ElrondのトークンERDの投資分析について

今日は、ElrondのトークンERDのファンダメンタル分析についてお話しします。

こちらの内容はYouTubeにもまとめています。日本語字幕付きです。合わせて参考にしてください。

まず、僕のポートフォリオ戦略における、Elrondの該当カテゴリはBaaSです。

BaaSは、ブロックチェーン産業において、もっともプレイヤーが多い市場の一つです。僕のポートフォリオ戦略については、「こちらの記事」にまとめています。

分析視点は、いつもの6つの視点、つまり、ペインポイント分析、プロダクト分析、チーム分析、チームの実行力、トークンエコノミー 分析、そして、ハイプサイクル分析です。詳しくみてきましょう。

ペインポイント分析

一つ目、ペインポイント分析です。

ブロックチェーンアプリ開発者にとって、事業の初期段階でP2Pのコンピューターリソースを獲得するのは大変な作業であると言うこと。

詳しくお話しします。

まず、現在のインターネットのインフラは、GAFAに代表される巨大IT企業が全て支配しています。これらの会社は、P2Pコンピューターネットワークでは運営されていないので、ブロックチェーンの思想と真逆のシステムです。

ですから、これからブロックチェーンを使ったアプリ開発をしたいと考えているプログラマはどうしなくてはならないか?

基本的に、このコンピューターリソースを自前で持ってこなくてはなりません。しかし、これはとても大変です。そこで、この裏方の仕事であるP2Pコンピューティングネットワークのリソースを提供してくれるのがBaaSです。

実は、これは、インターネット産業の発展においても同じことが起きているので、とても参考になります。

それは、2006年から2007年にかけておきた「コンピューティングビックバン」と言われる現象です。

このときから、アプリが大量に市場に出回るようになったのですね。このお陰で、インターネット産業は、一気に大きく成長しました。非常にインパクトのある出来事でした。

そして、そのキッカケとなったが、中央集権型クラウドのアマゾンのAWSと、アップルのiPhoneです。BaaSと関連しているのは、前者です。

AWSが普及する前は、アプリ開発者は、データセンターを借りる必要がありました。毎月、最低、数十万円は支払う必要がありました。お金がとてもかかったのですね。だから、なかなか簡単にアプリを作ってリリースすることができませんでした。

しかし、AWSがこの問題を解決してくれました。なんと秒単位で課金してくれたのです。この場合、ユーザーが少ない段階であれば、毎月数千円の支払いですみます。このお陰で、たくさんのプログラマがアプリを開発するようになったのですね。

BaaSは、このAWSのブロックチェーン版です。ブロックチェーンの世界では、AWSのようにサーバーはアマゾンが中央集権的に管理しているのではなく、ビットコインのマイナーと同じで、みな自分の自由意志でネットワークに参加して来ますから、BaaSは、このマイナー達をアプリ開発者に変わって大量に集めてくることで、その上で、誰でも簡単にブロックチェーンを使ったアプリを提供できる世界を作り出しました。

つまり、このペインポイント解決は、ブロックチェーン産業の発展にとって、とても重要ということです。

プロダクト分析

では、ここからこの点を踏まえてプロダクト分析を進めていきます。

まず、Elrondのシステム全体像について理解を深めましょう。

こちらの図を見てください。

BaaSの下に、マイナーたちがいます。彼らは、コンピューター資源とネットワーク資源を提供してくれています。

そして、上でブロックチェーンアプリが動いています。

Elrondは、イーサリウムなどと同じパブリック型のBaaSで、コンセンサスアルゴリズムも、PoSになります。

そして、BaaSを理解する上で、もう一つ重要なのが、こちらのスライドです。

中央集権型クラウドとBaaSの非中央集権型クラウドを比較したものです。

クラウドコンピューティングシステムは、一般的に3つの機能を持っています。トランザクション処理システム、ストレージシステム、そして分析システムです。

そして、BaaSと言うのは、この図でいうとトランザクション処理システムのことを指します。ブロックチェーン自体が、トランザクション処理システムの技術だからです。ストレージ機能や分析機能は持っていません。

なので、ブロックチェーンの技術を拡張してそれらの機能性を持たせていく必要があります。

この点が、Elrondと他のBaaSを比較する上でのヒントにもなります。

では、いつものバリューカーブ・プロポジショニング分析をしていきましょう。

3大BaaSであるイーサリウムとTRON、EOSと比較します。

まず、Elrondは世界初のBaaSではないため、イーサリウムが持つ1st Mover Advantageは持っていません。ですから、的確な差別化戦略が求められます。

また、先行していることは、イーサリウムが開発中のPoSをすでに実装しており、パブリック型BaaSとしてシャーディング機能も実装しているため、パフォーマンスが優れている点です。

