Googleを見たら分かるブロックチェーンにファイナリティを求める時代遅れの考え方

よく金融システムの専門家や、既存のクライアント・サーバーモデルのコンピューター・サイエンスの考え方に執着している人が、批判するブロックチェーンの課題の一つに「ファイナリティ」があります。

ファイナリティ = 金融取引における決済完了性

のことを言います。決済完了性というのは、一度、決済した履歴が決して覆ることがない、ということを言います。これはちょっと専門的な言い方なので分かりにくいですよね。もう少しわかりやすく言えば、自分のウォレットにある残高は絶対に最新のデータであると言う保証です。例えば、自分の銀行に10,000円入っていたとして、デビットカードを使った場合、当然、使うたびに残高は減っていきますよね。色々な買い物をして、残高が1,000円になっている場合、そこに新たに2,000円の買い物をしたら、決済エラーになって、「残高不足で購入できません」というメッセージが返ってくるわけですね。これが、決済完了性が保証されているシステムと呼びます。

しかし、ブロックチェーンにおいては、それは、完全には保証されておらず、確率的に99.9%ぐらいを保証するというテクノロジーなんですね。ですから、先ほどの例で通れば、本当は最新の残高には1,000円しかないはずなのに、直前の決済である3,000円がブロックチェーンに反映される前に、2,000円の新しい決済をすることで、その決済がOKになってしまうことがありうるのです。

なぜか、このような設計になっているかというと、プルーフ・オブ・ワークのアルゴリズムの性質からこういう設計になっています。プルーフ・オブ・ワークでは、ブロックチェーンの各ブロックに記録されている過去の取引データを、ハッシュ関数(覚えなくていいです)という特定のルールに基づいて検証する作業を、ブロックチェーンを更新するたびに行います。そして、乗っ取り対策のため「最長のチェーンが常に正しいチェーンである」というルールの元に管理されています。この場合、最長のチェーンは、一定の確率で入れ替わる可能性があります。なぜなら、一人のマイナーが常に最新のブロックチェーンを保持しているわけではなくて(そうしたら、ビットコインは完全に中央集権型の金融システムになってしまいますよね)、マイニングの勝者は、常に入れ替わっています。だからこそ、非中央集権的な金融システムであると言えるのですが、その場合、先ほどの例で言えば、直前の3,000円の取引データが、別のマイナーが保持していたブロックチェーンに入っており、新たに最長のブロックチェーンを保持することになったマイナーの取引データには、3,000円の取引を行われる前の残高である、4,000円の残高データになっていると、ここに本来OKされないはずの、2,000円の決済が通ってしまうということが確率的にあり得るわけですね。もちろんないように、各マイナー同士がP2Pネットワーク上で、ブロックチェーンのデータを共有しあっていますが、確率的に100%起こりえないとは保証していません。

この課題があるから、金融システムに、ブロックチェーンを当てはめるのは、危険だと言う金融システムの専門家が山ほどいます。また、彼らは、プライベートブロックチェーンであれば、いわゆる分散システムとして、VISE-netなどに採用されているクライアント・サーバーモデルを活用した、中央集権化されたシステムではなく、ある程度、分散化された状態のシステムが作れるので、そのモデルを推奨したりするのですが、プライベートブロックチェーンでは、誰もがマイナーとして参加できるわけではないので、P2Pシステムとは言えません。つまるところ、革新的ではないのですね。そして、クライアント・サーバーモデル型の金融システムの方が、P2Pに比べて絶対に安全であるという彼らの主張を突き崩す事件が、2014年に起きました。

日経新聞:横浜銀データでカード偽造 容疑の委託先社員逮捕 2400万円を不正に引き出し

銀行システムのデータセンターの保守を請け負っている会社の社員が、データセンターに保管されている顧客データを改ざんして、2,400万円を不正に引き出したのですね。

左がインターネットのクライアント・サーバーモデル、右がブロックチェーンのP2Pモデル

銀行システムというのは、以前からお話している通り、クライアント・サーバーモデルで動いています。これは、サーバー側が、真面目に顧客データを保管し、運用するというモデルです。つまるところ、そのシステム管理に関わっている人が、不正を働けばいくらでも悪さができてしまうのですね。パブリックブロックチェーンの場合は、純粋なP2Pで動くため、この問題は起きないわけです。

そして、僕は、このパブリックブロックチェーンに「ファイナリティ」を求めること専門家の意見自体が、極めて時代遅れで、かつナンセンスな発想であると考えています。

それは、インターネットの歴史における類似性から学ぶことができます。インターネットも、1994年に初めて商用化されたわけですが、登場した頃は、TV業界を中心とした既存のメディア業界の連中に、さんざん批判されたと思います。「個人がニュースなどを報道して、誰がその真実性を保証するのだ?」といった具合です。でも、いまやインターネットがメディアの中心であり、TVは斜陽産業です。僕も妻も、そして、愛犬すらもTVを観ません。笑

