人口ピラミッド比較からみる次世代の世界の「イノベーション・ハブ」

さて、前回は、シリコンバレーや東京を例に、特定の地域経済がインフレを起こすことで、徐々に、イノベーション・ハブとしての価値が低下して行くという話をしましたが、もう1つの要素は、「人口ピラミッド」です。今日は、そこを掘り下げて行きましょう。 若年層がリードする社会は楽しくイノベーションが生まれる スティーブ・ジョブズはかつて「死こそ最大のイノベーションである」ということを言っていましたが、それはこのことに繋がっています。人には死があるから、古いものから新しいものへと社会の様々なものが、世代交代を通じて、生まれ変わって行く。しかし、これが停滞すると、古い世代の人々が、自分達の身を守るため、新しい世代の人々をただただ抑圧するだけの「苦しいだけの社会」になる。いわゆる「老害」というやつですね。日本にはあらゆる産業にこの「老害」が今目立っていますね。人口ピラミットはまさにこの象徴とも言えるものだと思います。 中国の人口ピラミッドは、少し日本に似ている まずは、前回でも注目した「上海」を有する中国からみてみましょう。 中国は、現在45-54歳の層とその子供の層に相当する25-34歳の層が、人口ピラミッド上の最大派閥を形成しています。45-54歳というと企業や政府の幹部クラスになっている年齢であり、その子供の25-34歳というと起業することが多い年齢層ですから、いずれもこの家族単位が今の中国をリードしているといえ、かつ、この年代が人口ピラミッド上の最大派閥を形成しているということは、国家経済としては、まさに「全盛期」と呼べるでしょう。また、人口増加のピークアウト時が、2030年ぐらいなので、これだけみると、また中国経済がピークアウトするにはちょっと早いかなという感じがします。 しかし、最大の潜在リスクは「産児制限」ですね。2016年に一人っ子政策が廃止されていますが、産める子供はまだ「二人まで」という産児制限が設けられています。人口プラミッドが三角形になるには三人以上産むことになるため、まだ人口をあまり増やさないようにしているわけですね。それは当然で、すでに人口が14億まできているので、環境破壊への配慮を考えれば、最低でも人口増加がピークアウトする2030年までは育児政策は継続すると思いますが、それ以降はおそらく撤廃する可能性が高いと見ています。ただ、そのときには、25-34歳の年齢層の子供達は、一人っ子のままなので、ここが辛くなるところでしょうね。毛沢東時代の諸々の無茶な政策による後遺症を引きずっているのが中国国家経済ということです。 アメリカの「筒型」人口ピラミットこそ、彼らの最大の強み では、次にアメリカをみてましょう。これをみると、アメリカがいかに戦略的移民政策で優れているかがよくわかります。 そう、全ての世代が、ほぼ同じぐらいの派閥サイズを持っているのですよ。勘の良い人ならわかると思いますが、将来的に「老害」がいちばん出にくい人口ピラミットなんですね。常に、一定の「新陳代謝」の作用が社会にもたらされつつも、人口ピラミット全体が「筒状」から脱するのを防ぐように移民政策を行なっているので、国家経済自体を、日本でいう「団塊の世代」など、特定の世代に依存せずに運営していくことが可能になります。だから、どの世代からも国民的スターが生まれると言うことです。実施にアメリカはそうですよね。どの世代にも、様々な分野で国民的なスターがいる。これは、相当、優れた政策だと思います。しかも、アメリカの国土は、中国に匹敵するサイズですが、人口はまだ3億強ですから、全然ゆとりがあるので、一人っ子政策などとる必要すらない。トランプ氏が、「起業ビザ」を一時廃止した際は「愚かなだな」と思いましたが、最近、この点を理解したのか、起業家人材に関してはビザを優遇する措置を検討しているようですね。メキシコの国境に壁を作ることは死守するようですが。笑 僕は、この人口ピラミッドこそがアメリカの最大の強みだと思います。 インドは、20年後が楽しみな人口ピラミット そして、インドです。 非常にポテンシャルの高い人口ピラミットになっているのがわかります。特に一番層が厚い年代が、10-14歳ですから、まだ社会人になっていません。彼らが社会人になる10年後ぐらいから徐々に今の中国と同じぐらいインド経済が注目されるようになることが予想されます。取り分けて注目されるのは、この世代から優秀な起業家が現れ、事業を大成させる30から40歳代、つまり、20年から30年後のインドが相当すごいことになっていると言えます。また、インドの中国と比べた場合の強みは、国内で英語のできるバイリンガル人材を育てることができることでしょう。イギリスの植民地支配が逆に功をそうした言える、とても興味深い歴史的事象ですね。 ちなみに、どこかのメディアで、インドは今後テクノロジー分野で「地政学」的に重要だという主張している記事があったのですが、テクノロジーと地政学は全く話が交わらないですね。