マスター・オブ・スケール – InterActiveCorp会長バリー・ディラーのインタビュー#10

 

ホフマン:僕が、このインタビューを通じて、バリーが言っている「プロセス」という言葉を聞いたとき、違和感を持った。なぜなら、シリコンバレーでは、「プロセス」という言葉は、「官僚主義」を意味するからだ。しかし、バリーのプロセスの定義は違う。彼の定義は、要するに、一連の全く新しい作品や事業を生み出すための過程のことを言っているんだ。そうなってくると、僕のこの彼のいうプロセスには興味がわく。誰にとっても、そのような未知の世界をプロセス化できることは関心を持つだろう。

しかし、僕にとって、ひときわ彼のこの独特の「プロセス思考」に感嘆するのは、彼が、再び、映画の世界からTVの世界に戻って、今度は、新しいTVネットワークを立ち上げたことだ。当時、すでに、3大ネットワークがあった。NBC、ABC、そして、CBSだ。この3つは、TVの発明以来、アメリカのTVネットワークを支配してきた。そして、彼が4つ目のTVネットワークを立ち上げようとした時期は、1980年代、まだケーブルTVの初期の時代で、YouTubeやNetflixもなかった時代だ。

この3大ネットワークが圧倒的な影響力を持つ中で、彼は、四番目のTVネットワークを生み出せる可能性を感じたわけだ。視聴者から何かインスピレーションを得たか?と言われれば、そんなことはなく、これもまた彼の直感からくるものだった。

彼は、アイデアをピッチするつもりもなかった。しかし、彼の回答が、メディア界の重鎮、ルパード・マードックの興味を掴んだんだ。

ディラー:僕は彼にこう行った:”いいかい、僕は以前から四番目のTVネットワークを作ることを考えてきたんだ。もちろん、みんなそんなアイデアは狂っていると言っているがね。”

そしたら、彼は、”いいね。作ろうじゃないか”と。僕は、紙の上に、どれぐらい金がかかるか書いて、彼に見せた。

そこでの議論を元に、ルパード・マードックは、1500億円を借りて、メトロメディアTVを買収し、その18ヶ月後に、フォックス・ブロードキャスティングを開始した。

 

ホフマン:1500億円を投じた巨大なギャンブルだ。ABC、NBC、CBSも持っていない政治色をどうFOXに持たせるか?それがバリーにとって最大の難問となった。

ディラー:こう考えた:”そもそも代替するとは、どういう意味か?”

ホフマン:バリーの得意とする集中力が最大に発揮されるタイミングがまたきた。彼の脳に、セレンディピティが降りてくる。

ディラー:ある日、あるプロジェクトの話がFOXに舞い込んできた。タイトルは、”コスビーではなく”というもの。その当時、ビル・コスビーは、TVの最大のスターの一人だった。ビル・コスビーじゃない代替を考えるということ。

彼は、NBCでNo.1のショーを持っていた。このシリーズは、いわゆる理想の家族像というものに対するアンチテーゼをテーマにしていて、口うるさい、不快感を感じる家族の様を描いていて、これがやがて、僕らの「Married with Children」という番組になったんだ。

ホフマン:こうして、例の創作プロセスが開始した。彼は、三大ネットワークがやっている典型的な、こぎれでこじんまりとした家族像の番組に対して、アンチテーゼとなる番組を作り始めた。それが、「Married with Children」になったんだ。こうして、彼はこのコンテンツをトリガーに、様々なそれまでのTV番組にはなかったコンテンツを市場に投入し始める。

ディラー:これこそ、正に「三大ネットワークに代替するメディア像」だった。これが、FOX TVの第1号のヒット作になった。正に鉱脈を見つけた感じだ。僕は常々信じているが、一度、鉱脈を発見したら、あとはひたすらそこに徹底的に集中して掘り下げていくことだ。

つづく。

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