バイナンスに上場されている主要なステーブル・コインの分析・評価まとめ

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2018年に、一気に複数のStable Coin(ステーブルコイン)が立ち上がっています。今日は、その中でも、僕がメインで使っているBinanceに上場されている4つのStable Coinについて詳しくお話したいと思います。

Stable Coinとは

まず、Stable Coinが登場してきた最大の背景は、仮想通貨市場のボラティティが高いためです。仮想通貨の現物市場には、比較的短期で売買するトレーダーは一定規模はいてくれた方が良いのは事実です。なぜなら、市場の流動性を上げるからです。しかしながら、仮想通貨市場のボラティリティが高いため、彼らは、頻繁に仮想通貨をUSドルに戻して、仮想通貨のボラティリティが原因でせっかく投資で得た利益が失われないように資産保全を図ります。しかし、これは取引所にとっては、オペレーションが大変です。なぜなら、各国に銀行口座を開設し、そこに顧客分のUSドルを持ち管理しなければなりません。また、海外のユーザーに取引所サービスを提供した場合、そのユーザーが日本に住んでおり、取引所の銀行口座がアメリカだった場合、毎度、高い国際銀行送金手数料を払って、入出金などをしなければなりません。インターネットと同様に、ボーダーレス市場として成長している仮想通貨市場にとってこれは不便でなりません。これでは市場は順調に成長して行かないわけです。

Stable Coinは、そのための解決策です。Stable Coinを発行し、価格を世界でもっとも通用力のあるUSドルとペッグ、つまり固定し、かつ発行した金額分のUSドルは、運営団体がきちんと管理し、いつでも投資家が、安心してUSドルに引きだせるようにすれば、投資家は安心して、Stable Coinをベースに、様々な仮想通貨に短期売買を行うことができますね

世界で初めてこのニーズに答えたのが、Tetherでしたが、2018年に入ってこのStable Coinが複数誕生しました。次に、その内容と背景についてお話しましょう。

Binanceに上場されている4つのStable Coinの概要

まず、現在、Binanceで扱われているStable Coinは、下記の4つです。

開始
時期
運営母体 ブロックチェーン技術 URL
USDT 2015.2 Tether Omini Technology of LightCoin, and ERC20 by Ethereum https://tether.to/
USDC 2018.10 Centre ERC20 https://www.centre.io/
PAX 2018.9 PAXOS ERC20 https://www.paxos.com/
TUSD 2018.3 TrustToken ERC20 https://www.trusttoken.com/trueusd/

 

USDT – Tetherについて

世界で初めてStable Coinを発行したのは、Tetherです。ティッカーシンボルは、USDTです。2015年2月に設立され、創業メンバーは、ジャン・リュードヴァイカス・ヴァン・デァ・ヴェルデの二人です。USDTの運営母体は、Tether自身になりますが、設立には、老舗の仮想通貨取引所の一つBitfinexが関わっています。Bitfinexの経営陣であるPhil Potter と Giancarlo Devasini がTetherの設立協力者でした。恐らくですが、彼らもTetherのこの仮想通貨の取引所と投資家にとってのペインポイントになっている銀行口座を使った法定通貨による入出金の取引所運営モデルの課題をStable Coinが解決できると考えて、支援したのだと思います。現在、Stable Coinの発行額では世界No.1ですから、Stable Coinとしては世界最大の流動性を持っています。

テクノロジーは、USDTが開始した当初は、EthereumのERC20のような簡単にトークンを発行できるテクノロジーがなかったため(Ethereumのベータ版の公開は、2015年7月30日)、Omni Technologyと言って、ビットコインのブロックチェーンネットワークをそのまま使いながら、その上に新たなブロックチェーンを結びつけて運用するというモデルで開始しました。その過程の中で、ライトコインのオムニテクノロジーを活用するモデルに完全シフトし、その後、更にERC20トークンの登場を受けて、ERC20との平行稼働でシステムを動かしている状態で、いずれは全てEthereumに完全移行する計画で動いています。