ただし、他のBaaSとしての機能性でいえば、すでにストレージや分析機能を持つEOSには劣り、かつアプリ開拓戦略においても、DliveやBitTorrentなどを獲得して、垂直統合戦略を展開しているTRONに劣ります。

そして、Elrondは自分たちのBaaSのガス利用料、つまりトランザクションコストがイーサリウムに比べて安いことをアピールしています。イーサリウムのGASコストが高い主な原因は、ビットコインと同じPoWベースでブロックチェーンが動いているからです。

イーサリウムは、今、開発を進めているElrondと同じPoSベースへの移行が完了すればかなり下がることが見込めるので、Elrondのコストは強力なアピールポイントではなくなります。

なので、この分析ベースでいうと、Elrondは、テクノロジーでは優れているものの総合点で3大BaaSに劣ります。

その結果は、こちらの図にもよく現れています。BaaSのTop10を比較したものです。2019年のデータです。

オレンジが各BaaS単体の時価総額で、ブルーがその上で稼働するブロックチェーンアプリの時価総額の合計です。イーサリウムが、圧倒的ですね。

これが、1st Mover Advantageの威力です。

ついで、EOSやTRONが続いています。しかし、ここにはElrondは一切ランクインしていません。かなり、厳しい戦いが予想されます。

その場合、Elrondの生き残り方の一つは、3大BaaSが圧倒的に強いB2C Dappsは顧客として狙わず、B2Bアプリを顧客ターゲットとしてフォーカスすることです。

この場合のポテンシャルは、インターネット市場におけるクラウドコンピューティング市場を分析することで見えてきます。

こちらの図を見てください。2019年のクラウドコンピューティングの市場シェアです。

AWS、MicrosoftのAzure、そして、GoogleとAlibabaの4社で、合計約65%と市場の過半数をしめています。

一方、SalesForceやIBMは弱小プレイヤーです。その他には、昔、クラウドコンピューティング市場が黎明期の時代には、RackSpaceなどの大型データセンタープレイヤーもいたのですが、結果的に、「その他」に追いやられてしまいました。

なぜか?

これを理解するヒントは、テクノロジーマーケティングの世界では、常識中の常識と言われる「キャズム理論」から見えてきます。

キャズム理論は、一般的には、新技術のB2Bマーケティングに使われる理論ですが、BaaSは、B2B2Cビジネスになるので、十分応用できると考えています。

Amazon, Microsoft,Google,Alibaba、この4社のクラウドコンピューティングサービスに共通して言えることは、B2C向けの強力なサービスを自前で持っているということ。

AmazonはEコマース、MicrosoftはOffice Cloud、そして、Googleは、検索エンジンやYouTubeなどです。新しいテクノロジーはなんでもそうなのですが、B2BよりB2C市場の方が、先に立ち上がります。なぜか?

B2C市場は、「消費者一人一人が意思決定者だから」です。使うか使わない方は、すぐに決めることができます。そして、その中で、このキャズム理論でいうところのイノベーターやアーリーアダプターといった、新しい技術を積極的に使っていく人が自然と取り入れてくれるので、クラウドコンピューティングのお客さんであるB2Cアプリのユーザーベースはすぐに伸びていくのですね。ですから、Amazon、Microsoft、そしてGoogleの顧客ターゲットも、基本、B2Cアプリを提供していいる会社です。具体的にはNetflixやUberなどですね。

一方、B2Bアプリは、会社内で導入するかしないかの意思決定がされるため、時間がかかります。組織の中には、イノベーターやアーリーアダプターは一部ですから、キャズムにおける、アーリーマジョリティやレイトマジョリティの意見に押されてしまい、なかなか導入が進みません。

この結果が、このクラウドコンピューティングの市場にも出ています。SalesForceやIBMのクラウドコンピューティングは、全てB2Bアプリが中心です。SalesForceは自分たちが、B2B顧客をターゲットとするCRMですし、クラウドサービスの顧客ターゲットもB2Bアプリを提供している会社です。

つまり、アプリ側の顧客開拓に時間がかかるため、強力なB2Cアプリを持つAmazonやGoogleのクラウドサービスに差をつけられてしまうわけです。

今、強力なB2Cアプリを持つBaaSは、イーサリウムとTRON、そしてEOSです。

ですから、B2C市場では勝てないBaaSはB2B市場で顧客開拓しようとするのですが、残念ながら、クラウドコンピューティングの市場で証明されているように、そちらの市場にシフトしても、3大BaaSに勝てる見込みは低いということです。

