トランプ氏は、なぜアメリカ大統領になることができたか?

Photo by Jørgen Håland on Unsplash

アメリカは、1ヶ月以上、政府期間の一部が運営が停止するという、日本では考えられないような事態が起きていますね。アメリカの著名人などからも、この事態を引き起こしたトランプ大統領に批判コメントが出ています。

レディー・ガガがトランプ大統領を非難、米国の政府機関閉鎖で-ライブドアニュース

このような状態にありながらも、トランプ大統領は強気なようです。約一年半後の2020年11月には次期アメリカ大統領選が控えているため、二期連続で大統領になりたいのであれば(アメリカの大統領は最大連続二期務めることが法律で認められている)、そろそろ選挙対策について手を打っていく段階とも言える現在。政府サービスが停止することで国民の不満も増大しますし、給与を払ってもらっていない一部の政府職員の不満も増大します。あまり賢いとは言えません。それでも強気なトランプ大統領、彼の強気の根源はどこにあるのか?

僕は、それは、トランプ大統領の当選と共に話題になった「ヒルビリー・エレジー」にあると考えています。「ヒルビリー」という存在について、聞いたことはありますか? 話題になったのは、この書籍です。まだ読んでない方は、一度、読んでみることをオススメします。2000年以降のアメリカの社会本題の最重要部分がよく理解できます。読み物としてもとてもおもしろいです。実は、僕はこの話を大統領選の前から知っており、かつブロックチェーン技術の本質がそこと関わっているので、周囲の友人には、「時代の流れで、きっとトランプが勝つよ」と話をしていました。この辺りについて、詳しくお話します。

 

エレジーとは、「哀歌」ないしは「挽歌」という意味です。

トランプの大統領選挙戦略

まず、アメリカの大統領選システムについて簡単に話をしますと、アメリカで選挙権を持つ国民が、直接、「この人に大統領になって欲しい」と選ぶ訳ではなくて、アメリカの二大政党である民主党と共和党から、まず、それぞれ大統領候補が複数人立てられて、「予備選」と呼ばれる期間に、最終的にそれぞれ一人ずつに絞られていきます。この際には、アメリカの全州にいる各候補の支持団体の人々が、選挙民にアピールして、支持の多い候補者に絞り込んで行きます。基本的には、最後、その民主党代表候補と共和党代表候補が一騎打ちします。しかし、最後まで二つの党から代表者が絞りきれず、複数立つこともあります。そして、この最終選挙でも、国民が直接、どの大量領が良いかと選ぶわけではなくて、選挙人と呼ばれる、アメリカの議会議員(上院と下院の二つの議会)から構成される議員に対して投票します。この選挙人は、それぞれ自分がどの候補を大統領におすかということを誓約しているので、国民は、どの選挙人を選択するかが、実質的に、どの候補に次期アメリカ大統領になって欲しいかを決めることになります。

そして、アメリカには、50の州があり、それぞれの州の人口比率などに応じて、その各州別に選挙人の数が割り当てられています。合計535人です。そして、このうち270人以上を獲得した代表候補が、次期大統領になります。つまり、この選挙人が割り当てられれている州ごとの政治経済の事情などを踏まえて、どうやってその270人を獲得するか?を大統領候補になった人とそのブレーンは色々と戦略を考えるわけですね。

2016年に民主党代表候補ヒラリー・クリントン氏と争った共和党代表のトランプ氏は、この選挙人を306人獲得、一方ヒラリーは、232人でした。選挙人制度では、各州に割り当てられている選挙人を上手に獲得していく戦法が勝利に繋がります。その場合、アメリカ50州のうち、一部の州で大差をつけて勝ってもあまり意味がなくて、僅差でもいいからたくさんの州で勝つ方が大統領になることができます。下記の図は、Wikipediaからの抜粋で、トランプ氏が大統領になった2016年の大統領選のそれぞれの州単位での勝敗図です。

 

From Wikipedia – https://en.wikipedia.org/wiki/2016_United_States_presidential_election

 

赤がトランプ氏が勝利した州で、青がヒラリー氏が勝利した州です。実は、このマップが、トランプが強気になっているカギなのですね。

トランプの赤色の州は、アメリカの真ん中に多いことに気づきませんか?アメリカは、州ごとにその経済内容が大きく異なります。例えば、ヒラリーが勝利した東海岸北部のニューヨーク州やその周辺の州は、ウォール街などの金融やファッション、メディアビジネスに関わる企業をたくさん抱える州たちです。また、西海岸は、シリコンバレーに代表されるインターネットやコンピュータなど最先端技術に強い企業をたくさん抱える州です。そして、真ん中は?というと、自動車産業や鉄鋼業などの製造産業や農業などが中心になります。

そして、これが、次にお話するヒルビリーにつながっていきます。

ヒルビリーが生まれた背景

まず、感覚的な理解で良いのですが、みなさんが、最近のアメリカ発で、日本でもよく名前を聞く企業と言えばどの会社になりますか?多くの人にとっては、おそらく、西海岸に本社を構える、Google、Facebook、Amazon、MicrosoftなどのIT企業だったり、東海岸のゴールドマンサックスやモルガン・スタンレーなどの金融系企業だったりすると思います。今のアメリカのGDPの大半を稼ぎ出しているのは、これらの企業ですからね。なぜ、これらの企業が調子がよいかというと、1990年代にクリントン・ゴア政権が推し進めた自由貿易+情報スーパーハイウェイ構想により、アメリカは、日本や中国には勝てない自動車などの製造業で他の国家と戦うのではなく、ITと金融で勝負するという政治経済政策を展開し、これが見事成功、この産業分野の本社が集積している州は、大繁栄しているというわけです。逆に、真ん中の州達は、このトレンドの恩恵は全く受けていません。

そう、ヒルビリーとは、この1990年以降のアメリカの新しい国家経済成長に完全に取り残された白人達のこと、をさしています。今、アメリカでは、この東と西の両海岸経済と中部の経済格差が深刻な社会問題になっています。中部の犯罪率が高くなったりしているのですね。下記は、アメリカのEsriという調査会社が調査したアメリカの所得格差マップです。

青が所得層が相対的に高い地域、赤が相対的に低い地域を表しています。先ほどの、アメリカ大統領選のマップとおおよそ似たような構成になっているのが分かりますよね。

トランプ大統領は、オバマ政権が推進してきたTPPなどの自由貿易政策から一転、保護貿易政策を全面的に展開しています。この意図は、アメリカ中部の州経済を儲けさせるためにあります。この煽りは、日本経済も受けていて、先ほど話にあげた鉄鋼業界は、トランプ政権が実施した関税政策で、打撃を受けています。

米の保護主義政策の標的に…、国内鉄鋼業界の先行きに暗雲-日刊工業新聞

そして、この成果は少しずつ出ており、アメリカの中部の所得は改善傾向にあります。以前だと、このデータで毎年、改善しているのは、ニューヨーク州やカリフォルニア州など、東西海岸の州経済が中心だったのですが、2017年は、ニューハンプシャー州やコネティカット州など中部の州経済も恩恵を受け出しています。

2017年の州別世帯所得(中央値)は47州で前年比増(米国)-JETRO

これが、トランプ大統領の強気の根源なのですね。このペースが、2020年まで維持できるようであれば、トランプ大統領は、来年2020年大統領選でも再び勝てる可能性はあると見ています。同時に、この年は東京オリンピックの年でもあり、世界中のお金が日本に流れてくる機会でもあるので、このあたりの世界のお金の動きが、トランプ政権の運営にどのような影響が出るのか、今後も注目しています。

関連記事