ブロックチェーンとインターネットの似ているところと違うところ

僕は、常々、インターネットがメディア業界に引き起こしたことを、ブロックチェーンは金融の世界に起こそうとしているという視点で、様々な類似性について、お話していますが、実は、すでに分かっている3つだけ異なっていることがあります。

インターネットとブロックチェーンの市場の違い3点

  • ブロックチェーンは研究段階をすっ飛ばして市場で使われている
  • この考え方が、技術改良やライトニングネットワークなど他の新技術開発でも採用されている
  • そのため、市場発展スピードが、インターネット市場の倍以上の速度で進んでいる

今日は、この3点について詳しくお話していきましょう。

ブロックチェーンは準備段階をすっ飛ばして市場で使われている

これもインターネットとの比較で理解するとわかりやすいです。まず、インターネットの世界は、すごくざっくりいうと4つのレイヤー(階層)でシステムが成り立っています。この4階層のことを総じて、「インターネット・プロトコル・スウィート」と呼んでいます。(覚えなくていいです。)

インターネットのデータ構造の階層図- Wikipediaより抜粋

①リンク

ここがインターネット技術の底辺です。リンクというのは、かんたんに言えば、スマホやノートパソコンなどを同じ通信規格でつなげるための階層のことで、ここの中心的役割を果たしているのが、1983年に標準化された、Ethernet(イーサネット)です。イーサネット自体は、1972年から開発が行われており、1983年にEthernet2.0という世界共通の規格仕様が策定され、ここでほぼ標準化の目処が立ちます。同じ規格でハードウェア同士をつなげておかないと、アメリカで作ったコンテンツを日本で作られたパソコンで再生するとかができないわけですね。これは大変不便です。実際に、TVの場合は、アメリカのTV番組をそのまま日本のTVで見ることができないのは、Ethernetのような標準化された技術がTVのシステムにはないからです。僕らは、このイーサネットを普段、LANや無線LANという形で使っています。無線LAN=Wifiですね。

②インターネット

このレイヤーの中心は、いわゆるIPアドレスというもので、インターネット上の全てのコンテンツは、どこかのサーバー(パソコンと言ってもよい)に保管されています。そのコンテンツを見たいユーザーは、そのサーバーを特定するために、ウェブアドレスという専用のアドレスを付与されており、それを特定することで見ることができます。WordPressを使いGoogle Cloudなどのデータセンターを利用してブログサイトを運営している人であれば、分かると思いますが、「256.256. 256.256」という4つの3桁数字で構成されたアドレスのことですね。ここの中心的な役割を果たしているのが、1982年に標準化されたTCP/IPの通信プロトコルです。これも当時は、TCP/IP以外にも、様々な通信規格が競争していたのですが、最終的にTCP/IPに収束していきました。TCP/IPの、「IP」のことが、IPアドレスのことです。TCPは、次のトランスポートの階層の話です。

③トランスポート

そして、この階層で、実際に、データの相互のやりとりが行われます。この中心的は役割を果たしているのが、TCPという通信規格で、IPの仕組みとセットなので、TCP/IPという言い方をされることが多いです。日本で作ったコンテンツを、アメリカの友達に送るときに、送信規格が送る側と受け取り側で違っていると、ものすごく不便ですよね。その二つの異なる通信規格を互換する機能のもったソフトウェアやシステムを使わないと送れないわけです。そこにお金を取られたりしたらものすごく不便です。ですから、そのインターネットでは、そのようなことがないように、この規格も世界標準のものをみんなで作り、それを無償で一緒に使っているから、僕らは、そのような不便さから解放されているわけです。

④アプリケーション

そして、一番上の階層が、このアプリケーションのレイヤーで、僕らが普段見ているウェブサイトやスマホアプリの階層です。ここの中心的な役割を果たしている技術の代表格が、DNSやHTML/CSSなどです。

