マスター・オブ・スケール – InterActiveCorp会長バリー・ディラーのインタビュー2 – #4

ホフマン:ところで、ここに、ベンチャー事業におけるある種の矛盾した世界がある。それは、基本的に、君がもし、分析をベースにおいて予測した未来は、ベンチャー事業にとって遅すぎると言うことだ。つまり、ベンチャー事業を行うと言うことは、必ず、そこに君はリスクをとって、特定の「見えない世界」があることを自覚しながら飛び込むことを求められると言うこと。だから、君自身が、”ここにリスクがある、あれはまだ不明だ。ここにもリスクがある。また、これも不明だ”などというような、リスクパラノイア的な感覚を持ってしまうと、結果的に、君は、”なんてこった!これが一体どうやって上手くいくんだ” と言う感覚になる。

だから、君は、このように思考のバランスをとる必要がある:”僕は、これがどれぐらい大きなリスクであるか理解している。であるから、これがどれぐらい大きな試みになるかも理解している。しかし、その上でも、やはり、僕は、ここに大きな可能性を感じており、ビジョンを持っている” と。これこそ、ベンチャー事業における意思決定のマインドセットだ。

ディラー:僕らがやっている企業買収は、もはやベンチャー事業と呼ぶレベルのものではない。だって、最低で500億円ぐらいを買収費用としてかけて、その事業が何千億円の事業価値になるように育てていく買収モデルだからだ。だから、正直、時価総額ゲームの世界には興味がないんだ。それとは全く別のゲームでやっている。だから、過剰分析は常に、機会損失にしかならないと見ている。これは、本当にその通りなんだ。

ホフマン:なぜなら、チャンスが全てに勝るからね。

ディラー:全くその通りだ。

 

ホフマン:Yes

ホフマン:ここで、先ほどのバリーの言葉を改めて強調すると、誰一人として全てを知るものはいないと言うこと。これは君も含めて。

 

多くの若い起業家が、戦略をチェスゲームのように捉えている。彼らは、予め全ての行動プランを立てようと試みる。実際、このような行動要素が必要なときもある。しかし、僕が創業者によく言うのは、”違うよ。君は、別に、自分の頭の中に全ての行動計画を立てておく必要はない。むしろ、それはやるべきじゃない。君は、ただ、戦略的なチャンスをそこに見出したとき、十分素早く動けるよう柔軟であるべきと言うことだ。”

多くのビジョナリーな創業者は、彼らのビジョンの限界を知る。彼らは、顧客が求めているものに対して、明確な絵を頭の中に描くことができる。しかし、彼らは同時に、その思い描いた絵が、過剰な想像物であることを思い知らされる。だから、顧客からのフィードバックを通じて、現実的に思考し、その青写真を容易に変更できるように心構えをしておかなければならない。そして、そのフィードバックは、君は、ただ顧客に君が描く未来を伝えることを通じてのみでは得ることはできない。例えば、”こんなものがあったら欲しいですか?”と尋ねると、大抵、ユーザーは、”うーん、多分ね、けど、よく分かんないな”と答えてくる。これでは、君の青写真に対して、よいデータ裏付けにはならない。多くの人間は、概念だけの未来を理解する能力に乏しいからだ。

しかし、もし、君が、その未来の断片を顧客に与えるなら、これはつまり、実際にプロダクトとして見せたり、修正を加えたものを見せたりすることを意味するのだが、これを実際にやってみると、顧客が、実際にそれを見ることができたおかげで、その未来の意味をようやく理解してくれる。たとえば、”ああ、これいいね!”と言う具合にね。これでようやく、君の戦略は、次のステップに進むことができる。

バリーのビジネスモデルの興味深い点は、彼が自分の戦略に対して、確実に行けると言う確信を得たとき、彼の興味は完全に失われ始めると言うことだ。彼は、自分にとって身近なすぐに理解できる対象に関わることには一切興味が湧かないし、IACのポートフォリオに加えることもない。

ディラー:だから、僕は、これは実に馬鹿げたことだと考えた。まず、僕は、コングロマリットと言う企業体は好きじゃない。実に非効率的だし、要するに、単なる資本の再配分をすることしかせず、実際に、それぞれの企業がやりたいことなども無視することになる。

だから、僕は、IACのポーフォリオ企業は、常に、彼らが独立採算性でやっていける段階に達したら、全てスピンオフしてもらうようにしている。この方が、お互いにとって、ヘルシーな関係をキープできるんだよ。

つづく。

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