株価比較でわかるディズニーがネットフリックスから離脱したがるわけ

前回、ネットフリックスが、去年から一気に押井守氏率いるプロダクションIG含む日本の大手アニメ制作会社5社と業務提携し、日本のアニメコンテンツの囲い込みに動いている話を紹介しました。その背景には、ディズニーとの対立色が明確になってきた点が挙げられます。

ディズニーは2、3年以内にはネットフリックスへの動画提供を止める見通し

これは、ディズニー自身が、「ディズニープラス」という動画配信サービスを開始する予定だからなのですね。ディズニーは、完全、「キャラクタービジネス」にフォーカスしており、どんどん新たなキャラクターの獲得に動いています。アイアンマンなどを筆頭にするアベンジャーズシリーズをもつ「マーベル」、スターウォーズシリーズをもつ「ルーカス・フィルム」、そして、スティーブ・ジョブズが育てたアニメスタジオで、トイ・ストーリーなどをもつ「ピクサー」をすでに傘下に収めています。そして、今月中には、713億ドル(約7兆8,430億円)もかけた米大手映画配給会社の「20世紀FOX」も買収が完了します。

ディズニーのフォックス買収、3月20日に完了と正式発表:シネマトゥデイ

20世紀FOXは、映画史上最高の興行収益を記録した「アバター」や人気シリーズ「X-MEN」、「エイリアン」、「猿の惑星」などの著作権をもつ会社です。これを傘下に収めることで、独自の「続編シリーズ」や「番外編」を制作できるようになるわけですね。

そして、そのディズニーが自ら配信事業に進出することで、直接「顧客基盤」を獲得できるようになる、これはディズニーにとっては、彼らの事業戦略上、時代の変化」に適応していくために、とても大きなことだと思います。それは、コンテンツの世界は、以前にこのブログでも話をしましたが、1つのコンテンツのライフサイクルが短くなっているので、小売業界同様に「プライベートブランド」の重要性が増しているからなのですね。まだ読んでない方はこちらです。

https://lifeforearth.com/?p=3640

小売業界が起こしたプライベートブランドという名のメーカーとの立場逆転現象

まず、世の中の大半の製品は、「作る側」と「売る側」の役割分担でビジネスが成立しているわけですよね。たとえば、アフィリエイトは、マーケティングの1つなので「売る側」属します。昔であれば、立場的には「作る側」の方が強ったのですよ。メーカー側が、基本、販売価格や売り方も含めて全て仕切るのが普通でした。日本の家電量販店のように、メーカーからもらえるリベートというインセンティブ制度が販売店スタッフに与えられているため、「オープンプライス」で市場に販売されるケースもありますが、メーカー側のブランドを棄損しないように最低価格は絶対に割らないような取り決めが量販店とメーカー側では取り交わされているので、やはり、メーカー側の方が立場が強かったのです。

しかし、今は、「売る側」の方が圧倒的に強いです。その逆転現象を作った最初の事例が、僕も在籍していた「セブンイレブン・ジャパン」ですね。まずは、皮切りは、「パン」から始まったのですが、小売側であるセブン自体が商品企画をして売ることで大成功を収めていきます。このカテゴリが、今ではおにぎりやお弁当だけでなく、スイーツや飲み物までとかなり拡大してきてますね。そして、そのトレンドは、イオンなど競合にも広がっており、アマゾンも今、「プライベートブランド開発」に注力をはじめました。

セブンが、この手法を取り入れたのは、コンビニのビジネスモデルにあります。コンビニというのは、店舗のスペースがスーパーに比べて圧倒的に小さいので、品揃えは、かなり絞り込みます。小売業界に流通しているアイテム(約300万以上と呼ばれる)のうち、4,000程度しか並べません。ですから、相当売れ筋商品、しかも定価で売れる商品を並べないと、日販(1日の売り上げ)を50万や70万という水準で維持するのは大変なわけです。

その中で、コンビニが編み出した手法が「二週間単位に品揃えを改める」という手法です。いわゆる世界的に普及したビジネス単語の「タンピンカンリ」を構成する要素の1つなのですが、その背景は、「商品のライフサイクルが短くなっている」ということを、商品企画側が理解しているからなんですね。そのデータが、小売側であれば、直接肌で感じ取ることができますが、メーカーは、納品先の各リテールから間接的に入ってくる情報でしか掴めないので、そこにどうしても情報の鮮度としての「タイムラグ」が出てしまいます。

