体験を再現したいという考えが根底にあって、同じような福利厚生などを提供する。

ホフマン:この創造的なカオスの中で、彼の仕事はとてもシンプルだ。彼は、社員に、彼のその可能性を持ったアイデアを形にしていくための背中を押すということ。

シュミット:第1に僕がやったことは、スタッフミーティングに参加すること。スタッフミーティングは長い、そして、まさに参加者も大学院のような感じ。”これについてはどう思う?これは?”など意見交換していて、ビジネス的な手続きはあんまり配慮していないという具合。

ホフマン:君が、そのような若く優れた頭脳に囲まれている状況を作り出せたなら、君は、別に面白いアイデアを作り出すために、彼らを強くプッシュする必要はない。彼らは、そのような会話を楽しみながら、やがて、君が想像だにしてなかった方向に導いてくれる。しかし、よく理解した方がいいのは、全てのマネージャが、この手のカオス状態に対して、気持ちのいい反応は示さないということだ。これを実現するには、ある特定の能力を持ったリーダーが必要で、その一つは、全ての最高のアイデアが自分から出てこなくともよいという謙虚さと、不確実性への寛容さだ。当然で、イノベーションを計画的に起こすことなど不可能なのだから。だから、この点はハッキリしておかなくちゃならない。君が、もし、マイクロマネジメント好きなら、このManaged Chaosの世界には相当苦労するだろう。

フェリス:Googleは、このManageed Chaosを取り入れた初の組織というわけじゃないのだけど、ここまでこだわって取り組んだ会社は、シリコンバレーでも稀だと言える。

ホフマン:エリックは、組織内をアイデアを常に流通するようにかなり思い切った方法を採用した。エンジニアにもっと主導権を持たせるというやり方だ。例えば、プロダクトリーダーは、自分が見ているプロジェクトを進めるためには、エンジニア達を説得しなければならない。エンジニアは、そのプロジェクトがつまらなければ別のプロジェクトに自由に移ることができる。

このやり方は、ある別のGoogleのマネージャと話をした際に、こう主張してきた:”僕のプロジェクトは、戦略的なものだとお互いに合意しましたよね?それなら、なぜ、もっとエンジニアを僕にアサインしてくれないのですか?”と。それに対する僕の答えはこうだ – “いや、君自身が、自分の力でエンジニアを説得しなければならない。このプロジェクトは大きな可能性を持っているのだと”ね。これが、Googleのカルチャーの中核をなす発想だ。

エリックは、このアイデアをさらに一歩進めている。これはとてもよく知られた事実となっているが、彼は、社員に自らプロジェクトを選択する自由を与えるだけでなく、仕事の20%を所属しているプロジェクトとは関係なく全く自由に使っていいという就業ルールだ。

この20%ルールは、まさにGoogleの大学院文化を論理的に拡張した仕組みと言える。Googleのマネージャは、リサーチアドバイザーのように、実験に関するタイムラインと予算を設定することができる。しかし、スタッフは、生徒のように、そのリサーチ内容を自分で決めることができる。

つづく。

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