労働基準法第24条の改正が仮想通貨・キャッシュレス・フィンテックに与える強烈なインパクト

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僕が、トークンエコノミーやフィンテックやキャッシュレス化に関わる法規制で一番問題視しているのがこの「労働基準法第24条」です。なぜか?

From Wikipedia – 労働基準法(ろうどうきじゅんほう、昭和22年4月7日法律第49号)は、労働基準(労働条件に関する最低基準)を定める日本の法律である。日本国憲法第27条第2項の規定(「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」)に基づき、1947年(昭和22年)に制定された。

労働基準法は、雇う側と雇われる側のルールを定めた法律です。なので、仮想通貨と何が直接関係あるの?と感じる人も多いと思いますが、実は、既存の金融インフラが、銀行中心に出来上がっている構造を生み出しているのは、この法律なんですね。

この第24条の条文はこのような感じです。

第24条:

  • 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
  • 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第89条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

2つのところを赤色に入れましたが、そこがキーポイントです。まず、僕らの給与は原則、通貨=「日本円」で支払うことが法律で定められています。理由は2つあって、日本経済を安定させるためと、税金の徴収を確実に行うため、ですね。給与=賃金ということですが、これも定義があり、毎月の労働の報酬を毎月決まった日に払うのが賃金というルールです。ですから、仮想通貨やトークンとかで払うのは法律違反なのですよ。ボーナスとか特別手当のような毎月の賃金以外の報酬は、物品とかでも払っていいことになっています。国が定めた法律に反する行為は、問答無用の懲罰の対象になります。ただ、ここには、銀行で支払えというルールにはなっていません。

実は、日本円の取引扱うことができる業者というのは、別の法律で決められており、その1つが「銀行法」という法律で定められています。銀行法は、銀行業界を規制している法律です。ですから、銀行以外は、日本円の取引を扱うことができない。だから、日本にある法人は、みな銀行口座を開く。そして、給与を現金で払うことは法律的に全く問題ないのですが、毎度、会社側が現金を支払って、従業員に賃金を払うのはやはり面倒ですね。ですから、従業員の銀行口座に振り込む。

そして、当然ですが、会社と従業員の口座が、同じ銀行内であれば手数料はほとんど取りません。社内システムでデータを書き換えるだけですからね。

銀行のビジネスモデルは、色々な人からお金をたくさん集めて、それを必要とする別の人に貸すことです。つまり、銀行というのは、実は、この労働基準法の第24条と銀行法に基づくルールから「ネットワーク効果」を得て発展してきた産業ということです。

そのネットワーク効果を簡単に説明するとこんな具合です。

法人間の通貨取引などは、銀行以外は法律で不可能になっている→法人は必ず銀行に口座を開設する→口座に売り上げが入ってくる→売り上げから従業員に賃金を支払うう→同じ銀行の支店間であれば、送金手数料を優遇する→従業員の給与口座も同じ銀行になる→銀行内の預金が外部に出ていかない→大規模な融資ができる→より多くの融資金利の収入を得ることができる→銀行ビジネスが成長する。

また、以前、このブログでも紹介したこの図の構造からも見えてくると思います。

日本の全銀ネットというのは、日本で唯一、日本の中央銀行であり、日本円の管理運用を行なっている日本銀行の中核システムである日銀ネットと接続して動いているシステムなのです。仮想通貨というのは、日本円と同じレイヤーになりますから、僕らが今の大半の仮想通貨取引所が法定通貨扱う銀行との間でしか資金の移動をできないというのは、本質的にはおかしいことなのですね。

「銀行法」以外では、証券会社などを規制するために作られた「金融商品取引業法」や電子マネー・仮想通貨・資金移動業などを規制している「資金決済法」でも法定通貨を扱うことができます。ただ、労働基準法で明示的に、「銀行以外の業態でもOKですよ」と言い切っていないので、法律というのは、明示的に定められていない場合、過去の判例や慣習から法律の文章解釈を行うことがよくあるので、銀行業が実質的に、賃金支払いを扱っているというのが現状なのですね。

しかし、これが改正される。改正の実現方法は色々とあるわけですが、たとえば、賃金の定義は変えず、「労働の対価と支払いの方法のみ、雇う側と雇われる側で合意した内容であればいいよ。」という内容に改正されると、銀行口座を介さずに、仮想通貨や電子マネーで支払うこともできるわけです。たとえば、僕がロシアのQiwiの例で紹介したようなLINE Payを使って、加盟店とその従業員が、LINEの電子マネー給与支払いを受けるなどが可能になるのです。通貨に関わるインフラを独占してきた銀行業態のイノベーションが進むということです。

今、政府では、この改正の動きが活発化しており、理想的な改正が実現すると、日本の金融インラフのイノベーションは、一気に進むと見ており、とても期待しています。

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