トークンエコノミーはリワード経済と株式経済をP2Pモデルで融合させたネットワーク効果の1つのモデル

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こちらの記事の内容は、Youtubeの動画にもまとめています。日本語字幕付きですので、英語教材としても活用してください。

ブロックチェーンは、IT産業における「第3の波」である

これを疑う人はいないでしょう。パーソナル・コンピューターは、我々の働き方を民主化し、インターネットは、我々のメディア作りの世界を民主化し、ブロックチェーンは、現在、我々の信用と資本管理の世界を民主化しつつあります。2017年の仮想通貨バブルは、多くのICOをしたブロックチェーンスタートアップが、しっかりとしたビジネスモデルを持たないまま経営を続けていたという点を踏まえて、2000年に発生したNASDAQ市場のインターネットバブルと酷似しています。その点から、NASDAQバブル後のインターネット市場と同様に、次のこの産業の本格的な成長フェーズにおいても、引き続き生き残っているであろうブロックチェーン・スタートアップはごく僅かとなると思います。

下記は、参考までに、Google FinanceのNASDAQ総合インデックスの長期チャートです。

2017年の仮想通貨バブルを見ていて、一点、ユニークに感じる点は、金融庁の調査結果を踏まえても、流入した資金の約50%相当が、日本の個人であったことです。仮想通貨市場が、多くの人にその存在を知るきっかけを与えたMt.Gox事件も日本で起きたことから、ある意味、仮想通貨市場においては、日本は、”グラウンド・ゼロ”のような役割を果たしており、この点から、この傾向がどのように展開して行くのか楽しみにみています。

今回の投稿では、ブロックチェーンの活用でよく話題にのぼる”トークン・エコノミー”について、皆さんの理解の助けになるよう詳しくお話をしたいと思います。私は、トークン・エコノミーは、ブロックチェーン産業の核になると考えています。

トークン・エコノミーとは何か?

この点が、なかなかクリアになっていない方が多いと思います。端的にいいますと「P2Pの着想とテクノロジーを活用し、リワード経済と株式経済を融合させたネットワーク効果の一つのモデル」です。うーん、何のことを言っているのでしょうか?詳しくお話して行きます。

リワード経済とは何か?

リワード経済とは、ウェブサービスやアプリケーションのユーザーベースを育てて行くためのアフィリエイトプログラムの一つです。UberやAirbnbを例に取ると分かりやすいと思います。あなたが、Uberのユーザーになっているとしましょう。あなたは、自分の友達をUberに招待します。そして、その友達があなたに口説かれて、初めてUberを使うとき、その人は、2,000円相当のクーポンを使うことができ、そして、実際にそのクーポンを使って乗車すると、同じ2,000円相当のクーポンをリワード(報酬)として、もらうことができます。

別のケースでは、あなたの友達が、Airbnbのユーザーになっています。あなたの友達が、あなたをAirbnbに招待し、そして、あなたはその友達に口説かれ、次のバケーションの際に、Airbnbで宿泊先を予約すると、あなたはその利用時に、3,000円相当のクーポンを使うことができ、かつ、あなたの友達も3,000円相当のリワードをもらうことができます。これが、リワード経済の基本的な仕組みです。マーケッターは、このように自分たちの製品・サービスを利用してくれているユーザーにインセンティブを付与することで、プロダクトの口コミ効果を増大することができます。この仕組みは、一見とてもシンプルなモデルに見えますが、マーケッターにとってはかなり重宝される手法です。

なぜなら、ライフスタイルや価値観が多様化している現代において、新しい製品やサービスを個人・個人に合わせたマーケティング・コミュニケーション・メッセージを作って行くのは、ほぼ不可能と言えます。ですから、使ってくれているユーザーに、インセンティブを付与して、その友達を口説いてもらう方が圧倒的に現実的な考え方なのです。そして、リワード経済を育てて行くためには、アクティブ・ユーザーの定義とその規模、ARPU(アクティブユーザー一人あたりの収益)、そしてリワードコストのブレイク・イーブン・ポイントなどを計測しながら運用して行く必要があります。

