マスター・オブ・スケール – VMWare創業者兼CEOダイアン・グリーンのインタビュー#6

 

ホフマン:ここで、話をダイアンの例のスイス・アーミー・ナイフにもどそう。彼女は創業当初から、VMWareの将来像について、大きなビジョンを持っていた。

グリーン:私達は、このプロダクトコンセプトを市場が一旦受け入れてくれれば、世界中が受け入れてくると考えた。けど、別にそれをお金勘定として捉えるのではなく、一体何台のコンピュータが私たちのソフトウェアを使ってくれるのか?という観点で考えていた。

ホフマン:ここに、ダイアンの凄さがある。大半の起業家は、会社がスケールした後に、自分たちのビジョンのスコープを考え始める。つまりは、まずは足取りを確かなものにすることを優先しているわけだ。しかし、長期のビジョンというのは、そういう考え方では、全く検討もつかないことになることが実は現実なんだ。

一方、ダイアンは、起業家の中でも稀に彼女のビジョンを創業当初から本気で信じているタイプだった。もちろん、彼女は、どうやってそこにもたどり着くかもまだ検討がついていない段階から、彼女は、彼女のチームメンバーにこのアイデアの大きさについて執拗に語っていた。

グリーン:一人目のオフィスマネージャは、正に私にとってCOOと呼べるような存在だった、彼女の名前は、V.J .Richey。当時のチーム規模はまだ10名ぐらい。そして、彼女は、いつも私がみんなに話をしていたことを回想してくれるんだけど、”V.J、この技術は間違いなく、いつか世界中のコンピュータで稼働することになるわ”と。

ホフマン:ここにこそ、短期に直面する現実を活力で乗り切っていく思考のバランスがある。明確な道を示さず、チームをインスパイアすることは容易なことじゃない。ビジョンを信じて、それを売り込むことは、起業家が行うカニあるきの動作として、原理原則の一つと言えるものだ。なぜなら、君がそのビジョンを本気で売り込み続ければ、自ずと君のチームメンバーはその周囲で思い思いにそのビジョンを成し遂げるためのカニあるきを始める。

そして、試行錯誤を続けながら、若い会社の第一歩として不可欠な道のりである、初期のユーザーを見つけ、そして初期の市場を確立するという行為を実現していくことになる。

ホフマン:Go-to-marketの戦略はどうやって取り掛かったの?

グリーン:笑、はっきり言ってスパゲティを壁にぶちまけるような感じね。要するに、全部試した。

ホフマン:彼女の第1の試みは、企業のITチームにコンタクトして、彼のサーバーコストの削減にVMWareが大きく貢献できることを売り込むことだった。これに対する顧客の反応は?興味ゼロ。これが当時90年代の話だ。なぜなら、当時は、dot.comブームの真っ最中。誰もコスト削減のことなんて考えていない。

グリーン:彼らは、効率性のことなんて考える必要ないという感じだったわ。だから、当分の間は、WMWareのソフトウェア価値を理解してもらうのに苦労した。

ホフマン:次に、ダイアンは、彼女のこのアイデアをかなり奇妙な場所で売り込むことにした。

グリーン:大学の教授に売り込んだらよいのじゃないかと考えた。物理学者や化学者など。だから、初めは、こんなジョークを言ったものよ。”WMwareは、みんなの物じゃない。それは、大学の理系教授のもの”と。

ホフマン:大学の理系教授、うーん、あんまりスケールする市場じゃない。しかし、実は自分の顧客を見つけていくプロセスは、多くの場合、ランダム性があり、予想していないような発見をプロダクトにもたらしてくれる。そして、ダイアンにとって、幸運で、そして、他のみんなにとって不幸だったのは、dot-comバブルが弾けたことだ。そこから怒涛のように、コスト削減が始まり、WMWareへの注目が集まった。

グリーン:たくさんの会社が、VMWareを使えば、新しいサーバーを買う必要がないことに気づいたわ。本当、不思議な体験と呼べる物だったけど、中には、大口のお客さんで耐えきれず倒産するところもあった。そしたら、また新しいジョークが出てきた。”VMWareは、みんなの物じゃない。それは、倒産寸前の企業のものだ”って。笑

ホフマン:確かに、このコストにうるさい大学の研究室や会社にアイデアを売り込む話も一理あるのだけど、本来、今話そうしているのは、例のスイス・アーミー・ナイフの話だ。ここで、ダイアンは、別のハードルに直面した。顧客が、仮想マシンの世界に少しずつ興味を示し出したんだ。ただまだまだ奇妙な存在に思われている新技術だった。みんな、仮想マシンの意味をきちんと理解してくれていない。それは、会社のデータを全て仮想の世界に持ち去ってしまうような存在として捉えている人もいた。ここで、ダイアンはある問題に気づいた。

グリーン:そこについては、私たちは冷静に顧客の反応を把握できたわ。”いいかい、誰もVMWareの上でサーバーを走らせようとしない。彼らは、私たちのソフトウェアを自分たちのミッション・クリティカルシステム全てを走らせるほど信用していない”と。

つづく。

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