僕がWinny開発者「金子勇」氏がビットコイン開発者「サトシナカモト」であると確信している理由

こちらのブログの内容は、僕のYoutubeでも動画にまとめています。日本語字幕で見ることができます。ぜひ、参考にしてください。 この論争にも終止符を打ちたくなったので記事を書くことにしました。まず、サトシナカモトを知る手がかりは、基本4つです。 2009年にビットコインがリリースされて後の1年は彼一人でマイニングをやっていた ビットコイン開発コミュニティへの投稿時間の多くが北米時間であり、流暢な英語をタイピングしている 既存の政府システムに対して深く問題意識を持っている 彼が保有する100万BTCは未だに売られていない 金子勇氏のコンピューターサイエンティストとしてのバックグラウンド まず、1点目が最重要です。Bitcoinはリリースされてより1年間は、マイナーは一人だけでした。ですから、自分で作って自分で運用していたわけです。関わっていた作成者が複数いたなら、マイナーも複数いたはずです。となると、作者のサトシナカモトはP2Pテクノロジーも含め、システムアーキテクトの能力やプログラミング能力にもずば抜けて高い人物であることが最低条件になります。 金子氏は、僕も友人が何人かいる未踏コミュニティでは大変知られた人物です。 From Wikipedia – 金子 勇(かねこ いさむ、1970年7月 – 2013年7月6日)は、ソフトウェア開発者、情報工学者。専門はオペレーティングシステム、シミュレーション環境。東京大学大学院情報理工学系研究科特任助手を経て、東京大学情報基盤センタースーパーコンピューティング研究部門特任講師を務めた。通信の仕組みにPeer to Peerを用いたファイル共有ソフト、”Winny”の開発者として、47氏という渾名と共に広く知られていた。小学生の頃からプログラム技術に興味を持ち、栃木県立栃木高等学校在学中に第一種情報処理技術者試験に合格。1989年に茨城大学工学部情報工学科に入学。1999年に同博士課程を修了し、博士(工学)を取得する。研究者として卒業後は博士研究員として日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)に勤務。地球シミュレータ向けソフトウェアの研究開発に従事する。2000年から2001年にかけて、情報処理推進機構 (IPA) の未踏ソフトウェア創造事業の一つ「双方向型ネットワーク対応仮想空間共同構築システム」に参加。2006年 株式会社ドリームボート(後にSkeed)において、コンテンツ配信システムのSkeedCastの技術に顧問として関わり、2011年7月27日に同社社外取締役に就任する。2012年10月1日に株式会社Skeed取締役ファウンダー兼CINO(Chief Innovation Officer)に就任するも、11月30日付で取締役を退任し、翌12月1日に東京大学情報基盤センタースーパーコンピューティング研究部門特任講師に就任。ハイパフォーマンスコンピューテングのソフトウェアの研究・開発に従事。2013年7月6日に急性心筋梗塞のため死去。日本のインターネットを切り拓いた第一人者である村井純は、「金子さんの遺志が健全に羽ばたける世に治すことを硬い約束としたい」と金子の死を悼んだ。 金子氏は、正に、世界トップクラスのコンピューターサイエンティストです。特に、以前からよくこのブログで触れていますが、インターネットのテクノロジーが、黎明期に、P2Pではなく、クライアント・サーバーモデルを主流として採用したこともあり、世界的にP2Pテクノロジーのコンピューターサイエンティストは、少数派です。これが、日本国内となると、さらに顕著になり、P2Pテクノロジーを中核にしたソフトウェアを作り切ったことがある実力者は、僕が知る限り、金子氏も含めて5人程度です。 また、後ほど話にあげるWinny事件の影響で、P2Pテクノロジーを研究しようとする若者が減少してしまい、日本のP2Pテクノロジーのコミュニティは海外に比べて更に小さいのです。この点は、Orbを開発する際にもリクルーティングで、苦労した点です。とにかくP2P分野に精通したプログラマが少ない。 流暢な”書く”英語を身につけるのは大したことではない そして、2点目について。これに関しては、実は本人である必然性は全くないのですね。英語と、彼本人が話す言語を理解できる人物が、彼の言葉を翻訳して投稿することはできます。