2018年に複数のStable Coinが立ち上がることになった背景は、実は、このTetherにあります。Tetherがスキャンダル問題を抱えているのですね。スキャンダルの一つは、学界の研究レポートなどにより、2017年のBTCの急激な上昇をTetherが誘発したというものです。運営母体であるTetherが、新しいUSDTを発行し、投資家が購入すれば、投資家側の資金がTether側に入ってきます。そして、この資金は銀行などに預けられていますから、金利がつけばTether自身、収益を生み出すこともできます。ここで、Tetherは、本来は、投資家が購入したUSDT分のUSドルは常に準備して置かないといけないのですが、この一部をBTCの価格を押し上げるために資金注入したのではないかという疑いがかけられています。

そして、その派生で、「USドルの準備金を十分保持できていないのではないか?」という疑いがかかり、USのFBIなどが調査に動いています。わかりやすい話が、設立以来、経営がなかなか安定しないStable Coinなのですね。Stable Coin自体は、投資家からの需要が大変強いにも関わらず、そのような展開が、Tether周辺で常に起きているので、Tetherだけには任せておけないと、他のStable Coinプロジェクトが、2018年に一気に立ち上がりはじめました。

今からお話する3つのStable CoinがBinanceで使える点も踏まえて、僕は、このスキャンダル問題が解決するまでは、Tetherとは様子見のスタンスです。

追記:その後、USDTのスキャンダルは下火になってきましたね。一時は、USDCにリプレイスされるとみていましたが、そのリスクはほぼ払拭された感触を持っています。やはり、仮想通貨市場には、1st Mover Advantageが確実に働いているのを実感します。その点については「こちらの記事」にまとめています。

ですので、僕は現在は全てUSDTベースで全仮想通貨を取引しています。

USDC – Centreについて

USDCは、北米最大の仮想通貨取引所のCoinbaseと、同じく北米の対面取引(OTCと業界では言います)の最大手であるCircleが共同で立ち上げたStable Coinです。発案は、Circleでした。Circleが、実施2018年5月にマイナー世界最大手のBitmainをリードインベスターに、110億円近い資金調達をし、その資金使途の一つが、このUSDCの発行でした。このラウンドでCircleの時価総額は、3,000億円になりました。その後、USDCの中立性を意識して、Coinbaseを巻き込んで、CentreというNPO団体を立ち上げ、そこがUSDCを管理・運営していく形をとっています。このCentreは、あくまでCoinbaseとCircleを発起人としており、他の取引所などもメンバーとしての参加を促すことにより、USDCの中立性と汎用性を高めていく意図があります。この戦略は、Tetherより優れていると評価しています。

また、Coinbaseは、Fiat to Cryptoの仮想通貨取引所では世界最大の取引量を誇ります。シリコンバレーというベンチャー企業のメッカから立ち上がっており、かつ、北米のリーディングプレイヤーに成長しているため、この地位が世界的に覆されることはなかなかないと思います。一方、Circleは、あまり知らない人も多いと思いますが、大口の仮想通貨取引である対面取引の市場では、世界最大のプレイヤーです。対面取引のビジネスモデルの基本は、ビットコインの黎明期に大量に仮想通貨を手に入れたアーリー・アダプターや、個人のマイナーを売り手にし、富裕層を買い手に商売するのが一般的です。この場合の、買い手側を効率よく開拓するために、ゴールドマンサックスから50億円を調達し、戦略投資家として招き入れることで、ゴールドマンサックスが保有する富裕層顧客に仮想通貨のOTCトレーディングサービスを提供、大きく事業を伸ばしました。Circleは、Jeremy AllaireとSean Nevilleというシリアル・アントレプレナーによって立ち上げられたベンチャーです。二人とも長くタッグを組んでおり、元は、共に立ち上げたMacromediaをAdobeに売却し、その後、Online Video PlatformのBrightCoveを共に創業し、NASDAQでIPOまで持って行っているので、かなり優秀なシリアルアントレプレナーチームです。

