日本人の大半のシリコンバレーに対する物の見方が完全に間違っている

ときたま、メディアを賑わすのが、「シリコンバレーの凄さ」についての議論ですね。シリコンバレーのベンチャーの戦略がどうとか、ビジネスモデルがどうとか、グロースハックがどうとか、ネットワーク効果がどうとか、ただ、いつも記事を読んでいて想うのは、「表面のことしか追っていない」と想うものばかりです。シリコンバレーの本質を理解することは、このブログの趣旨を理解することとイコールなので、シリコンバレーでの起業経験もある僕の考えについてお話します。 シリコンバレーのルーツは、アメリカのローマ帝国主義的秩序に対抗するヒッピーにあり パーソナルコンピュータ市場を立ち上げたApple、インターネットの産業化をもたらしたGoogle、そして、トヨタすら時期尚早と判断したEVを産業化したテスラ、今、僕らの文明社会を世界単位で前に推し進めているのが、シリコンバレーであることに異論のある人はいないと思います。では、なぜ、日本からシリコンバレーのような社会が生まれて来ないのか?その考えを突き詰めると、ある1つの答えに辿りつきます。それは「ヒッピー」です。 From Wikipedia – ヒッピー(英: Hippie,Hippy)は、1960年代後半にアメリカ合衆国にあらわれた欧米の伝統、制度などそれまでの考えかたにしばられた価値体系を否定する、ボヘミアニズムなどとならぶカウンターカルチャー(COUNTER CULTURE)の一派、およびそのムーブメント。ヒッピーは、保守的だったキリスト教文明に批判的であり、「ヒューマンビーイン」に代表されるような、新しいムーブメント、哲学、宗教、や魂(スピリチュアティ)の体験をもとめて、インドなどのヒッピーの聖地やフェスティバルを訪問した。ヒッピーの一部は、インドなど東洋の宗教、哲学に魅力を感じ、反体制思想、左翼思想や自然のなかでの「共同体生活」への回帰を提案した。また時代背景としてサマー・オブ・ラブ、ベトナム反戦運動や、公民権運動、カウンター・カルチャーとしての反抗的なロック、性の解放やフリーセックス、大麻などのドラッグ解禁、男女平等、各種差別の廃止を主張し、よりモダンな社会の実現を目指した。モンタレー、ウッドストック、ワイト島などのロック・フェスティバルは、ヒッピー運動の成果の例である。社会変革と同時に、精神世界を重んじ、70年代末以降使用されるようになったオルタナティブ(もう一つの選択)という発想や、多様な価値観の尊重を訴えた。 このヒッピーのことを考えると、僕は、いつもスティーブ・ジョブズのロストインタビューを思い出します。インタビュアーに「あなたは、自分のことをヒッピーだと思いますか?それともナード(=オタクに近い)だと思いますか?」と聞かれたスティーブ・ジョブズは、少し考えた後に、「僕は間違いなくヒッピーだね」と答えます。そのインタビューの中で、ジョブズは、ニューヨークのMoMAにも飾られているあの伝説のパーソナルコンピュータであるマッキントッシュの開発秘話の中で、開発メンバーたちのパーソナルコンピュータへの想いとして「お金のために作ったんじゃないよ。僕らは、自分達が自由になるために、パーソナルコンピュータを作ったんだよ。」と語っています。そう、自由になるためのツールを誰も作ってくれないから、自分たちでやったんですよね。そのために、ウォール街や、古臭い商慣習を強制してくる大人達とも組みながら、ときに対立しながら、世界中の人々を自由にするためのインフラを作っていったのです。 この思想は、Googleの創業者にも受け継がれていきます。Googleを創業したラリー・ページとセルゲイ・ブリンは、Google創業前のスタンフォードの大学生時代、今尚、アメリカで続けられている世界最大のヒッピーの祭典である「バーニングマン」の常連でした。彼らもまたヒッピーとして、メディアの自由を手に入れるために、Googleを興したのです。 もともと、シリコンバレーでテック産業が栄えるきっかけを与えたのは、アメリカの東海岸のベル研究所で働いていたウィリアム・ショックレーというトランジスタを発明した天才科学者であり、彼はこのトランジスタの発明を共に行ったジョン・バーディーン、ウォルター・ブラッテンらと1956年にノーベル物理学賞を受賞しています。 