マスター・オブ・スケール – スラック創業者兼CEOスチュアート・バターフィールドのインタビュー#8

ホフマン:だから、スチュアートは、今回は、前回のように飛行機で食中毒を味わう必要はなかったわけだが、彼は、想像を超えたピボットの手法を考え出した。彼は、Glitchでチーム内のリモートワーク用に開発して使っていたチャットベースのコミュニケーションツールこそスケールす可能性が高いプロダクトだと考えた。それが後のSlackとなっていく。

一見、これは、最も成功するピボットのパターンとはそぐわないように見える。なぜなら、ピボットとは本来、会社の原点であるミッションは変えずにそこを起点にして実行するものだからだ。スチュアートは、まさにこのルールからすると完全に例外だ。僕は、よく創業者にこのような自問自答を促す:”今まで、君達が通ってきた道を振り返って見て、可能性があると考えた他の選択肢はなかったか?”と。要するに、アイデアというのはどこからともなく湧いてくるということは絶対にない。

“見てくれよ。昔のホワイトボードに書いた内容を振り返っていたんだけど、どう思う?僕らは、ECサイトを作るべきかな?ゲームはどうだろう?それともビザのデリバリーレストランがよいかな?”

違う、違う、そういうことじゃない。”過去通った道で、何を見てきたのか?”だ。

チャットベースのコミュニケーションツールは、正直言って、スチュアートが、オンラインゲームの世界で作り上げようとしたものは、かなり違う。これは、自分達のために作ったものだ。彼らは、このツールを自分達の仕事上の課題を解決するために作ったものだった。お互いにすぐにコミュニケーションが取れて、透明性が高く、そして、長くその世界観をキープできるプロダクト。

バターフィールド:僕らのチームが、まだたったの四人ぐらいだったころ、はじめに社内のコミュニケーションツールを使い始めたとき、かなり昔のIRCというプロトコルを使ってやりとりしていた。

ただ、IRCを使っていて不足していると感じたのは、メッセージを保存したり転送したりすることだった。僕が君にメッセージを送りたくても、君がオフラインの場合、このメッセージは送ることができない。方法がないんだ。だから、僕らはボットを開発して、送り先がオフラインのときに送ったメッセージを貯めておいて、次回、オンラインになったときに受信できる機能を作った。この機能を入れて実際使ってみて感じたのは、”おおっ、すごいな。メッセージ履歴の検索が超簡単になるじゃん”と。メッセージの履歴をすでにボットがデータベースに保存してくれているから、これが実現できるんだ。

これらのことは、僕らが考えていたことや話していたことじゃない。ファイルに名前もつけてない。全ては、裏方のシステムで起きていることだ。しかし、僕らが他の人を雇い始めたとき、この新しく参加してくるメンバーは、過去にこのチームで起きたことは何も知らない。新人はみなこの社内コミュニケーションにおいて、空の状態からスタートしないといけない。

それで、これは、僕はソフトウェア開発の手法としてコピーが不可能なほど重要なことは、自分が何をやっているか考えるなということ、エゴをもつなということ。”つまり、僕はユーザーが欲しがっているものを分かる”などと思わないこと。自分が持っている問題の中で、最もフラすとが溜まっているものに対してフォーカスして、その解決のために必要な機能を開発して、そして、実際に使ってみるということ。この哲学だ。

ホフマン:だから、スチュアートが指摘したように、”山の頂きから降りてくる”という考え方が大事なんだ。コアテクノロジーは出来上がっているのだから、あとは、これをプロダクトとしてパッケージング化する。この時点で、スチューアートは、3つのステップを頭の中に描いていた。

バターフィールド:プロダクトの内容をスライドにまとめて、”僕らはSlackを作るべきだと思う”と。まだ実際に作り始めてなかったけど、Slackを始める際に、新しいチームメンバーに見せたんだ。凄かったのは、プライシングから、プロダクトビジョンから、マーケティングまで全て、その資料に納まっていたということ。

全ては、予め定められていたんだ。別に変更する必要はなかった。なぜなら、僕らは、3.5年の実践の中で、リモートチームを作りながらそれをスケールさせる工程をずっと続けてきたから、これ自体、つまり、自分達の課題を解決してきたこと自体が、Slackのプロダクトマーケット・フィットに直結していたからだ。

つづく。

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