そして、トークン・エコノミーにおいては、新たな視点が加わっています。それは、下記の図のように、インターネット産業におけるクライアント・サーバーモデルのように、サービス・製品の提供者が中心になって行うのではなく、よりP2Pモデルをベースに、ユーザーが、サービスの運営にも、今以上に深く関わることで、組織運営の非中央集権化が更に進んで行くことになるでしょう。

左がインターネットのクライアント・サーバーモデル、右がブロックチェーンのP2Pモデル

例えば、ソーシャル・アグリゲーション・ニュースサイトのRedditにトークン・エコノミーを持ち込むコンセプトで運営しているSteemitは、その参考事例の一つです。彼らもまだまだ試行錯誤中ですが、このリワード経済を活用したトークン・エコノミーを上手く自社サービスに組み込むことで、より小さいチームサイズで事業経営をできるようになり、それは、多くの起業家達が将来的に確実に直面する成長局面における官僚主義、ないしは大企業病の潜在的な問題を極小化することができるようになると見ています。

株式経済とは何か?

二つ目は、株式経済についてです。この点の多くは、IRに関するものです。IR専門家は、多くの場合、その企業の時価総額、株価、そして株式の市場流動性を重要なKPIとして追っています。しかし、私の目から見ると、つまり、トークン・エコノミーの観点から考えると、IR専門家は、まず、シェア・ホルダーのその企業に対するロイヤリティを計測するべきです。ESG投資や国連が提唱しているSDGsの考え方は、まだまだ発展途上のように思います。ですから、多くの場合、IR専門家は、この点を軽視しているように思えます。理由は明確にあって、大半の場合、「その企業のシェア・ホルダー=顧客ではない」からです。

この事実が原因となって、私は、株式経済は、巨大なフリクション・コストを抱えていると捉えています。なぜなら、現在の株式経済のメカニズムでは、シェア・ホルダーにとって重要なのは、投資した資金のリターンと、株式への配当だけとなってしまっているからです。この結果、株式経済は巨大なジレンマに直面しているとみています。現在の株式経済は、不幸にも「拝金主義者」という名の怪物を生み出してしまいました。

この点は、最近、大型上場を控えているあるスタートアップ経営者のインタビュー記事から明確に理解できます。その経営者とは、Airbnbの創業者でありCEOであるブライアン・チェスキーです。以下は、フォーブスにおけるそのインタビューの一部抜粋です。オリジナルは、下記のリンクから確認できます。

デザイナー創業者独占インタビュー!エアビーの「アマゾン化計画」とは何か-Forbes Japan

以下引用-

大半のCEOにとって、しかも上場を予定しているのなら、答えは「投資家」になるはずだ。しかしチェスキーは「大半のCEO」とは違う。Airbnbは投資家だけでなく、従業員、ゲスト、ホスト、都市という他の四者のステークホルダーをも顧慮しつつ、成長を評価していくことになるだろう。彼らはそのことにより、通常とは異なる自社のやりかたが受け入れられやすくなるよう願っている。たとえばホストに株式を与えたり、低利の改築資金を融資したりすることを、証券取引委員会に認めてほしいのだ。そこにはまた、コミュニティ的なルーツに忠実であり続けたいという願望も反映されている。

しかし、その種のやり方はIPO後には難しくなるかもしれない。Airbnbは永遠に非公開企業にとどまる道を探ってきたが、17年秋にモルガン・スタンレーと協議した後、それはあり得ないと悟った。そこで早ければ19年半ばに株式を公開することにしたのだ。長々と先延ばしすることはできない。20年には従業員に付与したストックオプションの多くが行使期限を迎えるからだ。上場について尋ねると、チェスキーは気難しげな顔になる。彼は、企業は往々にして大局観を見失い、四半期のリズムに振り回されがちになると話す。「問題は、そもそも自分たちが山に登っているのだということを忘れてしまう人々がいることだね」と、チェスキーは語る。
「彼らは口では『大衆の利益に奉じたい』とか『世界に役立つプロダクトを作りたい』などと言うが、取締役会での唯一の評価基準は、そのプロダクトのセールスに関わる基準だけなんだ」

-引用終わり

ブライン氏が語っているように、今の株式経済は、その企業を支える人材とユーザーの想いとは全く異なるメカニズムが働く、まさに巨大な問題を抱えているということです。

この問題をトークンエコノミーで解決していく上で、カギーとなるのは、先におはなした顧客=株主の世界を確立していくことにありますが、その点を実現していく上で、まず重要なことは、ユーザーが、積極的に、短期売買より長期保有を選択するメカニズムを組み込むことになります。

ネットワーク効果とは何か?

