JCBのQRコード決済基盤「スマートコード」(Smart Code)はキャッシュレス化の本質を理解していない愚策中の愚策

JCBが、統一型のQRコード決済「スマートコード」(Smart Code)を発表しました。第1号は、なんとあのメルカリが提供するではメルペイが乗っているとのこと。正直、びっくりしました。メルカリもっとしっかりしろと言いたくなってしまいました。JCBは、日本のデビットカードインフラの普及を遅らせた張本人の一人なのですが、今回の地方創生のカギを握る「キャシュレス化」すらも、邪魔してくるのかと。そして、メルカリは、その片棒を担ぐのかと。完全にキャッシュレス化の足を引っ張る愚策中の愚策です。その理由を詳しくお話します。 日本のキャッシュレス化が遅れた原因は、実はJCBの「J-Debit」である まず、冒頭で触れた、このデビットカードインフラの歴史についてお話しましょう。2008年に起きた、リーマン・ショック以降、カード決済の市場は、完全にデビットが主流になりつつあります。このグラフを見てください。 色の濃い方がデビットで、薄い方がクレジットなのですが、若年層は、完全にデビットが主流なのですね。なぜかというと、特に流れが顕著になったのは、リーマンショック以降で、先進諸国はほとんどが経済の低成長が続いており、かつクレジットを主流で使っていて、少しでも返済トラブルを抱えると、様々な金融サービスが使えなくなるので、元の原因を断とうという若者が増え、即時口座引き落としがかかるデビットが主流になっているのです。デビットカードは、自分が口座をもつ銀行が発行してくれるものです。その結果、アメリカの銀行では、もはや、2000年時点で、ATMカードの発行数をデビットが超えています。 その数字が、上のグラフです。2000年以降は、アメリカではデビットの発行枚数が、ATMカードの発行枚数を超えているのですね。中国でもそうなのですが、決済業界に関わっている人はみな、「キャッシュレス化が加速している背景は、デビットカードの普及にある」と言います。それはそうで、現金もつよりデビットカードの方が、強盗にあうリスクも下がるし、即時引き落としだから、残高見れば、あと残りいくらあるかわかるので、クレジットカードのように使いすぎて返済に困るようなこともないわけです。にも関わらず、日本って、いまだにデビットカードが普及していないですよね? このグラフが、その問題を顕著に表しています。 このグラフは、2014年の数字なのですが、そう、アメリカやイギリスでは、もはやデビットカードの利用がクレジットの利用を超えているのです。しかし、日本は、2014年時点では、ほぼゼロ。最近でもちらほら見るぐらいです。日本がいまだに現金が根強い原因は、このデビットが普及していないからなんですよ。なぜなら、現金決済とデビット決済を比べるとほとんど違いがありません。デビットは、銀行口座から即時引き落としですから加盟店にも翌日入金が可能です。 上のグラフは、日銀が2018年9月にまとめたキャッシュレス化に関するレポートですが、グラフを見るとわかるように、デビット比率はほとんど伸びていませんが、代わりに電子マネーが伸びています。つまり、ユーザーは間違いなくキャッシュレス化を望んでいるのですよ。しかし、電子マネーはチャージするのが面倒で、クレジットカード連動の電子マネーは、電子マネーを発行するSuicaやEdyが、加盟店手数料をカード会社(正確にはアクワイアラ)に支払うことになるため損してしまうので、そのタイプのカードを出しているところが非常に少ないわけですね。 明らかに電子マネーより優れており、ユーザーは、現金持たずに現金感覚でお金を管理できるデビットカード、加盟店はクレジットカードより振込サイクルが短くなるので、嬉しい。これだけのメリットを持つデビットカードが、なぜ、日本で全然普及しないのか?原因は、JCBが仕掛けた「J-Debit」にあります。 恐ろしく使いにくく、高コストなJ-Debit 百聞は一見にしかずなので、J-Debitのイケてない点を列挙しましょう。 加盟店手数料が、クレジットカード以上に高い:常用銀行が提供するJ-Debitを利用したデビットカードの加盟店手数料は、利用金額の2.5%。ただし、利用1回あたりの手数料は、上限金額250円、下限金額50円。