チーム分析

次にチーム分析です。

僕がキーメンバーと見ている5人です。ルーマニアベースが中心のチームです。

共同創業者でCEOのBeniaminは、元はNEMの事業開発やマーケティングリードをしていた人物で、直前は、MetaChain Capitalという仮想通貨ファンドを運営していました。ビジネス系の人材です。

同じく共同創業者でCOOのLucianは、Soft32というテックスタートアップ創業者でありCEOをつつ、参加しており、連続起業家です。他にも複数のテックベンチャーに出資しているエンジェル投資家です。

そして、共同創業者でCIOのLucianです。彼は、BeniaminともにMetaChain Capitalを立ち上げていたので、仕事仲間ですね。その前は、IT系企業でITシステムエンジニアをやっていました。テクノロジーのプロではないです。

共同創業者でエンジニアリングチームヘッドのAdrianは、Ausyというソフトウェア会社でエンジニアをやっていた人物で、Sibiu Univesityでコンピューターサイエンスの修士号を取得しているコンピューターサイエンティストです。

最後に、リサーチチームのヘッドであるFelixは、彼も、複数のテックベンチャーを手掛けたことがある連続起業家で、ブカレスト大学でコンピューターサイエンスの学士号をとった後に、HPでエンジニアリングマネージャをやっていました。

起業経験も豊富なバランスのよいチームだと思います。

チームの実行力評価

次に、このチーム構成を踏まえた上での実行力の評価ですね。

こちらは、dapp.comからのデータです。

現時点での、Dapp.comのデータはほとんどがB2Cアプリです。現在、まだElrondはアプリの実績はありません。

次にアプリのカテゴリ分析ですが、こちらも数字はありません。

トークンエコノミー分析

次に、トークンエコノミーです。

BaaSは、こちらが該当します。証券経済とDAOが特に重要ですね。

こちらを見てください。これは、TRONのネットワーク効果をまとめたものです。

TRONは、イーサリウムに対抗するため、DliveとBitTorrentを自前でもつことで、イーサリウムに比べて弱いゲームカテゴリの対策を打つことができます。このネットワーク効果にフォーカスすることで、強力な成長が得られるわけです。

一方、Elrondは、対イーサリウムや対TRONに対しても、これがないのが弱みです。EOSにも比べても、VCの資金力で劣るため、なかなか厳しい戦いです。

最後にDAOです。

ここは、イーサリウムが最も進んでいるため、Elrondにとってもますます重要になりつつあります。ただ、まだ顧客開拓が十分進んでいない点を踏まえると、しばらくは、ある程度、財団メンバーが主体となって動いていく必要があると考えています。

ハイプサイクル分析

最後に、ハイプサイクル分析ですね。

いつものガートナーのブロックチェーン産業のハイプサイクルの最新マップをベースに話をします。

BaaSとしては、まず、この本格的な成長期に入りつつある「DLT」の領域や「Blockchain」領域が該当します。しかし、他のBaaS同様に、エコシステムの作り方次第では、「DAO」や「SmartAsset」にも該当することもできるため、その方向性を強化していければ、ポテンシャルのあるプロジェクトになる可能性があります。

また、このSmart Assetの領域は、イーサリウムがかなり先に進んでいるので、相当フォーカスして開拓しないと全く追いつけないでしょう。

投資の総合評価

そして、最終的な総合評価は以下の通りです。

まず、ペインポイントは5.0です。BaaSは、ブロックチェーン産業の発展の不可欠と言えます。

次にプロダクトは、4.5にしました。イーサリウムに先行してPoSを実装しきっている点とシャーディング技術を実装しきっている点を評価しています。ただし、ストレージや分析機能などの面ではEOSに劣ります。

次にチームですが、バランスの良いチームだと思いますが、ルーマニアを拠点にしていることもあり、まだ事業開発能力のところが未知数のため、3.5にしています。

チームの実行力も、まだアプリの実績が上がっていない状態ですから、3.5にしています。

トークンエコノミーも3.5です。イーサリウムやTRONと比較して、強力な差別化ができておらず、ネットワーク効果がまだ見えてきていないためです。

ハイプサイクルは、すでに本格成長段階に入りつつあるBaaS市場と言う視点がメインになってしまうのが現状で、すると、安定的な成長が見込める銘柄にはなりますが、イーサリウムとTRONやEOSと比較した場合、どこまでこのトレンドに乗れる実績を出していけるか、少し厳しい印象を受けるため、3.5にしました。

合計点は、23.5です。僕の投資基準の裁定は25.0以上なので、残念ながら基準クリアならずです。事業開発が順調に進み、アプリのエコシステムが育てば、25を超える可能性はあると思います。

以上、みなさんの参考になれば幸いです。

注記:最終的な投資判断は自己責任です。

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