仮想通貨の過大なレバレッジ取引は、業界発展の足かせにしかならない

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日本の仮想通貨市場には、FX取引をやっているユーザーが多く参加しているため証拠金によるレバレッジ取引をやっている方も多いと思います。しかし、ブロックチェーン市場全体の成長を考えると、僕は、このレバレッジ取引は、市場の発展に対して大きなマイナスだと考えています。その理由は3つです。

1.BTC暴落のキッカケは、シカゴ先物取引所へのBTC先物上場だった

2017年はじめに20万円/BTC程度だったビットコインの価格が、その年末には、200万円を超えたことはみなさんもよく知っていると思います。その後、一気に1/3の70万円まで、わずか2ヶ月で急落したのですが、そのキッカケは、世界最大の先物取引所の一つであるシカゴ商品先物取引所に、BTCの先物取引が上場されたタイミングだったと言うのは、多くの業界アナリストが指摘していることです。実は、この上場が決まったニュースが、「ビットコインがようやく市民権を得た」と解釈され、日本を中心に、一般個人の資金が大量にこの市場に流れこみ、価格上昇が起きたのです。なぜ、これが急落につながったのか?

Coinbaseのアプリのダウンロード数が、2017年11月に全米No.1にヒットしたというニュースもちょうどこの頃でしたね。要するに、それまではビットコインは、一部のアーリーアダプターや若手ヘッジファンドが中心の市場だったのが、そこに一般個人が大量に流入してきたわけですね。

しかし、それと同時に、シカゴ取引所という世界的に信頼のおける先物取引所でBTCの価格取引ができるようになったことを受けて、2017年のBTCを中心とした仮想通貨市場が完全にバブル状態になっていることを見抜いた大手のヘッジファンドの連中は、シカゴの先物市場に大量の「空売り」を仕掛け出しました。その動きに気づき始めた先行投資していた投機家の一部がBTCを大量売却し利益確定に動いたことが、暴落の最大の原因になったと言われています。

この一連の出来事から理解しておいていただきたいのは「個人の資金が流入した」ことがBTCの価格を押し上げたと言う事実です。僕の周囲でも、ブロックチェーンに関心のあるエンジニアの友人や今まで株式投資もしたことないような女の子などが、2017年12月頃にBTCを購入していたようなのですが、みんな大損しています。もともと資金力があるわけではないので、彼らは、しばらく購入は控えると言うスタンスになってしまっていますね。彼らは、ビットコインの価格が最低でも130万から150万円まで回復してこないと投資家として再びこの市場に入ってくるということはほとんどないと思います。つまり、値上げに貢献した彼らは、しばらくこの市場に入ってくることはないと言うことです。

2.仮想通貨の超長期の価値は、供給制限に基づく法定通貨に対する永続的な値上がりにある

これは以前からお話していることすが、仮想通貨・ブロックチェーン市場の最終ゴールは、日本円やドルといった中央銀行が発行している通貨を使って、日常の衣食住の生活を送るのではなく、これらの生活を全て仮想通貨で実現することです。

事実、インターネットが普及したお陰で、僕らはテレビを観なくなりましたよね。このお陰で、メディアと言う市場が民主化され、アルファ・ブロガー、Youtuber、インスタグラマーと言った新しいメディアクリエーターが大量に世の中に生まれました。更に、そのお陰で、メディアビジネスに関わる人々は、それまでの組織や古い商慣習のしがらみに囚われずに、個人で自由に生きていけるようになったのです。私もその一人です。

それを今度は、金融の世界で実現しようとしているのが仮想通貨とブロックチェーンです。インターネットの黎明期にも、インターネット技術に対する批判する専門家がたくさんいたのですが、彼らは、今となっては、インターネットの発展を邪魔する人扱いを受けてしまっています。仕方のないことですが、邪魔したことは事実なので、これも世の中の現実です。

そして、同じように金融機関や金融システムの専門家もブロックチェーンや仮想通貨を批判しています。この点がいかにナンセンスなものであるかは、「こちらの記事」にまとめているので参考にしてください。

この仮想通貨市場の成長の原動力が、ビットコインが起点となっている「供給制限による持続的な価格上昇」なのですね。2100万BTCしか発行されない。しかし、日本円やドルは、必ず毎年2%以上はお金の供給量が増えていく。であるから、BTCの価格は、日本円やドルに対しては、設計上は持続的に上がるようになっているのです。これによって、永続的に仮想通貨の資産価値が上がることが見込めるため、より仮想通貨を持とうとする意欲の人が増え、それによってこの市場が更に成長していくというポジティブ・スパイラルが起きるわけです。

しかし、ここに「空売り」ができるレバレッジ取引を大きく普及させてしまうと、逆に市場の成長にブレーキをかけてしまう、ということが見えてきますでしょうか?