まず、DNSというのは、いわゆるURLを支えている技術、分散型データベース技術の一つです。インターネットの運営ルールとして、全てのウェブサイトはURLという仮想の住所(ウェブアドレス)を持っています。例えば、このブログのURLは、lifeforearth.comです。スマホのアプリも同じです。そして、このウェブアドレスが先ほどお話したIPアドレスと紐づけられています。

コンピュータには、このURLのアドレスの意味は全く分からないので、DNS – Domain Name System(ドメイン・ネーム・システム)の技術を使って、このウェブサイトのURLをIPアドレスに変換して、どこのサーバーにコンテンツがあるのかを特定することができます。このおかげで、僕らは、世界共通のインターネットの中に、数字の羅列だけの全く面白みのないIPアドレスを自分のウェブサイトの住所にすることもなく、オリジナリティ溢れるドメインネームをもつことができ、さらにそこに訪れるユーザーは、無限にあるコンテンツの中から、自分が探しているコンテンツにアクセスできるわけです。DNSも、1983年に開発されました。

もう一つのHTML/CSSは、こちらもWordPressなどを使ってブログを書いている人であれば、自分で、HTMLやCSSを使ったりするので分かると思いますが、インターネットのWebページを作成する祭は、必ず、このHTML/CSSのフォーマットにしたがって作られていないといけないルールになっています。ここのフォーマットが、世界各国でバラバラになっていると、アメリカ仕様で作られたニュースサイトの記事を日本仕様のブラウザでユーザーが読むというようなことになってしまい、これまた仲介の技術が必要になるため、インターネットは恐ろしく不便な世界になってしまいます。だから、ここも標準化しているわけです。HTML/CSSは、1989年に初期バージョンが開発され、1993年にHTML Ver1.0という世界標準モデルが策定されました。改めて、TVのシステムを例にとると、TVシステムはこのような仕組みも全て各国でバラバラなのですね。

こうして、ようやく1994年のインターネット元年を迎えるわけですね。ここに来るまでに、約30年かかっているわけです。そして、インターネットを、クライアント・サーバーモデルで作り上げるか、P2Pで作り上げるかの議論が盛んに行われたのですが、最終的に、当時の通信速度のスピードの遅さやパソコンを持っている人口の少なさなどの課題から、P2Pは非現実的であると判断され、クライアント・サーバーモデルが採用されました。

左がインターネットのクライアント・サーバーモデル、右がブロックチェーンのP2Pモデル

しかし、一方のP2Pテクノロジーで作られているブロックチェーン、これは2009年にサトシ・ナカモトという匿名の名前で書かれたビットコインのホワイトペーパー(僕は、何人かのグループで作成されたと見ています)がスタートになっています。

そして、この出発点から大きな違いがインターネットの歴史と比べた場合に起きているのですが、それは、「理論より実践」を重んじる発想で、技術開発が進んでいることです。先ほどお話した、イーサネットやTCP/IPなどは、全て大企業の研究機関や大学の研究室などで開発が進められていました。その世界というのは、基本、「理論」が中心の世界です。だから、いわゆる博士号を持った研究者や大学教授が、論文を発表し、その論文を元に色々と議論を戦わしながら、標準モデルを作って行ったのですが、ブロックチェーンの技術は、ほぼこれを無視しています。完全に民間市場の中で発展して行っているのですね。

もっとも良い例が、イーサリウムです。創業者のビタリックは、大学中退者です。博士号も持っておらず、彼は、その研究開発資金をICOという形で得たわけです。しかし、そのICOも論文を書いて資金を集めたわけではなく、ホワイトペーパーというカジュアルなもので資金を集めたわけです。僕は、ここに一つの新しいトレンドがあると見ていて、やはり、インターネットの歴史において、企業の研究機関や大学の研究室など、いわゆる「学会」という権威のメカニズムの中で、新しい技術を開発するのには、ブロックチェーンは全く相性が合わないということです。なぜなら、僕らの政治経済システムの非中央集権化を目指すのがブロックチェーンの使命だからですね。学会という権威システムも、完全に中央集権化された仕組みなのですね。