彼に唯一の協力者がいたとすればこの人でしょう。しかし、僕の経験も踏まえて、英語をそれなりに学んだ経験のある人であればわかると思いますが、書いてコミュニケーションするための流暢な英語を身につけることは、話すための英語の流暢さを身につけるよりはるかにハードルが低いです。ですから、地頭の良い人物であれば、英語のネイティブスピーカーから見て「流暢だ」と思われるレベルのテキストの英語力を身につけることは十分できます。特にPh.Dを取得したレベルの人物であれば、英語でカジュアルな論文であるホワイトペーパーを書くなど大したことではありません。僕のOrbのホワイトペーパー然り。また、一般的なスキルを持ったプログラマであれば、自分の投稿時間を、実際の自分の生活時間とずらすことぐらい容易いことなので、彼が北米に住んでいるはずと考えること自体、浅はかな洞察力ということです。 Winny事件が金子氏にビットコインを生み出す動機を与えた 更に、3つ目。開発動機に関するものです。通常、プログラマが、ここまで政治システムや金融システムを問題視したソフトウェアを開発することはまずないと思います。彼には、何か、強烈な動機があったはずです。ビジネス要件を考える人がいて、それをプログラマが実装したというモデルは考えられないのですね。スティーブ・ジョブズとウォズニアックのようなコンビネーションが理想的ですが、彼がそのような縁に恵まれていたかどうかはわかりません。その上でこれは、本当に革新的なプロダクトを作った・作ろうとした経験のある人であればわかるのですが、プログラマ本人にその動機がある方が圧倒的に革新的なものが生まれます。グーテンベルグが発明した活版印刷技術も同様です。ですから、彼の中では、ビットコインのような存在が世の中に必要だと深く悟らせる「人生体験」があったはずです。 そして、金子氏には、正にその人生体験があったのですね。 Winny事件とは? そう、Winny事件です。その金子氏が開発したP2Pファイル共有ソフトのWinnyを悪用する人が増え、彼は京都府警に逮捕されてしまいます。知らない方も多いと思うので、Wikipediaからの抜粋をのせておきます。 From Wikipedia – 同じファイル共有ソフトであるWinMXを利用した公衆送信権(送信可能化権)の侵害が横行し、著作権法違反で逮捕者も続出していた中で、匿名性が強化されたWinnyへ移行する利用者が後を絶たず、2003年11月にはWinnyを利用して著作物を送信した人物が逮捕された。これに影響される形で2004年5月10日、金子は著作権法違反幇助の疑いにより京都府警察に逮捕、5月31日に起訴された。そのため、弁護士の壇俊光ら「ウィニー弁護団」が、2ちゃんねるやサイトなどのネット上で呼びかけをすることで裁判費用を有志で募り、わずか3週間で1600万円を集めることに成功する。今でいう「クラウドファンディング」の先駆けであり、本件の問題が「イノベイターの活動を萎縮させ将来的に支障をきたす可能性がある」ことを、ネットユーザーらが懸念し本件に注目していた事が伺える。2006年12月13日、京都地方裁判所(氷室眞裁判長)において罰金150万円(求刑懲役1年)の有罪判決が言い渡された。金子側は同日、大阪高等裁判所に控訴し、検察側も刑が軽すぎるとして控訴した。2009年10月8日に大阪高裁での控訴審(小倉正三裁判長)判決にて逆転無罪判決となり、21日に大阪高等検察庁は判決を不服として最高裁判所に上告。2011年12月20日 最高裁第三小法廷(岡部喜代子裁判長)は検察側の上告を棄却。無罪が確定。 京都府警側の金子氏に対する起訴理由は、Winnyを開発した彼が、Winneyユーザーによる著作権侵害を目的とした利用を「幇助の故意」(Winneyが犯罪に利用されることを手助けした)をあげているのですが、冷静に考えればわかることですが、おかしいですよね。ソフトウェアは、単なる道具ですから、良いようにも悪いようにも使える。ファイル共有ソフトであるWinnyが同じP2Pファイル共有ソフトのNapster同様、著作権違反したコンテンツ流通が増えるからということで刑事裁判にまで発展するという政府の動き方は、異常です。 別のもっともわかりやすい例は「ひたすらキレる日本刀を造っている刀鍛冶は、それがヤクザが購入し、殺人に使われた場合に、殺人に対して故意の幇助をしていると言えるのか?」と同じことです。日本刀は、料理に使う包丁とは違い、完全に人を切るための道具ですから。