日本の音楽業界のIT化の遅れは間違いなくアーティストを食えなくする

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僕は、音楽はJazzが主に好きで、iTunesでいつも好みのJazzを聴きながら仕事をしたり、本を読んだりします。その中でいつも気になるのは「日本の音楽業界って大丈夫かな?」ということなんですね。僕もシンガソングライターの友人がいますし、業界の友人などからも、ちらほら最近の話などを聞いたりすると、アーティストを管理しているレーベルなどの事務所側の発想が、アメリカやイギリスなどに比べると随分遅れており、とても心配になります。アーティストは作品を作ることに集中し、マネージャーは、その作品をきちんと報酬に変えることで、アーティストが活動を続けられるよう支援して行く。この基本的な歯車がきちんと回るように「時代の変化への適応」というのを真剣に考えて欲しいと思い、この記事を書きます。

ぴあ総研のプレスより抜粋 – 参照リンク https://bit.ly/2V7cpmM

ミリオンセラーの時代は終わった

ユーザーのライフスタイルが多様化しているのは、誰もが分かっていることですよね。戦後から高度成長の時代であれば、みんな同じ方向で、がんばればよかったので、画一的な教育も受け入れられていました。そして、その方向の中で、音楽を作れば、みんな同じ音楽を聞いてくれました。ですから、ミリオンセラーというのも、そのような時代だったからこそ可能だったと言えます。しかし、今のような低成長時代に入ると、それぞれ思い思いのライフスタイルを持つようになって行きます。縛られたくないという衝動が根底にあるからでしょう。どうせ縛られても、その恩恵がほとんど受けられない時代だからですね。ですから、教育もより自由を重視して行きますし、どの音楽の根底にも、僕は常に「共感」があると思っていて、ファンは、そのアーティストの歌詞や楽曲に込められて想いに「共感」するからファンであり続けると思います。

ですから、AKBなどのモデルは、確かにビジネスモデルとしては賞賛に値すると思いますが、あのモデルからは、テイラー・スウィフトは生まれて来ないわけです。つまるところ、本質的にアーティストに対する共感を生み出すという意味では、少し、離れてしまっているように感じています。

ライブ市場は伸びているが音楽市場が減少の日本はいずれ苦しくなる

毎年、ぴあ総研が発表しているライブ・エンターテイメントの市場動向を見ると、日本のライブ市場は、着実に伸びてきていますね。これが、低迷している日本の音楽産業を支えていると言っても過言ではないと思います。特に、2016年の足踏み状態の原因が「会場不足」であったことはとても重要で、それだけ需要が旺盛である証拠ということですね。

ぴあ総研より抜粋。参照リンク- https://bit.ly/2V7cpmM

また、お隣のアメリカは、どうか?というと、最近の市場全体の数字は見当たらなかったのですが、ライブイベント会社で、北米最大のLive Naiton社の売り上げの伸びを見ていると絶好調であることが分かります。2017年は、売上1兆円を超えていますね。

Yahoo!ニュースよりの抜粋 – 参照リンク – https://bit.ly/2GUgWVJ

過去5年のライブ・エンターテイメントの盛り上がりは、ユーザー側で「体験」を重視する価値観が育っていることだと思います。インターネットの普及によって、世界中の情報を簡単に手に入れることができる時代になったため、それまでは、本を読むことで得られていた刺激が薄れてしまい、実際の体験から刺激を得ようとしているのがその背景にあると見ています。いわゆる「リア充」ともいうやつですね。この点の影響は、音楽産業にも確実に影響が出ており、昔であれば、楽曲を買うこと自体が、「楽しみ」の1つであったのに、今は、ミュージックストリーミングサービスの普及によって、楽曲に触れる世界は、新しいアーティストの発見ツールの役割か、好みの音楽を「聞き流す」世界に変化して言っていると思います。しかし、大切なことは、このオンラインで楽曲を流通させることと、ライブに来てもらうことは、間違いなく「一体化」された世界だということです。そして、その傾向は、数字にも現れ初めているなと実感しています。例えば、2017年の5つの国の楽曲売上の動向を比較して見ると、

【アメリカ・イギリス・日本の2017年の音楽市場の売上動向】

  • アメリカ:9,064億円(前年比16.5%増)
  • 日本:2,893億円(前年比3.0%減)
  • イギリス:1,276億円(前年比10.6%増)

と、日本だけ2016年に比べて減少しているのですね。僕は、アメリカやイギリスのアーティストやレーベルは、着実に、この新しい時代の流れに適応し、楽曲販売ビジネス自体を復調に持って来ていると見ています。僕は、この傾向に、日本の音楽業界の未来にとても危機感を覚えます。なぜか?