ブロックチェーンの技術の研究開発をインターネットと同様に、大学の研究室などを中心に行っていたら、上層部の権力者に潰されてしまい、日の目を見ることはまずなかっただろうと思います。

この点を踏まえて、相変わらず、お祭り騒ぎの好きな日本の多くのメディアは、2017年を仮想通貨元年ということで、もてはやしたわけですが、僕は、まだインターネットとの類似性で見た場合に、ブロックチェーンは、インターネットにおける1994年の段階にも到達していないと見ています。しかし、それで良いのです。なぜなら、「理論より実践」こそが、ブロックチェーンの進化を支えているからです。

この考え方が、技術改良やライトニングネットワークなど他の新技術開発でも採用されている

そして、「理論より実践」の発想が、ライトニングネットワークの研究開発や、プルーフ・オブ・ワークの改良版のアルゴリズム開発などにも応用されています。Scaling BitcoinというBitcoinのテクノロジーに関連する研究発表会があり、2015年から開催されているのですが、2018年は東京の慶応大学で開催されたので僕も良い機会なので行ってきました。ライトニングネットワークを開発したドライジャや、ビットコインのプログラマーであるニコラ・ドリエなども参加しています。

Scaling Bitcoin

その参加した際の感想は、いわゆる大学の研究発表における「学会」に比べると圧倒的に「理論より実践」の世界を感じました。まず、この研究発表会に参加するにあたり、大学教授による論文の査読のようなルールはなく、テックトークのような形で、各発表者が自分たちが取り組んでいるプロジェクトについて発表し、参加者とQ&Aをやっていきます。参加者のほとんどは、当然ですが、技術者です。中には、まだアイデアレベルのものもあったりしますが、いくつかのものは、実際に実装して運用しているものなどもあります。特に、その実装段階に入っている内容の発表を聞いていると、このScaling Bitcoinのコミュニティは、インターネットのそれと比べても、より進化した存在だなと実感しました。

ライトニングネットワークは、オフチェーン処理という言い方の他に、「セカンドレイヤー」という言い方もされます。これは、先ほどのインターネットの技術が、大きく4つのレイヤーの考え方になぞられているわけですね。もっとも底辺のレイヤーにいるブロックチェーンは、P2Pテクノロジーで運用されているため、ビットコインやイーサリウムでも、1秒間に7件や15件ぐらいしか処理できないため、この遅さを補うため、ライトニングネットワークが、その上の階層で、ブロックチェーンに頻繁に取引履歴を書き込まなくても、安全に取引できるモデルを構築しようとしているわけです。

そのため、市場発展スピードが、インターネット市場の倍以上の速度で進んでいる

そして、この「理論より実践」の考え方によって起きているのが、市場発展の高速化です。よくインターネットの業界も経験して、このブロックチェーン市場に関わっている方とお話すると、「2倍ぐらいスピードが早い」と言われる方が多いです。僕もその実感があります。その背景は、間違いなく、「理論より実践」の文化が、このブロックチェーン業界を支えているからだと思います。

このスピード感を見ていると、正直、大きな組織の幹部に居座っている年配の人は、この速さについて来れてないなと思います。よほど、精神鍛錬をしている人は別ですが、権力にあぐらを掻いている人にとっては、何が起きているのかさっぱり分からないという感じに写っているように思えます。

もちろん、彼らも、FOMO(Fear of missing out)というように、時代に取り残されたくない恐怖感から必死にしがみついているような人もいますが、結局、そこには、優れた思想も哲学もない自分の利益しか考えない動機で動いているので、完全に空回りしているように見えます。

その点からも、僕は、この高速な市場発展スピードは、とても素晴らしいことだと思っています。なぜなら、若くエネルギーに溢れ、優れた思想や哲学を持っていれば、この波には乗り続けることができるからです。スティーブ・ジョブズが言うように、「死こそ最大のイノベーション」なのです。死があるから「老害」を社会から取り除くことができるのです。

今後のブロックチェーン産業の発展の予想モデルについてはこちらにまとめています。

https://lifeforearth.com/?p=3692

 

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