つまり、最低でも一回の決済で、最低50円かかる。上限金額の250円に達するのは、10,000円の決済の場合の2.5%=250円。クレジットカードは一括請求になるためこのような下限の金額制限はない。 JCBには3,000万の加盟店がいるからと言いながら、J-Debitは、JCBのクレジットカードシステムと連携していない別のシステムで作ってしまったため、JCBと発行体である銀行が1つ1つ加盟店を口説かないと導入できない仕様。VISAやMasterやUnionPayのデビットは、クレジットカードのシステムと同じシステムでデビット決済を可能にしているため、そのような加盟店営業は必要ない。つまり、海外のJCB加盟店では全く使えない 加盟店への売上代金の振込サイクルは、毎月15日と月末の2回のみ これで広がるわけないですよね。JCBは、日本の主要銀行から役員が派遣されて経営しているモデルになるため、リスクを取りたがらないサラリーマン幹部ばかりが多いと批判されることが多く、意思決定が遅いことでも有名です。僕のヨミでは、VISAやMasterが日本にデビットカーを持ち込もうとした際に、その動きに驚いたJCBに在籍している銀行からの役員陣が、元いた銀行に営業をかけ、「JCBがデビット決済システムを作るから、それまで待ってくれ!」という話をして、VISAやMasterのデビットカードビジネスの話を断るように説得したと見ています。なぜなら、日本でVISAデビットを初期に担いだ銀行が、JCBに何の恩義も関係も持たない楽天銀行や住信SBIネットなど、新興の銀行などに限られていたからです。しかし、出てきたJ-Debitが恐ろしく酷いシステムだった結果、日本のキャッシュレス化が恐ろしく遅れてしまったわけですね。 そのようなとんでもない失態をやらかしたJCBが、今度は、ようやく本格化した日本のキャッシュレス化に遅れまいとQRコード決済にも参入してきました。その中身を見て、「こりゃ、ありえん」とすぐに思いましたね。 JCB「スマートコード」(Smart Code)は、キャッシュレス化の本質的なゴール達成の邪魔にしかならない こちらが、JCBの「SmartCode」のスキームです。 簡単に言えば、JCBは、QRコード決済にも「ブランド」ビジネスを持ち込もうとしているわけです。僕が以前にお話したこちらの図を見れば分かりますね? しかし、日本の「キャッシュレス化になぜQRコード決済が重要か?No.2」のところで、お隣の中国が、AliPayやWeChatPayなど新興のネット企業が、QRコード決済を、既存のブランドであるUnionPayなどに依存しない形で普及させた結果、購買活動から得られるビックデータを活用したトランザクション・レンディングをはじめ、様々なイノベーションを起こすエコシステムが生まれ、多くのベンチャー企業がその恩恵を受けているという話をしました。以下のブログを参照。 https://lifeforearth.com/?p=3625 しかし、既存のJCBシステムの上に乗ったQRコードシステムでは、それは絶対に不可能なわけです。あたり前です。POSデータの取得も含めたビックデータ活用のデータインフラにはなっていないからです。JCBのSmartCodeは、キャッシュレス化による地方創生の邪魔にしかならないのですよ。日本のキャッシュレス化は、今、PayPay、LinePay、楽天スマートペイなど、新興企業が「過剰競争」と批判されるぐらいのレベルで戦うことで、JCBやNTTデータなど日本の既得権益の塊のような業態と化してしまったシステムが根本的に刷新されて行くのです。ここを経済産業省がバックアップすることにこそ意義があるのです。その点から、日本の新しい流れを生み出そうしているメルカリが、決済システムのことをよくわからず、日本を衰退させようとしているJCBの片棒を担いでいるというのは、悲劇以外の何物でもないなと思います。メルペイは、すぐにでもSmartCodeから出るべきです。僕は、それが実現しない限りメルペイは使いません。メルカリの売上代金は、メルカリ内で使うか、買うものがないなら自分の口座に振込みます。 ちなみに、日本人も、勇気を出して、こういう「消費ボイコット」という活動をもっとやって行くべきだと思います。