コンテンツ配信のIT化とチケットの電子化は、ファンコミュニティの育成には必須

ミリオンヒットが生まれない時代において、一人や1つのグループ・アーティストにとってのファン・コミュニティの育成は、生命線だと考えています。少しでも、自分の音楽に共感してくれ、長くファンでい続けてくれることの価値は、アーティスト活動にとっては、心の支えになるだけでなく、生活を成り立たせるビジネスとしても重要なわけですよね。いい音楽を作るには、それなりの機材や生活環境、また様々なスタッフの協力も必要です。ところが、日本の音楽業界が、IT化を軽視していると、ますます、それが難しくなるわけです。

例えば、Spotifyなどでは、アーティストやそのマネジメント会社に、どのようなユーザーが、自分の音楽を聞いてくれているかユーザープロフィールのデータを解放しています。そして、ライブチケットも、TicketMonsterやStubHubで売られているチケットは、全てデータが電子化されており、二次流通も可能ですから、同じように購入者のデータが可視化されています。こういう環境が整っていると、どのようなことが、アーティストにとって可能か?

まず、SportifyやiTunesなどのストリーミングメディアは自分の音楽を知ってもらう「きっかけの場」として活用するわけです。Youtubeも似たような存在で、「ピコ太郎」さんがそうですが、彼は、Youtubeコンテンツの爆発的ヒットで、一気にメジャデビューしたわけですね。そうすると、自分の音楽に共感してくれているユーザーがどのような人たちなのか分かるわけです。すると、自分の音楽の市場でのポジショニングを作っていくことが可能になりますね。むしろ、ここはマネージャーさんがしっかりとデータを分析して、アーティストに、更にファンに響く、新たなファン獲得になる楽曲作りができるよう、丁寧に伝えるのが役割のように思います。その上で、ライブを開催した場合、今のように紙チケットで売っていたら、本当にそのSpotifyなどのデータで見ていたユーザー・プロファイルと同じようなプロファイルの人が来てくれたのか、全く分かりません。そして、そこにオンラインでファンサイトを立ち上げた場合に、そこの会員データも、SpotifyやiTunesのデータとは連携しておらず、ましては、ライブへの来場データとも連携していなかったら、本当に、自分の音楽を経済的に支えてくているコアユーザーがどんな人たちなのか?その周辺のユーザーはどんな人なのか?全然わからないわけですね。このような状態だと、アーティストがどんどん食えない業界になって行くのは、目に見えていると思います。これで、いい音楽を作れというのは、無茶な話です。

また、日本では、チケット流通を電子化していないことが原因で、「チケットの高額転売」問題が発生しています。AKBやジャニーズ人気アーティストなどのライブは、チケットが高騰することがわかっているため、よからぬ業者が、はじめから転売目的で、先行予約のチケットなどを手に入れ、定価の販売もの金額で、手に入らなかったファンに売りつけるというビジネスが横行しています。しかし、これも電子化してしまえば、簡単に解決できるわけですね。電子チケットにすれば、転売のときに、転売の上限価格や下限価格をあらかじめ決めておき、それ以上の価格で売れないようにすることもできますし、Spotifyやファンサイトのデータと照合して、明らかにファンではなく、高額転売ばかりしている人はブラックリスト化して、排除することもできます。これらは全て「音楽産業をしっかりIT化」するからこそ、可能になることです。「ストップ高額転売!」というスローガンを出しても、悪人は儲かる限り、高額転売を止めることはありません。大元の原因を断つ仕組みを作らないといけないわけです。そのためにテクノロジーを活用するのです。

僕は、アメリカやイギリスの音楽は、IT化の流れに乗って、ここをしっかりと対応していっていると考えており、それが、2017年、楽曲売り上げの10%以上の伸びの達成に貢献したと見ています。

日本の音楽業界のIT嫌いは間違いなく業界の命取りになると見ています。ここにブロックチェーンを活用して行くのは、その次の一手になると思いますが、まずは、アメリカやイギリスとの出遅れ感を取り戻すべく、IT化を推進することが最重要だと思います。

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