イーサリウムはトークンエコノミーの観点からするとかなり難易度高い

さて、前回のトークン・エコノミーの観点からビットコインのネットワーク効果を分析しました。今回は、その第2弾ということで、ビットコインに次ぐ大型仮想通貨のイーサリウムのトークン・エコノミーを分析していきましょう。

イーサリウムのネットワーク効果モデル

このようなモデルになります。ビタリック自身が元々はビットコインの開発コミュニティに参加していたこともあり、彼自身、仮想通貨経済の性質を踏まえて、ビットコインに比べると色々と改善策を打っているのがよく分かります。

Ethereumのネットワーク効果図

簡単に解説すると、EthereumのERC20トークンを使うことで、dApps開発をするベンチャーは、ICOが容易になります。特に、EthereumのEVM(Ethereum Virtual Machine)以下のシステムがブロックチェーンとマイニングの領域を全て面倒みてくれる点が大きいです。悪意的なマイナーの排除など、諸々のインフラに関わる課題をEthereum側が全て引き受けてくれるわけです。この点のバリューは、既存のAWSやGoogle Cloudでも同じことが言えます。Ethereumの基本構想は、GAFAに対抗する「Decentralized Cloud」だから、当然と言えば当然ですね。

そして、ERC20トークンにICOは、仮想通貨取引所にとっても実は嬉しい話です。なぜなら、Ethereumのプラットフォームに対応するだけで、その上で稼働する複数のトークンを一気に上場させることができるからです。これによって、dApps開発に資金が流れるメカニズムが生まれ、その要望に答えることを続けることで、EthereumのdApps開発に必要な機能が拡充していく。このようなポジティブ。・スパイラルを生み出すように設計されているのが、Ethereumです。

しかし、ブルーマークの領域の課題が、実はかなり難易度が高いものばかりが揃っています。そこをまずお話しましょう。

高いスループットが必要

AWSやGoogle Cloudを見ればわかるように、Cloudサービス上には、ものすごい数のアプリが動いています。毎日、新しいアプリが生まれてその上で動くわけです。そうなると、秒間あたりのトランザクション数も相当な数になるでしょう。現時点で、イーサリウムは、秒間15件のトランザクションをオンチェーンで処理することができます。しかし、AWSやGoogle Cloudは、数千件から数万件のレベルが対応可能です。このギャップを埋めなければならないわけです。今、これを解決するため、ビットコインのライトニングネットワークの着想を取り入れた、Plasma Cashを実現し、イーサリウムでもオフチェーン処理を可能にすることで、この問題を解決しようとしています。

高い拡張性が必要

同時に、非中央集権的にクラウドシステムを運用するには、マイナーが大量分散している必要があります。ビットコインのように、PoWにのみ依存していると、マイナーの寡占化が進行して行きます。しかし、マイナーが分散すると、その分、ノードが分散しますから、秒間あたりのスループットは落ちる傾向にあります。そのために、イーサリウムは、マイナーの分散化が可能でありつつも、スループットが落ちないよう、Casperという技術を開発しており、これによって、高い拡張性を得ようとしています。

ネットワークコンジェスチョン問題を常に抱えている

更に、その上で、P2Pネットワークは、分散処理システムに比べてまだまだ負荷分散のノウハウが成熟していないため、特定の1つのアプリケーションが、イタリのマイナーリソースを占有してしまうというネットワークコンジェスチョン問題が起きます。Crypto Kittiesという仮想キャラの育成ゲームが短期間で人気を獲得し、この問題が顕在化しました。この問題は、次のガス価格のオークション経済問題を解くだけでは解決しません。これが原因で、ERC20を使ってICOした大手SNSの1つであるKikが、プラットフォームをイーサリウムからステラーに乗り換えました。Kikは、世界に2億人のユーザーベースを持っているため、仮想通貨Kinを使ったトークンエコノミーを本格的に稼働させるには、イーサリウムでは不安だと感じたわけですね。

ガス価格のオークション経済問題

そして、ガス価格のボラティリティの問題です。イーサリウムでdAppsを動かすには、「ガス」をETHで買う必要があります。AWSを使うときの手数料が、イタリの場合は「ガス」ということです。ここにオークションメカニズムがセットされており、自分のアプリが消費する使う「ガス」の値を高めに設定するほど、マイナーはそのアプリのためにマイニングしてくれます。これが、先ほどのネットワークコンジェスチョンの問題を更に加速させます。つまり、資金力のあるdAppsにマイニングリソースが集中してしまい、他のアプリにリソースが回らない、結果的に、他のアプリがイーサリウムの市場から育たないという傾向が生まれてしまうのですね。これでは、AWSのように無数のアプリが動くことで、エコシステム化するイーサリウムの本来の目的とかけ離れていってしまいます。

ERC20によるトークンエコノミーのインセンティブは、独自ブロックチェーンを使った場合に比べて間違いなく劣る

最後は、実は、イーサリウムのトークンエコノミーそのものが抱えるトレードオフになります。ERC20を使ってICOをするdAppsは、そのユーザーに対して、ビットコインが持つようなマイナーに払うインセンティブモデルは持てなくなります。イーサリウムのマイナーは、イーサリウムのノードだからです。この場合、トークンエコノミーのネットワーク効果の根幹の原動力の1つが、トークンのインセンティブである以上、その上にトークンエコノミーを作り出すdAppsにとっては、一般的なアプリビジネスに比べて、それを凌駕するほどのネットワーク効果をユーザーに提供できるか?微妙ではないかと考えています。すると、本来、イーサリウムが狙っているネットワーク効果を得られなくなってしまうわけですね。

トークン・エコノミーでご紹介したAmazonのネットワーク効果に比べるとかなり難易度が高いと見ています。しかし、ビタリックが挑んでいることは、我々の社会にとっては、大変重要な点です。ブレイクスルーして欲しいという想いが常にあるため、これからも継続ウォッチしていきます。

また、トークンエコノミーの基本的な考え方と、ビットコインのトークン・エコノミー分析については、下記にまとめているので、それぞれ参考にしてください。

トークンエコノミーはリワード経済と株式経済をP2Pモデルで融合させたネットワーク効果の1つのモデル

トークン・エコノミーの観点から分析するとビットコインの上昇要因は唯一マクロ経済の混乱

 

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