また、このショックレー氏は、実は、日本とも深い関わりがある方です。以下は、そのエピソードのWikipediaからの抜粋です。 1945年7月、アメリカの戦争省は日本本土上陸作戦を行った際の死傷者数の予測をショックレーに依頼した。ショックレーは次のように結論した。 “日本の国家としての歴史上の振る舞いとこれまでの戦闘における振る舞いの研究が正しいなら、敗戦を認めるまでに生じる日本人の死傷者数はドイツの場合のそれを上回るだろう。言い換えれば、我々は500万人から1000万人の日本人を殺す必要がある。その場合、我が方も170万人から400万人の死傷者が出て、うち40万人から80万人が戦死するだろう。” この予測は、上陸せずに日本を降伏させるという方針決定に影響し、広島と長崎への原爆投下が行われた。 アメリカは、つまり、当時の日本政府が考えていた「一億総玉砕」計画が、真剣なものであると判断し、そこにまともに立ち向かえば、アメリカ側の被害も甚大なものになると考え、国際政治に対するアメリカの影響力の誇示も含めて、原爆投下によって、日本を無条件降伏させるという作戦を実行したわけです。 ベル研究所で、自分が不遇の扱いを受けていると判断したショックレーは、ベル研究所を去り、生まれ故郷のカリフォルニア州パロアルトに戻っていたところ、彼の才能を買っていた大学時代の友人に、声をかけられ、ショックレー半導体研究所を立ち上げます。ただ、彼のマネジメントスタイルが、独裁者的であったことから、ベル研究所の同僚は彼の誘いに乗らず、彼は、結局、地元大学の優秀な人材を雇う選択をします。のちに、このメンバーのうちの8人が、シリコンバレーが産業化するきっかけとなった「フェアチャイルド・セミコンダクター」の創業者になります。彼らは、自分たちを「8人の反逆者」と呼んでいました。彼らのトランジスタ事業は成功を収めます。しかし、この8人への出資を決めた投資家のフェアチャイルド氏と彼が派遣した社長のジョン・カーター氏がいずれも、自己利益の最大化ばかりを追求し、8人を含む従業員へのストックオプション配布を渋ったことから、皆嫌気が指し、この8人のうちのロバート・ノイスとゴードン・ムーア(後の「ムーアの法則」で有名)が、フェアチャイルド社を出て、創業したのが、インテル、世界最大の半導体メーカーです。そして、この2社の従業員として働いていたマーク・マークラは、インテルのIPOで、もらっていたストックオプションの売却で財をなし、これが、のちのスティーブ・ジョブズが創業したAppleの事業を本格化させるために、彼が投資した92,000ドルとなるのですね。 そして、そのAppleに後にVCとして出資したのが、シリコンバレーの老舗VCであるセコイア・キャピタルなのですね。こうして、インテルやAppleのIPOなどによって、かつては資本家に頼らなければならなかったシリコンバレーの起業家達も、自分達自身が巨大なIPOやM&Aを何件も蓄積していく中で、自分たち自身が投資家になれるだけの資本を手にしていきました。そして、この流れが、シリコンバレーに「インナーサークル」を誕生させるのですね。インナーサークルとは、シリコンバレーに影響力をもつ元起業家でありベンチャー投資家である人々のネットワークです。中心的な人物は、サンマイクロシステムの創業者のビノット・コースラや、世界初のウェブブラウザNetscape創業者のマーク・アンドリーセン、Linkedin創業者のレイド・ホフマンや元PayPal創業者のピーター・ティール(彼は、シリコンバレーコミュニティのトランプ政権に対する反応がいまいちだと判断し、最近LAに引っ越してしまいましたが)、同じく元PayPal創業者のイーロン・ムスク、Google創業者のラリーページとセルゲイ・ブリン、TwitterとSquareの創業者であるジャック・ドージー、Facebookのマーク・ザッカーバーグや、その元社長のショーン・パーカーなどですね。規模で言うと100人から200人から程度のサイズです。