強いていうなら、ランドパワーは、陸上移動に関わるテクノロジーが発達しやすく、シーパワーは海上移動に関わるテクノロジーが発達しやすいですが、グローバル経済が進んだ現在では2つは完全にごっちゃなので、そこに差はありません。事実、シーパワー日本の自動車産業は世界でトップクラスですから。読者の注意を惹きつけるためにあえてそういう表現を使っているのでしょうが、浅はかな知識レベルでいい加減なことを言うなということです。 地政学の話はこちらにまとめています。 https://lifeforearth.com/?p=3585 ちょっと話はそれましたが、実は、この英語のできるバイリンガル・テクノロジー人材にまつわる話をしますと、インドの科学系大学の最高峰は、IIT(Indian Institute of Technology)であり、実は支部がいくつかあるのですがもっとも有能な人材がいるのは、ボンベイ校です。Orb時代にもここの電子工学の修士号を2013年にとったインド人をメンバーに雇いましたが、かなり優秀でした。しかも、英語ができ、彼の場合は、ソニーの日本オフィスに1年半在籍している間にかなり流暢な日本語を習得していたので、テクノロジーがトップレベルで扱えて、言語が3ヶ国語以上扱える(英語、日本語、ヒンディ語)という、素晴らしいタイプの人材でした。 実は、これが僕が言っている日本にとっての「戦略的移民」という話と繋がってくるのですね。 日本は、40-49歳世代が頑張らないとあとはただひたすらつまらなくなる人口ピラミット そして、最後に日本です。 「団塊の世代」と呼ばれる、敗戦後に日本に帰ってきた人などが大量に子供を産んだことで起きたベビーブーム世代が今の65から74歳の世代です。今の日本の政財界をリードしている人材ですね。次が、「団塊ジュニア」と呼ばれるちょうどその子供達である40から49歳の世代、今、企業の幹部やベンチャー経営者として育ってきている世代です。ただ、これより先は細る一方のピラミッドなわけです。これは、相当、キツイですね。。。しかも、人口ピークは2010年にとうに超えています。ですから、この40から49歳の世代がリードして、人口ピラミットをアメリカのような「筒」状態に持って行かなければ、国家経済としては、残念ながら、おしまいです。世の中そんなに甘くありません。 僕が、日本の官僚と政治家に「戦略的移民政策」を積極的に取るべし、と言っているのはこのためでもあります。日本は長らく、単一民族による文化・文明形成を重要視してきました。江戸時代は、それによって本当に素晴らしい文化と社会を作り上げたのですが、残念ながら、日本が今後以降も「閉じて繁栄する」と言うことは、許されない時代に突入しています。新しい千年紀に入り、パラダイムは完全に変わっているのですね。日本語しか話せない日本人はこのことを全く理解してない人と言えます。その点は、ブロックチェーンやお金にまつわる「信用経済」のメカニズムとも密接にリンクしています。信用経済がもつ収縮作用に「拡散」を与えていくのがブロックチェーンの延長線に見えている巨大なイノベーションなのであり、それは今までの日本人がやってきたイノベーションとは全く持って異質のもの、かんたんに言ってしまえば「逆方向」のものです。今までの日本人は常に閉じることでイノベーションを起こしてきましたから。その点は、こちらにまとめています。 https://lifeforearth.com/?p=4193 日本に「多様性」のある社会を作れるかが、今後の日本の「鍵」であることは間違いないですね。僕が、Orbで仕掛けた藩札2.0で日本に「連邦制」導入を本気で言ったのはそのためでもあります。Orbは、そう言う意味で、社員50%が海外の出身者であり、しかも、トップクラスの人材で更に60%がエンジニアで構成され、世界最速の分散型台帳を完成させたテックスタートアップでしたから、これ自体、日本にとっては初の試みであり、小さいながらも、最後、SBI Holdingsに買収というよい成果を残せたと思います。そして、僕は、さらにその上を行くチャレンジをはじめています。 そして、なぜ、これからの時代は「多様性」がキーになるかと言うと、20世紀が「細分化がイノベーションをリードする時代」であった一方で、21世紀はその反動による「統合作用がイノベーションをリードする時代」に入っているからなのですね。この点は、こちらにまとめています。 https://lifeforearth.com/?p=4311 また、人口がこれ以上増え続けることは、実は僕らにとっては非常に大きなリスクがあるのですよ。「地球に住めなくなるリスク」です。それについては、Orbのホワイトペーパーにまとめています。 https://lifeforearth.com/?p=3988