Winnyなどより、はるかに言い訳が効かない代物です。僕は、日本の警察が、日本刀を造っている刀鍛冶を、「幇助の故意」で逮捕したという話を聞いたことがありません。刀鍛冶は許されるのに、ソフトウェア開発者は許されないのか?ということです。 これは海外のメディアでも指摘されていたことです。Winnyと全く同じタイプのソフトウェアであるNapsterを作ったショーン・パーカーが、著作権保持者から訴えられるという民事訴訟は話が分かるのですが、刑事裁判として検察から起訴されるというは明らかに異常なことです。ジョージ・オーウェルの「1984」におけるビックブラザーのようなものです。 僕もクリエーターなので、金子氏の気持ちがとてもよくわかるのですが、クリエーターは、仕事や生活で感じた「ペインポイント」を元にプロダクトを作ります。彼がWinny事件で逮捕されたことを通じて、彼は、「政府」という存在に対して、大きな関心を持ち始めたとみています。また、先ほど伝えたように日本のP2Pテクノロジーの業界は、とても小さいです。僕は、彼は、Orb1を作ったOrbのチーフ・アーキテキトであった斉藤賢爾氏が未踏ソフトウェア事業で手がけた「iWAT」の存在も知っていたと思います。なぜなら、斎藤氏と金子氏は現に交流がありました。i-WATは、日本の地域通貨業界では、もっともよく知られた人物である森野栄一氏が考案したWATシステムという次世代通貨システムをP2Pテクノロジーを使って実装したソフトウェアです。僕も、森野氏のことは社会人1年目のときに知りました。斎藤氏がi-WATの論文を発表したのは2006年です。Winny事件の裁判中ということですね。ただ、斎藤氏は、金子氏がビットコイン作者であることは知らなかったようです。現に斎藤氏は、ビットコインの初期のマイナーではありません。ただ、斎藤氏は、ブロックチェーンの技術を見たときに、「i-WATのアーキテクチャが参考になっているような気がする」と言っていたので、僕は、金子氏が、i-WATをリバースエンジニアリングしていたと考えています。そして、i-WATの思想的背景を知る中で、政府とお金の仕組みが密接に結びついていることを理解していったと思います。i-WATは、未踏に採択されたプロジェクトなので、未踏コミュニティの人であればよく知られていたでしょうが、海外にまで知られていることは稀だと考えてよいでしょう。 斉藤賢爾氏 – 慶應義塾大学 SFC 研究所 上席所員。コーネル大学コンピューターサイエンス修士号取得。1964年生まれ。「インターネットと社会」の研究者。 日立ソフト(現 日立ソリューションズ)などにエンジニアとして勤めたのち、2000年より慶應義塾大学SFCへ。2003年、地域通貨「WATシステム」をP2Pデジタル通貨として電子化し、2006年、博士論文「i-WAT:インターネット・ワットシステム─信用を維持し、ピア間のバータ取引を容易にするアーキテクチャ」を発表。 現在は「人間不在とならないデジタル通貨」の開発と実用化がおもな研究テーマ。 森野栄一氏は、メディア活動もそれほどされない方なので、あまり情報がないのですが、森野氏が運営されているゲゼル研究会のリンクをこちらにのせておきます。 ゲゼル研究会 しかも、金子氏は、その後、P2Pによるファイル共有ソフトのユーザーが著作権侵害をできないようにと、きちんと、デジタル著名と鍵認証システムを応用し、ユーザー側でコンテンツが正規サーバーから配信されたものなのか簡単に見分けることができる仕組みを考案し、2005年9月に特許出願し、2009年11月に特許を取得しているのですね。この事実から彼の自分が開発した製品へのクリエーターとしての責任感のある性格が伺い知れます。 Winny開発者・金子勇氏の新技術が特許取得 〜 ドリームボート社が製品化 と同時に、ビットコインは、2009年1月にジェネシスブロックが生成され運用が開始されたのですが、2005年9月にその特許を出していますから、その特許のアイデアをヒントにして、ビットコインのブロックチェーンのアーキテクチャを設計したと考えています。ブロックチェーンも、基本、Winny同様に匿名性が非常に強く、かつ、デジタル著名と鍵認証システムを取り入れたソフトウェアなので、金子氏であれば、このソフトウェアをほぼ一人で実装しきる技術力が十分あったとみています。 … Continue reading 僕がWinny開発者「金子勇」氏がビットコイン開発者「サトシナカモト」であると確信している理由