僕は、CoinbaseとCircleという経営能力の高い仮想通貨業界のプレイヤーによって、このUSDCが運営されている点を高く評価しており、現在は、USDCをメインで使っています。

PAX – PAXOSについて

PAXの運営母体となっているPAXOSは、元はitbitという仮想通貨取引所です。PAXもスタートと同時に、まずは、このitbitにリストアップされました。itbitが社名をPAXOSヘと変更した背景は、事業領域を取引所の運営だけでなく、暗号資産市場全域をターゲットにしようと意図からです。創業者のCharles Cascarillaは、Liverty City VenturesというNYでは中堅VCの元パートナーです が、取締役メンバーに複数のウォール街の実力者を招聘できています。Sheila Bairは、銀行を破綻させないための組織である連邦預金保険公社の元会長。Bill Bradleyは、米国政府の財務諮問委員会の元院長を務めたニュージャージー出身の上院議員。Robert Herzは、米国の会計基準方針を決めている財務会計基準審議会の元会長で、監査法人の世界最大手のPWCの元パートナー、現在もモルガンスタンレー銀行の社外取締役。Duncan Niederauerは、元ゴールマンサックスのパートナーで、機関投資家向け仮想通貨取引所Bkktで一役有名になったNYSEとEuroNextの親会社であるIntercontinetal Exchangeの元会長です。

このように、ウォール街の早々たる実力者から支援を受けて立ち上がっているベンチャーです。その点から、ニューヨーク州の金融当局が認めた世界で初めて法的に規制されたStable Coinであることを他のStable Coinとの比較でアピールしているのですが、これだけのウォール街出身者を揃えたPAXOSであればそこまでハードルの高い話ではないので、むしろ、ウォール街を味方につけて、シリコンバレーとボストンのテックスタートアップコミュニティ発のCoinbaseやCircleのUSDCに対抗しようという動きが強いと見ています。

TUSD – Trust Tokenについて

Stable Coin戦争に火をつけたのが、実は、このTrust Tokenです。Trust Tokenは、シリコンバレーの若手の人口知能分野に強いエンジニア中心になって設立されたベンチャーです。共同創業メンバーのDanny An、Rafael Cosman、Stefan Cadeは、いずれも元KernelのAI・ビックデータ系エンジニアやデータサイエンティストです。Kernelは100億円調達しているベンチャーで、AI・ビックデータ系のスタートアップの中ではよく知られた存在です。こんTory Reissが事業開発をリードしているようですが、バックグラウンド的に人脈が豊富ではないです。また、コンプライアンスを見ているAlex C. Levineは、コンプライアンス畑を歩んできた人材ですが、人脈も、元スタンフォード・ロースクール卒なので、ウォール街よりは西海岸に強い印象です。元はTrust Tokenを基点に、様々なdAppsを手がけるベンチャーとしてスタートしたのですが、Stable Coinに事業機会を見出して仕掛けてきました。Binanceに採用されている点は、大変、素晴らしいのですが、事業開発能力が、USDCやPAXに比べると弱いので、その点で今後の伸びシロがどこまであるのか、少し気になっている次第です。

いかがでしたでしょうか? Binanceを上手に使う上で、Stable Coinはキーとなる存在です。その点から、どのStable CoinをメインにBinanceの多種多様なトークンに投資していくかは、重要なポイントですので、ぜひ、役立てていただければ幸いです。特に、仮想通貨取引所にとってのStable Coinは、世界中に何十個も必要な存在ではないので、いずれ、二つか3つに集約されて行くと見ています。その点から、現時点で、世界最大の取引所であるBinanceに上場されているStable Coinは、圧倒的な取引量を獲得できるので、生き残る可能性が高いと見ています。

また、Binanceの使い方については、Stable Coinも含めて少しコツがいるので、これから海外取引所の利用を検討している方は、「こちらの記事」を是非参考にしてください。

みなさんが、少しでも仮想通貨の世界に親しみを持ってもらえるお手伝いができれば幸いです!

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