ビットコインの火付け役「キプロスの預金封鎖」は、ユーロにおける経済格差が原因だった

ビットコインの開発は、2009年に運用が開始され、世界で初めて注目されたのが、2013年3月です。このとき世界で何が起きたのか?ヨーロッパの小国であるキプロスで預金封鎖が起きたときなのですね。

預金封鎖とは?

政府が、財政難などに陥った際に、信用システムの崩壊を防ぐために、国民が銀行預金を引き出すことを禁止する政策を実施することです。完全引き出し不可にすることもあれば、一定額以下の引き出し制限をつけるなどの措置も、「預金封鎖」と呼ばれます。日本も、太平洋戦争の末期の1944年と太平洋戦争集結直後の1946年に、それぞれGDPの2倍以上の国債を発行してしまったいたが故、信用システムが崩壊寸前まで来てしまい、預金封鎖を実施した歴史的経緯があります。

キプロスの預金封鎖の原因はギリシャ財政危機

では、キプロスの場合は、原因は何であったのでしょうか? キプロスは、地中海に浮かぶ人口約87万人の島国です。GDPは219億ドル(1ドル=100円換算で2兆1900億円)程なので、日本の経済規模の0.4%程度と、非常に小さい経済です。産業も特にない国家であることもあり、海外の富裕層からオフショア金融センター(タックスヘブンとも言える)として、多大な預金を預かる事業を生業にしている銀行が多くありました。顧客の多くはロシアの富裕層です。預金封鎖が起きる直前で、GDPの8倍に相当する(17兆円超)の預金を預かっていました。銀行は預金を預かりその預金を運用して金利を稼ぐことで収益をあげる事業です。キプロスの銀行たちも当然同じです。しかし、自国に日本のような自動車メーカーや家電メーカーなど、取り分けて大きな企業もほとんどないので、貸したり投資したりする先は国内に見込めません。ではどうするか?というと、お隣の国、ギリシャの国債を購入して運用していました。ギリシャとの経済交流は歴史的に大変長いため、彼らがギリシャ国債で運用することは、ある意味自然な判断と言えます。

しかし、これが預金封鎖の直接的な原因となります。なぜなら、2010年ごろから、そのギリシャが財政危機問題を抱えるようになってきたからです。2011年には、世界的に知られた格付会社のムーディーズが、ギリシャ国債の格付けを「Caa1」⇒「Ca」に、一気に3段階も引き下げました。A-B-Cの順でCが一番下になり、Cはデフォルト(債務の返済放棄)の段階にある債権の格付けです。かろうじて、Caの「a」がついているので、その一歩手前で踏みとどまっている状態ですね。これが原因となって、ギリシャ国債は、ジャンク債権扱いとなってしまい、2012年3月には、ほとんどの投資家が売り手に回ってしまい、買い手がつかず、国債につく金利も36.5%まで高騰します。金利36.5%って、日本の消費者ローンの倍以上の水準ですよね。ほぼ返済できないと思います。その結果、ギリシャ国債の価格が暴落してしまい、このギリシャ国債を大量に保有していたキプロスの銀行たちは、運用資産の大半を失ってしまいます。

この事態をみた、キプロス政府は、ユーロ政府に緊急融資を求めますが、返済プランの提示を求められ、それに対して出した回答が、預金封鎖により、顧客の預金資産に追加の税金を課税し、その課税で得た収入から返済しようという内容でした。しかし、これを国会の投票にかけたところ、多数決で、賛成ゼロで完全否決されてしまいます。(賛成:0、反対:36、棄権:19)まあ、国会議員は国民の代表ですから、これで賛成、次、絶対に落選しますよね。笑

この預金封鎖によって、キプロス政府への信頼を失った人々が、ビットコインに資金を投入し始めます。この事件の流れからするとロシア人は多かったように思います。これがビットコインが世界的に注目された初めてのときでした。インタビューなどで、「政府は信用できないから、自分たちで民主的に管理できるビットコインの方を信用する」という内容の発言が、この頃よく流れていたことを覚えています。