なので、セブンは、自ら商品企画して作るという道を選んだわけです。そして、その方が、プロモーションコストも自己負担になるので、商品単価も安くできます。例えば、セブンのプライベートブランドのミネラルウォーターベースの炭酸水などが、1本85円程度で売られているのは、メーカーが出費する宣伝費が価格に乗せられていないからです。その分、安くできるのです。ユーザーにとっても、その方がお得です。

僕は、ネットフリックスの独自コンテンツ戦略は、このモデルと同じだと思います。なぜなら、ネットフリックスは、元々は、DVDのオンラインレンタルサービスのベンチャーだからです。

From Wikipedia – Netflixは1997年8月29日、現CEOのリード・ヘイスティングスと、ソフトウェア会社の役員だったマーク・ランドルフによって、カリフォルニア州スコッツバレーにて設立された。創業時の資本金は250万ドルで、初代CEOにはランドルフが就任した。オンラインでのDVDレンタルサービスを事業とすることを思いついたのはヘイスティングスで、かつて彼が『アポロ13』のビデオテープをレンタルした際、返却期限に間に合わず40ドルの延滞料金を支払った経験がきっかけとなっている

ネットフリックスは、全世界に、現時点で約1億4,000万の会員を抱えている一方で、長年、競合視されてきたHuluは、実は2500万程度、ネットフリックスがHuluを凌駕しているのですね。僕は、これは、日本の小売業界が起こしたメーカーとの立場逆転現象とそっくりだと考えています。なぜなら、Huluは、ディズニーを筆頭とするコンテンツメーカーが作った動画配信会社だからです。

Hulu Reports More Than 25 Million Subscribers in 2018: WSJ

そして、この現状は、確実に、ディズニーを苦しめています。その結果は、株価にも出ているのですね。下の図は、Google Financeの情報です。

ネットフリックスの株価は、過去5年で5倍になっている一方で、ディズニーは、ほとんど上がってません。。。しかも、ネットフリックスは、従業員がディズニーの1/3程度しかいないので、とても筋肉質な会社。時価総額で、ディズニーを超えかけているのですね。これは、まさに、僕が言っている「作る側」と「売る側」の典型的な立場逆転現象の1つです。

当然、ディズニーからしたら「なんとしても手を打たなければ」と真剣になるわけですね。

20世紀FOXの買収によってディズニーはHuluを実質子会社化し「ディズニープラス」にリブランドすると予測

ですから、僕は、ディズニープラスは、間違いなくHuluの事業リソースを使って実現されると見ています。

From Wikipedia – ゼネラル・エレクトリック傘下であるNBCユニバーサル(現在はコムキャスト傘下)、ニューズ・コーポレーション(現・21世紀フォックス)傘下のFOXエンターテイメントグループ、ディズニーABCテレビジョングループ 、プロビデンス・エクィティ・パートナーズなど大手マスメディア出資による合弁事業として2007年3月に設立され、2008年3月12日に正式サービスを開始した。

現在の持ち株比率は、ディズニー30%、21世紀フォックスが30%、NBCユニバーサルが30%、そして、AT&T(プロビデンスから取得)が10%です。ですから、今回の20世紀FOXの完全買収で、Huluのディズニーのシェアは60%となり、実質的な子会社にできます。

ですから、ディズニーの事業戦略としては、Huluのテコ入れを「ディズニープラス」でやると見ています。となってくると、2017年5月にでたこのなんとも煮えきれらないニュースの真意が読めてきますね。

日本のHuluが「happyon.jp」にURL変更 なぜ?:ITMedia

なんか、これ「裏があるな」と思ってたんですよね。会社側の回答が、ものすごく「お茶を濁したような回答」だったので。おそらく、Huluは、今後、日本のコンテンツばっかりになるでしょうね。笑

その点は、こちらにまとめました。

https://lifeforearth.com/?p=4361

また、ディズニーは、かつてスティーブ・ジョブズがピクサーの買収によって社外取締役を勤めていた時期もあり、Appleとは親しいので、Apple TV内でNetflixとどのような差別化をしかけてくるのか気になっています。Amazonプライムは、確実に、Apple TV内では、Appleに競合視されているため、iTunesに比べて使いにくい仕様になっていますからね。その点は、こちらで紹介しています。

https://lifeforearth.com/?p=83

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