マスター・オブ・スケール –起業家・著者ティム・フェリスのインタビュー#12

シュミット:本当たくさんのアイデアがこの20%ルールから生まれていった。Google Mapに関するものは、検索エンジンに関するもの、広告プロダクトに関するもの、今ではAI関連のプロジェクトの多くが、この20%ルールから生まれて行った。

ホフマン:エリックが言ったように、Gmail, Google Maps, Google News, Adsenseなど、Googleの現在の主要プロダクトの大半が、この20%ルールから生まれたものだ。しかし、なぜ、こんなにも?どうやって?

シュミット:ルールとしては、20%は完全に自由に使っていい。けど、彼らはコンピューターサイエンティストであり、エンジニアだ。だから、結果的に、自分が関わっているコアビジネスから完全に逸脱したようなものをやるという考えがない。そこで、20%の威力の凄さだ。

ホフマン:生産性の高い社員ほど、この20%のルールを、より自分たちの生産性を高めるために使おうとする。しかし、もう一つこの20%ルールには隠された優れた効果がある。理不尽な上司に対して、まともな社員が反抗できる余地を与えているということだ。この構造的に反抗できる仕組みが、上司の部下の関係にバランスを取り、かつ、有能な社員が大変な時期を乗り越えることに貢献している。

シュミット:だから、20%ルールの興味深い点は、仕事の自由度を与えつつも、特定の目標達成に対するエンジニアリングマネジメントのパワーバランスを作り出している点だ。だから、ある社員が上司からのプレッシャー下に置かれた場合、もっとハードワークしろという話になる、君の持っている全てをここに捧げろと。しかし、20%ルールがあるから、この社員は上司に向かってこう切り返すことができる。僕の100%の時間のうち80%はあなたに上げますよと。つまり、シンプルな原則として、実際に起きたことはないけど、暗黙の了解として、社員に尊厳と選択の自由を与えているということだ。

フェリス:十戒その9: 優れた企業文化を作り上げ、そして、それに対して社員一人一人がオーナーシップを持つこと. この十戒は、軽視されていることが多い。特に創業期においては。多くの創業者、特に経験が不足しているほど、このカルチャーが成功に与える影響の大きさを軽視しているか、単純にどこから取り掛かるべきか分かっていないことが多い。

僕が一緒に仕事をしたことがある創業者の多くは、後者のカテゴリに該当するケースが多い。彼らは、それがチームを団結させる上でとても重要なことを理解しているが、しかし、どこから取り掛かるべきかについて知らない場合が多い。

ネットフリックスの創業者でCEOのリード・ヘイスティングスは、この企業文化に対して非常に強い信条を持っている。なぜなら、彼の1回目の起業であるPure Softwareは、$750億でM&Aされたのだが、これは客観的に見れば成功話に聞こえるかもしれない。しかし、彼は、レイドに、会社の企業文化という視点では完全に失敗だったと回顧している。だから、彼は、2回目の起業であるNetflixでは、同じ過ちを繰り返さないために、この点に特にフォーカスして取り組んだ。

ホフマン:だから、リードは、1社目で典型的な過ちを犯したわけだ。彼は、会社の問題を自分がひたすら必死に働くことで解決しようとした。しかし、そのよなハードワークは十分ではなく、むしろ、全く正しい答えにはなっていない。スケールする上で成功するためには、君は、社内の全てのリソースをレバレッジして動かさなくてはならない。そして、その実現のためには、君は、非常に意図的にそのためのカルチャーを作り上げなくてはならない。これこそが、リードが、Pure Softwareから学んだことだ。Pure Softwareの経営陣の意思決定は、間違った振る舞いを賞賛し、間違った社員をキープするこを奨励するカルチャーを作り上げてしまったからだ。

リード・ヘイスティングス:Pureでの過ちは、何か問題が発生した場合、例えば、売り上げ目標が達成できない、プログラムにバグがあったなど、起きるために、再発防止のためのプロセス改善をすることばかりに執着していた。そして、この原因は、よくよく突き詰めてみると、間抜けな社員が引き起こす問題ばかりで、最大の原因は、そのような間抜けな社員だけが喜んで働く場になってしまっていたことだ。だから、組織内の知的レベルがその分低下し、その結果、市場の変化への対応力がなくなっていった。例えば、C++からJavaへのトレンドの変更など、数えあげたらキリがない。しかし、このような環境変化への適応を起こせなかった理由は、プロセス重視ばかりで、第1原理の思考をできる人材を雇っていなかったからだ。

ホフマン:このリードの気づきに注目して欲しい。Pure Softwareが環境の変化に適応できなった理由は、間違った社員を雇ったからだ。しかし、なぜ、そのような社員を雇ってしまったかといえば、そのような社員を雇う経営の意思決定をしてしまったからだ。

フェリス:リードが、1社目の起業から学んだことは、カルチャーは正に誰と働くかと彼らがどのように仕事を進めるかにものすごい影響を与えるということだ。Netflixでは、彼は、テクノロジーが変化しても、その変化に適応していける能力を持った人を雇うことを心がけた。そして、これはよく言われることだけでも改めて言っておこう。彼らは、文字通り、メール便によるDVDレンタルサービスから、現在は、オリジナルコンテンツを強みとしたビデオストリーミングサービスに完全に事業をシフトさせている。

これに関する全ストーリーは、リード・ヘイスティングスのインタビューを参照して欲しいが、わかって欲しいことは、このリードの悟りが、Netflixのカルチャーと人材採用方法にものすごい影響を与えたということだ。Netflixのチームをスケールさせる際、リードはすでに非常にクリアな人材選定の基準を持っていた。

ホフマン:リードのこの歴史に対する知識、つまり、テクノロジーがもたらす環境の変化の歴史は、彼にとって、時代が変化しても適応できる人材を必要とした。その人材は、プロセスの改善には目を奪われず、Netflixが最高のエンターテイメントを視聴者に提供し続けるという第一原則の思考ができる、つまり、それが馬車による時代、メールによる時代、そして光ファイバーの時代、ましてやイーロン・マスクが進めている脳神経にネットワーク化する時代にになってもだ。要するに、君には、ビジネスモデルを高速に変化させることができる人材が必要なのだ。

 

では、どうやってリードは、このような人材を特定していったのか? それは、正に、よく知られたNetflixの100枚にも及ぶスライドからなる”カルチャー・デック”の存在だ。このドキュメントでは、Netflixのカルチャーの詳細がまとめられ、どのような人物を採用しようとしており、そして、それらの人材に何を期待しているかについて詳しくまとめられている。

つづく。

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