価格と言うのは、「買い手が多く売り手が少ないから上がる」と言うゲームメカニズムも存在します。ですから、何十倍から何百倍というレバレッジをかけた「空売り」という、実際の現物市場の売り圧力よりも、より大きな売り需要を作り出すことが可能な仕組みを仮想通貨市場で大きく普及させてしまうと、仮想通貨の価格上昇にブレーキがかかるメカニズムが働いてしまうわけです。この業界で成功したいと持って入ってきて、今の市場低迷を受けて、FX取引で空売りばかりやっている人は、結局、この市場を低迷させてしまう行為を自らやってしまっているわけですね。また、そのようなレバレッジ取引サービスを提供している取引所は、更に自分の首を締めていると言えます。なぜなら、仮想通貨のユーザーが増えることで、彼らの事業が成長するからです。

しかも、今の仮想通貨は、FX市場と違って、このレバレッジ取引市場の現物価格に与えるインパクトが、非常に大きなものになってしまっているのです。それが三点目です。

3.FX市場が為替市場に悪影響を与えないのは、既に莫大な現物取引市場があるから

仮想通貨でレバレッジ取引をやってる人は、もともとFX市場で日本円やドルのレバレッジ取引をやっている人が多いと思いますが、仮想通貨のFX取引と、日本円やドル市場のFX取引では市場にレバレッジ取引の市場に与えるインパクトに、天と地ほどの差があるということを理解した方が良いです。

Coinmarket Capなどのサイトを見ればわかりますが、今のすべての仮想通貨を合わせた市場の時価総額は、10兆円から20兆円程度です。トヨタ自動車が20兆円ぐらいの時価総額なので、それよりもまだ小さいのですね。一方、日本円ドルのペアの1日の取引量がどれぐらいか? 約100兆円あります。この大半は、日米間の貿易取引であり、現物取引です。貿易のためのヘッジ取引も入っていますが、これはFXのような短期売買の投機目的ではないので、純粋な経済活動のための通貨取引です。実際の数値が知りたい方は、下記のサイトを参考にしてください。

参考:国際決済銀行(BIS)が発表している通貨ペア間の1日あたりの取引量

一方、日本のFX事業者の1日あたりの平均取引量は、7兆円程度です。つまり1割にも満たないのですね。一方、仮想通貨市場はどうか?世界全体の数値があまりないため、参考までに、Btiflyerのデータを元にすると、例えば、2018年1月7日時点のBitflyerのBTC現物とFXの過去24時間の取引量を比較すると、

  • BTC-現物JPY:約7,000BTC
  • BTC-FXJPY:約350,000BTC

となっています。つまり、FX市場が、現物市場の50倍もの規模になってしまっています。これが健全なBTCの現物価格形成を可能にするか?というと答えは「100%NO」ですね。実際、値動きを継続的に追っているとわかるのですが、BTCの価格は、FXなどのレバレッジ取引市場の価格に引っ張られることが多々あります。BitMEXやBitFlyerなどで大量の売り注文が出ると、現物市場でも大量の売りが出て価格が一気に下がります。市場規模がFX取引の方が大きくなってしまっているため、BTCを担保にした証拠金取引をFX市場で行なっているプレイヤーの資金の動きに、現物市場の価格も強く引っ張られてしまうためです。実際に、この動きを理解したい人は、下記のイナゴフライヤーさんを継続ウォッチすると良いと思います。僕は一時継続ウォッチしてこの動きを体感しました。

参考:イナゴフライヤー

一方、先ほどの、円ドルペアの例でいうと、実際の現物の円ドル相場の規模が、非常に大きいので、FX市場の値動きが市場に与えるインパクトは、ほとんどないと言う評価が政府側にあります。もし、影響を与えるようになったら、政府にとってみたら大問題です。自国通貨の価格が、投機集団によって操作されてしまうわけですから。1990年代に起きたアジア通貨危機の原因は、まさにこのように経済規模の小さい発展途上国の通貨(今のビットコインと似たような規模)を投機集団が狙って、大量の空売りを仕掛けて、東南アジアの通貨市場を大混乱に陥れ、多くの発展途上国の経済が大打撃を受けました。中には、韓国のように経済自体が破綻してしまい、IMFによって金融システムの復興支援を受けなければならなくなったところもあります。このことは、世界中の中央銀行の人々が知っていますから、どこの政府や中央銀行関係者も、自国通貨に対する投機筋の動きには警戒しています。