彼らは、見た目はとてもオープンなのですが、日本でいうところの「村社会」文化で成り立っており、とても厳しいリファレンスシステムで活動しているので、自分が信頼している人の紹介でしか、新しい起業家とは会わないことで有名です。僕も、シリコンバレーで起業していたときに、唯一プレゼンできたのは、ビノット・コースラだけですね。基本、思想的に合うか合わないか、をとても重視しているように思います。 ですから、今、日本の大企業がシリコンバレーに拠点を作るのが流行っていますが、社畜化した人が現地に行っても、悲しいかな、思想的に合わないのでインナーサークルからは全く相手にはされないわけです。インナーサークルの周辺で、コバンザメのように生息しているVCやビジネスマンもたくさんいますから、そのような人たちは、喜んで会ってくれるでしょう。彼らは、シリコンバレーのインナーサークルから大して重要ではない情報や知識をもらって、それを日本の大企業に売ること(=コンサルティング)でシリコンバレーで生きている人々ですからね。しかし、彼らと話をしていても、インナーサークル内の本質的な情報は一向に得られないのです。涙 このブログでよく登場する言葉である「必要は発明の母」。僕は、シリコンバレー自体が、その言葉によって生まれた存在だと思います。アメリカの東海岸が作り上げてきたヨーロッパの伝統を受け継ぐ現代ローマ帝国としての帝国主義的秩序に対する、強烈な反抗心が、シリコンバレーのコアコミュニティには常に脈々と受け継がれているからです。僕の言葉で、ローマ帝国主義的秩序とは「世界最強の軍事力とそれを支える基軸通貨ドルによる経済支配に基づく覇権主義をベースにし、力による威厳によって万人を魅了しようとする極めて不快な文化的・社会的体系」ですね。そして、彼らは、そのローマ帝国的秩序を破壊し、新しい自由でありながら平和的な秩序を社会にもたらすことを使命においています。 とこういう話をしていると、正直、日本のベンチャー業界との間に強烈な「温度差」を感じてしまいます。日本の起業家の中は、僕と同じく自由でありたいから、自分を犠牲にして、自由になるためのインフラを作るんだ!」という想いで起業している人も当然いるのですが、数は異常なぐらい少なく、大半は、こちらのブログでも紹介した「堺屋太一氏の遺言に想う:官僚主導の戦後復興により日本の民間と自治体はアホになってしまった」にあるよう、戦後の官僚達が執着した「アメリカへのリベンジ」が変異した「アメリカに認められたい」という想いが中心にあるように思います。それは、アメリカのローマ帝国主義的秩序の「思うツボ」なのですよ。彼らはそうやって自分に対抗してくる勢力を力でねじ伏せることで、引き続き、自らの力を誇示し続けるからです。そして、その周りの起業家とVCは「名を上げたい。金持ちになりたい。」という腐敗した精神の人々ばかりです。 例えるなら、ハリウッド映画の「グラディエーター」で描かれているような、ローマ帝国の市民になることを憧れていたその周辺属国の人々というのが、日本のベンチャー業界なのですね。 まだの人は、こちらにリンクを貼っておきますので、一度、読んでみてください。 https://lifeforearth.com/?p=3963 これでは、日本からAppleやGoogleを生み出すのは、不可能です。なぜなら、「動機が間違っているから」です。 僕が、Orbを経営していたときに、これが痛切に感じたことです。「なんか、シリコンバレーのときと違う」という感じですね。シリコンバレーでのMusavyというベンチャーを経営していたときは、日本での起業のときより圧倒的に辛かったです。お陰で、あまりのストレスで寝ているときの歯ぎしりが止まらず、奥歯がかけてしまったほどです。笑 しかし、同時にとても楽しかったという思い出があります。 Orbの時は違いました。なんというか、周りが冷めているんですね、シリコンバレーでやっていたときほどのワクワク感がない。堺屋さんが指摘している“平成は「夢ない、欲ない、やる気ない」の「三ない社会」だった”というやつです。 