マスター・オブ・スケール – スラック創業者兼CEOスチュアート・バターフィールドのインタビュー#4

 

ホフマン:もし君のチームが別れたのであれば、一見、両方のアイデアに同時にベットすることで、リスクヘッジができると考えるかもしれない。もしくは、そのチームを分けたことで、チームに平和が訪れるかもしれない。しかし、創業者としては、このようには決して言いたいとは考えないはずだ。”僕らは、アイデア Xに取り組んでいて、そして、同時にアイデアYにも取り組んでいる。僕らのチームは、両者のアイデアがそれぞれ好きだからね”と。これは、ただの都合のいい解決策に見える。この結果がどうなるか?というと、それは「テルマ・ルイーズ」のように、崖でお互いに手を握り合って耐えている状態になる。

君は、実際には、チームに、XをとるかYをとるか選ばせる必要がある。これは、究極的には、創業者の責任でしか下せない判断だ。しかし、君は、チームメンバーをしっかりと巻き込んでこの決定をしなければならない。この状況こそ、スチュアートが直面したことだった。彼は、ほぼ彼に必要な分の投票は得ていたのだが、一つの投票が保留になっていた。

バターフィールド:チームの一人に、子供をもつ親がいて、彼は給与をもらっていた。彼がその投票を保留していたんだ。

ホフマン:この一人というのが、彼のスタートアップの共同創業者の一人だった。全員が、給与ゼロで仕事をする意思を固める中、彼は、養う家庭をもっていた。この保留された投票によって、ステュアートは、ゲームのプロジェクトを閉じて、Flickrにフォーカスする決定を下すことになった。

バターフィールド:この状況は、正直、”もう数ヶ月ほど、この二つのプロジェクを走らせてみよう。もし、給与を継続的に欲しいなら、道は一つだ” というような具合とは言えないほどのものだった。全くみんなを脅すつもりなんてなかったけど、ゲームプロジェクトの方で資金を調達するつもりは全くなかったんだ。

ホフマン:ちょっと待ってくれ。もう一度。

バターフィールド:”もし、給与を継続的に欲しいなら、道は一つだ”

ホフマン:ステューアートは、この共同創業者の給与支払いを脅しに使ったかって? それは正確な理解ではない。なぜなら、ステュアートは、この共同創業者と、このような発言が許されるほどの信頼関係を気づいていたからだ。

スタートアップをやるというのは、一緒に戦争に行くことに近い。まるで映画プラトーンの世界のように、お互いに、塹壕の中に入って敵と闘う。だから、すごい信頼が形成される。君に何かあれば、俺は君の後を追うし、俺に何かあれば君は俺の後を追う。そういう信頼関係だ。

だから、このスチュアートの手法は実践的であり、敵対的なものではない。彼が言っていることは、”いいかい、僕らは確かにこのゲームのプロジェクトに取り組むことを愛している。しかし、現実は、もうこれをやり続けることが許されないような状況なんだ。だから、決断しないといけない。”と。こう言って、共同創業者は、スチュアートは、彼の言葉は耳を貸し、Flickrにフォーカスすることを決めた。

バターフィールド:それで、次の日に、もう1回投票をとって、今回は、Flickr側が勝利した。その時点で、僕は、失うものは小さいと考えていた。僕の起業家人生において、7年後に経験することになるGlitchからSlackへのピボットに比べると、トラウマになるようなものでもない、はるかにマシなピボットだったと思う。

ホフマン:とうとう、じゃあ、その話を始めようか。

ホフマン:実際、その話にきたと言える。Slackファンのみんなは、早くSlackの逸話について話を切り替えて欲しいと望んでいるだろう。しかし、Game Neverending からFlickrへのピボットは、完璧なケーススタディの一つだ。だから、もういくつかの理論について確認する必要がある。

まず、僕は、CEOとして、君は、ピボットを踏む際は、コアチームを常に一心同体の状態にしなければならない。君は、そのメンバーに、一緒にこの意思決定をしているという理解をさせなければならない。完全に民主的に決める必要性はない。実際にも、民主的に決める意思決定事項ではない。しかし、民主的に決めているという体感がとても重要なんだ。チームメンバーは、自分の声が経営陣に届いているという感じる必要がある。だから、スチュアートのやったやり方を見ると、”よし、投票で決めよう”という擬似的な民主主義を取りながらも、”けど、僕は、君の立場を理解しているから、君を説得することができるよ”というスタンスでこの意思決定に望んでいる。

最終的に、チームは、資金の残りを全て、Flickrに注ぎ込んだことができた。そして、ステュアートと彼の共同創業者は、様々な手法をつかって、このピボットをリードしていった。新たな道はより狭くなっており、荒く、一見どこに向かっているかわからないものだった。しかし、その道は、今までの道に比べるとよりベターなものだと感じられたから、そこに向かってピボットを踏んだ。既存のゲームプロジェクトの顧客からくる嵐を乗り越えて、この難しい組織転換を成し遂げた。

これらのピボットのエピソードは、実に痛々しい経験に見えるかもしれない。しかし、きちんとわかっておいて欲しいことは、スチュアートは、決して、チームにヘアピンカーブのようなターンアラウンドをチームに求めたわけじゃない。実際、彼は、Flickrによって、インターネット産業そのもに、ヘアピンカーブのようなターンアラウンドを提示したんだ。

つづく。

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