ネットワーク効果は、サービスや製品の機能性を元にしたマーケティングモデルの一つであり、この効果を最大化することにより、新しいウェブサービスや製品のアクティブ・ユーザーベースを拡張していくものです。私が、人生で最も初めに目にしたことがある「ネットワーク効果を描いた図」は、Amazonを創業したジェフ・ペゾスが、投資家との面談で、テーブルにあったナプキンに書いたとされるAmazonの成長戦略に関する説明図です。とても、シンプルですが、今のAmazonを作り上げたそのままがそこに表現されています。

Jeff Pezos – Amazon Growth Strategy

この図の中身を簡単に説明すると、Amazonで扱う商品の種類が増えるほど、Amazonの顧客体験はよりよくなる。すると、ユーザー・トラフィックが増えるから、売り手のモティベーションは更に上がり、より多くの売り手をこのプラットフォームに呼び込むことになる。これが、Amazonにおける第1位のネットワーク効果であり、このポジティブ・スパイラルを作り上げることで、第2位のネットワーク効果を更に作り上げます。

それは、第1位のネットワーク効果によるグロース・メカニズムが、Amazonのインフラコスト(配送コストやピッキングコスト)を更に下げることを可能にするため、Amazonは自社在庫を更に低価格で販売可能になります。当然、安く買えるというメリットは、より良い顧客体験を生み出すため、アクティブ・ユーザー・ベースは更に成長し、第1位のネットワーク効果を更に強化することに繋がるわけです。

そして、これら3つの点を踏まえて、トークン・エコノミーを考える中で言えることは、ユーザーが、そのブロックチェーン・スタートアップのサービス成長に貢献した結果として、最終的に大きなキャピタルゲインを得ることができるということです。

Airbnbのクーポンを、再度、例にとって話をしましょう。先ほど話をしたAirbnbのクーポンは、現金3,000円分の価値しかありません。しかも、有効期限つきの場合もありますから、5年後にはタダになっていることすらありうるわけです。しかも、ユーザーベースが100人段階でのクーポン価値と、ユーザーベースが1億人段階でのクーポン価値は全く同じです。しかし、トークン・エコノミーでは違います。まだ設立間もない段階のAirbnbのトークン価値は、$1程度だったとします。そして、その将来性と可能性に共感し、成長に貢献するため、ホストになり、たくさんのゲストを顧客として迎え、ホテル市場を超えた満足度を提供したユーザー、または、ゲストになるユーザーをたくさん連れてきて、かつ、そのユーザーが品行方正に滞在先で振る舞うように啓蒙活動を続けていたユーザーは、Airbnbの成長と共に、Airbnbのトークンが、Binanceなどの仮想通貨取引所に上場され、$10の値がついた時には、10倍もの莫大なキャピタルゲインを得ることになるのです。今までこのリターンを得ていたのは、ベンチャーキャピタルなどの投資家達だけでした。しかし、貢献度でいえば、Airbnbの成長に貢献した初期のユーザーは、投資家以上の貢献をしたと断言できます。お金をいくら投資したところで、ユーザーがその製品やサービスを使ってくれなければ意味がありませんから。

これが、私が、トークン・エコノミーが、「P2Pの概念を用いてリワード経済と株式経済を融合させたネットワーク効果のモデルの一つである」と考える所以です。

最後に、

私の目から見ると、ビットコインも、デジタルゴールドとしての一つのトークン・エコノミーに見えるのですね。それは、イーサリウムも同様です。しかし、両者とも強力なトークン・エコノミーを作り上げることができているかというとまだ大きな疑問符がいくつかあります。長期点に間違いなく言えることは、ブロックチェーン産業で事業を立ち上げる起業家は、まず第1に”トークン・エコノミー・デザイナー”にならなければならないということです。

そして、このトークン・エコノミーが生まれてくる世界のマクロ的な背景には、21世紀が「統合化」の時代にあることと関係しています。その点は、こちらにまとめています。

20世紀は「細分化の時代」、21世紀は「統合化の時代」であるとはどういうことか?

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