そして、このギリシャの財政危機問題はいまだに解決されていません。これには、ユーロ経済の構造的な問題があるからなんですね。次にその点についてお話します。

ギリシャ財政危機の原因はユーロ圏の経済格差

では、次に、ギリシャ財政危機の原因はどこにあったのでしょうか?実は、この原因は、ユーロに参加したことがきっかけで起きたのですね。ユーロは、ヨーロッパ経済連合の総称で、ここに参加している国家は、皆、統一通貨であるユーロを利用し、また、お互いの経済圏の交流は自由にする、いわゆる自由貿易で、国家経済を運用することが原則になっています。つまり、トランプ政権のような高い関税による保護経済政策は一切取ることができません。

簡単に、なぜ、それまでのヨーロッパの国々が、それぞれ通貨をもち、国家経済を運営するのではなく、ユーロという統一経済を作ろうという動きが出てきたのか?についてお話すると、原因は、アメリカが推進した「グローバリズム」です。アメリカが自由貿易経済圏を日本を含めたアジア・太平洋の国々に展開することで、大きな経済成長を遂げているのを横目でみていたヨーロッパの国々は、自分たちも同じような自由貿易経済圏を作って、経済成長をしようと考えたわけですね。

そして、ギリシャは、そのユーロに参加した2001年から財政状態が一気に悪くなって行ったのです。以下のグラフでそれが明示的に分かります。

参照元:https://ecodb.net/country/GR/imf_ggxcnl.html

一目瞭然で、ユーロに参加してから一気に国としての経営が苦しくなって行ったことが分かりますね。実は、このギリシャを皮切りに、今、ユーロ圏内では、南北経済格差が深刻な政治経済問題になっています。以下のグラフを見てみてください。

参照元:https://ameblo.jp/yopsd905724/entry-11777744427.html

簡単に言ってしまえば、真ん中より上の国がユーロの「勝ち組国家」、下の国が「負け組国家」ということです。なぜ、このようなことになってしまったのか?

ユーロ圏で経済格差が拡がった背景は、単一通貨にある

その原因は、実は「単一通貨ユーロ」にあります。複数の経済圏をまたぐ単一通貨を作ると、その経済圏間は、完全なる自由競争状態になります。すると、強い経済圏が一人勝ちをはじめ、弱い経済圏がますます経済的に苦しくなるという状態が出てきてしまうのですね。ユーロにおける典型的な勝ち組は、「ドイツ」です。ダイムラーベンツやBMW、カメラのライカをはじめ日本と同じく工業国として、優れた企業群をたくさん抱えています。逆に産業のないギリシャでは、そのような企業がいないため、ユーロに参加したとたんに、ギリシャ国民は、関税が一切かからなくなったドイツ車を購入します。すると、ドイツは貿易で黒字、一方、ギリシャが赤字となるわけですね。このような流れが、5年も続けば、財政的に苦しくなってくるのは当たり前ですね。

ですから、ビットコイン信奉者や仮想通貨信奉者の中には、世界中を統一する一つの通貨を作ろうとする考えの人々がいます。その人々の多くは、かつてイギリスの著名経済学者のジョン・メイナード・ケインズが、第2次世界大戦後の金融システムのあり方を決める「ブレトン・ウッズ会議」で提唱した「バンコール」を作るべきだと主張する人がたくさんいます。バンコール・プロトコルと呼ばれるICOプロジェクトもありますね。僕の目から見ると、全く愚かな発想です。そんなものを作ったら、世界の経済格差が深刻化し、9.11のようなテロが、先進国中で多発し、日本も例外なくそのターゲットになるでしょう。全く良い世の中になりません。

そして、実はこの話は、「トランプがなぜ大統領になることができたのか?」の話とつながっているのですね。その点は、また別の機会にお話したいと思います。

トランプ氏は、なぜアメリカ大統領になることができたか?

 

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