Orbは、Orb Version1.0では、パブリック・ブロックチェーンを使い、独自のプルーフ・オブ・ステイクのアルゴリズムで、バーチャル地域通貨(=今でいうトークン・エコノミー)を作り、それらを非中央集権的にネットワーク化する構想でしたが、東京の顧客の反応があまりにも冷めていたので、経済格差に苦しむ地方経済から電子版藩札というコンセプトで立ち上げるため、既存の金融システムのニーズに合わせる必要が出てきたので、パブリックブロックチェーンからプライベートブロックチェーンに切り替え、独自に非中央集権型のコンセンサスアルゴリズムを作りあげ、Oracle Cloudで安いサーバーを使っても秒間3,000件から30,000件まで処理できることをベンチマークテストで証明した世界最速のリニア・スケーラビリティを持った分散型台帳を造りあげました(ほとんどの分散型台帳ソフトはハイスペックなマシンでテストして数字をアピールしているので騙されないように)。そして、それら電子版藩札を非中央集権的にネットワーク化する構想に切り替え、地銀に豊富な伝のあるSBIさんの協力の元、目処がついてきたという具合でした。今、僕が注目しているCosmosがソフトウェアとしては近いですね。 ただ、正直、地銀や自治体の人々と会話していると、バーチャル地域通貨のときの東京の顧客に比べると温度感は高めなのですが、うーん「夢がなかった」という感じですね。「こういう地域経済を造りたい!」という青写真を持っている方がいないのですね。幕末の頃の地方の藩士たちが、日本を守るために命をかけていた感じと全然違うのですね。僕の中では、地方で、平成の坂本龍馬や西郷隆盛のような人物に出会えることを期待していたのですが、うーん、出会わなかったですね。。。そういう感じの方は、東京に住んでます。ですから会うのも東京でお会いしてます。これが、堺屋氏の言う官僚の功罪なんですよね。ほんとは、そういう人が地方から出てくるべきなのですが。地方を政治的にも経済的にも回復させるのが不可能なレベルまで衰退してしまっているのです。 それでもなお、日本人が精神的に崩壊しないよう支えているのが、日本のお笑い芸人の方々です。その点は、こちらにまとめています。僕は、いつも彼らの存在と努力に、多大なる敬意を持っています。 https://lifeforearth.com/?p=4076 21世紀、日本人は果たして、幕末の精神を取り戻せるのか? 2020年には東京オリンピックがあり、2025年には大阪万博がありますね。正に、戦後昭和の、東京オリンピック(1964年開催)と大阪万博(1970年開催)を踏襲するかのような時代の流れです。これが間違っているということを深く理解しなければなりません。なぜなら、この流れの作り方からして、明らかに裏ではまた日本の官僚が絵を書いて事を動かしているからです。勘の良い人であれば気づいているはずです。「あれ、そっくりじゃないか」と。 本来は何をやるべきなのか? ヒッピーのガイドラインというのがあって、そこにとてもおもしろい内容が書かれています。 「あなたがそれをしなければならないとき、あなたがそれを望むとき、いつでもあなた自身のことをしましょう。 すでに、あなたが知っているように、ドロップアウトし、 社会を離れてみる。完全に身をまかせてみる。 あなたのまわりにいるまっすぐな人の心を吹き飛ばしちゃいましょう。 それはドラッグによってではなく、美しさ、愛、正直、楽しさによって―」 そう、ドロップアウト、幕末でいうところの「脱藩」ですね。既存の社会に寄生するのをやめる勇気ということです。僕がこのブログで伝えている「地球に優しい自由な人生を手に入れる」ということも、現代版「脱藩」です。以前から伝えているように、今、この世の中で貢献する方法は、2つしかないのです。「自らの犠牲にして、人が自由になれる新たなインフラを作るか?」、それとも「そのユーザーとなって、ブロガーやYoutuberとして自ら証明してみせるか?」。大変なのは、僕がOrbで取り組んでいたように前者の方です。またその圧倒的な実績を持つのがシリコンバレーです。最後に、スティーブ・ジョブズの「ロスト・インタビュー」を乗せておきます。 ジョブズ氏の言葉には、彼が命をかけて、人々に自由を与えたいという想いがしっかりと息づいているのです。