マスター・オブ・スケール – InterActiveCorp会長バリー・ディラーのインタビュー#9

 

ホフマン:じゃあ、この若い異端児は、何をすべきか?パラマウントの現時点のやり方が間違っていることをしょっぱなから証明しなければならない。

ディラー:パラマウントの全てはひどかった。プロセスも違和感だらけで、マネジメントの仕方もひどい。しかし、だからこそ僕はエキサイトした。なぜなら、全く別のやり方があることがすでに見えていたからだ。

 

ホフマン:こうして、バリーは、この最下位の映画制作会社をヒットメーカーへと生まれ替わらせる。彼が、制作のGoサインを出す映画は、ハリーウッド業界そのものを変えて行った。その第1号が、あの「がんばれ!ベアーズ」だった。この脚本を見た瞬間、バリーは「この映画を作るぞ!」とGoサインを出した。

 

しかし、他の映画制作会社と同様に、最重要の課題がのしかかる:”誰が、監督をやる?” 、そして、”誰が主人公をやる?”だ。当然、まずは、著名人の名前が上がってきた。しかし、バリーは、それらの案を全て却下した。彼の直感の中核には、常にストーリーがあるからだ。

ディラー:僕の経験で、僕のところに回ってきた脚本の中で、とてつもない傑作になるだろうと直感したものは、1,000本中、10本ぐらいかな。

とにかく、僕が希望している脚本選定のプロセスは、パラマウントにはなかったから、これを2年かけて作り上げて行った。こうやって、ようやく素晴らしい映画を量産できる体制が出来上がって行った。サタデー・ナイト・フィーバー、グリース、レイダース、などなどね。

 

ホフマン:ここで、僕からもバリーが上げながったパラマウントの素晴らしい作品を紹介させて欲しい。ウォーリアーズ、ビバリー・ヒルズ・コップ、スタートレック-スポックを探せ、13日の金曜日、エレファントマン、フラッシュダンス、トップガン、クロコダイルダンディーなどなど。物凄い数だ。

 

ディラー:その後7年間、パラマウントは、ハリウッド業界でNo.1の制作スタジオになった。なぜなら、他の6社とは全く違う独自のパスを選んだからだ。

ホフマン:君も自分の関わっている組織を、このバリーの視点から見直して見るとよいだろう。そして、バリーの仕事が素晴らしかったのは、自分の直感力によって傑作となる脚本を発掘するそのセンスを自分の中に留めておかず、組織全体に浸透させて行ったことだ。”僕のやり方を、君たちにもできるようにしよう”、これがバリーのラーニングカーブの真骨頂とも言える領域だ。普通の人では、到底、見えない、そして可視化できないプロセスを実際に可視化して、組織的にやれるようにしていくことができる。バリーのこの行動哲学は、シリコンバレーのカルチャーの基本中の基本である”早く動け、そして破壊しろ”の行動哲学に通じるものがある。

 

ディラー:僕は、「プロセス」を愛しているんだよ。

 

ホフマン:この点は、僕も彼に質問しないといけない。

ホフマン:これは、シリコンバレーで立ち上がってくるアーリーステージの会社と、よいプロダクトを作っていくことの間にある興味深い違いと関わっている。まず、シリコンバレーでは、「プロセス」という言葉は嫌われる。バリー、君にとって、「プロセス」とはどういう意味なんだい?

ディラー:そうだね、僕は、反復のプロセスが好きなんだ。

ホフマン:つまり、学習していくプロセスそのものだね。

ディラー:そうだね、僕の親しい友人の一人で、彼もすごく成功しているんだけど、彼は、とにかくプロセスが嫌いだ。僕が経営に関わっている会社のどれか一つにでも、何か起きると、彼らは、”売ってしまえ”と言ってくる。僕は、” 売ってしまえって、どういう意味だい?”と。だって、僕にとっては、この言葉は、喉元にナイフを突きつけられたような気持ちになる言葉だからだ。僕は、常に彼の逆の考えを持っている。僕は、その何かが起きた瞬間からが好きなんだよ。それが、ひどい内容でも、斬新なものであってもだ。なぜなら、全ては、ここから、新しく生まれ変わっていくからだ。

今までにない取り組みを始めることで、間違いをし、そこから行動を修正する。それの一連の反復活動をしていく勇敢さこそ、僕が愛していることで、僕にとっては、それが「プロセス」だ。

つづく。

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