今の仮想通貨市場は、ストップ高・ストップ安の値幅制限もないので、価格変動幅(ボラティリティ)がFX市場の数倍以上になってしまっています。このような市場状態が続く限り、2017年に起きたような、一般個人が仮想通貨市場に入ってきてくれることはほぼないと見ています。

結果、昨今のBTCの厳しい相場展開の中で、BitMEXなどで100倍のレバレッジをかけて、BTCを空売りをかけている方も多いと思いますが、今後、仮想通貨市場で恩恵を受けたいと思っているのであれば、辞めた方がよいです。なぜなら、結果的に、ほぼ確実に自分たちの首を締めることになります。その点は、取引所事業を行なっているプレイヤーには非常に強く言えることで、僕がBinanceをメインで利用している理由も、彼らがレバレッジ取引を提供していないからです。ここもBinanceのCZには是非貫いて欲しいと思っています。

追記:とうとうBinanceでも100倍以上というとんでもないレバレッジ取引が始まってしまいましたね。とても残念です。

最後に、ここで一つ大切なお話をします。ブロックチェーン業界のプレイヤーでよく使う言葉に「HODL」があります。スラングの一種なのですが、元は英語の”Hold”からきており、「仮想通貨がどのような展開になっても基本売らないよ」、と意思表示の文脈の言葉です。また、ブロックチェーン関係のエンジニアの中には、自分達は「HODL & BUIDLなのだ」と言う人も多くいます。BUIDLとは、BUILD(=建てる)が作られた業界造語です。要するに、売らずに更にテクノロジーを開発することで、業界の発展に貢献していっていると言うことですね。彼らの多くは、BTCやETHが、タダ同然だった時代から仮想通貨をマイニングで手に入れたり、少しずつ買ったりしていますから、仮想通貨で、何百倍もの資産を築き、億り人になっている人もたくさんいますが、生活資金に必要なお金以外は、現金に換金しないことを貫いている人がとても多いです。例えば、Ethereumを立ち上げたVitarikが、2018年に日本で初の公式ミートアップが開かれて来日した際、滞在したホテルがアパホテルだったというのは有名な話ですね。

なぜなら、この業界を作り上げていっている本流の人々は、僕が上で伝えた3つのこときちんと理解しており、自己利益だけで動いていないからです。彼らのゴールは、金持ちになることではなく、自分たちの才能を使って、少しでも世の中をよくしたいと言う動機から動いているからです。守銭奴ではないのです。

一方、自己利益で動いている業界関係者もたくさんいます。特に、日本は、ほぼ全てと言っていいでしょう。世界に先駆けて、仮想通貨取引にレバレッジ取引を持ち込んだビットフライヤーはその典型例です。正確には、加納氏です。彼は、JBAなどでも100倍・200倍のレバレッジ取引を持ち込むことをずっと主張し続けていましたが、この経営判断が原因で、彼は、ビットフライヤーの社長をクビになります。そして、その後、ビットフライヤーのレバレッジ率は引き下げられ、正常化の流れに乗ります。彼の取った行動は、仮想通貨・ブロックチェーンの産業発展の方向性を誤った方向に導く完全に「市場荒らし」です。実に無責任きわまりない行動だと思います。彼は、いわゆる典型的な「ポピュリスト」です。論より証拠ですので、僕の関連ツイートを乗せておきます。2014年から、自らリーダーシップをとって、日本の市場をゼロから立ち上げてきたので、このような裏話も全て知っています。経緯は全て「この記事」にまとめています。日本の個人投資家は、くれぐれも彼の表面はキレイゴトだけ述べて、本音はエゴだらけの彼の言動に振り回されないように気をつけましょう。ポピュリストの言動になびくというのは、それ自体が罪ということです。全て、因果応報です。


僕は、仮想通貨は全て長期投資です。みなさんも、是非、短期売買ではなく、長期投資で取り組んでください。そのほうが、結果的に、自分に利益が帰ってきます。「金は天下の周りもの」ですから。因果応報で、この業界にとって良いことをする人に、仮想通貨は集まります。

以上、みなさんの参考になれば幸いです。

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