インターネットは、どのようにメディアの世界に革命を起こしたか?それまでのメディアの世界では、コンテンツを作って届けたいクリエーターがたくさん世の中にいましたが、メディアと言えば、TVや新聞、ラジオなど全てマスメディアが中心で、これらのメディア企業が、どのコンテンツを視聴者に提供するか決めていました。つまり、彼らがフィルターの役割であり、いわゆる「中間搾取」の問題を引き起こしてもいたわけですね。

インターネットは、このフィルターと中間搾取のメカニズムを取っ払いました。ブロガーも、ユーチューバーも、インスタグラマーも全て、旧メディア産業の中間搾取者がいなくなったことで登場した新たなメディア・クリエーターたちです。中間搾取者の害悪の典型例として、有名なインスタグラマーのエシカ・ローレンスがいます。彼女は、線が太すぎるとモデル・エージェンシーをクビになったのですが、その後、自分のインスタグラムアカウントのフォロワーを300万に育てあげ、今ではアメリカン・イーグルと年間数億円の専属モデル契約を結んでいます。コンテンツの良し悪しを決めるのは、ユーザーであって、中間の人々ではないということの明示的な事例と言えます。

しかしながら、その代わりに、ユーザーは、自分にとって有益なコンテンツは、自分で見つけなければならなくなりました。当然のことながら、当時は、その部分を、既存のメディア業界の人は批判していたのでしょう。「自分たちこそ、ユーザーに有益な情報を届ける的確な役割を果たせるのだ」と。

しかし、その主張を覆したのがGoogleだったのですね。

 

 

Googleの検索エンジンは、ユーザーが打ち込んだキーワードに対して、「確率的」に、この情報がもっとも信頼性が高くあなたが必要である情報ですよ、と検索結果を返してくれるわけです。検索結果の上位ほど、信頼性の高い情報であると。

実は、この「確率的」にと言うのが大変重要です。Googleも、当然、この検索結果の上位のコンテンツが、ユーザーが求めている情報であるかどうかを100%保証しているわけではないということです。コンテンツの内容とその価値を分析する様々なアルゴリズムを組み合わせながら、確率的に、保証しているのです。

カンの良い方であれば、見えてきますよね。金融システムの専門家のブロックチェーンに対する批判が似たような質の話であると言うことが。これは、単純に、プレイヤー側の「努力」とユーザー側の「慣れ」の問題なのです。

つまり、Googleという検索エンジンのプレイヤーが、過去、検索結果に対して、手抜きコンテンツで上位を獲得しようとしてくるコンテンツ作成者に対して、厳しいSEOルールに改良を重ねながら、そのような悪意的なコンテンツ作成者に厳しいペナルティルールを課すなどの取り組みを続け、かつ、ユーザー側も、自分にとって、納得の行くコンテンツとの出会いが、何度もあることで、最終的に、インターネットにある膨大なコンテンツネットワークの中から、確率的に欲しいコンテンツと出会えれば、それで良い。できなければ、自分が考えるキーワードを改善すれば良い、という慣れによって、問題視されなくなって行ったのです。

これと同じことがブロックチェーンでも起きます。断言しておきます。笑

特にトークンエコノミーを基点に起きると見ています。ICOもその一つなのですが、金融システムの世界も、かつてのメディア業界と同様に、「中間搾取」者がゴロゴロといるわけです。典型的な存在は銀行です。銀行は、多数のユーザーからお金を預かり、そのお金の再分配を融資という形で、別のユーザーに提供しているわけです。要するに、お金の再分配を最適化しているわけです。ところが、実態がどうかといえば、日本の貯蓄は先進国中トップクラスの1,000兆円に達しているにも関わらず、彼らは、未来の日本の産業を作り出そうと頑張っているベンチャー企業やそこに投資しているVCなどに対して、ほとんど資金を流さない。

日経新聞:預金残高ついに1000兆円 回らぬ経済象徴

そして、日本のベンチャーキャピタルの年間投資額は、大体2,000億円弱ぐらいで推移しています。

日経新聞:2017年度のVC投資額、29%増の1976億円 ベンチャー白書より

このVC投資額に対する預金残高の比率、これを僕は自分でその経済の「イノベーション指数」と呼んでいます。日本は、0.02%なわけです。一方、シリコンバレーなどを有するアメリカがどうかと言うと、2015年の銀行の預貯金が10.6兆ドル(日本の1,000兆円とほぼ同格レベル)に対して、2016年のVC投資額が720億ドルですから、イノベーション指数は、6.8%です。指数なのでシンプルに100倍して、日本:2 に対して アメリカ:68という風に理解すると良いと思います。34倍、恐ろしいレベルの格差ですね。これで、日本からGoogleやFacebookに勝てるベンチャーが出てくるわけないですね。当たり前です。

要するに、金融インフラにおいて巨大な中間搾取が発生しているわけです。

これは、日本社会の巨大なペインポイントなわけですね。これを切り崩す役割こそが、ブロックチェーンという新たなテクノロジーの未来に与えられた可能性なのです。

最後に、この動画をお届けします。これを観て、世の中のくだらないシガラミに振り回されない強い精神を自らに養ってくださいね!

Eye-catch picture by Benjamin Dada

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